星熊童子とONE PIECE   作:〇坊主

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 感想をくださった方々、本当にありがとうございます。
 やはり読んでくれていると目に見えてわかるのは励みになりますね。

 今回の話は少し短めになってます。
 うまく引っ張れなかったんや…
 
 


買い出しと要件

 

 

「ほ~、ユバやエルマルと違ってすごい繁栄だね。確かにこれは夢の町と言われるだけはある」

 

「だな。枯れた町とは大違いだ」

 

「各地で雨が降らない中で、アラバスタやレインベースはその恵みを受ける貴重な場所なの。水があるところに人は集まるから、結果的にこれほどまでの発展になったのよ」

 

「それもクロコダイルの策略ってことか…」

 

 

 夢の町「レインベース」

 

 それは各地で雨が降らずに枯れていく中で、自然の恵みを受ける町。国の英雄と称される黒幕 王下七武海に属する男 クロコダイルが統治している場所だ。悪い言い方をすれば彼の庭でもある。

 そんな場所にナノハナで海兵の追撃を逃れた麦わらの一味はやってきていた。

 

 ビビの目的であった反乱軍を止めるために本拠地のユバに向かったのであるが、ほとんどが砂に埋もれて廃墟寸前となってしまっていた。

 それだけでなく、反乱軍はこれ以上疲弊しないために本拠地をカトレアという一味が始めに船を止めたナノハナの隣町に移してしまっていたというのだ。

 すぐに引き返そうとするビビであったのだが、それを止めたのはルフィ。

 彼がいる限り国防軍と反乱軍の戦いが止まることがないと主張した。

 いくら反乱軍を抑えようともアラバスタ乗っ取りのために何年もの時間を費やしてきた黒幕 クロコダイルの策略にかかれば消した火をすぐに灯すことも可能だろう。それならば先にクロコダイルを叩くことで火元を止める。実に合理的な方針であった。

 その案を出したルフィに対して一同が驚愕していたのはここだけの話である。

 

 そんな背景もあってやってきたレインベース。中央に位置する場所には最大のカジノ“レインディナーズ”というピラミッド状の建物が鎮座している。ワニの頭にバナナがついていることから、ついた名前はバナナワニ。

 そのバナナワニを象徴としてどの場所からでも見れるほどの建物の大きさを誇っている目的地は目につきやすく、最悪散り散りになったとしても集合しやすい場所でもあった。

 

 

「ん?あれ?ルフィとウソップがいないぞ?」

 

 

 ふと船長と狙撃手がいないことに気づいたチョッパーはどこに行ったのかと首を振りながら探していた、

 そこにナミがお使いを頼んでいたのだとたしぎが教える。

 

 

「ルフィ君とウソップ君ならナミさんがお使いを頼んでいましたよ。水の補充をって」

 

「そっか。ならおれ小便行ってくる」

 

 

 麦わらの一味は一本の木が立つ場所で邪魔にならないようにして二人を待っている。

 お使いだけであれば余計な食糧を買って来たり、飲み食いしたりしそうではあるもののそこまで大きな問題は起こさないであろうという航海士の判断である。

 

 

「水の買い出しに行ったのはルフィとウソップかい?んー…あの二人なら直帰することはないだろうし、私も付近を探索してくるよ。役に立つものあったら買ってくる」

 

「あ、なら私も行きます。打ち粉がもうすぐ切れそうなんですよ」

 

「あんまり遠出しないでよね二人とも」

 

 

 時間がありそうということでトイレに向かったチョッパー、何か目ぼしいものがないかと近くの売店へと向かう勇儀に刀整備に必要な粉を求めてついてくるたしぎは集合場所から離脱する。

 観光で来たわけではないが、せっかくした町だ。探索しないともったいない。

 B・W(バロックワークス)が潜んでいる中でも自然体に行動する勇儀は目立つ角を髪を頭にまとめ、それを服で隠している。雑兵に負けない勇儀ではあるものの、如何せん角は目立ってしまう。一味が潜伏していることがばれてしまえば事が大きくなってクロコダイルの元にたどり着く可能性も減ってしまうかもしれないための必要な処置であった。

 

 一味の中でも頭が回るナミやサンジが勇儀とたしぎを止めないのも、彼女らが根はしっかりとしており、問題を率先して起こさないことを理解してくれているからだろう。日頃の行いがルフィと違いすぎるのである。

 

 そこからの流れはある意味で芸術なのかもしれない。

 三人の姿が見えなくなった瞬間にお使いを頼まれた二人が海兵を引き連れて帰ってきたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかしユウギさん。なぜあなたは彼らと共に海賊を?正直なところ、あなたが海賊をまとめ上げていても全く問題ないと思うのですが」

 

「んん~私が海賊を?はっはっは!残念だけどそれはないねぇ。私は無人島で生活して、それで満足していたんだ。ルフィと出会わなければ一生をあの場所で過ごしていたと思うよ。もっとも船出したとしても良くて賞金稼ぎぐらいだろうさ」

 

 

 たしぎの素朴な疑問に対して勇儀はあっけからんと答える。

 海賊は確かに悪くはない。だが勇儀はあくまでもルフィが仲間に呼びかけたから海賊になっただけであるのだ。自分が率いる姿なんて全く想像できない。一人でぶらぶらと酒を飲みながら歩き渡るのならば想像もできるのだが。

 

 

「そうですか…あなたがただの賞金稼ぎに収まってくれていれば海軍としてはとても助かっていたのですけどね…」

 

「もしもで語っても今じゃ意味無いさ。それより刀屋はあそこじゃないかい?」

 

「へ?あっほんとだ。ありがとうございます」

 

「いいさ。私は別の店に寄っておくよ。集合は皆の元にしようか」

 

 

 たしぎが駆けて武器屋に向かったのを見送り、勇儀はそのまま近くの路地へと入っていく。

 向かうと告げていた近くの商店には見向きもせずにさらに遠ざかるように進路を進める。

 まるで迷路のような路地を進んでいき、人気が無くなった場所へと出てから漸く足を止めた。

 誰もいないと目で見てもわかる。

 だが人が3人ほど並べれる幅があるこの場所で、勇儀を見ている存在がいる。

 

 

「…で、私に何か用でもあるのかい?」

 

 

 恐らくは一味内では勇儀しか気づかなかった気配。

 というよりも勇儀にのみ気づけるように気配を出した、といったほうが今回は正しいのだろう。

 勇儀が虚空に語り掛けるとそれに答える声が勇儀の耳に届いた。

 

 

「わざわざ人気がない場所を選んで頂いて感謝いたす。“剛拳”ホシグマ・ユウギ殿」

 

「世事はいらんさ。私としてはあんたとは初対面のはずなんだが…まさか告白しにこんな周りくどいことをしたわけじゃあるまいて」

 

「無論。それと貴女の命を狙ったわけでもないことをご理解なされよ。私と貴女では戦闘力の差が顕著であるが故に、交戦の意思もありませぬ」

 

「それはわかってるさ。暗殺したいのならばさっきの大通りで毒でも入れ込めば済んだ話なんだ。でだ、早く本題を述べてもらわなきゃこちらも困る。仲間が待っているんでね」

 

 

 勇儀の正面に現れたのは全身を布で覆い、己の姿を見られないように徹底しているその男。喜劇団のような面をつけて顔すらも見せないようにする姿勢は裏で暗躍するものだと影ながら主張していた。

 ルフィが帰ってくるまでそこまで時間がない勇儀は男を急かすが、男はそれには及ばないと伝える。

 

 

「“剛拳”殿。残念ながら麦わらの一味はすでに集合地にはおりますまい。貴殿の船長が海兵に追われながら集合地へ向かっていたのが確認できたため、すでに目的地へと向かっている最中でしょう」

 

「へぇ…つまりこれはあんたらの思い通りってことか?交戦せずとも戦力をばらけさせるためにわざわざその役を買って出た…と」

 

 

 男の発言に勇儀は戦意を上げる。

 眼前の男を瞬殺し、屋根を飛び越えて進んでいけば多少なりとも現状を把握できるだろう。

 静かに拳を握り、目を細める。下手な動作を見せようものならすぐにでも頭と胴を別れさせる意志を固めたところですぐに男が勇儀の心情を察したのか抗議の声を上げる。

 

 

「お、お待ちください!私はB・W(バロックワークス)のものではありませぬ!むしろ我々(・・)は奴らの計画を妨害するためにこの場に赴いているのです!」

 

「―――どういうことだい?」

 

 

 B・Wの敵対組織。

 この国でそう名乗るのはおふざけではない。そこらの一般人に紛れて活動をおこなっているのが彼らB・Wだ。下手に耳に入ろうものならあらゆる手を使って抹消しにくることだろう。

 そのリスクを負ってまで勇儀に語り掛ける男を勇儀は多少なりとも信じることにした。

  耳をすませば大通りから慌ただしい声が聞こえてくることから、ルフィ達が海兵に見つかったことで逃げ回りながらクロコダイルの元へと向かっているのは確実だろう。

 

 勇儀が周りの状況を察したことに気づいたのか、男は流石ですと言葉を零す。

 周囲の警戒は勇儀と男共に怠っていない。先に状況把握をしている男にこそ勇儀はその言葉をかけたかったのだが、生憎時間がそこまでない現状だ。

 男もこれ以上時間をかけないように本題と名乗りを上げる。

 

 

「私は“革命軍”諜報部員所属の者。名は「ハナム」。今後貴殿と私の出会いがあるかは分かりかねますが、ここに告げておきます故。では“剛拳”殿、こちらへ。貴女と話がしたいと願う者がおります」

 

 

 ハナムと名乗る男は勇儀をさらに奥へと誘う。

 周囲の建物によって影が満ちている路地であるというのに、彼が示す道はより一層暗く感じ取れた。これ以上進むということは今まで勇儀が見たことのない闇へと向かうかの如く。

 

 しかし勇儀は臆することなく足を踏み出した。

 ルフィ達が心配ではない、というわけではない。ただここは“偉大なる航路(グランドライン)”。幾多の海賊と海兵が群雄割拠しているこの海で、いつかは勇儀がいなくても乗り越えなければいけない出来事もあるだろう。それが今か先かの違いである。

 

 

「ん?ハナムか。ってことがあんたが“剛拳”ホシグマ・ユウギで間違いなさそうだな」

 

 

 誘導された先には帽子を深くかぶった男が一人。

 砂漠近くでまだ暑いというのにも関わらずコートを身に着けた男を見て、勇儀は彼こそが自分と話がしたい者だと察した。

 

 

「ご存知の通り私がそのユウギさ。あんたの名前は?」

 

「…おおっと。そいや名乗ってなかった。俺は革命軍の“サボ”だ。要件は人材探し。ユウギ、革命軍(ウチ)に来てみる気はないか?」

 

 

 “革命軍”

 

 そう名乗るものと出会うことでこれから先にどのような変化をもたらすのか。

 それを誰も知る由もない。

 

 

 




 
 
 

 
 
・バナナワニ

 アラバスタ編でクロコダイルがペットとして飼っていた大型ワニ。
 極めて獰猛かつ貪食な性格で、海水にも適応し、海王類すら捕食するとのことから恐ろしさは野生内でも屈指だと思う。
 少し調べててバナナワニ園という動植物園が実在することに気づいて驚きました。


・革命軍

 いきなり出てきた革命軍。
 原作ではそこまで活躍が描写されていないためわからないが、今作では勝手に諜報部隊を作成。オリキャラぶっこみ。とやりたい放題である。
 オリキャラ…というかそのモデルはかなりわかりやすいと思う。今後出てくるかは不明。


 
 

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