星熊童子とONE PIECE   作:〇坊主

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 前回の投稿時には約10か月もの空白期間があったにも関わらず、感想をくださり本当にありがとうございます。
 この場を借りて感謝を。
 
 展開をどうしようかと考えた結果、リトルガーデンやドラム王国はバッサリカットすることにしました。正直苦戦するどころではなかったのでね。仕方ないね。
 
 


砂漠の王国へ

 無事についたアラバスタ王国。

 道中で二人の巨人海賊団の船長らとのイザコザや病に侵されたナミを救うべく向かった医療大国であるドラム王国の揉め事などが起こったが、航海中も常に鍛えていることもあってそれほど苦戦もすることはなかった。

 むしろ苦戦されてしまっても困る。ルフィが目指す海賊王になるためには邪魔をするもの達を全員倒し、自分が最強であり、そして自由であることを全ての海に示さなければならない。

 それは詰まる所海軍本部や王下七武海、“赤髪”のシャンクスと言った大海賊にも遜色ない強さを有していなければ決して叶わない夢でもある。

 

 勿論勇儀がこの船に関わる以上、仲間内で足を引っ張り合うような事を起こしたくもなく、要介護をしたくもないので必要最低限の自衛は出来るようになるまでは鍛えていく考えだ。

 せっかくの船旅を行っていく中で、航海を基本的にナミとウソップ、そしてサンジが担っていることでルフィとゾロはこれといったことがない限りは勇儀の扱きを受けている。広大な海原を進んでいる時間こそ、他者との差を埋めて引き離していける大事な時間なのだ。航海にいつも目を輝かせているルフィに申し訳ないが、“覇気”の修行は絶対に譲らない。これに固執するわけではないが、何より必須科目だからだ。

 そんな日々鍛える麦わらの一味とたしぎの面々は“覇気”を完全に扱うにはまだまだである。だがルフィ、ゾロ、そして予想以上の早さでたしぎが頭角を現していた。“偉大なる航路(グランドライン)”の最初に訪れた町 ウイスキーピークで戦ったMr.6とミス・マザーズデーと刃を合わせたことで共感を受けたのだろうと当たりをつける。

 このペースで行けば“新世界”に入るまでに多少の力は備えることが出来るだろう。

 

 

「おぉーい!!勇儀ぃ!!早くしねぇと遅れちまうぞぉぉおーー!!」

 

了解(ヤー)、分かってるよ船長(キャプテン)

 

「おれ、ドラム王国以外の場所に来るの初めてだ。こんなに熱いものなんだな」

 

「ここアラバスタは砂漠の王国だからね。夜になるとドラム王国ぐらいの寒さになるからみんな気をつけてね」

 

「モチロンですビビちゅぁぁあん!!」

 

 

 そんな未来予想図を頭に浮かべているとルフィの急かす声が聞こえてくる。盃に注いでいた酒を一気に飲みほした後、軽く回して水気を一気に器から飛ばしたのちに邪魔にならないように背負う。

 これから向かうは砂漠の王国 アラバスタ。麦わらの一味が送り届けると誓った王女ビビの故郷だ。船が波に拐われないようにしっかりとくくりつけた後、全員降りて準備を進める。

 

 初めての船旅に期待を膨らましているのはドラム王国で仲間になった船医 トニートニー・チョッパー。

 元々はただのトナカイであったものの、ヒトヒトの実を食べ、その後に拾われたことで薬学の知識を備えた貴重な存在だ。そこら辺のチンピラ相手程度であれば簡単に蹴散らせる戦闘力を有しているため、アラバスタで行動させることに関しては誰も異論を挟まなかった。

 それどころかアラバスタ王国に向かうためには砂漠を越えて行かねばならない。毒草を含めた野草のデータが全て頭に入っている彼の知識はとても重宝するだろう。主にうちの船長が。

 

 そんなこんなでアラバスタまでに仲間を増やした麦わらの一味。

 彼らは王女を無事に宮殿に届けるべく、近くに存在する港町。名を「ナノハナ」で活動を行おうとしていた。

 

 

「よーーし!行くぞ!!メシ屋へ!!!」

 

 

 ………行おうとしていた。

 

 

 

 

 

    ――――

 

 

 

 

 

「あの店はやけに騒がしいな…何があった?」

 

「はっ!何でも店で料理を食べていたお客が突然死したという情報が…」

 

 

 麦わらの一味が長い船旅を終えて「ナノハナ」へ到着して活動を始めている頃、葉巻を咥えた男が近くのレストランの騒がしさに気づく。話では客が“砂漠のイチゴ”と呼ばれる毒グモを食べてしまったのではないかという話だ。

 それだけならご愁傷様で済んだ話なのであるが、その男と周囲の者たちにとって聞き捨てならない報告が飛び込んできた。それは本来前半の海ではお目にかかることのできない人物であり、彼が属する海軍本部も要警戒として賞金首にしている者だった。

 

 

「おいてめぇら。周囲を警戒しろ。仲間がいる可能性が高いからな」

 

「はっ!」

 

 

 事態が悪化することを予測して部下にそう命じ、自身はその人物がいるという店の扉を開く。

 着こんでいるコートに書かれた文字は“正義”。そして背に有する獲物は海楼石で作られた十手。

 いつでも戦闘になってもいいように、海軍本部大佐である“白猟(はくりょう)”のスモーカーは突然死したとされている男へ近づいていく。

 

 

 

「ぷほっ!!」

 

『うわっ!生き返った!!』

 

 

 スモーカーが意識を失った男に近づいている途中でその男は頭を上げる。完全に死んでいると思っていた周りの住民たちは突然の出来事に驚き、意識を失ったのは眠ってしまったという珍事が原因であることにそれぞれが激しいツッコミを入れていた。

 そんな周囲には目もくれずに再び食事を再開する男であったが、背後から待ったがかかる。

 

 

「よく大衆の面前でメシが食えるもんだな。“白ひげ海賊団”二番隊隊長“ポートガス・D・エース”」

 

「おっとあんたは海軍かい?こんな店にまでわざわざ見回りご苦労さん」

 

 

 近づいてくる男が海兵だと分かっていてもすぐに逃げようとしない二番隊隊長。諦めたのか、逃げようと思えば逃げ切れるという自信があるのかと問われれば確実に後者となるだろう。

  

 “白ひげ海賊団”

 

 この名前は世界中の海の中でも特別だ。

 なぜならこの海賊団は大海賊時代が訪れる前から存在するモノであり、海賊王ゴールド・ロジャーと覇権争いを行ってきた超有名海賊だからだ。

 海賊王亡き今、二代目の海賊王に最も近い男として海軍本部だけでなく、各国も警戒する存在になっている。

 その海賊団二番隊“隊長”を勤める男が大佐程度に遅れを取ることなど万に一つもあり得ない。

 そんな自信と事実をポートガス・D・エースは有していた。

 

 

「てめぇがいなきゃこの店に寄り道はしねぇ。てめぇほどの男が一体なんの用でこの海に居やがる」

 

「……ちっと弟をね。探しに来たんだ」

 

 

 目の前に敵対組織である海軍がいても尚余裕綽々の態度を崩さない男はなんの悪びれもなくそう答えた。

 それどころか食事の手を緩めない。ルフィほどの雑な食べ方ではないとは言えども明らかな挑発行為ともいえる。

 

 

「で、おれはどうすりゃいい?」

 

「大人しく捕まるんだな」

 

「却下。そいつは御免だ」

 

「オレ自身別の海賊を追ってここまで来ている。お前の首なんかにゃ興味はねぇ」

 

「じゃぁ見逃してくれよ。興味ないんならな」

 

「そうもいかねぇ。俺が海兵で、お前が海賊である限りな…!」

 

 

 能力を開放し、いつでも戦闘を行える状態へと移行したスモーカー。

 それに対して乗り気ではないのかエースは軽口を叩く。

 瞬きをしている間に戦闘が起こってもおかしくないこの状況の中で住民たちは固唾を飲み、彼らを刺激しないように動きを止めて見守るなかで、空気を読むことができないものが二人…

 

 

「うはーーーっ!!メシ屋だ!!ハラへったー!!!」

 

「ちょいとルフィ。うれしいかもしらんが叫びすぎだよ。目立ちすぎる」

 

 

 麦わらの一味でも政府が認める問題児である賞金首 モンキー・D・ルフィと星熊 勇儀である。

 幾多にある店の中からピンポイントでメシ屋を見つけ出す嗅覚に勇儀は呆れつつも、メニューをすぐに決めて席に着く。そのまま唖然としつつも本来の仕事に気づいた料理長の手によって運ばれた料理に手を付け始めた。

 それを見て先ほどまで一触即発の空気を生み出していた海兵と海賊はその光景に唖然とする。

 二人に全くと言っていいほど気づいていない様子であるルフィと勇儀であるが、彼らがいるのはカウンターに最も近いテーブルである。つまるところスモーカーとエースがいる真後ろの席であるにも関わらず、自分の目の前にある料理にしか目が行っていないのだ。

 実に神経が図太い二人である。

 

 

「…!!おい!ル「麦わらァア!!!」

 

 

 近くの椅子を破壊してついにスモーカーが吠えた。

 エースの言葉をかき消すほどの叫びは二人の耳に届いたようで、スモーカーの姿を確認したまま食べ物を口に運んでいくのを忘れない。

 

 

「「・・・・・・・・・・」」

 

「食うのをやめろ!!」

 

 

 うまそうに胃の中へと料理を入れていくルフィとマナー良く食べつつも皿をまとめていく勇儀。そしてそれを眺めるスモーカー。時間にして30秒ほどといったところか。我慢できなくなったスモーカーが制止にかかった。

 

 

「…あらあら。あんたはローグタウンに居た…スモーカー大佐、だったかい?まさかこんな…と思ったが翌々考えれば追ってくる理由は十分にあったね」

 

 

 丁寧に口元を拭いた勇儀はスモーカーがこの場所にいる理由に気づいた。

 たしぎの存在である。

 不慮の事故とはいえど、彼女は海兵から見れば麦わらの一味に人質の形で攫われた状態だったのだ。あまりにも船員と馴染んでいたために普通に一船員(クルー)として受け入れてしまっていた。

 ちなみにたしぎを鍛えていたのも他と戦うときに自衛程度はできないとなーという理由であった。決してたしぎが考えていた理由ではない。仮にもたしぎを攫う形に仕向けた張本人がこれであってはどうしようもないだろう。

 それに対して周りも不平不満を一切言っていない事実は“麦わらの一味”が有する緩さがどれほどのものなのかを表しているだろう。

 

 

「!!ばもぼいもめうい!!なんべぱんべもばびび!!」

 

「食べ終えてしゃべれ!!」

 

「んぼばば!!?」

 

 

 残飯を吐きつつもスモーカーにしゃべるルフィに鉄槌を入れる勇儀。

 その後、ルフィが口の中に存在する料理を胃に収めるまで5分ほどの時間を要した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「素敵!こういうの好きよ!私!!」

 

「でも…これは庶民の衣装というより…踊り子の衣装よ…?」

 

「ど…どうして私まで…」

 

 

 場所は変わって港町の外れ。

 ルフィと勇儀を除いた一味のメンバーは人目が少ないのを利用して今後の活動のための物資調達を行っていた。

 一味の華でもあるナミ、ビビ、そしてたしぎは己の素性を隠すべく、普段の衣装とは異なり踊り子の衣装に身を包んでいた。

 三者三様の着こなしで、抜群のプロポーションを生み出している。

 どれだけ素晴らしいものかというと常にサンジの顔がだらけきっており、ハートが浮いているのが空目してしまうほどだ。

 

 一同がこれから行うのは砂漠越え。普段航海する装備では水が足りず、何よりも砂漠特有の寒暖差を乗り切ることができないからだ。それだけでなく、自分たち海賊や王女ビビの存在がB・W(バロックワークス)にばれないためにも変装の意味で新たに調達しなければならなかったのだ。

 今の彼らは知らないがルフィと勇儀がスモーカーに見つかっている以上、ほとんど無意味になっているのだが。

 

 

「たしぎもB・Wに顔がばれてしまっているんだから多少の変装はしとかないと!相手は王下七武海よ?向こうから海軍に連絡入れられたら大変でしょ?」

 

「まぁたしぎさんが海兵だってことをクロコダイルが知っているとは思えないけど、用心はできる限りしておいたほうがいいわ」

 

「あーそういえばそいつ海軍だったな。忘れてたわ」

 

「えぇ!?たしぎって海賊じゃないのか!!?」

 

「ちょっとどういう意味ですか!!私はれっきとした海兵!海軍本部の曹長です!!」

 

 

 完全に忘れてたと言い切るウソップに、そもそも海兵である事実を知らなかったチョッパーの反応にたしぎが叫んだ。

 たしぎ自身一味に馴染みすぎていると思ってはいたが、完全に仲間扱いされているとは思っていなかったのだろう。しかし描写はされていないものの、リトルガーデンではB・Wの追撃を共に撃退したり、ドラム王国ではナミの病に対してルフィと共に奔走したりもしているため、仲間扱いされていても仕方がなかったりする。

 

 

「てかどうすんだ?本来だったらウイスキーピークでそいつとは別れる予定だったろ?成り行きでアラバスタ(ここ)まで同行してはいるが、向こうは世界有数の大国だ。海軍とも連絡ぐらいなら取りあえるだろ。それならここらで別れるってのも選択肢にあるだろ?」

 

「おぉいこらマリモ野郎。てめぇたしぎちゃんに不満でもあるのかコラ」

 

「…えぇ。確かに私はここであなたたちと別れて、そして海軍と連絡を取り合うこともできるでしょう。海兵としてそれが最も合理的で、安定した方針であると思います」

 

「えっ」

 

「ちょっ、たしぎ?」

 

「でも安心してください。私は中途半端なところでこの件から身を引くつもりはありません。政府公認である“王下七武海”の所業を知ってしまった以上、私は見届ける義務があります」

 

 

 ゾロの意見に同意をしつつもそれはしないと言い切ったたしぎに一同は安心する。

 

 

「しかし!それもこのアラバスタで無事に紛争を止めることができたら、私は元の職場に戻らせてもらいます!いくら本来あり得ないほどの待遇をしてくださったとは言えども私は海軍。あなたたちは海賊!本来であれば水と油の関係なんですからね!!」

 

「ま、それに関しては仕方ねぇよな。船長(ルフィ)副船長(勇儀)が受け入れてるとは言っても海軍(向こう)がそう都合よく取るわけがねぇ」

 

「そうね。ま、今すぐに海軍に行かないと言い切っただけでも安心でしょ。嘘つかない性格だし、はっきり言って信頼できる仲間は多ければ多いほどいいわね」

 

「…信頼、しているんですね」

 

「当然よ」

 

 

 何故とはたしぎは聞かなかった。

 聞かなくても麦わらの面々は目で、雰囲気で語っていた。たしぎは信頼しても大丈夫な人物だと。

 それを察せられるたしぎも麦わらと共に船旅を過ごしてきたことで多少なりとも感化されているようだ。

 

 海軍では所属する海兵達から持て囃されたことは多々あれども信頼されているとはっきり感じとる機会はほとんどなかったこともあり、胸の中がすこし暖かくなったのを感じたたしぎであった。

 

 

「…ん?なんか向こうが騒がしいな」

 

 

 ほっこりしていた一同であったがふと騒がしくなってきた本通りに気づく。

 なにやら誰かを追いかけているようだ。

 

 

「おいおい、ありゃ海軍だ。なんでこの町に…!?」

 

「それだけじゃねぇな。えらい騒いでる…海賊でも現れたのか…」

 

「ん?でもなんか見覚えのある姿が追いかけられてるぞ」

 

「はァ?そんな馬鹿な事…」

 

 

 壁に隠れつつも追いかけられているのがだれがを盗み見る。

 刀を振りかざしながら追いかける海兵の先には麦わら帽子をかぶった男。その隣には二つのタルを担いで追随する一角の女性。

 

 

『お前らかーーーっ!!!』

 

 

 一味トップのトラブルメーカー ルフィはともかく、勇儀に対して一体何をやっているのかと頭を抱える麦わらの一同であった。

 

 




 

・トニートニー・チョッパー
 この作品ではバッサリとカットされたが本編ではリトルガーデンで病に倒れたナミを救うために向かったドラム王国で仲間になるトナカイ。 
 ヒトヒトの実を食べてしまったがゆえに同種や人間に迫害を受けて周りを信じることが出来なくなっていたがドクター ヒルルクの尽力によりそのあたりは改善され、医者としての知識が豊富である。

 今作では勇儀の扱きによって強化されていた一味によりこれといった苦戦もなくワポルが吹き飛ばされている。
 今後ワポルが出てくることはないと思う。


・スモーカー大佐
 海軍本部大佐として“白猟”の名を有する有望株兼厄介者。
 ローグタウンについてから海賊を一度も見逃したことのなかったことに自信を持っていたが、勇儀によって見事に粉砕。さらにたしぎを攫われた(海軍視点)ことによりより一層自分が牢屋へ叩き込むと意気込んでいる。
 ちなみにではあるが強化候補の一人でもある。果たして勇儀を打ち倒せる日が来るのだろうか。

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