よもや半年放置していたにも関わらず、この作品に対してのメッセージが届くとは思わなんだ。
前回までのあらすじ
・たしぎ一味に入る(大嘘)
・歓迎されたと思ったら襲われた
・なんか強い奴が現れた
正直素直にかませ爆弾を出せば良かったと思いました。
ゾロとたしぎが『バロックワークス』の賞金稼ぎ達と戦いを繰り広げている時、他にも行動を起こしている人物がいた。
雅な着物を身に纏い、腰まである金髪がさらにその姿を美しくしている女性。他でもない海軍本部によって“剛拳”の名をつけられた星熊 勇儀その人である。
この町『ウイスキーピーク』に到着した時、盛大な歓迎を受けた麦わらの一同であったのだが、それに対して警戒心を抱いたのは勇儀とナミ、そしてゾロであった。
数多くのもてなしをされる中で適当に見繕った多少の食べ物を胃に収めた後、タイミングを合わせて抜け出して監視していた勇儀であったが、彼らが行動を起こすと同時にゾロとたしぎが動いたのに気づいて別行動に移ったのだ。
はっきり言ってしまえば船が壊されていないかの確認である。
「ふーむ、特にこれと言った問題はなさそうだねぇ・・・まぁ、私自身船大工でもないから詳しいことはわからないんだが・・・」
特にこれと言った外傷はなく、綺麗な状態のメリー号に勇儀は良かったと軽く安堵する。一応中も確認した後、再び町に戻って寝ているであろうルフィ達を起こしに行くつもりであった。だが甲板へ上り、船内への扉を開けようとしたところで勇儀は動きを止めた。
「・・・・・・やれやれ、一人でこの船に密航でもする気なのかい?生憎無許可での渡航は認められていないよ」
「あら、それは失礼したわ。あまりにもかわいらしい船だったからついつい乗ってしまったの。ごめんなさいね“剛拳”さん」
ラウンジの上に存在しているみかんの木の辺りから聞きなれない声が聞こえ、その主が姿を現した。
肩にかかるぐらいの黒髪に、肌の露出が高い衣装を身に纏った女性は勇儀に対して挑発とも取れる言い方で返した。
「・・・少しは勝手に乗り込んだことに対して反省の意志を示して欲しいものだがまぁいいさ。とりあえず...名乗りな」
「そうね。私の名前は――――」
―――――
ビビとカルーは駆ける。背後より迫りくる脅威から全力で逃げる。
目的地は街のシンボルであるサボテン岩の裏にある船。食料など必要な物資を積んでいる時間も惜しい。
船に乗り、すぐに出発しなければオフィサーエージェントに追いつかれてしまうと確信していた。
「!!見つかった・・・・・・!!カルー、急いで!」
「クエーーー!!」
故に全力で駆ける。
助けてくれた女剣士や殿を務めたMr.9。そしてイガラムや王国の人達のためにもここで立ち止まっているわけにはいかなかった。
相棒のカルガモ カルー はビビの王国内でもトップクラスの速さを担う超カルガモと呼ばれる精鋭だ。この速さが無ければビビはすでに捕らえれ、抹殺されていただろう。
「やれやれ、随分と逃げ回ってくれるものだ」
「確かにあのカルガモは大した脚力ですね。私達からここまで逃げおおせるとは」
それを追いかけるは『バロックワークス』のエージェントMr.
所々の場面で彼女等を打ち取ろうと銃を放っているが、動物としての本能で紙一重で避けていくカルーに対してマザーズデーは舌打ちを、Mr.6は素直に称賛していた。
主を乗せて逃げるカルーは当然ながら凄いことなのだが、超カルガモを追いかけれるほどの身体能力を持った二人も十分異常なのだが、それは置いておこう。
「おいMr.6。このままじゃイタチごっこだ。周りを潰すぞ」
「フフッ。了解ですよマザー」
「・・・?静かになった・・・」
鬼ごっこを続けていたビビは銃声が聞こえなくなったことで多少の安堵を抱く。が、それも数瞬だけだ。
『バロックワークス』に侵入し、そして重要そうなものからくだらないものまでの情報を多く漁り調べてきた彼女だからこその切り替えだった。
Mr.6とミス・マザーズデー。
彼らは組織の中でも掃除屋としての名が通った存在だった。
犯罪組織である以上、今回のビビのように規則を破った者には相応の処罰が下される。そしてそれを実行する者もどこの組織にも存在するが、彼らはその汚れ役に特化した幹部なのだ。
ビビたちはこの町ではまだ出会っていないが、ラッコとハゲタカが担っている任務失敗者への仕置き役である
その情報も持っていたが故にカルーにすぐさま行動するように指示を出し、自身も警戒を強めたことが幸いであった。
瞬く間に背後の建物が次々と崩壊を始めたのである。
もしあのまま動かずにいれば建物の崩壊に巻き込まれていただろう。
「んなっ!?目茶苦茶な!!」
「黙りな。お前がちょろちょろと逃げ回るからだ。こちとらさっさと済まして帰りたい。わかるか?なのに貴様らと来たら悉く邪魔をしやがって・・・さっさとやられろってんだ」
「っ・・・お断りよ!!」
頭上から聞こえる声に反応し、ビビが愛用してきた暗器を横薙ぎに振るう。
マザーズデーは振るわれた暗器を軽くいなすがそれによって発生したわずかな時間をビビは活用する。
懐から出したのは小さな玉。
それを思い切り地面へと叩きつけると玉が割れ、煙が大量に溢れ出てきた。
「ッ!煙幕か!」
「せあぁぁぁああ!!」
「っ!?」
不意打ちの煙幕からビビが起こした行動は正面突貫。
流石のマザーズデーもこれに驚いたのか、反応が遅れた。が、秘密結社が誇る始末者だ。これで仕留められるようなヘマはせず、振るわれた暗器は頬を掠める程度に終わった。
「・・・っ、一国の王女と聞いて処理は簡単と思っていたが、どうやら予想以上に肝っ玉が据わっているらしいな。今の煙幕で逃げていればよかったものを・・・」
「生憎だけど私はあなた達からなんのリスクも侵さずに逃げ切れると思っているほど幸せな頭をしていないの。あなたを倒して逃げようと思っていたけど、それも厳しいようね・・・」
「たりめーだ。短期間の戦場を経験したぐらいでウチらを消せると思ったら大違いだ。そしてあんたの逃走劇もここまでだ」
構えるマザーズデーに対してビビはカルーから降りた状態のままだ。
観念したのかとも考えたが先ほどの行動から考えるにそれはない。
そしてその答えは正しかったとすぐに理解した。
「間に合いました!」
割って入ったのはたしぎ。
あの距離から全力で駆けてきたのか、肩で息をしている。
だがたしぎも海軍では部下を率いる立場であった者。この程度で剣筋がぶれるなどというミスは起こさない。勇儀による訓練もあったのなら猶更だ。
先ほどまで戦闘していたビビを見て、特にこれと言った傷が無いことに安堵したたしぎはすぐにマザーズデーへと意識を向ける。
相対するマザーズデーは怒りを通り越して無表情へと移行していた。
「・・・・・・はぁ・・・」
「・・・ため息をつくなんて随分と余裕ですね」
「ちげーよ。萎えて来てるんだよこちとらはな・・・今日だけで何回目だ邪魔をされるのは・・・?それも同じ奴からの妨害で、それも全て標的を追い詰めているところでの邪魔だ。何だてめぇは・・・
「・・・利益や見返りなんて私は求めていません。ただ自分の中の“正義”を通すまでです」
「・・・・・・つまらん」
「ッ!」
ギィィィン
刀がぶつかり合う音が響く。
それだけでなく、マザーズデーの太刀から剣戟が繰り出され、片っ端からたしぎは撃ち落としていた。
上からは横に流し、横のは上へと衝撃を誘導する。
斜めの袈裟切りは最小限の動きで躱し、突きも同じ処理で済ませていく。
「・・・チィ!」
マザーズデーは自分の太刀筋を見切られていることに舌打ちをし、一旦大きく後ろへと下がる。
最初に相対した距離間が再び生まれ、膠着状態へと状況が移っていく。
(これほどの太刀筋・・・
(こいつ視線を外さない・・・しっかりとこっちの行動を見ていやがる。下手に責めると予期しない一撃を受けそうだ・・・が、まだまだ粗削りってところか)
数撃で互いの実力を確認した二人。
だが硬直してはいれども有利なのはマザーズデーの方である。
一対一での戦闘であればよかったのかもしれないが、たしぎの背後にはビビがいる。マザーズデーの目標はあくまでもビビ。たしぎが下手に避けるようなものならすぐにでも首を取りに行く勢いであった。
ビビ自身も下手に動くことは出来ない。なぜならマザーズデーの相棒であるMr.6の姿が見えないからだ。
今カルーに跨るなどという隙を見せれば確実に撃たれる確信がビビにはあった。
(ふむ・・・あのお嬢さんは私達が思っていた以上に高貴な精神をお持ちのようだ)
物陰からライフルを構えながら見ていたMr.6はビビの警戒心に称賛をおくる。
自分らが追っているから警戒しているのは当然であるのだが、常人であればすぐにでも逃げ出そうとしているだろう。恐怖心に勝っているからこその待機を彼女は選択しているのだ。
(ですが、悲しいですねぇ…お生憎ですが、これも仕事なのですよ)
Mr.6は嘘か誠かわからないことを考えながら、気づかれても当たりやすいように的が大きいビビの心臓を狙い、引き金に手をかける。
(さて・・・お別れです)
殺気を限りなく抑えながら、Mr.6は引き金を引いた。
彼が持っているライフルは他のと違って特別製だ。
銃口から発射された弾丸はそのままビビにも気づかれないまま彼女の心臓を捕らえ―――
「―――フッ!!」
―――たしぎの刀によって叩き切られた。
「・・・なんですと・・・?」
(・・・今の感覚は・・・?)
「あれを防いだだと・・・?チィッ!」
―――閃の技“双狼”
―――薄霧“時雨”
無音の弾丸を切られ唖然とするMr.6を他所にそこからマザーズデーが斬りかかる。
それを
先を見る目を持っているわけではない。
たしぎにとってここに刀を置けば防げるという直感で動いただけであるが、その効果は絶大だった。
速さも強さもマザーズデーの方が上であるにも関わらず先ほどとは違って対処する時間が極端に短くなっていた。
「ッ!」
それに舌打ちをするのはマザーズデー。
恐らく対応しているたしぎ本人もわかっていないだろうが、
恐らくは護衛対象を一人で護るという緊張感の中で偶然歯車がかみ合った結果であるため不安定ではあるのだろうが、それは後半の海で闊歩している猛者たちの技術。それを本能的に用いている証拠でもあり、潜在的能力があることの証明だ。
「―――メンドクセェが・・・
「?・・・――ッ!?」
だがそのまま押し切られるほど軟ではない。
持っていた刀を頭上で大きく回し、そのままの勢いで振り下ろす。
たしぎもそれに対して迎撃するように動こうとするがマザーズデーの持っている
悪寒を感じ取るも反応が遅れたことで幾度となく行われた刀同士のぶつかり合いが発生。たしぎの刀が欠けた。
「!?刀が・・・!」
「まさかこんな序盤の海で
たしぎの刀が欠けたことを視認したマザーズデーはそのままたしぎに突貫を仕掛ける。
たしぎも突然冴えた感覚を頼りに受け流しながら応戦し始めるが、動揺が隠しきれていないためか動きがほんの少しだけ鈍くなっていた。
始めは拮抗していたものの、マザーズデーが前進し始め、たしぎは一歩、また一歩と後退していく。
このままいけば背後の壁にぶつかり、逃げ道がないまま斬り伏せられてしまうだろう。
かといえど、ビビにできることと言えばたしぎから離れすぎずにMr.6の攻撃を予測するために壁へと背を預けることのみ。
足手まといとなっている現状に対して唇を嚙むことしか出来ることはなかった。