星熊童子とONE PIECE   作:〇坊主

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   「ありのままでいこう」


     作:人生はもっとニャンとかなる!
  
 
 

※11月17日 誤字修正




星熊童子とヨサクとジョニー

 

 

「できたぞおれ達の海賊旗がっ!!どうだお前ら!?」

 

 

 これがおれ達のマークだと自慢げに掲げるルフィには悪いがとても大袈裟に掲げれるものではない。

 ウソップは絵心がないと言うし、ナミはある意味芸術ではと言う始末。ゾロもある意味恐怖だなと言うほどにひどいほどの絵。歪な形の骸骨におそらく麦わら帽子であろうそのトレードマークを身につけたその海賊旗は子供が描いたと言っても受け入れられるだろう。

 ふと、これを堂々と掲げて襲ってくる海賊の姿を頭に思い浮かべてみる。

 

 襲撃で壊れた船、蹂躙して襲い来る敵を殲滅していく船員(クルー)。そして背後に描かれた“ルフィの絵(死の象徴)

 

 ・・・・・・確かに恐怖の存在だ。

 

 

「私だからはっきり言うが下手だねぇルフィ」

 

「全くだ。海賊旗はおれが描く!」

 

「ちゃんと描いてくれよウソップ」

 

「お、おう!任せろ!!」

 

 

 海賊旗を率先して描こうとするウソップに勇儀が牽制する。大方予測は出来るがこれを機に自分の海賊旗でも描こうとしていたのではないだろうか。

 ちなみにだがウソップと勇儀の人間関係は悪くはない。だがウソップは勇儀の事を多少怖がっていた。それはウソップが加入して酒盛りが終わった時の会話が発端だ。

 

 

 

 

 

「ウソップ。私は船長(ルフィ)が決めたことに思うところはないが、念のために言っておくよ。私の前で嘘をつくのは自重することだね。言ってもいいが・・・相応の覚悟を持って貰う」

 

「・・・も、もし言ってしまったら?」

 

「そうさねぇ・・・・・・あそこの海に立っている岩があるじゃろ?」

 

 

 勇儀が指さす先には出っ張った岩が見える。ウソップもそれを確認して次の言葉を待った。

 

 

「これを、こうじゃ」

 

 

  ドゴォン!

 

 

 そんな音を立てながら岩はまるで砲撃を受けたように吹き飛んだ。

 勇儀が行ったのは少し本気で打ち込んだ正拳突きだ。始めに孤島で行っていたものと同じモノである。それを己の身一つで起こした勇儀にウソップは唖然。それ以降勇儀の前で嘘はつかないと心に決めたウソップであった。

 

 その光景をみたルフィやゾロに原理を問われたり組み手をしたりとすることになったのだがそれは今は関係ない話だ。

 

 

 

 

 

 

 そんなこともあり、ウソップは勇儀の前では嘘はつかない。

 勇儀自身も自分の前で言われなければ特に思うこともないのでそれ以上険悪な仲になってはいない。

 

 ウソップの絵のセンスのお陰で帆が芸術作品になる事態は避けられ、“ゴーイング・メリー号”は“海賊船 ゴーイング・メリー号”へと生まれ変わったのであった。

 

 

「はーっ疲れた!」

 

 

 帆に描き終えて一休みしていた4人だったが、ルフィが突然大砲の練習をし始めた。しかしうまくいかないのか的外れな所に飛んでいく。ウソップが代わりに砲撃するとなんと一発で岩山に直撃させて見せたのだ。これによりウソップは“狙撃手”のポジションに収まることになった。

 

 

 

 

 

「 海賊共ォっ!出てきやがれ!!てめぇら全員ブッ殺してやる!!! 」

 

「「「「!?」」」」

 

「何だ!?」

 

 

 ラウンジで会話をしていた所に突如船に聞きなれない声が入ってきた。声でわかるほどの怒りを持ってこの船に乗り込んできたその存在は近くのタルなどを壊しているのだろう。粉砕音が響いている。

 

 

「なんだいあんたは?」

 

 

 勇儀は声の主を確かめるべく扉を開けて甲板へと戻た。

 声の主は大層ご立腹の様子でこちらに切りかかってくるのだが、勇儀は貰ったばかりの船を傷つけないように立ち回る。

 

 

「名もねぇ海賊如きが・・・てめぇらは断じて許さん。おれの相棒を殺す気かァ!!」

 

「あんたの相棒を私たちがどうこうした記憶はないが・・・船を壊すな!」

 

 

 男が刀を振り下ろす前に勇儀はチョップで男の頭を叩き落とす。

 勢い余って少し加減が出来ていなかったこともあり、男は立ち上がれなかった。

 

 

「終わったのか?・・・ん?お前っ!ジョニーじゃねぇか!」

 

「えっ・・・えっ!?ゾ、ゾロのアニキ!!?」

 

「?ゾロの知り合いかい?」

 

 

 船を襲撃してきたグラサンの男。どうやらゾロと面識があるらしい。ヨサクと呼ばれた男もいるようなのだが病気にかかって倒れたとのこと。

 

 

「こいつが倒れたのは数日前。突然青ざめて気絶を繰り返し始めたんだ!原因はまったくわからねぇ。しまいにゃ歯も抜けるわ古傷が開いて血が噴き出すわで、もうおれァどうしていいのかわからねぇもんで、一先ず岩山(・・)で安静を保っていた所で・・・この船から砲弾が飛んで来たんです」

 

「「!!」」

 

「あー・・・」

 

 

 先ほどの怒りのわけを聞いて納得する勇儀とすぐに頭を下げるルフィとウソップ。どう見ても先ほどルフィ達が行った砲撃の練習が原因だ。

 ヨサクと呼ばれた男の優しい言葉でルフィとウソップは心の中が罪悪感で一杯になった。

 

 

「賞金稼ぎの“ヨサクとジョニー”っつたらよ・・・この東の海(イーストブルー)でも時にはビビる海賊もいるくらいの名になった。・・・そんな『賞金稼ぎ』のコンビを長年共にやってきた大切な相棒だぜ・・・!アニキ、こいつ・・・・・・死んじまうのかなぁ・・・!!」

 

「・・・ルフィ!ウソップ!キッチンにライムあったわよね?今すぐ絞って持ってきなさい!」

 

「「ラ・・・了解(ラジャー)っ!!」」

 

「ナミ?」

 

「ライム・・・・・・?」

 

「突然なにを・・・?」

 

 

 ナミがルフィ達に指示したのはライムを絞って持ってこいとのこと。

 それに関してジョニーとゾロ、勇儀は頭を傾げるが理由をすぐに教えてもらった。

 

  壊血病

 

 それがこの病気の名前らしい。

 一昔前までは原因不明の難病だったらしいのだが、最近になって原因が発覚したとのこと。

 

 

「この病気の原因は植物性の栄養不足によって引き起こされるものよ。昔は保存のきかない新鮮な野菜や果物なんかを載せてなかったから・・・でも保存技術が進化している今ではそこまで絶望的な病気ではないわ。ちゃんと栄養補給して安静にしてれば治るわよ」

 

「本当ですか姐さんっ!」

「すげーなお前、医者みてぇだよ」

「よく知ってるな」

「とてもありがたい豆知識だねぇ」

「おれは最初からお前はやる女だと思ってたよ」

 

「船旅するならこれぐらい知ってろ!!あんたたちほんといつか死ぬわよ!!」

 

「うおおっ!漲るっ!!栄養全開復活だーっ!!」

「おぉお!やったぜ相棒ーっ!!」

 

「そんなに早く治るかっ!安静にしてろって言ったでしょ!!」

 

 

 船旅をする人間だというのに基礎知識が欠けている面々を怒鳴るナミは突然復活し、喜びだした男にツッコミを入れていく。

 彼女はこの船の貴重なツッコミ役として定着した瞬間だ。

 

 

「助けていただき感謝します。申し遅れました。おれの名はジョニー」

 

「あっしはヨサク!ゾロのアニキとはかつての賞金稼ぎの同志です!」

 

「「どうぞお見知りおきを!」」

 

 

 復活したヨサクと共に改めて自己紹介をする二人であったが流石にすぐに回復するはずもなく、ヨサクは再び血を吹いて倒れた。自分たちの身に起らなかったことが幸いだが、船旅からは切っても切れないものがあると一同が認識したいい機会だった。

 

 

「長い船旅には外敵だけじゃなくてこんな落とし穴もあるってことか・・・難しいねぇ」

 

「あいつだって俺達に遭わなきゃ死んでた訳だしな・・・」

 

「そうね。船上の限られた食材で長旅の栄養配分を考えられる“海のコック”・・・これが必要になってくるわ」

 

「よく考えれば海賊だろうが海軍だろうが、海の上では必要不可欠な『能力』ってわけだ」

 

「決まりだ!次は“海のコック”を探そう!船で美味いもん食えるようになるし、悪い事なんてないしな!」

 

 

「「「「おう!」」」」

 

 

 ヨサクとジョニーの教訓を生かして次に狙う仲間は料理人(コック)

 ルフィはただ美味いものを食べたいだけだろうが、何年もの長い期間旅をするのにコックがいないと食材がすぐに尽きてしまう。管理能力に長け、さらにバランス配分を考えた料理を作れる人材は必要不可欠だ。誰もこの判断に異議を唱える人間はいなかった。

 

 

「アニキアニキ!コックを探しに行くんすか?」

 

「なんだ?なにかあるのかジョニー」

 

 

 手を上げてアピールをするジョニーにゾロは何かと返す。ジョニーは一同の話を聞いて思い当たるところがあるようだ。

 

 その場所は“海上レストラン”

 

 響きだけでも美味しい料理が提供されてそうな名前に期待の声を上げた。

 

 

「“偉大なる航路(グランドライン)”の傍に位置する場所に店を構える海上レストラン。当然やべぇ奴らの出入りもあるから気をつけねぇといけねぇ位置にあるけどもコックを探すにはもってこいの場所だ。今から船を進めていけば2・3日程で着くはず。それにアニキがずっと探していた“鷹の目の男(・・・・・)”も現れたことがあるって話ですぜ」

 

「!・・・・・・」

 

「よかったら案内しますぜ!」

 

「たのむーーっ!!」

 

 

 ジョニーの提案に賛成するルフィ達。

 一方ゾロはジョニーが話した鷹の目の男に会える可能性に湧き上がる思いを感じていた。

 

 

 

 

 

  ◇

 

 

 

 

 

「着きやした!海上レストラン!!ゾロの兄貴!ルフィの兄貴!ウソップの兄貴!ナミの兄貴!勇儀の姉御!!」

 

「・・・なんで私はアニキなのよ・・・」

「ん?」

「おおっ!」

「これはこれは・・・」

「ああっ!」

 

 

 ルフィ一同が到着したのは“海上レストラン『バラティエ』”

 

 レストランに相応しい大きさを確保した船であるが、メリーの羊の先頭のような魚の頭を模したシンボルが目立つ。

 尾の部分や入口の部分を見ての予想であるが、あの部分が開くことで外での食事を楽しめる作りになっているのだろう。まさにレストランに相応しい。

 

 

「どーっすかみなさんっ!これが海上レストラン『バラティエ』です!」

 

「でっけー魚っ!!」

「すっげー!!」

「ファンキーだなぁおい!」

 

「・・・ん?」

 

 

 外観を見て様々な反応を見せる麦わらの一味の面々であるが、メリー号の背後から別の帆船が近づいてきた。

 帆を見るからに明らかに海賊の船ではないことがわかる。それどころか明らかに海軍のマークが描かれていた。

 

 

「か・・・海軍の船!!」

 

「いつの間に・・・!」

 

 

 メリー号の隣に海軍の船が並ぶ。当然海賊旗を掲げている自分たちの船に気づかない海軍でもなく、中から人が出てきた。どうやら海賊を視認して即砲撃ということはなさそうだ。

 

 

「この辺じゃ見かけない海賊旗だな・・・おれは海軍本部大尉“鉄拳のフルボディ”。お前らの船長はどいつだ?名乗って見ろ」

 

「おれが船長のルフィ。海賊旗はおととい作ったばかりだ!」

 

「お・・・おとといきやがれっ!」

「ぶふっ!それいけるぜ相棒っ!」

 

「おれはウソップだ」

 

 

 名乗るルフィにそれに対して洒落を言うヨサクとジョニー。そしてさり気なく名乗っていくウソップ。

 仮にも向こうは海軍の大尉なのだが、こちらはそんなことお構いなしにマイペース。フルボディは何事も無かったかのようにスルーしていく。

 

 

「お前が船長か。男5人に女が2人・・・少人数のくせに大層な船を持ちやがる」

 

「おうさ。うらやましいのかい?」

 

「バカ言え角の女。いくらおれでもその程度じゃ嫉妬心すら起きねぇよ・・・・・・なんで角生えてんだ?」

 

「女の身体について躊躇いもなく聞くのは男としてどうかと思うよ?」

 

「・・・そりゃ悪かった。ついつい思ったことが口に出ちまったらしい。・・・そしてそこの二人組は見たことあるな・・・賞金稼ぎだったか。何度か海軍の施設に出入りしていたな・・・ついに海賊に捕まっちまったのか?」

 

 

 フルボディという大尉はヨサクとジョニーのユニットの存在を知っているらしく、海賊の船に乗っていることが理解できないらしい。勇儀の角のことを思考の外へと放り投げ、二人に海賊に捕まったのかと皮肉気に聞くとヨサクとジョニーが笑いながら違うと返して世間知らずを黙らせるべく愛刀を以て躍り出る。それを鎮圧されるのに20秒はかからなかった。

 

 

「「か・・・か・・・紙一重か・・・」」

 

「お前らすげぇ弱ぇな」

 

「い・・・いやなかなかやるぜあいつ」

 

「さすがのおれ達も紙一重だ」

 

「いや、何してんだお前ら」

 

 

 あまりのあっけなさにルフィ達は呆れ、フルボディもくだらなさそうな表情を浮かべている。

 険悪なのかわからない空気になっていたのだが、海軍の船から聞こえる女の声がそれを変えた。

 

 どうやら海軍の大尉も今は任務中ではなく、食事を楽しみに来ただけらしい。ご丁寧に次は気をつけろと念を押してきた。

 

 

「!・・・ジョニー。これなに?」

 

「ん?ああ・・・そいつぁこの海にいる賞金首のリストですよナミの姉貴。そいつらブッ殺して海軍に渡せばリストの下に載ってる額の金が手に入るんす。多少の危険はあれどもボロい商売でしょ?それがどうかしたんですか?」

 

「・・・ナミ。そいつになにか思い入れでもあるのかい?」

 

「・・・ッ!う、ううん!何でもないわ」

 

 

 ジョニー達が持っていた賞金首のリストを手に取り、固まったナミに勇儀は声をかける。一枚のリストを握り占めていることからその人物に何らかの思いいれがあることが予想出来た。

 

 

(海賊“ノコギリのアーロン”懸賞金 2000万ベリーね・・・)

 

 

 ウソップのような人間はいるが明らかにギザギザした鼻と人間の肌とは異なる色合いの男はただの人間ではない。ナミが言葉を出さずにリストを握りしめるのにも訳があるのだろうと勇儀は追及するのはやめた。

 

 

「・・・ねぇ、勇儀」

 

 

 追及することを止めた勇儀にナミが問いかける。

 

 

「あんたは・・・この海賊をどう思う?」

 

「どう思うと言われてもねぇ・・・何とも思わないさ。戦ったことは愚か会ったこともないんだ。実物を見てないのに嫌悪を抱くなんてことは出来ないし、好意を抱くこともないさ・・・・・・(あんた的にそいつになにか思い入れがあるんだね)」

 

「・・・ッ!」

 

 

 しまったという反応を見せるナミだが、勇儀は頼まれてもないのに助け船を出す気はない。彼女的にはとても重要な案件なのかもしれないが、勇儀にとっては所謂他人事だからだ。

 

 

「ナミがどう思っているのかは知らないけど、この東の海(イーストブルー)でその懸賞金を背負っているその男と戦ってみたいねぇ。ただの人間ではなさそうだし、どれだけ強いのか気になるね」

 

「・・・勝てると思ってるの?」

 

「当然さ。私を誰だと思ってるんだい?」

 

 

 勇儀は確信を持って言うとナミは何も言わなくなった。

 クロネコ海賊団の船長を一人で降した実力を知っており、“赤髪”と戦ったことがあるという勇儀の話から真っ向から否定するのも無理があったからだろう。

 

 周りの事など気にも留めずに勇儀とナミは無言を貫く。

 目的であった海上レストランの屋上が何故か大破し、船長であるルフィが船から消えていたことに二人が気づくのはもう少し先になるのだった。

 


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