楽天家な忍者 作:茶釜
『……いいか、お前にはまだ儂の力のすべてを使いこなすことは出来ん』
「うんうん!」
『だから、少しずつ馴染ませるからな』
「ありがとうだってばよ!でもあれだからな?力なんてかしてくれなくてもいいんだぞ?お前がいてくれるだけでさ」
『……儂が勝手にすることだ。甘んじて受けろ』
「おう!」
九喇嘛が認めてくれた。それだけで嬉しかった。そしてこいつは俺に力を貸してくれるらしい。
まあ、まだまだ俺が弱っちいからほんの少しだけって言われたけど……
取り敢えず言われたとおりに夜に家から抜けだして誰もいない森のなかにいく。
あまり人目につくのはよくないらしいし、万が一俺が暴走した時に被害が出ないようにだそうだ。なんだかんだ言って九喇嘛は俺のことを理解ってくれている。里に迷惑を掛けたくないって事を考えて提案してくれたのだろう。
『では行くぞ』
「ばっちこいってばよ!」
九喇嘛に認められてからは九喇嘛がいる場所に行かなくてもこうやって話が出来る。まあ、あんまりやると九喇嘛が鬱陶しがるから限られた時にしかしないつもりだ。例えば鍛錬の時とかしか……
ブゥンと音を立てて身体に紅いチャクラが纏ったのが理解った。
凄い力を感じる……視線を後ろに移すと一本だけ尻尾のようなものが生えていた。
「ははは、お揃いだな。九喇嘛」
『……そんな事はどうでもいい。それよりも、どうだ?』
「ああ、やっぱお前って凄いんだな。まだまだ未熟な俺でも凄い力を感じるってばよ」
『……そうか』
両手を上に掲げ紅いチャクラを見る。まるで生きているかのように脈動しているそれは衣のように俺の身体を覆っている。顔にかかっているのかはわからないけれど、独りじゃないって事を実感できる。
「これが、俺が目指す力かぁ」
『……なんだ?』
俺のつぶやきに九喇嘛が反応した。
思わず口に出てしまった言葉。俺がこれから目指すであろう事。なんだか気恥ずかしくなりながらも九喇嘛へと語る。
「九喇嘛、約束する。俺ってば相棒のお前に肩を並べられるくらいに強くなる。だから待っていてくれないか?」
『…………ふん、お前では一生無理だ』
「へ!やってやるってばよ!」
俺は空に輝く月を見て声高々に誓った。
まだまだ先は見えないけど、こうして俺の隣には最高の相棒がいる。
こいつと一緒なら俺はなんだってやれるってばよ!
『っ!!ナルト!離れろ!』
突然九喇嘛の叫びが頭の中に響き、それと同時に一斉に凄い数の忍術が俺めがけて迫ってきた。
「な!!」
なんとか躱そうとするけどいきなりのことで反応が遅れてしまい、火遁の術が少しだけ当たってしまう。
「あれ?痛くない」
でも特にダメージはなかった。恐らくはこの九喇嘛の力のおかげなのだろう。守ってくれてサンキューな。九喇嘛。
『また来るぞ』
俺は術を放ってくる人。木の葉の額当てをした大人たちへと視線を向ける。
ああ、あの目だ。俺に恐怖を抱いて迫害する大人たちの目。憎悪の感情をぶつけているのがわかる。
そうか、この九喇嘛の力に驚いて集まっちゃったのか……まあしょうが無い。
「全員、殺す気でかかれ。あの様子から見てまだ封印は解けきってはいないようだ。今ならまだやれる!」
面を被った忍者がそう指示を出した。
流石に殺されるのは嫌だなぁ……
「くらえ!!」
今度は一斉にクナイや手裏剣が飛んで来る。あまりの速さに俺自身は反応できずに九喇嘛の衣が迎撃してくれた。
でも、流石に全部を捌くのにそれでは無理があるようで。いくつかのクナイが俺の身体に当たる。
まあ、九喇嘛のおかげで俺自身の身体に刺さってはいなかった。
『ナルト!気を抜くな!』
「へ?」
突然、背中に刺さっていたクナイが爆発した。
鋭い痛みが身体を走り吹き飛ばされる。ああ、そういえば見たことあるってばよ。確か起爆札って言ったっけ……
「がはっ!!」
地面に落ち、思わず声を上げてしまう。
衝撃まではこの衣は吸収できないのか……まあ贅沢は言えないな……
『クッ!ナルト!ちょっとキツイかも知れんが我慢しろ!』
「………」
俺の腕を纏っている衣が一人でに動き出す。
それを俺は逆の腕で抑えた。
『何故だ!ナルト!』
ダメだってばよ九喇嘛。ここで手を出しちゃダメなんだってばよ。
痛みでどうにかなりそうな身体に鞭を打ち、立ち上がる。忍者たちは警戒しているのだろう。忍具を構えて此方を睨みつけいる。
『こいつらは敵だ!倒すべき敵だ!』
違うんだってばよ……
ただ、ここにいる人達はみんな怖がっているだけなんだ……
「はぁ……はぁ……」
いつの間にか爺ちゃんが大人たちに混じって此方へと視線を向けている。
いつも着ている火影の服じゃなくて戦うための忍び装束……
爺ちゃんもまた怖がってるんだろう……
「……ごめん…な……」
「ナル…ト?」
一歩踏み出して爺ちゃんに謝る。
怖い思いしちまったんだろ?俺のせいで。俺の中にいる九喇嘛の力が怖いんだろう?
「クッ!!」
クナイが迫ってくる。
避けようにも身体が上手く動かない。こんな小さな身体にはさっきの起爆札のダメージはすさまじいみたいだ。
「攻撃をやめろ!」
「さ、三代目。しかし……」
「はぁ……はぁ……」
ごめんな。ごめんな……
「…怖い思い…させちまって……ごめんな」
「っ!!?」
『何故だ!ナルト!何故そこまでこいつらのことを!』
言ったろ?九喇嘛。
どっちが欠けてもダメなんだって。俺はいつかお前を皆に認めさせてやりたいんだ……
お前の力は無闇に人を傷つけていいものじゃない……今お前がここの皆を殺しちまったら、もう後には引けなくなるんだってばよ……
『ナルト!!』
だから、我慢だ。耐えて、耐えて、耐えて……いつか認めてもらおうぜ。
「なあ……九喇嘛……」
『ナルト!!』
悪かったな、こんな事を強要しちまって……俺、もうちょっと強くなるから……
皆が認めてくれるくらいに、強くなるから……
意識が薄れているのが解る。
なあ九喇嘛、俺ってば、お前に並び立てるかな……
『…….ナルト……』
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衝撃であった。突如感じた莫大なチャクラの力。以前にも感じた九尾の力……
まさか、ナルトの封印が解けてしまったのかと思い、急いで現場に向かった。
そこにいたのは暗部や上忍の攻撃で傷ついた紅いチャクラを纏ったナルトの姿であった。
凶暴な目つきに八重歯が伸びている。眼の色も紅く染まり、今にも全てを破壊しそうな危うさがあった……
だが、そうではなかった。ナルトは儂に気づくと、少しだけ近付いて謝ったのだ……
――怖い思いさせちまってごめんな
ナルトがそう言うと紅い衣が霧散し、地面に倒れこんだ……
ナルト、お主まさか。九尾の力を……
いや、まだ早急過ぎる。今はナルトを殺さんとしている者達を止めねば……
お主達には見えなかったのか?必死で攻撃しないようにしていたナルトの姿を……
ナルトがお主達をどう見ているのかを理解しているのか?
迫害を受けようとも、お主達を仲間と見ていると気付かないのか?
この子は、心優しい子だ。九尾に飲まれることも無いだろう。
火の意志を継いで立派な忍びになってくれる筈だ……
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