楽天家な忍者   作:茶釜

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「しゅっぱーっつ!!」

 

 

 木の葉の門をくぐり、ナルトは大声を上げた。晴れ渡る空に響いたその声に周囲の人間は何事かと視線をナルトに向けたが、すぐにその視線をそらし、そそくさと歩を進める速度を早めて離れていく。

 紅はその様子に、恐らくナルトと関わりを持っていないのであれば自分も同じ事をしていると感じ、少し罪悪感に近いものを感じた。

 

 

「な、ナルトくん……」

 

「………?」

 

 

 ヒナタは周囲の人達のことには気づかずに、ただ注目をあびそうなナルトの行動に顔を赤らめていただけであったが、シノは若干の違和感を感じていた。

 

 子供たちにとってナルトに特別な嫌悪感などはない。親がいない事と、自身の親が関わらせようとしていないといったところだ。その親達の行動の理由も知りはしないのだから、同じ班員としてはその違和感を不快に感じることはしかたのないことだろう……

 

 

「本当にこんなガキで大丈夫なのかよぉ」

 

「ええ、まあ、あの子たちも一端の忍者ではあるので大丈夫ですよ」

 

 

 異様にはしゃいでいるナルトにタズナも不安に感じるのは無理も無い。見た目はイタズラ好きそうな子供なのだから……

 話しかけられた紅もため息を吐いてしまうほどだ。

 

 

「それならいいがよぉ……」

 

 

 

 

 

 

 ◇

 さて、ここまでは木の葉の里前での出来事ではあるが、実はある所でも動きがあった。

 

 火の国の端、そして水の国の端、どちらも波の国に近い場所にて修行をしていたナルトの影分身だ。

 彼らは珍しく一箇所に集まり、壮大なじゃんけん大会を開催している。

 

 参加人数は6人。同一人物であるため、思考回路が皆同じなことを考えれば中々に勝者が決まらないのは仕方のないことだろう。

 既に2人敗者となった者がいるが、客観的に見てみれば同じ顔をした少年が6人集まって騒いでいるのだから異様な光景になるだろう……

 

 とまあ、この大会が開催された理由であるが、特に重要な事でもない故にあえて記述する必要もないだろうが、あえて言わせてもらおう。

 ナルトは初めてのCランク任務であり護衛任務ということでその不確定要素を排するという保険のために影分身を一人任務に参加させようと、じゃんけん大会を開かせ、任務に参加させる影分身を決めているのだ。

 

 各地に散らばる影分身は普段ナルトが作り出す影分身とは訳が違う。本来であれば影分身はある程度の衝撃があればすぐに消えてしまう。

 しかし、それでは厳しい修行をこなせないとナルトがチャクラに寄るゴリ押しという、ある意味母親からの遺伝的な方法で生み出した影分身。

 消える程度の衝撃は本体のナルトが気を失う程度の衝撃が必要である影分身。つまり、実際に長期戦を戦うことが出来る影分身なのだ。この影分身が参加すると言う事は即ちナルトがもう一人参加することと同義である。

 

 たかがCランク任務なのだ。そんな必要はない。決して無いのだ。

 

 

 

 

 

 

 それが本当にCランク任務であるのならば……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

「……っ」

 

「……」

 

 

 波の国へと向かう道中、ナルトとシノがその歩を止めた。それに釣られ他の3人も足を止めたが、シノもナルトも何も言わずにその歩を進めた為、再度歩き始めた。

 

 

「(2人……先回りしたようだ)」

 

「(わかってる。並の山賊じゃないってばよ。他国の忍者って所か)」

 

 

 2人が小声で会話しているのを紅だけが聞き取った。

 そう言われてみれば自分たちを何かが観察している事が解った。

 そこまで隠遁術が上手いというわけではないが、驚くのは2人の気配察知能力だ。

 

 シノは蟲達がチャクラを感じ取れるため、その違和感からだと理解できるが、ナルトはそういった特殊能力があると聞いたこともない紅に、気配察知能力がずば抜けてると勘違いされてしまった。

 実際には九喇嘛との修行の副産物で、九喇嘛が感じる"悪意"と言った物を持った存在を察知できるのだ。それがナルトに向けてのことであれば尚更補足できるといったもの……

 

 既に気配を察しられてるとは露とも知らない忍者たちが水たまりに化けている所を通り過ぎる際に紅が思わず顔を手で覆ってしまう。

 気配を消すのは上手いが、何故こうも、間抜けなのだと嘆きたくなった。

 

 ここ数日雨の降ってない火の国において水たまりなんて出来るわけないのだ。なのに水たまりなどできていれば怪しすぎるのだ。

 しかも他の地面が濡れていない所から見ても間抜けすぎる……

 

 流石に刺客としてはおざなりすぎるとナルトは判断し、丁度全員が通りすぎたと同時に反転し、水たまりから姿を表した忍者をチャクラ刀で斬りつけた。

 

 

「え?」

 

「む?」

 

 

 恐らくこの場において状況を理解できていないのはヒナタとタズナの二名だけだろう。

 

 

「な、に……」

 

「く……」

 

 

 雷遁チャクラを纏った刀身で斬りつけられ、身体の自由が奪われただけでなく、意識すら奪われ地面に倒れ伏す忍者たちを一瞥した後、ナルトは「先を急ぐってばよ」とだけ告げ、その歩を進めた。

 

 

「……待ちなさい。流石に忍が襲ってきたことは看過できないわ」

 

 

 しかし、紅の言葉にナルトは歩を止め、首を傾げた後にポンと手を叩き納得したかのように気絶した忍達へと近寄った。

 そして、倒れ伏す2人を覗き込んでみる。

 

 その様子を見るヒナタは呆然とするばかり。シノもまたナルトの動き、というよりは抜刀と納刀が全く見えずに唖然としている。

 タズナは一人、冷や汗を流しながらその光景をみていた……




因みにナルトの得意系統は風ですが、本作品のナルトは雷と水も得意です。
理由としましては、雷はミナト、水はクシナが得意としているため(作者の勝手な設定)、ナルトへとチャクラの使い方というより動かし方を直接実践しておいて、ナルトにも十全に使えるようになったと考えました。

因みにミナトは火影ってことを考えてどの系統もある程度出来ると考えております。なかでも風と雷は得意(そう)ですね。

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