楽天家な忍者 作:茶釜
下忍選抜演習も終わり、紅を含め3人の上忍は合格を出した班員の名簿を眺めながら話し合っていた。
内容は自身の班の下忍について。最初に話し始めたアスマは当然と言わんばかりに猪鹿蝶の3人が連携してきたから合格を言い渡したと告げると、自分はこれまでだと言わんばかりに紅へと視線を向ける。
紅もそんなものだろうとため息を吐き、二人に向け今日あった演習について話し始めた。
「まず、カカシの忠告もあったから小手調べに本気で3人に幻術をかけたわ」
「おいおい。流石に厳しくないか?」
「いや、確かに幻術は3人にかかったのだけど、ナルトが直ぐに解いたわ」
「ほう?」
紅の言葉に思わずアスマが食いついた。カカシが紅へと告げた内容も気になったが、木の葉でもトップクラスの紅の幻術を短時間で解いたというナルトに興味を示したのだ。
カカシは少し気だるそうにしているが別段驚くといった反応は見せなかった。若干気に障った紅だが演習の話を続ける。
「幻術を解いたナルトが他の2人……シノとヒナタを連れて姿を消したわ。それから暫く全く気配を察することが出来ない程の隠遁術を見せてくれたわ」
「紅に気づかせないとはな。3人共隠遁術のレベルが高いということか……」
「……どうかしらね」
演習中、あの3人の連携を見た所、姿を消している間に作戦を練っていたのだと思われる。それはまだいいのだが、問題はあの奇襲のタイミングだった。
いきなり現れたのだ。何の前兆もなく3人共現れたのは不可解以外の何物ではなかった。
「とまあ、その後、3人で奇襲かけてきたのよ。連携はしてたからどの程度行えてるか確かめるために応戦したけど、結局影分身したナルトに捕まって鈴を取られちゃったわけ」
「おいおい、影分身って……あいつそんなもの覚えてるのかよ」
「しかも、あの熟練度は異常ね」
思い出すのは演習の最後。二つしか無い鈴を他の2人に渡した後、何処からとも無く取り出したナルトの姿。
唖然としてたけど、合格かどうか聞いてきたので、連携も取れていたことを告げて3人に合格を言い渡したのだが、結局あの3つ目の鈴はナルトが作り出した影分身だったらしい。終わった瞬間に両手で潰して消してみせた所に若干イラ付きを覚えた紅だったが、合格要素は十分に達していたため、特に何も言わずに解散した。
紅は私のところはこんな所と告げ、カカシへと視線を向けた。
「ちょっと待て。本当にそれだけで終わったのか?」
「どういう意味よ、カカシ」
しかし、カカシは紅の話に思うところがあったのか、視線に対してそう返した。
「いや……ほら、ナルトはあれとか使わなかったのか?こう、四代目火影のあの術とか」
「はあ?」
おかしいな、と呟き頭をかくカカシは納得出来ないような顔で自分たちのところの演習について話しだした。
「最初はキバが単独で突っ込んできて俺が返り討ちにしたんだけど、途中からサスケがキバをサポートしだしてそのサスケの指示でサクラも参加して連携し始めたからギリギリの合格を出した」
「うちはサスケが起点になったってことか」
「まあ、起点になった理由は馬鹿らしいことだったが、少なからずチームプレイをしたってことを評価してだな。んで、流石にサスケを任されてその実力を知らないのは問題と思ってな。他の2人を帰らせてちょっと一対一で模擬戦したんだよ」
「模擬戦って……」
上忍と下忍の模擬戦など聞いたことがない。それも演習後にいきなりするなど前代未聞のことだろう。
いや、別段行うことに問題はないのだが、カカシの様子から察するにそれだけで済んでいないと言う事が解る。
「それで、サスケになぁ。それはもう驚かされたわ。写輪眼いきなり開眼させてるわ、豪火球の術放ってくるわ、影分身使って死角を作ってから四代目火影の術、螺旋丸を放ってくるわ……」
「は?」
「おいおいおい、一体どういうことだ?写輪眼を開眼させてるなんざ聞いてないぞ。それに螺旋丸って……」
「ああ。俺も嫌な予感がして写輪眼を先に使っておいたからなんとかなったが……凄く疲れる模擬戦だった。ある意味ガイの奴よりしんどかったな」
「……サスケはどうして螺旋丸を覚えてたの?」
紅は思わず問いかけてしまった。それにはある考えがあっての事だったが、できれば外れていて欲しいと思いつつカカシへと視線を向ける。
「……ナルトが教えたんだよ」
部屋に紅の深い深い溜息が響き渡った。
短いけど許してナス!