楽天家な忍者   作:茶釜

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紅視点


-4-

 ――それで、話って何よ、カカシ

 

 ――ああ、今年度の担当下忍についての話だ

 

 

 アカデミーの上忍達が待つ教室にて、昨日カカシに告げられた事にため息を吐く。

 今回私が担当する下忍、油女シノ、うずまきナルト、日向ヒナタの3人。総合成績で見るとカカシ班と並んでトップになっている。下忍の班編成は基本的に数班だけ偏り過ぎない程度に偏らせる傾向にある。うずまきナルトは実技の成績はトップ、座学はトップではないものの上位に入っている。総合的に見ればうちはサスケと並んでトップの成績だ。油女シノは座学の成績は平均気味で、実技は少し劣るというものの、一族の特性上普通のアカデミー生よりは戦闘能力が高いとみられる。日向ヒナタは座学は上位で実技も柔拳を使えるが、性格的に積極的に動けないため実技の成績は低い。

 

 後はアスマ班に奈良シカマル、山中いの、秋道チョウジの猪鹿蝶を組み合わせた班。私とカカシ班を合わせて3班に偏った構成となった。

 

 憂鬱な気分だ。うずまきナルト……九尾が封印された子供。正直私に面倒を見れる自信がない。

 もし九尾が暴走でもしたら私一人で止めることなんて出来るはずがない。一体火影様は何を思って私に任せたのだろうか……今でもカカシのほうが適任だと思っている。

 

 確かにうちはサスケの面倒を見ることが出来るのはカカシくらいだろう。でもナルトの方を優先して抑えるべきだと思う。流石にナルトとサスケを同じ班に組み込むことが出来ないとしてもある程度ゴリ押しでもいいから纏めておいたほうがいい。

 

 でも、それが出来ないと言われた時は自分の耳を疑った。

 

 

 ――ナルト、あいつ俺より強いかもしれないからなぁ

 

 

 冗談としか思えない。上忍でも特別戦闘能力の高いカカシにそう言わせるなんてあり得ない。アカデミーの成績を見てもそこまでとは到底思えないのだ。

 余計に私の手に負えないと反論したけど、サスケとナルトを同じ班にしてしまうと周囲へ被害が出てしまう可能性……ではなく確実に引き起こされるとのことらしい。

 

 ライバル同士切磋琢磨をするのは良いのだけど、やり過ぎる事が目に見えているため同じ班に編成出来ないとのことだ。

 

 ならば私がサスケの面倒をみればいいと思ったのだけど、これもそうは行かない。サスケはうちは一族最後の生き残りであり、その血を狙っている忍は少なからずいる。だから早急にサスケに力をつけさせる必要があるのだ。写輪眼を持つカカシ以外にサスケを修行させられるものは中々いないだろう。更にカカシならば狙われても守り通すことが出来るとの考えもあるそうだ。

 ならナルトは狙われないのかと言ってみるも、既にナルトは十分に強いから大丈夫だと目をそらされながら言われた。

 

 まあ、どんなことを言ってもこの班編成を考えたのは火影様だ。それを私に覆すことなど出来ない。それにもしカカシの言っていることが本当であれば少しだけ興味がある。

 九尾の封印が解けなければ普通の忍なのだ。流石に九尾襲来事件を体験した私が恨みを持ってないといえば嘘になる。しかし、それをナルトにぶつけるのは筋違いなのも事実なのだ。

 

 許せることではない。でも責めることも出来なかった。だから不干渉を貫いていたけど、担当上忍になったのだ。それならばとことん踏み込んで行くのも悪くはない。

 

 まずは明日の演習で実力を見定めよう。カカシ並みに動けるのであれば最初から本気で行かなければ行かないだろう。それに人柄もある程度見定めるはずだ。あの演習でチームプレイを自覚できるのであれば少なくとも自分勝手では無かったと判明するのだから……

 

 

「紅、お前の番だぞ」

 

 

 アスマに声をかけられ、席を立つ。

 私は8班、アスマは10班だからもう少しで声がかかるだろう。

 カカシは7班の担当だったはずだけど、まだ見かけていない。予想はつくけど一応アスマに聞いてみる。

 

 

「カカシはいつもの?」

 

「ああ、遅刻だ」

 

 

 やれやれ、昨日とんでもない爆弾を放り込んできたことに文句を言いたい気分だったけど相変わらずの遅刻ぶりに馬鹿らしくなってきた。

 私はもう一度ため息を吐いて教室の出口へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇

 下忍達の待つ教室から3人を連れ出し、アカデミーの外にある適当な場所にて話し合う。

 

 

「まずは自己紹介してもらうわ。成績なんかは一応把握しているけど改めて本人から頼むわ」

 

 

 3人の座り方をみても性格の違いが解る。ヒナタは膝を抱えて身体を小さくさせて座っている。時折ナルトへと視線を向けているけど、当の本人は気づいてないわね。シノはポケットに手を入れ少し足を投げ出すように座っている。サングラスのせいで表情は読めない。そして、ナルトは……何故か正座をして姿勢を正してこちらを向いていた。

 

 

「じゃあ俺から行くってばよ!名前はうずまきナルト……えっと、好きなもの……ラーメンだな。好きな人……特にいない!得意忍術かぁ……分身系!後は……家事ができるか?……ある程度は出来るってばよ!将来の夢……強くなることかな」

 

 

 自己紹介の仕方が変な気もするけど特に気にならないので次は隣のヒナタに視線を向けてみた。

 

 

「えっと……ひゅ、日向ヒナタです。その……しゅ、趣味は押し花……です。その、あまり動けないけど柔拳が出来ます。目標は……も、もっと積極的になりたい……です」

 

 

 前情報の通り引っ込み思案な子のようね。終わったようだし最後のシノを見る。

 

 

「油女シノ。趣味は虫の観察。虫を使った戦いが得意だ。強い奴と戦ってみたいと思っている」

 

 

 無口ってわけではないけど、饒舌ってわけでもないか……ある程度の人格は概ね解ったから良しとしよう。

 

 

「じゃあ最後に、私は夕日紅よ。君達の担当上忍になったわけだけど……まだ確定ってわけじゃないのよ」

 

「へ?どういうことだってばよ」

 

「明日、この3人1組で演習を行うわ。その成績次第ではアカデミーでもう1年過ごしてもらうことになる」

 

「そ、そうなんだ……」

 

「演習の内容は明日話すけど、ある程度覚悟しておいて頂戴」

 

「………」

 

 

 実際にこの演習を合格できるのは3分の1程度の者だけだ。何人かは落ちた後そのまま忍者を諦める者もいる。担当上忍によって難易度は違うけど、厳しいことには変わりない。

 

 果たしてこの三人は下忍になる素質を持っているかどうか……

 

 

 




九尾の封印は解けてます

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