楽天家な忍者 作:茶釜
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昔
妖狐ありけり
その狐 九つの尾あり
その尾 一度振らば
山崩れ津波立つ
これに困じて
人ども
忍の輩を
集めけり
僅か一人が忍の者
生死をかけ
これを封印せしめるが
この者 死にけり
その忍の者
名を
四代目火影と
申す――
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「此度のアカデミーは皆卒業が決まったか」
「はっ!第一回目の試験にて全員が卒業認定を受けました」
「中々に優秀といった所じゃな」
「では、規定に則り、全員に額当ての配布を行いますか?」
「うむ。後は卒業まで誰も問題を起こさなければよいのじゃが……」
◇
「おいサスケ!一大事だってばよ!」
木の葉の里に数ある演習所でも特に離れた場所に位置し、目立った特徴もないため利用者の少ないこの場所に二人の子供が立っていた。
「なんだよナルト。今度はどんな忍術を開発したんだ?」
「ちっげえよ!いや、螺旋丸に水遁混ぜれたけどそんな事はどうでもいいってばよ!」
「……いや、どうでもいいことじゃあないが……どうしたんだ?」
金髪でオレンジ色の服を着た少年うずまきナルトは額に着けたゴーグルを掴みながらニヒヒと笑ってもう一人の少年へと話す。
「聞いて驚くなよ?なんと、一楽のラーメンに新メニューができたんだってばよ!」
「なに?それは確かか?」
ナルトの話を聞いた少年、うちはサスケは怪訝そうに顔を歪めるとナルトへと顔を寄せた。
「嘘なんかつかねえよ。今日の力試しが終わったら食いに行くってばよ!」
「勿論だ。にしても今日はどうする?」
少年たちは互いに相手のことを仲間でありライバルであると認識している。それは尊いことなのかもしれない。周りの大人がその関係をどう思うのかは彼らにとっては関係のないこと。ナルトとサスケ。力関係としては対等ではない彼らはその日もお互いの力を確かめていた。
修行も行っているが、それは里の外にいる影分身に任せている。あまり大きな力を見せるのは里の大人達を下手に刺激してしまう為、良くないと考えてのことであったが……
「前に螺旋丸の打ち合いで森ふっ飛ばした時は爺ちゃんにこっぴどく怒られたしなぁ」
「ああ。一週間ラーメン禁止は地味にこたえた」
あまり意味をなしてはいないのかもしれない。
しかし、それでも里で生活している者や普通の忍達には認知されていない所を見るに、彼らを見守っている三代目火影の苦労が見れるというもの。
アカデミーに入学した当初はナルトにも監視がついていたが、3年もしたら監視の目もなくなり、二人の所業はエスカレートしたということは黙っておくことにする。
「そう言えば、卒業認定試験。題目は分身の術だったが、何故影分身の術をアカデミーでは教えてないんだ?」
「うーん……単純に習得が難しいからだと思うってばよ。サスケも結構かかっただろ?」
「ああ。1ヶ月かかったな」
「分身の術も、上手いやつなら教えてもらったら直ぐ出来る。でもサスケですら1ヶ月もかかったんだ。何年かけても習得できないってやつもいるんじゃないか?」
「そんなものか」
色々とおかしなことを言い合っている二人ではあるが、その実本人たちは真剣な考えを持って話をしている。
幼少期より影分身を自身で身につけたナルトに対し、その方法を享受したサスケは本人の才能もあるが、ナルトの考えた理論を踏まえた上で効率のよい影分身を習得している。
チャクラ量でゴリ押しすればもっと早くに習得できただろうが、サスケにとって影分身というものを習得しようとした理由は修行の効率化によるものだった。
ナルトは内に秘めた存在のおかげでチャクラの回復に懸念する必要はなかったが、サスケはそうはいかない。故に薬である兵糧丸に頼る必要もあり、いくらうちはの財産を有しているといえど、無駄遣いは極力避けたかったのだ。
だからこそ妥協せずにチャクラ消費の少なくなるまで影分身の練度を高めることに重点を置いたのだ。
それからは早かった。ナルトとサスケの修行を始めた年月には数年の違いがある。しかし、サスケはナルトを必死に追いかけ、今ではナルトに並び立つとは行かないまでも、足元くらいには到達していた。
ナルトもナルトでサスケというライバルに負けないために必死に修行しているが、最近は新しい忍術を開発するのは片手間にし、いかに効率のよい戦い方があるかの研究を行っている。
既に二人はアカデミー生というには規格外すぎる存在に育ってしまっているが、本人たちにはあまり実感が無い。ナルトは他の人への干渉が少ないため、自分のような生徒がいるかもしれないという不確定な思考から。サスケは7歳でアカデミーを卒業した兄という大きすぎる存在から。
彼らの実力を知るものは少ない。
保護者である三代目火影。師である自来也。暗部を駆使して情報を集めているダンゾウ。後はうちは一族襲撃事件の際にナルトと共にうちはイタチと仮面の男の二人と対峙したはたけカカシだけだ。
それ以外はアカデミーでも優秀である程度にしか認識していない。
しかし、何人かは貪欲に力を求めているのではないかと考えている人がいるのも事実であった。
「ん?……サスケ」
「ああ、わかっている」
ナルトとサスケはある気配に気づく。自分たちの知る気配だが、なにか様子がおかしい。ナルトの境遇を考えてみれば近づいてくる事は殆ど無いのだから……
だからこそ怪しみ、サスケはその姿を消す。
何の変哲もない瞬身の術で離れたサスケを他所にナルトは近づいてくる人物へとその顔を向けた。
「一体、何の用だってばよ、ミズキ先生」