タグに付けた通りヒロインは魅音です。
園崎魅音。
俺は彼女に恋い焦がれた。
届かないことも、知っていた。
それでも、あの日溜まりの様な笑顔に、恋い焦がれた。
彼に敵わないことも分かっていた。
だって彼女は、いつも彼を見ていたから。
彼女の瞳に映っていたのは、俺ではなく彼だった。
それでも俺は、あの笑顔を守りたかった。
例え、この想いが届かなくても……俺は彼女を守りたい。
一見ガサツで男勝りだけど本当は誰よりも女の子らしくて優しい……魅音を守りたかった。
そう、思っていたのに。
いつからか、仲間であり最高の友人であった園崎魅音は園崎家の時期当主、園崎魅音にしか映らなくなった。
俺の瞳にはもう、彼女の本当の姿は映っていなかったのだ。
心配して俺に声を掛けてくれた圭一。
俺を心配してくれたレナ。
頭を撫でて元気付けてくれた梨花ちゃん。
いつも周りを明るくしてくれる沙都子。
そして、俺を元気付けて、部活に入れてくれて……俺達を引っ張っていってくれた魅音。
だから、皆の事を忘れるために……俺は、この手を降り下ろし続けよう。
どんなに腕が痛くて、疲れていても、止めたら……俺の決意は揺らいでしまうから。
だから、仲間の元へ俺の思い出も置いていこう。
魅音が一瞬、悲し気な目で俺を見た気がした。
既に虫の息で、腕を動かす事すらままならないはずの魅音が、壁の近くまで這いずり、立ち上がる。
俺も、ゆっくり、彼女に近付く。
彼女が立ち上がるのとほぼ同時に、俺が彼女の前に立つ。
俺が彼女の顔目掛けて腕を降り下ろしたとき、彼女の唇が動いた。
そして、俺に
しかし、もう止めることは出来ない。
「ぅ……ぁ……うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
何度も、腕を振り上げて振り下ろす。
──もう、魅音も、圭一も、レナも、沙都子も、梨花ちゃんもいない。
二度と俺の事を仲間だと言ってはくれない……。
魅音達を見ていたら不意に、吐き気が込み上げてきた。
もう、皆気にすることなんて出来ないのだから、その場で嘔吐しても問題は無かった。
なのに俺は、目の前の光景を目にしても信じられなかった……。
信じたくない。
でも現実だ、この惨劇を引き起こしたのは俺自身だ。
これはきっと悪い夢なんだ。
違う、目の前の仲間達を見てみろ、間違えなく現実だ。
内なる二人の俺が囁く。
「魅音……魅音……!」
魅音の体を揺する。
全く動かない。
「レナ……レナ……!」
同じようにレナの体を揺する。
全く動かない。
「圭一……圭一……!」
同じように圭一の体を揺する。
やはり動かない。
「沙都子……沙都子……!」
同じように沙都子の体を揺する。
全く動かない!
「梨花ちゃん……梨花ちゃん……!」
同じように梨花ちゃんの体を揺する。
動かない……皆、動かない。動かない。動かない。
動かない。
この単語が、俺の頭の中で跳ね回る。
それでも、受け入れられなくて、魅音の体を思いきり揺する。
「魅音! 誰か! 返事をしてくれよ! おい……頼むから……返事をしてくれよ……!」
俺の声は、虚空に溶けて、誰にも届くことは無かった。
魅音。
もう、この想いが実ること無いけれど。
それでも言おう。
俺は、園崎魅音が、好きだった……今でも、大好きだ。