F-1で怪異に物申す!   作:べっけべけ

15 / 17
何をとち狂ったか友人の小説とコラボ(?)する事に。

最近流行りの異世界×ファンタジーの世界でまたもや無理ゲーと化したF-1です
……何か書いてる内にどんどん長くなり4~5話になりそうです。くだらない内容ですが御容赦下さいませ。

4/7 挿絵入れてみました。あくまでもイメージです。


番外編:今度は異世界ファンタジーらしいです(絶望

日が高くある事からおそらくは昼頃。いつもとはほんの少し違った青い空の下にて操縦桿を握っていた。

 

地平線の彼方まで続く緑、緑、緑。

 

見渡す限りの森と山の上を飛んでいた。前方に何か居ないか健気に探すレーダーのスコープにも反応は一切映らず、目の前の木々も山も全てがクラッターとして処理されていく。晴れ渡る青い空には雲が薄らとかかっていた。

 

 

(本当に誰か居るのか?それにこいつ(F-1)で何かするって言ったってなぁ……)

 

戦闘機としてはゲーム風に言うならば【苦行】に値するであろうこの機体では対地攻撃が関の山。ただでさえチャフもフレアも未搭載、対空兵装も短距離でしか撃てないミサイルと20mmの機銃だけであり、エンジンにものを言わせた維持旋回などといった芸当も行うことなど無理な話だ。そもそも【支援戦闘機】であるこの機体に空戦をさせようというのが酷というもの。

 

 

第三世代機の中では対艦性能や搭載する電子機器において他の戦闘機に比べて割と優れているが、如何せんチャフやフレアなどといった自己防衛装置を搭載していないのがこの機体。元パイロットの人もスクランブルで出た際の国籍不明機がSu-27系統だった場合は「生きた心地がしなかった」……そりゃそうだ。

 

チャフに関しては、射出座席で緊急脱出した際にチャフは撒かれるが……撃墜されてからでは遅すぎる。そもそもそれは味方のレーダーに映りやすいようにであって、自己防衛ではない。

 

その昔チャフをスピードブレーキの内側に貼り付け、空中で散布する事で陽動に使った事があるとか。しかしそれらしい機材は無いので再現は不可能だろう。

 

 

現在の高度は160ft(約50m)。さらに高度を落とすために操縦桿を少しだけ前に倒すこと十数mm。ゆっくりと回り出す電波高度計の針に注意しつつもHUDの向こう側へと目をやった。

 

 

 

 

 

 

 

 

時を遡ること数十分前。いつもの通りに敵ネウロイを撃墜すべくウィッチ隊の先行をしていたところ。

 

捕らえた。

 

HUD内に1機のネウロイを捕捉しそう思った時にそれは起こった。

 

 

『おい!ハジメ!』

 

突然入ってきた無線の音声がヘルメットの中に響いたと思うと、HUD内に収めていたはずのネウロイはいつの間にか消えており、変わりに白いモヤのようなものが存在していた。

 

『避けるんじゃ!』

 

そう言い終わるのが先か俺が方向舵のペダルを踏むのが先か。しかし間に合わず、その白いモヤの中へと機首から突っ込んでいってしまう。

 

キャノピーの外が雲よりも濃い白に包まれた時。迎え角、高度、レーダー警戒などといった警告音が一斉に鳴り響く。しかし計器類の表示と外の状況とがあまりにもかけ離れていた為どちらを信じれば良いのかわからなくなっていた。計器飛行も無理だ。

 

上がったり下がったりと著しく数値を変える高度計。まるでルーレットのようにグルグルと脅威電波の到来方向を示し警報を鳴らすレーダー警戒の指示器とディスプレイ。速度計は振り切りそうになったり失速速度を示したりを繰り返しており、迎え角指示器も色々と凄い事になっていた。

 

現実ではありえない事態に動揺し、思わず左手だけが緊急脱出用のハンドルを握ってしまう。

 

万が一目の前に何かが出てきたら迷わずに引こう、そう判断した。

 

そして数秒後。まるで乱気流に巻き込まれた時のようにガクガク機首が大きく振られたかと思うと、ようやくモヤが消えていき視界が確保された時。思わず叫んでしまった。

 

「はぁっ!?」

 

視界に映るもの。それは紛れも無く地上だった。

 

地上が見える、ということは機首は若干下を向いているわけであり姿勢指示器も黒い部分……-20度程の値を示していた。姿勢を水平にすべく操縦桿を引いた際に掛かるGが今の状況が現実なのだと物語る。

 

先程までは海上に居たはずであり、当然地上なんてこんな短時間で辿り着くわけが無い。考えられる可能性は自分が気絶していたか、何処か違う場所に来てしまったかのどちらかだ。

 

 

夢であって欲しいと何度考えただろう。そもそも此処は何処なのか、ウィッチ達の存在があるのか。

 

敵も味方もわからないこの状況でするべき事はまず何だろうか。着陸できそうな所を探す?それとも誰か話ができそうな者に接触を図る?

 

(まずは飛んで何かしら探すしか……)

 

レーダーの向きを若干上方向に調節すると、超低空飛行を行うべく改めて操縦桿を握り直した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(んで、ここは一体何処だよ……)

 

モヤのせいで突然変わった景色。何も無い海上だった筈なのに今の目の前に広がる光景には緑ばかりだった。

 

あの時突然入ってきた無線、あの声は間違い無く神様のものだった。【避けろ】という事は何かマズイ状況だったのかもしれない。

 

左太股に付けていたタブレットにはこれまで現在地やナビが表示されていた筈が、今では《NO DATA》の一点張りだった。

 

レーダーのレンジのモードは40NM(74km)で探知中、この機体は低高度が得意なので現在は木の上約20m辺りで飛んでいる。少々低すぎるが幸い翼面荷重が高いので低空飛行の最中でも比較的マイナスGになりにくく、元々練習機でもあるからか操作はしやすい。……まぁ元となるT-2がどのような感じなのかはわからないが。

 

翼端と主翼下にそれぞれ2発ずつ計4発のAIM-9Lが現在の兵装状況。B型よりもL型の方が性能も良いし、何より全方向からの捕捉が可能となる。万が一ヘッドオン状態で敵と遭遇した時に少しは抵抗する事ができるだろう。尚、B型など古いモデルはその昔太陽光に向かって飛んだり、日光を反射させた水田に突っ込んでいった事があるらしく、何が来るかわからない今の状況で使うのは気が引ける。

 

 

増槽は付けていない。燃料計は相変わらず指針を一切振らないからだ。幸いこういった能力(?)は無くなったりしてはおらず、そのままだった。その為相変わらず酸素も燃料も湯水の如く湧きっぱなしである。

 

(反応も無し……か)

 

スコープの中で左右に走査をするB-スイープバーは何かを映すことは無く、行ったり来たりをただ虚しく繰り返していた。

 

 

 

 

 

 

 

そして飛行を続ける事数十分。そこで俺は今までに経験した事の無い事態に陥る事となる。

 

鳴り響く電子音。

 

突如反応を示すRHAWS(レーダー警戒装置)のディスプレイ。そこには二つの脅威電波を示していた。

 

電波の到来方向は両方共に11時方向。種類は航空機ではあるが、機種までの特定には至らずに航空機を意味する【 ^ 】と未確認機を示す【U】だけが表示されており、詳しい距離は不明との事だった。

敵味方識別装置はそもそも設定されていないので当たり前のように反応する事は無かった。

 

(嘘だろ?方向的には映っても良い筈なのに……もしかしてステルス機か?)

 

頭を()ぎったある考え。それは俺にとっては最悪とも言ってもいい事態だった。

 

ステルス性を有しているとすれば、第四世代から第五世代。異世界だとしたら第六世代や未知の機体かもしれない。現にこちらのレーダーには映っていないわけで、反対に向こうのレーダー波はこちらに届いている。低空な為ミサイルの射程は短くなるので撃ってこないのかもしれない。最大射程の数値と現実とでは噛み合わない点が必ずしも浮上する事があるからだ。

 

(……逃げるか?)

 

ひとまずスロットルをミリタリー位置まで押し進めると、左のペダルを少しだけ踏み押した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピッ ピッ

 

時折反応を見せるレーダーにはひとつの反応が表示されていた。方位にして10時から11時、どうやら上の方に居るらしい不明機達からはミサイル攻撃が検出される事が無くずっとこちらにレーダー波を当て続けているだけだった。

 

(攻撃……してこない?それとも中距離用のミサイルを持ってない?)

 

してこないのかできないのか。敵意の有無がわからない以上近づいて目視内戦闘に入る事はは避けるべきだろうか?これで自衛隊のスクランブルのように誘導や警告で済ませてくれるならこちらも歓迎だがそう上手くいくとは思わない方が良いかもしれない。何処ぞの国のように旅客機だろうと問答無用で叩き落としてくる事があるかもしれない。

 

万が一ネウロイ達のような敵だった場合には目視内の射程に収まった途端に攻撃を仕掛けてくるかもしれない。しかしこの反応が俺にとってはこの世界の第1村人(?)なわけで……

 

 

 

と、こうしている間にも敵機との距離はどんどんと縮まっていくのであまり悩んでいる時間は無かった。レーダーの様子からも敵機はかなりの上空をいるらしくこちらのレーダーには既に映らなくなってきていた。

 

(……切るか。レーダー)

 

もう既に向こうにも逆探知されているかもしれない。その為とっくに遅い判断ではあると思うが左コンソールのレーダーのモードセレクトをA/A(空対空)からSTBY(スタンバイ)を通り過ぎて一気にOFFの位置へと切り替える。

 

そしてスロットルのフィンガーリフトを引いた状態でほんの少しだけ前進させ、アフターバーナーに点火させる。「ゴォッ」という後方からの爆発音が小さく聞こえた事を合図に身体に掛かる加速度が増していく。

 

(何処だ?何処にいる?)

 

自動操縦の高度維持の機能をONにして幾度となく上を見上げる。相手が自分よりも高高度にいるのならとルックダウン能力が少しでも低い事を祈りつつ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スロットルをミリタリー推力に一旦戻し、バイザーを上げたまま上空を探し始めて数十秒。いつ現れるかわからない脅威に怯えながらの索敵は終わりを告げた。

 

(……見えた!)

 

10時方向の上空にまるでパソコンの液晶のドットひとつのような大きさに見えた小さな黒い点。白い雲を背景に浮かび上がるその二つの点はRHAWSのディスプレイに表示される方向的にも先程からの脅威なのだと決定付けていた。

 

迫り来る何か。その2機編隊の内の1機が突如エルロンロールによる上下反転をさせるのが見えると、垂直尾翼らしきものが下を向いていた。もしかすると向こうも目視でこちらを発見した事を意味するのかもしれない。

 

RHAWSのディスプレイの航空機反応も次第に中心のF-4のシルエットマークへと近づいていき、とうとうそれは殆ど重なるまでに至った。

 

レーダーはOFFのまま、しかしレンジのセレクターを40NM(74km)から10NM(18km)へと切り替える。万が一目の前に敵機を捉えることができた場合に備えてだ。

 

数秒を過ぎてすれ違う俺と敵機達。互いの距離はおおよそ1000m程と近かったがそのおかげでようやく相手の機体を確認する事が出来た。

 

 

直線翼に近い少しの後退角を持つ主翼。水平尾翼と主翼との間に配置され、少しだけ傾いた二つの垂直尾翼。そして主翼の付け根から機首にかけてのストレーキ。翼端にサイドワインダーと主翼に増槽らしきものを備えたその機体は1度はインターネットなどで目にしたものだった。

 

(……ホーネットかよ。よりによって……)

 

戦闘機と攻撃機の役割をどちらも果たせるマルチロール機であるF/A-18のそれだった。単座である事からCかEのどちらかだったのかもしれない。

 

俺の後ろへと通り過ぎた2機のうちの1機はそのままスライスターン(スライスバック)と言われる機動に似た動きで降下を行う姿が一瞬バックミラーに映り込む。その通りで案の定RHAWSのディスプレイには自機に対して6時と8時方向に付かれていた。

 

すぐさまバイザーを下ろして戦闘態勢には入る……が、インメルマンターンなどの切り返しでブレイクを行うか?それともシザースで敵機の後ろに?

 

 

……そもそも空戦なんて可能か?

 

 

(・×・)ムリダナ

 

旋回半径や上昇力、推力比など様々な面でこちらが劣っている事は明確……ただひとつだけ優っているかもしれないのはこちらが増槽も無しにアフターバーナーを焚き続けられるという事のみ。

相手も燃料が無尽蔵でも無い限り距離は取ることができるだろう。しかし本当にそれで逃げ切れるかどうか。

 

このままでは真後ろに付かれてしまう。相手の回避不能領域に入ってしまう事……それだけは何としてでも避けなければならなかった。

 

左フットペダルを踏み込み、左に傾いてバンク状態になった機体を操縦桿を一気に引く事でそのまま垂直に打ち上げる。失われていく速度を補う為にアフターバーナーを点火させているとGを示す荷重計の指針が一気に跳ね上がるのが見えるが、なりふり構わず機首の方向を捻じ曲げていった。

 

ビーム機動への移行。それが今の俺が考えた策だった。

 

 

 

 

 

スロットルをミリタリー以下に落とすと、少しでも機体の重量を減らす為に主翼下の兵装支持架ごとミサイルを緊急投棄する。増槽を切り離した際のように機首が一瞬ガクンと持ち上がるがそれはむしろ好都合。そのまま操縦桿とフットペダルを使って左への旋回を維持していく。

 

エンジンの甲高い音にかき消された小さな爆発音。さっきのミサイルが爆発した事による爆音だったが、キャノピーで仕切られエンジン音に支配された操縦席にはその音が届く事は無かった。

 

相手には背面のみを見せるように僅かにバンクした状況を維持して飛行していく。昔F-1が米軍のF-16と模擬戦を行った際にそうやってエンジンノズルから出る熱を尾翼で隠す事でサイドワインダーのロックを掛けられる事を避けた人が居るらしい。しかしその当時のF-16はまだ初期型であり、AIM-9もX型程性能も良くなかったからできた芸当である。

 

向こうの機動性は比べ物にならない程優れており、どこまでも付いて来る。キャノピー・トゥー・キャノピーの状況にすら持ち込めない機体性能と自分の技量がこの上なく焦れったい。高度が低すぎる為シザースかスリップ(横滑り)程度しかできる機動が見当らないこの状況をどうしてくれようか。

 

そうしてもう一度アフターバーナーを焚いてここから離脱しようかと思った時、突如耳元にオーラルトーンの電子音が鳴り響いた。

 

ポロロン ポロロン

 

自機にロックがかけられた事を知らせる警告音は自身の心臓を鷲掴みにする。

 

捕捉された

 

その事実がより一層焦りを募らせていく。RHAWSのディスプレイに映るのは敵が武器発射状態にある事を意味する【◇】がひとつと、もうひとつには最も新しい脅威である事を意味する【⌒】が重なっていた。

 

この機体が出せる最高速度は高高度でM1.6で、サイドワインダーは種類にもよるがM2.5だと資料で読んだことがある。チャフもフレアも積んでおらず対抗手段を持たない俺が今撃たれたら振り切る手段は何一つとして無かった。

 

 

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

ふたつの脅威の反応は自機を意味するF-4のシルエットの下に鎮座しており、それは相手の回避不能領域に捉えた俺をまるで嘲笑うかのよう。

 

いくら振り切ろうとシザースのように往来を繰り返したとしてもピッタリと後ろに絡み付いてくる。超低空飛行の中で追いかけてくる敵機もなかなかだが、本心としては相手はベテランではなく腕の下手なパイロットであってほしかった。

 

でも何故このタイミングでの捕捉なのか。普通ならもっと遠くからでもロックが可能な筈なのだが、そんな疑問点を相手においそれと聴けるわけがない。

 

刹那、上のバックミラーに映り込むふたつの影。エンジンにものをいわせたのだろう、それらはすぐそこまで近付いていた。

 

機体を水平に戻したところで右から1機がこちらを追い越して2時の方向に留まる。その距離は僅か40m程であり、昔ニュースで見た中国軍機と自衛隊機との異常接近を彷彿とさせるものだった。

方向舵の向きを変えれば俺は彼の後方から突っ込む形となり両者が墜ちるのは確実に思える。

 

(前に付いた?ってことは撃墜する気は無いって事か?)

 

落とす気があるならとっくに落とせたはずだ。だとしたら何か他の意図があるのかもしれない。

 

垂直尾翼に描かれたマークから部隊の判別など俺にできる訳が無く、緊張と不安が渦巻いていた。2機のF/A-18はそれぞれ2時と7時方向にて自機を挟むようにしていた。前方の機体は誘導、後方の機体は監視とでもいったところだろうか……まるで鹵獲される気分だ。実際そうなのだが。

 

前方の機が現在の位置に付いた時、2、3回程ゆらゆらと明らかにバンクを振っていた。まるで「ついて来い」とでも言うかのように。どの道逃げられない運命なので従う他無いだろう。

 

操縦桿を2、3度左右に倒す事でこちらもバンクを行い、了承の意を示す。……伝わるかどうかはわからないのと同時に相手の意思もこちらの予想でしかないが。

 

すると数秒後、ずっと鳴り響いていた後方のもう1機からのロックオンのアラートが解除される。おそらくこちらの意思を降伏や武装解除などと受け取ったのかもしれない。

 

パイロットの姿も確認できるほどの近い距離。それは本当で、前方のパイロットが左手で上を指差す姿が目に入った。

 

《上昇する》

 

そう受け取った俺は向こうからもわかるように大袈裟に頷いた。

 

 

前方の1機が機首を徐々に空へと向ける。翼端から白い糸を引きながら機首上げを行う姿には性能差を見せつけられた。こちらも操縦桿を引くと共に、失われていく速度を補う為にスロットルをミリタリーの位置へ進める。

 

機体の100%の出力を出して追いつける程度。そんな化け物のような相手に挟まれたまま高度はどんどんと上昇していき、約35000ft(約10600m)までその勢いは収まる事は無かった。

 

(なんでこんな高度まで……?)

 

この時俺は忘れていた。普通の航空機の場合空気抵抗や効率を考えて高高度を選ぶ事が多いという事を。旅客機などを考えたらわかるというのに燃料が無制限な俺は既に感覚が狂っていた。

 

速度は大体450kt(830km/h程)で飛んでおり、キャノピーの外には速度を体感する為の比較対象が何一つ存在しない青い空。それはまるで時の流れが止まったかのように思わせる。僅かに上下する高度計と2時方向に位置するF/A-18がゆらゆらと揺れて見える様が今も空を飛んでいるのだと自覚させられた。

 

バシュッ

 

外ではそんな音を立てているのだろう、前後の機体の主翼下から増槽が二つずつ投棄され重力によって落下していく。少量の燃料を噴出しながら落下していく増槽はすぐに小さくなって見えなくなっていった。

俺のように機首が上がったりしないのはコンピュータによる自動操縦だろうか。だとすれば羨ましい。

 

しかしその後は何かが起こるわけでもなく時間はただただ虚しく過ぎていく。そこでしばらく相手の機体を観察する事にした。

 

増槽が無くなったことでよりスマートな見た目になった機体の兵装支持架には何やらミサイルらしき物が装着されており、外見的には飛翔制御の為と思える翼がAIM-9のように先端部ではなく中間部分と後部にある事から中距離レーダー誘導方式の空対空ミサイルと予想した。代表的なのはAIM-7通称スパローとAIM-120通称アムラームのふたつなのでこのどちらかだろう。なお、これらで狙われた際には俺は問答無用で七面鳥と化す運命は避けられない。

 

俺から見える左の空気取り入れ口のすぐ後ろに何やら白い筒状の機材が取り付けられていた。見た様子飛翔用の羽根は見当たらないので何かしらのポッドか何かだろう。偵察、電子戦、チャフもしくはフレア散布など色々ある筈だ。

 

翼端には短距離用のサイドワインダーらしきミサイルが装着されており、胴体下の中央には未だに増槽らしき物が吊り下げられている。他に兵装らしきものが見当たる事は無かった。

 

垂直尾翼に描かれたマークの意味を俺が知るはずも無く、所属部隊はわからない……が、主翼と機首に描かれた国籍マークだけは俺にも判断がついた。

 

左右に帯を携えた円に、中央には星のマーク。昔何度か実際に目にした事もあるそれは、紛れも無くアメリカのラウンデルそのものだった。

 

尾翼の下辺りの胴体にはNAVYと書かれているが、この付近に空母は……そもそも海洋はあるのだろうか?しかしもしもあった場合、この機体では着艦が不可能な為どうしようもないのだが。

 

 

 

 

 

前方の機体がバンクを振る。また真横に少し減速して近づいて来ると、今度は大きく下を指すジェスチャーを行っていた。どうやらこの辺りで高度を下げようという事らしい。

 

目の前でエルロンロールが始まったところでこちらも操縦桿を横へ。同じく機体を反転させると、そのまま高度を落としていった。

 

 

 

 

そうして4900ft(1500m)程まで高度を落としたところで機首を水平に戻す。地平線とまではいかないがかなり遠い所に何か人工の建造物があるのが見えた。タワーやビルなどといった高層建築物ではないが、10階建てマンション程の高さといったところか。

 

その建築物が一体何なのか。それを知る事になるのは数分後の事である。

 




レーダースコープはF-4,F-104,F-5Eのレーダーを元に、RHAWSに至っては何の資料らしいものも見つからなかったのでほとんどRWRと化しました。
……これからの描写に使えそうなので。


友人は全部繋げた状態で投稿すると言っていたので最終話にでもURLを貼り付けます。(活動報告には既に貼っています)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。