F-1で怪異に物申す!   作:べっけべけ

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スマホが壊れ約一ヶ月何も出来ませんでした……すみません。



このサブタイトル……見たことあります?もしピンときた人が居たらかなり軍用機を知っている人かと思われます。




ランピリダエ

バイブ音を鳴らしながら震えているタブレット。

 

その画面には幾つものネウロイ反応が映し出されていた。

 

 

(坂本少佐やヴィルケ中佐が言っていた【予報】では確か筈……知らせるか?)

 

報告を優先にするべきか出撃を優先するべきか。

 

 

 

「……よし」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エンジンのファンが回る甲高い音。

 

そんな爆音を鳴らしながら迷彩色をした機体が一機、格納庫からその顔を覗かせ始めていた。

 

 

(よし、チェックは完了……後は隊長達がこっちに来てくれれば……)

 

一通り計器類のチェックを済ませ、滑走路上へと機体を進めていく。これだけの事をすれば誰かは気が付く……筈だ。

 

 

確証は持てない。だが自分が上官らを探して報告しに行って戻って来るよりは手っ取り早く、可能性が高い。そう判断した。……それにある事を既に頼んであるのでどの道ウィッチ隊も気付くことになる。

 

 

(……部下として今の俺って……)

 

報告、連絡、相談……合わせて【ほうれんそう】は社会で一般常識だ。ましてや此処は軍隊であり、情報はより重要な物……それが敵であるネウロイに関することなら尚更な筈である。

 

 

「まぁ……いいか」

 

ウゥゥゥゥゥゥゥゥ

 

その言葉を肯定するかのように鳴り始めるサイレン。しかしこの警報はレーダーにネウロイが探知された訳では無い、だがこれも予定通り。すぐさま離陸する為に口元にはマスクを取り付ける。

 

「……フー……ハァー……」

 

息を吸った瞬間、乾いた空気が肺に半ば強制的に入り込み、ついこの間まで慣れ親しんでいたこの感覚を思い出す。

 

そんな機内の環境を本の少しだけ懐かしく思いながら、ヘルメットに付けられたバイザーを下ろす。

 

(よし…………)

 

薄暗くなった視界。そんな中でも照らす太陽は眩しく、未だに上空を直視できずにいた。

 

 

「……行くか」

 

その一言と同時にガコッと音を立ててキャノピーフレームを……下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜基地内〜

 

(本当にやっちゃったよ俺……)

 

そう項垂れていた青年の手の中にはレバーが握られており、その位置は本来とは違う状態になっていた。

 

「ハァ……」

 

(ミーナ隊長にどやされるのかなぁ……)

 

自らが作動させた警報のサイレンが鳴り響く中でこの整備員、佐藤健は深い溜息をつく。理由は簡単……異世界から来た少年にネウロイの存在をウィッチ達に教えてほしいと頼まれたからである。

 

個人的にミーナ隊長の所へ行っても他のウィッチ達への情報伝達が遅れる。……ならばコレが確実に非常事態という事が伝わり、尚且つ基地内に居るほぼ全ての人員に即座に知らせる事ができると判断した為である。

 

(減給とかだったら嫌だなぁ……)

 

そんなのんきな事を考えながら、彼はレバーを元の位置へと戻しておくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって大西洋上空約40000ft(12192m)。

 

白い巻雲の中に浮かぶ緑色はかえってその存在を目立たせ、擬装の為に施されたその塗装は全くもって役割を果たしていなかった。

 

 

規則的に放たれる呼吸音は全てエンジン音にかき消され、。一向に姿が見えないネウロイを俺は血眼になって探していた。

 

(……クソッ……何処にいる?)

 

タブレットの表示には既にネウロイの反応が3機。距離的にも自前のレーダーに映っていい筈なのに……映らない。

 

おおよそその距離は約30km。目視内戦闘にはまだ及ばない距離である。

 

(もっと近づくか……?)

 

そう思い立ったが直後、スロットルを一段階先へと進めてアフターバーナーへと点火した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レーダー上での敵との距離約15km。そろそろ機影が見えてきてもおかしくない距離まで縮めた。

 

操縦桿を横に倒し、上下を反転。薄い雲越しに見える大海原にはネウロイと思われる影が……見当たらずにいた。

 

上下反転のまま操縦桿を引き、機首を下げていく。

 

(何処だ……?何処にいる?)

 

スロットルから手を離し、キャノピーに手を付きながらあちこちを見渡す。

 

ここまでF-1のレーダーに敵が引っかからないことは初めてで、若干ではあるが焦りが見えてきていた。

 

タブレットを確認すると、そこには前方に数え切れない程の小さな点が表示されていた。

 

「なっ……!?」

 

思わず漏れる驚愕の声。距離が離れていたからか最初は大きな反応が2つあるだけだった……それが今は軽く見ても30は超えているであろう数。俺1人にはあまりにも困難な状況だった。

 

 

 

 

……なら何故見つからない?

 

その疑問に応えるかのように視界に映り始めたのは黒いモヤの様な何か。まるで蚊柱のようなソレは言わずもがな……正真正銘ネウロイだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい……マジかよ」

 

頬を冷や汗が伝うのを感じながら呟いたその言葉はエンジン音にかき消され自らの耳にも届く事は無かった。

 

 

カチッ

 

赤いガードで覆われていたスイッチをONにし、全兵装を使用可能な状態へと移行させる。

 

兵装は両翼端のミサイルランチャーと主翼下パイロンのアダプターに取り付けられたAIM-9。搭載可能な種類はB、E、P、LとAAM-1(69式空対空誘導弾)で、現在は所有できる物の中で最も射程が長いとされるAIM-9Pを4箇所全てに取り付けているため計4発を搭載中である。

 

 

 

 

 

(さて……やってやるか……!)

 

未だ米粒以下にしか見えない黒い機体を真正面……それもHUD内に捉え、ロックオンを仕掛けに入る。

 

すると数秒後、電子音が鳴り始めるとともにHUD内で標的にロックが掛かり発射準備が整った。

 

「……すまん」

 

その呟きと共に押される兵装リリースボタン。直後、翼端からバシュッと音を立てて放たれる一筋の白煙。それは真っ直ぐな線を描きながらネウロイの大群へと突っ込んでいった。

 

そしてすぐさま他のネウロイにレーダーロックを行い、ボタンを押していく。

 

ミサイルが切れたら次のをタブレットで選択、また1連の動作が始まる。

 

 

 

 

 

攻撃開始から数分後、複数機の敵ネウロイが進路方向を反転しこちらへ向かって来たのでこちらも回避行動に入る。敵に背を向ける事となるがこちらにはアフターバーナーがある……スロットルは躊躇無く全開にされた。

 

 

 

 

(よしこのくらい離れれば相手の視界からも……)

 

そう思っていた時だった。

 

 

 

 

 

ポロロン ポロロン

 

突如機内に鳴り響くオーラルトーンの電子音。その音はウィッチ隊の夜間哨戒担当のリトヴャク中尉に誤って狙われてしまった時の軽いあのトラウマを呼び起こした。

 

機体を直ぐ様左にバンクさせ、回避行動をとる。体が操縦席に押し付けられる中、重たくなった首を回してどうにかキャノピーの外を見る事ができた。

 

 

 

タブレット上でしか反応しないネウロイ。その姿を間近に見る事でレーダーに映らない理由が今ハッキリとわかった。……まるで削ぎ落としたかのように薄い翼、まるで折り紙のような角を持った胴体に平面で覆われた機体。

 

まるでステルス機のF-117のようなフォルムからレーダーに映りにくい事は一目瞭然だった。

 

……因みにこのネウロイにとても酷似した軍用機がある。1980年代にドイツのメッサーシュミット・ベルコウ・ブローム社によって計画されていたステルス機。

 

MBBランピリダエ

 

幾つもの平面から成されたその機体は飛行する事なく計画が中止、実際には模型だけで終わってしまったのだが……どういうわけかネウロイは外見がこの機体にそっくりになっており、そのステルス性能までもコピーしていたのである。

 

 

そして何故1機もF-1のレーダーで捕捉できなかったのか……その疑問に対する答えは何とも簡単なものだった。

 

タブレットに表示されるネウロイを示すのは一種類のみ。レーダー上に映るあの大群全てがステルス性能を持った同型のネウロイだったということだ。

 

唯一の救いは赤外線ミサイルの狙いを定められるという事で、原理は不明だが恐らくネウロイのコアか何かが熱源となっている可能性が挙げられる……あくまでも可能性だが。

 

 

 

それはさておき。

 

ロックオンしてきたネウロイに目をやるとそこにはゆっくりたこちらに飛んで来るレーザー。しかし今迄とは異なり、真っ直ぐではなくこちらを追ってきていた。

 

(そういう事か……!)

 

エンジン出力はそのままの状態でスピードブレーキの操作ボタンをINの位置からOUTへと。それと同時に操縦桿を目一杯引いていった。

 

ミサイルを撃たれた時の機動でビーム機動というものがある。簡単に言えばミサイル等の飛翔体に対して自機の向きを垂直に保つ事で、ミサイル等を振り切ろうというものである。

 

ホーミングレーザーは音速も超えられていないのではないかと思わせる程の低速でこちらに迫って来ており、まるで某戦闘機ゲームを思い出させる状況だった。

 

鳴り止まない自機とタブレットの警告音。タブレットのレーダー上には先程と同様の誘導型が多数映っており、まるで自機を先頭としたカルガモの親子のように追跡していた。

 

 

 

(……くそっ……!)

 

そんな愚痴しか言葉に出来ずにいた。この機体に自己防衛機能なんてものは無いし……というかそもそもあのレーザーがチャフやフレア、デコイ等に惑わされるかどうかさえ不明なのだが。ネウロイは何を使ってこちらを狙ってきているのかがわからない為どの道対策の立てようがない。

 

 

機体を操り機首を海面へと向ける。

エンジンの出力を下げ、スピードブレーキも全開にしていく。

 

重力に従って機体の落下速度は徐々に加速していき、僅か数秒で雲を突き抜けて目の前には青一色が視界に広がっていた。

 

 

ガタガタと揺れる機体を捩じ伏せるかの如く操縦桿を目一杯引き、激しいGの中機首の向く方向は海面から水平線へと徐々に変わっていった。

 

高度は約5m。今迄で最も低いであろうこの高さで姿勢指示器は漸く水平を指した。

 

 

 

ボンッ

 

レーザーが海面にぶつかり、石を投げ込んだ時に似た鈍い音を立てながら水蒸気を上げる。そんな事は露知れず、一先ずミサイルのように海面に叩きつければ追跡は困難になる事に対して俺は安堵していた。

 

 

後方約30km。残り1機となった撃ち漏らしにこの距離で打つ手は無く、ただただ迷彩柄に包まれた敵機を追うことしか出来ずにいた。

 

 

 

(……よしっ……撃ってこないな)

 

 

目視外まで離脱した後、今迄通り敵のいる方向へと転換する。

 

 

そしてガラスが割れるような音を立てて最後の1機が……散ったのだった。

 

「ハァ……」

 

深く溜息を1つ。一度体から力を抜いた後、タブレットに目をやる。そしてウィッチーズの居る基地へと機体を向かせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間は過ぎて基地に到着後。

 

俺は執務室に居た。……健さんと一緒に。

 

 

「「ハァ……」」

 

わかるとは思うが、ヴィルケ中佐に注意を受けたのである。

 

内容としては俺は無許可で離隊した事伝々、健さんはサイレンを鳴らした事についてだった。

 

かといって軍法会議等ではなく、まるで母親の「全くあんたは……」のような軽いものだった。

 

 

「失礼しました……」

 

執務室を出た俺達は

 

「これからの課題は……」

 

「「無線ですね」」

 

「「ハァ……」」

 

またも出てきた課題に溜息をついた。

 

 

 




ウィッチーズとの会話ってどうすれば……?
下手に会話させてメチャクチャになるのが怖くて手を出せない今日この頃……。

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