「……ハァ」
スクランブルでウィッチーズが出撃してから数分……俺はまたもや暇をもて余していた。
事情聴取をするのかと思っていたが……坂本少佐はスクランブルに出てしまったし、ヴィルケ中佐は無線で現場に指示を出していた。
(……俺こんなんしてて良いのかな……?)
ハッキリ言ってしまえば俺は敵か味方かも定かではない存在なわけで、普通監視対象にされたり監禁されても十分おかしくないと思っていたが……本当に野放しだ。
(健さん達整備班も忙しそうだし……こっちはこっちでやりますか)
重い腰を上げて主翼から飛び降りたら……暇潰しにかかろう。
(……えっと……これを……こうか?……ん?それとも……?)
ベタベタと機体をまさぐりあるものを探す。
今行おうとしている作業は……ガンカメラとストライクカメラのフィルム確認。
ストライクカメラとは……まぁよく戦闘機の動画を見る人はガンカメラの似たような物と考えて欲しい。
ガンカメラはヘッドアップディスプレイの付近に設置されていたりするが、このストライクカメラとやらはノーズギア(前脚)の辺りに取り付けられてある。
こちらの方は爆撃戦果の評価に使用されるもので、ガンカメラとはそう大差無い。ただ単にヘッドアップディスプレイから見た様子を撮影するか、投下した爆弾の着弾地点を撮影するかの違いである。
(あ、ここから開けるのか)
カメラの近くの機体の側面にあったアクセスパネルを開け、中からそっとカメラフィルムを取り出す。
「すいませーん!どなたかいらっしゃいますかー!?」
叫んでみるが格納庫には自分以外誰もおらず、寂しく声が響き渡る。
(……他の人達の部屋って何処だろうまぁ後でいいか)
次はガンカメラのフィルムを……そう思ったが……操縦席までたどり着けない。
操縦席まで割と高いのに梯子が無い。どうする?自分。
「……はぁ」(どっかにないか探すか)
辺りを見渡し2秒。それはいとも簡単に見つかった。
格納庫の壁に脚立が横になって吊るされていたのである。
少しだけ拝借させてもらおう。
「よっこいしょっと」
壁に固定するためのフックから脚立を外して折り畳む……梯子などとして使う場合のあの一番長い状態で置かれていた為だ。
そのまま操縦席の左側辺りに持っていき、脚立を立てる。あとはいつも使うようにロックの金具を掛け、何度か揺らして大丈夫か確かめ……まあ、大丈夫だろう。
カンカンと脚立の音を鳴らして操縦席にまで上りって座ると、やはり落ち着くというか……安心する閉塞感に包まれた。
決して寝やすいようなものではない。むしろ居心地の悪い空間に感じる人の方が多いかもしれないが、個人的にはやっぱりこの方が良いと思える。
(あ、ガンカメラの事忘れるところだった。あぶねあぶね)
カチャカチャとカメラを弄り、中からフィルムを同じように取り出す。ネウロイを撃墜する際にはこまめにカメラをONにしていたのでおそらく撮影されているはず……。
(これ、現像してもらえるかな……)
俺はデジカメしか使ったことがないような青いガキなのでこういった写真のフィルムの現像の仕方を全くもって知らない。せいぜい赤い照明に照らされた室内で何かの液体を使うことくらいしか知らない。
(中のフィルムが出ないようにしとけばいいの……?)
フィルムを取り出した際にはよくわからないケースに入っており、全く中が見えないようになっていた。……素人が下手なことするよりも手を出さない方が最善策と自分で勝手に結論付けることにした。
「こういうのは初めて見るフィルムですね……」
」
あれから時間は過ぎてお昼頃。昼休みに入った健さん達整備員を訪ねていた。
「んー……仕組みは見たところ同じようですしできないこともない……といったところでしょうか……」
「び、微妙で怖いですね……」
「やれるだけやってみたらいいんじゃねぇの?ま、絶対にフィルムは無事とはいえんがな」
顎髭が印象的な一人の整備員が健さんの肩に肘を乗せながらそう言う。
「じゃあ……保証はできませんが……それでも?」
「はい、僕には何にもできないので……」
「それでは承りますけど……くれぐれも期待はしないでくださいね?」
「はい、お願いします」
「よし、さっそく現像室行くぞ。……ああそうだパイロットさん、俺ん名前はオースティン・テニソンってんだ。まぁ気楽にやろうや」
「どうも、武内一です。今後お世話になります」
こちらも自己紹介をして差し出された右手に握手する。外国人のはよくシェイクハンドとは言っていたが……そのシェイクが凄い激しい。俺の腕が肩からもげるんじゃね?って思わされる程強かった……痛い。
……ここで疑問がひとつ。……なんで日本語がこんなに流暢に通じるんだ?英語を喋った覚えなんて全く無い。
(……こ、これがこの世界の理なんだよ……たぶん。うん、そうだ、そうに違いない)
なんて無理矢理なんだと思うがそれがこの世界なのかもしれないし、
そして俺の手が周りより小さいというのもあるが、このオースティンってい人……めっちゃ手がゴツくてデカイ。手の甲までもっさもさに生えた体毛や作業着越しからもわかるようなゴツい筋肉……まるで絵に描いたような外国人男性だった。
そうしてオースティンさんと健さんは渡したフィルムを見てみる為にこの基地内にあるという現像室へと向かっていった。
(……あれ?今って昼休みだったんだよな?……俺二人の昼休み潰したも同然じゃんか……しかも本来の仕事とは違う厄介事を押し付けちゃったんだけど)
今度なにかやって借りを返そう。そう思えた瞬間だった。
朝のスクランブルからウィッチ達が昼頃に帰投してきて数時間……基地内の放送でなんか執務室に来いと言われた。まぁネウロイ云々で忙しかったから一区切りついたところで……もうひとつの
(ってことでここまで来たけど……何て言いながら入ればいいんだ!?中学の時の職員室と同じ要領でいいのか!?)
まだ社会にも出ていなかったただの高校生がこうなるのは当たり前(?)かもしれないがここは異世界……何が前の世界と同じで何がダメなのか全くわからない。ただでさえ日本の常識、マナーと外国の常識、マナーは合致しないというのに……。
コンコンコン
恐る恐るで扉を三回ノック。二回ノックはトイレノックだからするなってとーちゃんに言われた。
「はい」
扉の向こうから聞こえるヴィルケ中佐の声。
急激に高まる心拍数。頭の先からサーっと血の気が抜けていく感覚。扉の向こうに行くことを急激に拒みたくなるこの衝動は中学生の時から変わることの無いものだった。
最初にこの部屋に入ったときは自分も彼女らも軽いパニック状態だったから変な空気の中で対談していたが……今は落ち着いており心に余裕が生まれているのでこうして緊張してしまう。
(うう……俺どうなるんだろう……)
キリキリし始めた胃を押さえながら俺は……重苦しい扉のノブをゆっくりと捻るのだった。
「失礼します……」キィ…バタン
(……死ぬかと思った……)
ヴィルケ中佐の雰囲気が凄かった……。なんというか日頃のストレスが積もりに積もって今にも爆発しそうな……ようするにイライラしてただけです。はい。
部屋に入るや否や漂ってくるのは重苦しい空気。それは通夜などの悲しみに包まれたどんよりとしたものではなく、テスト前の職員室のような……そんな感じ?(学生視点ではこれが限界)
まぁ悲哀ではなく疲労感が漂う重い空気だったわけである。しかもそのうち貧乏神でも寄ってきそうで怖いレベルでだ。
できることならアリナ○ンVやリポ○タンDを箱単位であげたいぐらいだ。……まぁそんなものこの時代には無いだろうが……。
(滋養強壮剤……スッポン?ヒ○ポン?んん……わからん)
それはさておき。
ヴィルケ中佐と話をした内容は要約するとこれからどうするか……ということ。
あの機体F-1を押収されること覚悟で上層部の人間と接触を図るか、このまま上層部とは関わらずここ第501統合戦闘航空団の基地を基本的な拠点とするか……もしくは自分達が出会ったことを無かったことにするか……である。
(さすがに押収されるのは嫌だなぁ……上層部の人に関わるのは気が引けるな……「情報を全て渡せ」とか脅迫されそうだし……となると?)
そう頭の中で結論付けた結果、残る二つの選択肢のうち片方を取ることにした。
「ここを拠点にさせてください」
……これが僕の答えだ。
ここで主人公のF-1の見た目設定です。
・機首にシャークティースや飛行隊長の印は施されておらず、基本塗装図そのまんまです。
・機首のナンバーは278、垂直尾翼のシリアルナンバーは70-8278といった感じで存在しないはず?の番号でお願いします。
・飛行隊マークのところにはエスコンX2Pixy Cloverであり、インフィニティのLucky Girlのあのマーク。
・日の丸は確定事項。異論は認めん(笑)
……あとは改修させるかどうか……改修した場合チャフポッドやダートターゲットが使用可能になる……はず。