なんかバッドエンドしかないキャラに転生したようです。 作:あぽくりふ
投稿するのが久々すぎて、色々書き方忘れてたり。おかしければ修正入れるかもしれません。違う、これも全てはテストとモンハンクロスがいけないんだ! ソロで白疾風辛い。
では十三話。
「ーーーチッ!」
振るわれる光剣が青い軌跡を描き、咄嗟に飛び退くと同時に地面を抉り取る。下から上へと放たれた一閃は目で追えない程に速く、そして鋭い。さらに上段から雷霆の如く降り下ろされた一撃を避けると、俺は舌打ちしつつバックステップで距離を取る。
フォトンソードの特徴は大きく分けて二つ。1つ目、やたら攻撃力が高いこと。そして二つ目、やたら軽いこと。
要するに、だ。
「速くて強いとか、最強に聞こえるから困るーーー!」
軽トラを両断し、近未来的デザインの車を三枚に卸して迫る剣撃。車の側面などを利用した三次元機動でそれをかわしつつ、俺は莫邪を
「ちょこまかと腹立たしいっ」
「止まったらあっという間に愉快な斬殺死体になっちまうだろーが!」
多分現代アートみたいになる気がする。
俺はそんなことを脳の片隅で考えながらセミオートに切り替え、リズムを刻むようにして引き金を引いた。フルオートやバーストでもないただのセミオートならば、多少離れていても照準を合わせるのは容易い。
ーーーだが、放たれた弾丸がピトフーイを貫くことはなかった。
「嘘だろおい」
「またつまらぬものを切ってしまった」
ピトフーイの頬のタトゥーが歪み、俺は舌打ちする。再度引き金を引くも、青い剣撃が今度もやはり防いでくる。
ーーーやりにくいったらありゃしねえ。
「弾丸切るとか、人間技じゃねぇなぁ!」
「弾道予測線って便利よねぇ?」
苛立ち混じりに叫ぶと、俺は二挺撃ちでピトフーイの手を狙う。だがくるくると回転する光子の剣がその全てを消失させ、さらに神速の踏み込みと共にこちらの銃を狙ってくる。愛銃を両断されることを危うく回避し、ピトフーイの剣の巧みさに舌を巻きつつバックステップ。障害物など知ったことではない、とばかりに伸びる剣を戦々恐々としながら見切っていく。
......なまじ剣が巧みなだけに、フォトンソードが最強の矛でありながら最強の盾と化している。致命弾のみをガードするフォトンソードは厄介なことこの上ない。
「くそがっ」
空気を焼く光子の剣を睨み、俺は息を吐いた。これでは悪戯にこちらの弾丸が消費されるばかりである。
拳銃弾では簡単にフォトンソードで防がれ、勝機のある三点バーストによる超高速射撃を射つには距離が遠すぎる。かといって迂闊に近付けば手足を切り飛ばされて終わるし、多少の被弾では反動で動けないこちらに接近されてやはり斬られて終わる。先程の至近距離ぶっぱでかなりの体力を削れたはずだが、それでも万全を期すためには急所に六発全てを叩き込みたい。
......せめて、アサルトライフルがあれば。
「............はっ」
一瞬過ったそんな考えを蹴り飛ばし、俺は鼻で笑う。戦場に"たられば"はない。今ある武器でどうにか現状を打開する策を思い付くしかないのだ。
だが、現時点ではどうにも出来ないのも事実。ならばどうするか。
「............ちっ」
出てきた案は二つ。まず思い付いたのは、ガソリンに引火させて爆風で吹き飛ばすこと。だがエンジンブロックを貫けるだけの火力はないし、第一それをやると俺も死ぬ。そのため却下。
そして二つ目。ーーーどうにかして鉛玉をぶっこんで殺す。つまり、無策無謀超行き当たりばったり大作戦である。やったね孔明も真っ青だ。
「くそったれが」
どうにもならないという事実に気付き、俺は低く呻く。拳銃弾ではなくもっと高速の弾でもあれば、防がれることもないのかもしれないがーーー
ーーーちょっと待て、何故防がれる?
「............」
拳銃弾は遅いし火力は低いし狙いは甘い。だが、それは他の弾丸や銃と比べればの話だ。長距離からの射撃を避けるならまだしも、この至近距離では生身での回避など不可能。ましてや、弾道予測線など見てから避けるなど余りに遅すぎる。この距離では、弾道予測線が見えた瞬間にはすでに撃たれているのと同義なのだ。つまり、ピトフーイは弾道を予測できないはずなのだ。予測して防ぐなど"有り得ない"。
ならば何故防がれた。現に今、ピトフーイの体を狙った弾丸はその悉くが防がれている。どうやって防いでいる。如何にして弾道を予測している。もしや何らかのスキルか? いやそれはない。ならば、何故、どうやってーーー
「あらぁ、もう弾が切れたの?」
「っ、んなわきゃねーだろ!」
牽制の意味も込めて後方へと銃を乱射。その何発かは命中弾だったはずだが、それらは全てフォトンソードによって蒸発させられる。やはり、奴は何らかの手段で弾道を予測している。
直感? 否。そんなあやふやなものだけで通用するほどこの世界はご都合主義じゃない。どうやっている。何処で判断している。お前は何処を見てーーーーーー!
「っ............!」
ふと、稲妻の如く脳裏を走った閃き。驚愕に息を飲みつつ、俺は路面を蹴りつつ後ろへ振り向く。
ーーー今思い付いた通りなら。奴は、これを防いでくるはず。
慎重に狙いを定めてピトフーイの手足を狙って発砲。そしてその悉くが見事に切り裂かれたのを見て、俺の中の疑念は確信へと変わった。
「はっーーー」
成る程、そうか。そういうカラクリだったのか。確かに今まで俺もそうやってきたのだ。極悪難易度のボスなんざ、予測線を見てからじゃ回避なんてできっこない。でなければ、毎秒数百の弾丸が蹂躙する空間を走破することなどできやしない。なんだ、考えてみれば簡単なことじゃないか。
ーーーだが、仕組みがわかった所でどうなる?
「......やるっきゃねーだろ」
全力で距離を取るべく疾走していた足を止め、俺はくるりとピトフーイに向き直る。距離は目算にして20メートル、様々な障害物を利用して逃げていたためそこまで離れていない。
そうしてそちらを向いた俺を見て、ピトフーイはにぃ、と笑った。
「諦めたのかしら? それとも、武士みたく一騎討ちをお望み?」
そういうの嫌いじゃないわよ、と嘯くピトフーイ。それを見て、俺は鼻を鳴らして応じた。
「まぁ、覚悟を決めたって点じゃ似たようなもんだがな」
「斬られる覚悟かしら」
「いんや。撃つ覚悟だ」
「へぇーーー」
さらに笑みを深めると、ピトフーイはす、と腰だめにフォトンソードを構える。そして、唄うように言い放った。
「じゃあ来なさい。こっちだって生半可な練習したわけじゃないものーーー全部斬って、最後にその首を叩き斬ってあげる」
「ここは銃の世界だ。世界観間違えてんじゃねーぞ」
自分の装備を棚にあげてそう返し、俺は干将と莫邪を構える。ぴたりと照準を合わせ、ピトフーイの眼を見て睨む。
「......無茶なことでもない。不可能なことでもない」
自身に言い聞かせるように、呟く。そして俺は静かに呼吸を止めーーー
「......え?」
"眼を閉じて"、その引き金を引いた。
"眼を瞑ったまま"引かれる引き金。一見すると、それは自殺行為にしか見えない。それもそうだ、敵を目前にして瞼を下ろすなど愚昧に他ならない。
ーーーだが、その弾丸はピトフーイの右肩を寸分違わず貫いた。
「なっーーー!?」
「
ピトフーイは驚愕に眼を見開き、相対するシュピーゲルは静かに眼を開いてその戦果を確認する。彼の予想通り、ピトフーイは彼が放った弾をーーー瞑目したまま放った弾を防げなかった。今までならば容易く斬って捨てていた弾丸を、だ。
ならば何故、今になってピトフーイがシュピーゲルの弾丸を防げなかったのか。理屈から説明すると、そもそもピトフーイは弾道予測線を見てから斬っているわけではない。この近距離では弾道予測線の出現と発砲のタイミングはほぼ同時と言ってもいい。故に、予測線を見てからの回避や防御は間に合わないのだ。
そう、ピトフーイは弾道予測線を見ているのではない。"弾道予測線を予測している"だけ。それだけ聞くと意味がわからないかもしれないが、別にそう難しいことではない。弾道を読み取るのに、弾道予測線ではなく他の情報を元に推測しているに過ぎないのだ。
ーーーその情報源とは即ち"視線"。ガンナーであれば狙うべき部位を注視するのは必至。ピトフーイはそれを逆手に取り、敵の眼の動きから狙ってくる箇所を推測ーーーそして怪物じみた戦闘勘と蓄積された膨大な戦闘経験から引き金を引くタイミングを読み、その弾道上にフォトンソードを重ねて置いていたのだ。
「............ハハ、ハ」
才能と経験、その二つが無ければ不可能な絶技。だがその絶対防御も無欠を誇るわけではない。眼球の動きから弾道予測されるのなら、それを見せなければいいだけのこと。即ち、"相手を見ずに撃てばいい"のだ。
ーーー無論、そんな馬鹿げた芸当が出来る人間などいるはずがない。いや、いるはずが"なかった"。
「アハ、ハハハハハッーーーーーー!」
故にピトフーイは笑う。自分以上に狂った人間の存在を知って、笑う。それを思い付いたとしても、実際に行動に移すかは別だ。しかもそれを成功させてしまうなど前代未聞。
ーーー考えてみるがいい。何処の世界に、敵を見ずに撃つ狙撃手がいるーーー?
「私よりも頭がおかしいヤツがいたなんてねぇ! 誇りなさいシュピちゃん、あんたも相当狂ってるわよぉ!」
「ここまで嬉しくねぇ賞賛は初めてだな、おい」
そう返すとシュピーゲルは再び瞑目し、そして撃つ。だがピトフーイとて棒立ちのままではない。左右にステップを刻み、全力で距離を詰めるべくダッシュするもーーーそれでも当たる。正確無比に膝を撃ち抜く弾丸に笑みを浮かべ、ピトフーイは獣の如く地面に手を付いて駆けぬける。
......先程編み出した技術、すなわちエムと同じ技が【
「アハ、ハハハハハァーーーッ!!!」
「哭け干将、唄え莫邪ーーーッ!!!」
大地が爆ぜ、剣鬼が駆ける。だがその動きの悉くを完璧に予測し、白黒の二挺剣銃が咆哮を轟かせる。火を吹きながらばらまかれる弾丸は狂人の体力を削り落としていくも、その疾走は止まることがない。
肩、肘、膝。そしてさらに手首までも千切れ飛び、至るところから鮮血にも似たダメージエフェクトが飛び散りーーー
「............言い残す言葉は?」
シュピーゲル自身も驚くほどに、正確無比かつ凶悪な銃撃。それによって四肢を砕かれ、残り僅か1メートルといった所でピトフーイは横たわっていた。
だがシュピーゲルとて無傷というわけではない。最後の最後、彼女の右手首を吹き飛ばす直前に彼も左手を斬り飛ばされていた。1歩間違えれば、負けていたのは彼だったのかもしれない。膝を撃ち抜いた一発が無ければ危うかっただろう。
「ーーーあは」
額に突き付けられる白銀の銃口。そしてその下にある銃剣を見つめ、ピトフーイはへらりと笑う。ああ、十分すぎるほどに楽しめた。ここまで血が沸いたのは久々だった。予選一回戦で敗退というのは少々箔が付かないが、まぁそれを差し引いてもお釣りが来るほどに充実した殺しあいだった。
思い残すことなどない。だが、願わくばーーー
「
「
この愚かな同類に救済を。
ピトフーイがそう胸中で呟くと同時に、白い自動拳銃の引き金が引かれた。残り僅かだった体力が虚空に消え、幕引きはあっさりと終わる。
ただ空薬莢が地面に転がる音のみが静かに響きーーー少年は静かに溜め息を吐くのだった。
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Dブロック予選一回戦《シュピーゲル》vs《ピトフーイ》。勝者《シュピーゲル》。
ーーー【
結構ぐだった予選一回戦もこれで終わり。え、主人公が強すぎる? タグでもHAIJINだと言ってるジャマイカ。
これでキリトくんの前に立っても瞬殺はされないレベルになったはず!(え