残念な俺が【仮面】になったらチートみたいに強くてアプレンティスちゃんをクンカしていたらいつの間にかラブラブになっていた   作:テオ_ドラ

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俺が【仮面】になってしまったのはどう考えても主人公が悪い

「寄生乙www」

 

「見かけたら即BL、覚えていくといい」

 

「視界に映ると吐き気がする」

 

俺のことは巷ではこう言われているらしい。

別に俺は寄生をしていたつもりは断じてない。

ただちょっとお腹の調子がいつも悪いから

みんなの後ろをついて歩いていくことが多いだけで

そしたら気付いたらレベルが上がっていた。

難易度もエクストラハードに行けるようになったが……

 

「そう、みんなが強すぎるだけなんだ」

 

俺が戦わなくてもクリアできるから

ラッキーライズついた防具の+0でいいじゃん?

攻撃する前にみんなの攻撃で敵が勝手に蒸発するから

愛用のアンブラロッド+3を

ずっと装備しててもいいじゃん?

まあ俺ハンターだけど。

サブ?

ファイターだけど何か文句ある?

 

しかし、それの何が行けないのか。

 

最近は俺が緊急クエストに行ったら

全員がクエスト破棄していなくなるし、

ロビーで話しかけてもブラックリストに入れられているのか

誰もピクリとも反応もしない。

 

「……世界が悪いんだ」

 

そんな俺のもう話し相手になってくれるのは

ドゥドゥくらいしかいない。

モニカなんて俺の顔を見たら唾棄しやがった。

クーナちゃんはステージの上から、

クーナグッズで身を固めている俺を

ゴミ虫のように見下す始末。

 

正直、俺はそんな毎日に疲れていた。

 

「死のう」

 

俺が今いる場所は惑星ハルコタンの

白の領域に立ち並ぶ建物の上。

一応、2階建ての建物だし、

頭から落ちたら多分死ねるんじゃないだろうか。

 

※実際にはその程度でアークスは死ねません。

 

そんな時に下から声が聞こえてきた。

 

「……これ以上、彼女を苦しめるな」

 

「どういうことなんだ、答えろ!」

 

片方の声は知らないが、叫んでいる男なら知っている。

今や知らぬ人がいないほどの有名アークスだ。

ダークファルスを次々と葬り去る実力、

そしてまるでアイドルのような端正で甘いマスク。

優しいわ強いわでもう色んな女性アークスから

チヤホヤされている癖に特定の相手もいない。

恐らく、男性アークスにとって、

ダークファルス以上の敵だと認識している。

 

「貴様がどう動こうと、無駄だ。

 結末は、彼女にとって

 最悪のものしかにならない」

 

「……俺は絶対に諦めない!

 マトイも、このオラクルも救ってみせる!」

 

「彼女のことを想うのであれば

 ……ためらわず、彼女を殺せ」

 

「ふさげるな、お前に何がわかる!」

 

なんだか熱くなっておられる。

 

「あー、ヒーロー様は言うことが違うなぁ」

 

死ぬ前に聞いたのが、

あのいけ好かないアークスの声というのは最悪だ。

 

話し合いは終わったらしい。

「待て!」という叫び声と

共に足音は遠くなっていった。

 

「あのイケメン様が、俺の死体を見たらどう思うか」

 

まあどうせ、俺の顔も知らないだろうけどさ。

なんかそう考えると死ぬのが惜しくなってきた。

俺が自殺なんてやっぱやめて帰ろうとしたところで、

 

ビュオオオオオオ……

 

ハルコタンの巫女様も俺のことが嫌いなのか、

突然に激しい突風が吹いた。

そんな天候変化はないのに何故か突風が吹いた。

 

「あっ」

 

俺は高く巻き上げられ飛ばされ、

ひゅーんと頭から落下する。

 

そして……

 

ガコンッ!

 

何かに激突した。

 

「いてて……くっそ……

 死ぬほど痛いぞ」

 

俺は残念ながら死ねなかったらしい。

頭を抑えながら立ち上がると

 

「あれ?」

 

目の前に自分が死んでいた。

情けないくらいアホ面で明らかに死んでいた。

 

「じゃあ俺は幽体離脱したのか?」

 

そこでふと思い出す。

落下した時に何かにぶつかったと。

そういえばやけに視界が狭い。

まるで何かをかぶっているかのようだ。

 

その視界のなかで体を見下ろす。

 

「あれ?」

 

遠目にしか見たことがないが、これは知っている。

謎のピシっとした黒いスーツに、

悪趣味な赤いネクタイ。

 

「俺、【仮面】になってんじゃん?」

 

ダークファルスの仲間と噂される、

【仮面】になっていた。

どうやら下を歩いていたところに、

俺は頭からぶつかったらしい。

さすが仮面、堅くて何ともない。

 

「やっべ、もしかして体乗り移ったのか?」

 

ありえないことだが、

実際に今起きているのだから仕方ない。

でも本当の体よりなんか動きやすい。

これはこれで悪くない気がする。

さようなら肥満体系、

ようこそ筋肉体質。

 

「そういえばこいつの顔って結局どんなのだろ」

 

いつ拍子で元の体に戻るか、

いやもう死んでるから

この乗り移った状態みたいなのが

戻るかわからないので

とりあえず気になったことを試す。

 

どういう構造かよくわからないが、

触るとすぐに仮面は外れた。

 

「え?」

 

自分の死体から鏡を取り出して覗くと、

そこに映っていた顔は……

 

「あいつの顔じゃん」

 

みんなのヒーロー様の顔だった。

オラクルの英雄と【仮面】が同じ顔?

どういうことだ、と思う以上に

湧き上がる衝動があった。

 

「俺、もしかしてイケメンになった!?」

 

これはいい。

だって考えてもみてほしい。

 

あいつに成りすませば、

センパイにぞっこんのイオにあんなこともできる。

アイドルクーナとも仲が良いらしいから

こっそり部屋に連れ込んで押し倒せるかもしれない。

パティちゃんの胸揉んでも

「いやん、エッチ!」で済まされるに違いない。

 

「やっべ俺のハーレム生活始まったじゃん!」

 

夢と股間が膨らんできた。

人生の最後から一転、

輝かしい人生の始まりが来たのである。

アザナミとベットで

朝を迎えることも現実にできる。

 

「待てよ?

 あいつに成りすますには衣装がいるよな?」

 

生憎とあいつの持っているような

お洒落で格好の良い衣装はないし、

勿論買えるようなメセタもない。

さすがにこの格好では仮面を外しても疑われるだろう。

冷静になったせいか勃っていた相棒も治まってしまった。

 

「そうだ、採掘場跡に行こう」

 

今日のデイリーは採掘場跡探索だから、

メセタを稼ぎにきているアークスもいるだろう。

そいつらの隙をついて財布を奪おう。

 

とはいえしかし困った。

オケイハンは言うまでもなく

キャンプシップもさすがに

【仮面】は乗せてもらえないだろう。

目を閉じて採掘所を思い浮かべる。

さてどうすべきか。

 

けれど、俺は今は【仮面】なのである。

惑星間の移動なんて

へそで茶を沸かすよりちょろかったのだ。

 

「ゲートトンネルを抜けるとそこは採掘場跡でした」

 

しゅわわーんという軽い音ともに、

俺は採掘場跡のある惑星リリーパに来ていた。

 

「【仮面】だと!?」

 

「どこから出てきたんだ!?」

 

そしてタイミング悪く、

アークスのパーティと遭遇してしまった。

相手は3人、いずれもレベルは高そうだ。

さすがに俺も勝ち目がないと思い、

 

「ま、まあ待て。

 戦わずに俺、帰るからよ。

 そういうのも、たまにはいいよな?」

 

手を前に出して戦う意思がないことを伝える。

けれど野蛮なアークスどもは

 

「コートダブリスDよこせ!」

 

「金よこせ!」

 

雄叫びを上げて襲ってきた。

これがレア狂いのアークスどもか。

 

「お、おいよせよ!

 話せばわかる!」

 

俺は慌てて腰に下げていた

コートダブリスDを投げ捨てる。

こいつを囮に逃げるしかない。

けれどなんだかよくわからない力を発揮したそれは

 

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「なんて威力だ!」

 

ダブルセイバーが俺を護るように

勝手に軌道で飛ぶ。

円を描くように薙いでいく……

そう、デッドリーサークルだ。

 

どれほどの威力だったのだろうか。

全身サイキ防具や

イデアル防具をつけているはずのアークスたちが、

紙屑のように吹き飛ばされた。

やばい、これは怒らせてしまったか?

 

「あれ?」

 

しかし彼らはぴくりとも動かない。

さすがに死んではいないが、

全員気を失っているらしい。

 

「俺つぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

俺は【仮面】の力を完全に手にしていた。

やばい、2回目だけど俺の人生始まった。

キタコレ。

 

「しかし、勢いでアークスは倒したものの……」

 

よく考えなくてもメセタがあっても、

今の俺がビジフォン端末とか使えるとは思わない。

服を剥ごうにもこいつら、

ティンクルロビンとか

ワンダーシーカーとか……

つーか一人、ブーメランパンツだし。

強面の連中なのに可愛い系衣装とか、

こいつらアークス稼業馬鹿にしすぎだろ。

 

さすがにこんなの着て

あのイケメン様に成りすますのは難しい。

 

「くそ、俺は最強だけど、

 どうやってティアの腋をペロペロすればいいんだ」

 

そこで思い立つ。

 

「いや、別に和姦じゃなくていいんじゃね?」

 

今の俺は【仮面】なのである。

あと最悪、顔はあいつそのものだから、

色々と誤魔化しが聞くのではなかろうか。

つまりひょっとしてひょっとしてレイプ上等?

俺の犯る気と股間がむくむく上昇する。

 

「よっし!

 さっそく仕事しますか!」

 

今、契約はなされた。

ダークファルスと契約して魔法戦士になったのだ。

さっそく手当たり次第探そうと思った矢先、

 

「くそ、私に近づくな!」

 

遠くから切羽詰った声が聞こえてきた。

若い女性の声だ。

 

「キリッ」

 

今の俺は念じればすぐに飛べる。

さすが【仮面】

凄いぜ【仮面】

俺様は【仮面】

 

ワープした俺が飛んだ先にいたのは……

 

「私はダークファルス……

 いや……ダークファルスじゃないんだ……」

 

機甲種の犬たちに襲われている女性。

 

「ダークファルス【若人】?」

 

アークス本部から、

「ひょっとしたらただの被害者かもしれない」という

そういう情報は聞いていた。

だがまあ、自分には縁のない話だと思っていた。

しかし彼女は既にボロボロの有様で、

機甲種相手にも満足に戦えていない状態だった。

 

(このまま放置していたら、

 犬たちに犯される薄い本みたいな展開になるのだろうか)

 

それはそれで見てみたい気もする。

だが、

 

「ゴクリ」

 

彼女は事前に戦っていたのか、

服は破れて何故かもう半裸のような状態だ。

よくよく見ると顔立ちも綺麗なニューマンだし、

なにより半分ポロリしてる果実が美しい。

なにより半分ポロリしてる果実が美しい。

 

大事なことである。

 

大切な果実は全人類の財産だ。

それが穢されることは

ドゥドゥが強化に失敗するよりも許されない。

というか穢すのはこの【仮面】でなければならない。

 

「ふん!」

 

今の俺からすれば機甲種などラヴナッピーよりたやすい。

 

「ハリケーンセンダー!」

 

ハリケーン一発で全ての敵を吸い込み破壊する。

 

ガシャンガシャン!

 

バラバラになって機甲種は動かなくなった。

たかだか雑魚共、PA一発で十分。

 

「ふふ、俺つえー」

 

キリッ。

仮面の下で俺はニヒルに笑う。

 

「【仮面】……どうして、私を助けた」

 

そんな俺を床に腰を抜かしたような体勢の

【若人】は呆然と見上げる。

もう少し足を広げてくれたら花園が見える。

俺は視認されない動きで

微妙にズレていきながら口を開く。

 

「ふ、俺がお前を助けるのは当然だ」

 

「何故だ! 私は……ダークファルスじゃない!」

 

見当違いなことを言う彼女が

なんだか猛烈に愛おしくなってきた。

 

「馬鹿野郎!

 そんな些細なことはどうでもいい!」

 

そして俺は仮面を外して、

イケメンな素顔を晒して決め台詞を告げた。

 

「お前は俺の嫁にするのだからな!」

 

キリッ。

最高にカッコよく決まったはずだ。

あまりの興奮ぶりに、

俺の下半身も雄姿を奮い立たせ完全戦闘態勢である。

 

けれど何が気に食わなかったのか、

彼女はこの世の絶望のような顔をしていた。

視線は俺の下半身の隆起火山に向けられている。

 

もしや俺の視線が露骨に破れた箇所に

向いていたのに気付いてしまったのか?

 

「来るな、お願いだからこっちに来るな!」

 

後ずさりしながら彼女は手に持っていたツインダガー、

アブレンティスグラッジを投げつけてくる。

顔面に飛んできたのを慌てて掴むと、

 

シュンッ

 

【若人】はその隙にワープして逃げてしまった。

 

「ちっ……問答無用で押し倒せばよかった」

 

俺は失態に舌打ちをしてしまう。

すぐに追いかけようとして

 

「そういえばこれは、【若人】が装備していた

 ツインダガーか……」

 

クンカクンカすると、微かに【若人】の汗の香り。

 

「おお……」

 

俺は思わず

 

……

 

……

 

……

 

「ふう」

 

荒ぶっていた心も随分と落ち着いた。

先ほどまで何を生き急いでいたのか。

賢者の心を手にした俺は頷く。

 

「ダークファルスの嫁にはダークファルスが相応しい」

 

結論付けた。

あの肢体……目に焼き付けるだけでは満足できない。

 

「ふふ……待ってろよ、俺の嫁」

 

【仮面】として新たに人生を歩み出した俺は、

強い決意と共に

空想と妄想の加速する冒険へと繰り出した。

 

 


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