「小町、入るぞ?」
そう声をかけながら小町の部屋のドアをノックをする。
俺の部屋で散々泣いた後、自分の部屋に行ってからそれっきりなので、心配になったから来てしまったのである。
ちなみにお見舞いの品はマックスコーヒー。きっと気に入ってもらえるに違いない。
「う~ん」
そう小町から返事が返って来たのを確認すると、ゆっくりとドアを開けた。
「もう大丈夫か?」
「そだねー、なんとか元気だと思うよ?」
「そうか……なら良かった」
「あれ、お兄ちゃんがひねくれてない!?」
「何だよ、ひねくれてた方が良いのかよ……。何なら今日は見舞いの品まであるぞ」
そう言ってから、手に持ったマックスコーヒーを渡す。とりあえず受け取り拒否はされなかった。
そういえば、小学生の時に英会話のクリスマスの授業でクリスマスカードを作り、プレゼント交換の様に円形に座って隣の人に回していくというぼっちのことをまるで考えていない授業があったが、その時に俺が最初にクリスマスカードを渡した隣の奴が「爆弾だー!」みたいなことを叫び出したので、結果的にクラス全員で爆弾ゲームをしているみたいになったことを覚えている。
当時の俺はそれだけで超悲しかったのだが、真心を込めて作ったそのカードが最終的にクラスメイトによって紙飛行機にトランスフォームして校庭に向かってフライトをし始めた辺りからは、あまりのショックで覚えていない。
小町は今の俺がひねくれていないと言うが、そんなに簡単に変わりはしないので、「受け取り拒否」という単語が浮かんだだけで嫌な思い出を思い出してしまうくらいにはやはりひねくれていた。
それも問題だが、小町がひねくれた人間が好きだというのならそれも問題である。
「おぉ、ありがとね」
小町はそう言ってマックスコーヒーを開けると、一口だけ飲んでから近くにある勉強机に置くと話し始める。
「うーん、小町ね、また昔みたいに結衣さんと雪乃さんとお兄ちゃんの三人と遊びに行きたいなぁって思うんだよ。でも、お兄ちゃんだって結衣さんに電話してくれたりとかいろんなことしてくれたでしょ? だから、申し訳無いなっていうのと、小町の受験もあるから時間が無いなっていうのもあってさ、どうしたらいいかな……」
小町が意外とまともなことを考えていたので少し驚いてしまった。
「まぁ、あいつらは何も言わないだろうけどな……お前、また途中でいなくなったりしないよな? 場所によっては本当に心配なんだからな。あ、今の八幡的にポイント高い」
小町は、へへっと乾いた感じに笑うと、さっきよりも少し元気なく言う。
「でもね、お兄ちゃん。後ろからお兄ちゃん達見てると、『私って要るかな?』って思っちゃたりもして……何か悲しくなっちゃうんだよね。でも、今度は頑張ってみるよ」
こいつ本当に今までそういう意図でいなくなってたのだろうか……いくらハイブリッドぼっちとはいえ、何か心にくるものがあったらしい。
「別に無理しなくてもいいんだからな?」
「んーん。やっぱり、このまま疎遠になる気がしちゃってさ。でも、やっぱり途中でいなくなってもいい? その時はちゃんと言うから」
「そうだな……」
俺でさえ疎遠になるかもしれないのだから、小町はなおさらだろう。
これからもこのままの関係が維持出来れば、と思わないことはないが、きっとそれは俺が忌み嫌ったものだ。始まった以上、それもいつか終わってしまう。
……なら、俺は誰も傷つけずに終わりたい。
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