デミえもん、愛してる! 作:加藤那智
「こんこん」
「お」
「ウラエウスちゃん、こんちゃ」
「ちゃんと寝た?早くない?」
「ねましたー3時間くらい」
「寝ないとそただないぞ」
「うー、じゃあ少しウロったらねます」
「うむ」
「うんうん」
「ウラちゃんきたのに残念><ボクそろそろおちますーおやすみなさい」
「おやすー」
「おやすみなさい」
「おやすみなさい」
こんばんわ美代です。もといウラエウスです。
いまわたしはナザリックにいます。ギルドメンバーです。
いつのまになんで?て、思いますよね。
わたしも驚きました、な、何が起こったのかわからねーと思うが……なんていまだに夢かもしれないとほっぺをつねることが……。
思い起こせばーーーー。
◇◇◇
βテストが開始してから3ヶ月がたったころ、わたしは人間種プレイヤーをさけつつ、起きてる時間=ユグドラシルという状態でレベル上げをしていて、その日めずらしくソロでレベル上げしてた。
だいたいDMMOをやるときは必ずおにいたんが一緒にプレイをするので。
おにいたんはどうもわたしが1人でダイブしていると変な人にだまされて相手を信じてしまいリアルで呼び出されてしまうんじゃないのか?と心配しているみたい。
おにいたん、前世と今世合わせたら精神年齢けっこう高いから大丈夫だよ?
変な人には引っかからないけれど、やはり1人だとなかなか思うようにレベルは上がらず、デスペナルティをうけてレベルダウン3歩すすんで2歩戻るようなレベル上げ中。
異形種ということで、人間種に絶賛PKされまくり。称号を求めてPKしてくる人や、面白がって多人数でPKしてくる人もいて様々だった。
悲しいのは狩場でモンスターと間違ってPKされることである。
キャラメイクでデミウルゴスにちなんだものにしようとキャラメイクした結果、見た目がでっかいコブラなので狩場でレベ上げしてると範囲魔法の巻き添えで殺されたり、角を曲がってばったりというシチュエーションがあると100%殺される。
そしていまだβということもあり蘇生アイテムは課金では手に入らず、たまーにレア的にドロップする程度。
ちょっとやさぐれそうになる。でもでもでもデミウルゴスに会うためがんばるのだー。もうちょっとレベルが上がれば職業クラス『ヴァルキリー』の影響で戦士系装備するために手足が生えてきて、もっと上がれば見た目の異形部分は尻尾だけになるから、そんなモンスターと間違われないと思うし。
そんなふうににょろにょろレベ上げしながら、ヌっころされつつも、どうやったらアインズ・ウール・ゴウンに入れるのかな〜ということも考えていた。
いまごろどこかで彼らもレベ上げしてるんだろうなーどこでやってるんだろう。たっち・みーさんがその木陰からさっとでてきてPKから助けてくれたりとかしないかな。
……。(想像中)
わーダメダメ!いきなりアインズウールゴウンの人と会うとか緊張してダメー!
ととりあえずギルド入会条件のひとつの「異形種であること」はクリアしてるし、海外の大学通信あと1〜2年で卒業できそうだから「社会人であること」もクリアにならないかなー!
おっと、また人間種に後ろから斬られた。いてて、痛くないけど。油断禁物。くっそーレベル上がったらやっつけてやるー。
横たわりながら死に戻りを待つ。
するとおねえちゃんから電話がかかってきた。ダイブしていてもリアル電話は取れるようになっているので、コンソールの「着信」をおして電話に出る。
『みー、いまいい?』
『大丈夫ーどしたのおねえちゃん?お仕事おつかれさまー』
『今日もう終わったの。ねえねえ、わたしもユグドラシルはじめたわ』
『ほんと!今度狩りいこーよ!』
『いこいこ〜それで私ギルドはいったのね』
『はやっ!』
『で、そのギルドの人に狩り誘われたんだけど、みーも一緒にレベル上げしない??』
『えー悪いよーギルド入ったからおねえちゃんのことレベ上げしてくれてるんだと思うし。わたしはまだギルド決めてないからさー』
『んー、なんかね、弱い異形種応援ししたい!て人たち?なのよ。それでみーのことも話したら一緒に狩りどう?て』
『んんーありがたいお話だけど迷惑じゃないかな〜』
『そんなのわたしより、みーのがレベル高いからへーきよ』
『うーん、うーん。ほんとにいいならちょっとだけ〜』
『おっけー!わたしからフレンド登録、パーティリーダーからパーティ申請をみーにとばすようお願いしてみるね。みーのキャラ名ウラエウスだったよね』
『うん!』
たま〜〜に運良く偶然野良パーティに入れてもらうことはあったので、今回もその類だと思い、嬉しいなー嬉しいなーとノンビリ申請を待っていた。
『ぶくぶく茶釜からフレンド申請がきました。承認しますか?』
『たっち・みーからパーティ申請されました。承認しますか?』
!!!!????
えっ!?
ぶくぶく茶釜さ?!
たっ、たっちさ、ん??
ど、どうして……!おねえちゃん!!??
え、なにこれ、どうしよう、
ぶくぶく茶釜さんにたっちさんだ、たっちさん……!ぶくぶく……!
『みー大丈夫?』
『だいひりゆぬぶ、』
『みー!しっかり!どうしたの!』
し、しっかり、わたししっかり、とりあえず承認、承認するんだ……、承認……承認てなんだ!
ボタン、ボタン、ボタンを押す押すこと承認、ボタンはどこーーーーー…!
ああ、コンソールとじてた、ばかばかっばかばかー!
よ、よし、承認するぞー、しちゃうぞー、しちゃうんだ、あああー………っ!
「こんちわ」
「こんにちわー」
「み…ウラっちゃん、どうしたの?」
「よろよろ」
ひゃああああーーー!
パーティ欄に、たっちさんと、やまいこさんと、モモンガさんとおねえちゃん、ぶくぶく茶釜さんがいる……!
◇◇◇
やー、本当あのときは驚いたなあ。
おねえちゃんがまさかぶくぶく茶釜さんだったなんて。お仕事女優目指してるのは知っていたけど、声優までやっていたなんて。
わたしは帰ってきたおねえちゃんに思わず抱きついていっぱい感謝した。
おねえちゃんありがとう!!
そうしたら「弟ばっかりいい顔させるわけにもいかないしね」と頭を撫でてくれた。
おねえちゃん好き!
「……エウ……、ウラエウスさん?起きてるのかな」
「へんじがないまるで」
「死んでないですー」
「よかった、寝落ちかと思いましたよ」
「おはー」
「いま狩りしてないし寝落ちててもよかったんじゃないですか?」
「は!?そうですね、ごめんなさい起こしてしまって」
「だいじょうぶですーねてなかったです。ギルドに誘われた日のことを思い出してて、ちょっと、ぼーとしてました」
「ああ、あの時ですね」
「はい」
「風の峡谷行てきま!」
「いってらっしゃい」
「いってらっしゃいです」
◇◇◇
アインズ・ウール・ゴウンの面々と一緒に狩りをして、そろそろ解散というころおねえちゃんと同じくギルドに誘われ、無事にギルドに入ることができた。
社会人しか入れないんじゃなかったのかな?
と、不思議に思っていたら、ギルドはまだできたばっかりみたいで、メンバー数まだ二桁なく学生も混ざっていた。
わたしの頑張りは一体…………………。まあでも課金にお金が必要だったし結果オーライかなー。
……なんか驚きのあまり頭がはたらかなかったけど、おねえちゃんがぶくぶく茶釜さんならおにいたんはペロロンチーノさんてことだよね?でもおにいたんは人間種キャラだし、キャラ名も違うし……。ま、まさか、パパンかママンに隠し子とか!?と戦々恐々としつつ、「ギルドに入ったよおねえちゃんと同じところだよー」とおにいたんにメールで伝えてみた。
ポーン!
返信はやっ!
「俺も入る!」
いやいやいやおにいたん。入るっていわれても。おにいたん人間種だし。一応いまだに話しかけるのドキドキ緊張気味のギルドマスターのたっち・みーさんとサブギルドマスターのモモンガさんに聞いみたら、
「おにいさんは大歓迎だけど、異形種限定なんですよね……」
としょんぼりコマンドとともにいわれた。アインズ・ウール・ゴウンだしそうだよね。そのままおにいたんに伝えたら、ギルマスの名前おしえてって言われたからおしえた。あ、たっちさんの動きが止まった。お、おにいたん、おかしなこといってないかな、大丈夫かな。
『ペロロンチーノがギルドに入会しました』
えー!!
おにいたん!?おにいたんなのか、な……?
あわててメッセージで話しかけるとやっぱりおにいたんだった。速攻アカウント削除して新しい異形種キャラを作ってきたみたい。「人間種キャラはいいの?」て聞いたら、「元々みーがPKされにくいように人間種キャラ選んだだけだからへーき。それより一緒にゲームできない方が困る!」
ほんとにおにいたんがペロロンチーノさんだった……。え、てことは、シャルティアを作ったのはペロロンチーノさんだから、つまりそういう……。
はっ!だからおにいたんてわたしによばせてたの!……おにいたん。
今度こっそりおにいたんのお部屋のホロPCの隠しフォルダ今度こっそり漁っちゃおー。えへへ。
PCみちゃらめえ!