デミえもん、愛してる!   作:加藤那智

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気がつけば、ユーチューバーだった

 ホログラフィックにうつるユグドラシルの宣伝ホームページを穴が空くほど隅々まで見通す。

 

 

『ユグドラシル』が来年オープンβテスト開始。その後、正式サービス開始予定……。

 

 

 じゃあアインズ・ウール・ゴウンのギルドが結成されるの?

 

 至高の41人が集まる?

 

 階層守護者が作られる?

 

 

 

 ーーーーデミウルゴスは本当に存在する……。

 

 

 

 

 

「イヤアアアアアホォォォウーーー!!!!!」

「美代!?大声出してどうしたの!!」

 

 

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

 

 

 あぶなかった。昼間は歓喜の雄叫びをあげて、母に頭がおかしくなったと思われそうになった。

 だめ、笑いをこらえきれない、どうしよう、嬉しすぎる、隠さないと、うっくくっく!

 

 

「来年始まるDMMORPGは、サービス終了時にインしていたら異世界にいける」

 ……なんていった日には、病院入れられちゃう。あーだめだめ。おさえるのよ、わたし。

 

 

 わたしはベッドで身悶えながら、あらためて自分がいまいる世界がどこなのか受け入れようとした。

 

 

 いまいる世界は前世と違う世界だった……ここは……ここは……オーバーロードの世界だ!

 

 わたしは憧れた物語の世界に生まれ変わっていた!

 

 

「信じられない……」

 

 

 興奮をおさえきれずまた体が身悶えてしまう。

 いかんいかん、よしよしよーし、どうどうわたし。おちつけ、おちつけ、深呼吸、すーはーすーはー。

 人生設計の大幅な修正しよう。

 まずは再確認。

 

 わたしは前世で、なりたかった、なれなかった、幸せなお嫁さんになるため、

 ほしかった、愛する旦那様と子供、帰る場所のマイホームを手に入れるため、

 今度こそ努力の方向を間違えずに、努力邁進する気でいた。

 

 

 でも……でも、でもでもでもでも!

 本当にユグドラシルが存在するなら……!

 

 

「わたしは、

 

『デミウルゴスに会いたい』

『できればお付き合いしたい』

『彼氏になってほしい』

 そ、それで、でできれば旦那様になってほし……!

 

 キャー!キャー!!わたしの、わたしの夢てば大胆!」

 

 

 ごろごろごろ!ごろごろごろ!

 

 

 もうだめだ、おさえきれるわけがない。

 右に左にベッドの上で転げ回った。

 ベッドでよかった、布団だったら下に響きやすいから両親にばれてるわ。ありがとう一人部屋。よかった一人部屋。

 えー、こほん、そう修正計画の続きを考えよう。

 

 

「やることがいっぱいだあ……ふふ、ふふふっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

 

 

 

 わたしの日常は変わった。

 

 

「お母さんーまたホロPCかしてー」

「また自撮りするの?」

「うんー」

「もーとりすぎじゃない?」

「幼稚園のわたしは今しかないんだよ、来年はもう小学生だもん」

「洗濯物たたむの手伝ったらいいわよ」

「はーい!」

 

 

 今日学校であったことを話し、父や姉や兄の話を聞きつつ、のんびりと母と一緒に洗濯物をたたむ。

 ちらりと横目で母を見る。お母さん、好き。

 だから一人っ子じゃなくてよかった。

 この間の幼稚園の将来の夢を聞かれたとき、「好きな人のお嫁さん!」て答えたら笑ってたね。

 ごめんね、わたし異世界で悪魔のお嫁さんになるのが目標なんだ。

 会えなくなっちゃうけど、お母さんとお父さんが死ぬまで困らないくらい稼いで残していくからね。

 こっちにいる間はいっぱい親孝行するから許してね。

 

 転移後、こっちの体は死んじゃってるみたいだから、家族にはばれないように気をつけよう……。

 

 

 母が夕食の支度をはじめたら、ホロPCをかりてダッシュで自分の部屋に行き高速で操作をはじめた。

 

 

「さーて、今日の動画中継をはじめますか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

 

 

 

「ではまったね〜!みーの動画みてくらてありがと!!

 …………ふー、今日の再生数もなかなか。つぎはなんの特集にしようかな」

 

 

 わたしはユーチューバーになった。

 今いくつかのチャンネルをつくり動画中継してる。

 日常、ゲームプレイ、投資、語学……

 お気に入りユーザーも増えて嬉しい。

 

 

 え?

 

 

 ユグドラシルはどうしたのかって?

 

 もちろん、ユグドラシルにいってデミウルゴスに会うためにユーチューバーになったの。

 

 意味がわからないって?

 

 デミウルゴスに好ましいって思ってもらうためには、彼に合わせないとね。

 

 デミウルゴスの好きなもの大事なものは?

 至高の41人のアインズ・ウール・ゴウンと、

 その拠点ナザリックに住まうものたち。

 それ以外は眼中にない。

 

 

 だからアインズ・ウール・ゴウンに入らないと見向きもされない。

 じゃあ、ギルドに入れるようにゲームをはじめたら声かけてみればいい、といいたいところだけど、あのギルドメンバーの条件は、異型種、社会人。

 

 

 異型種はクリアできても、

 わたしはオープンβテスト開始時点で小学1年生で6歳、サービス終了の12年後で18歳。

 学生バイトじゃ社会人と認められないと思う。

 だからこのままだとアインズ・ウール・ゴウンには入れない。

 

 

 どうすればいいのか。

 

 

 悩んだわたしは、

 バイトってレベルじゃない位お金稼げばいいのではないだろうか?

 それで、学校は義務教育だから仕方なく通っている、本分は社会人といいはる!

 

 

 ーーーことにした!

 

 

 かといって、現幼稚園生にお金があるわけもなく、

 色々リサーチしたら、時代どころか世界も違うけど、前世の知識は大いに役立つとわかった。

 でも、所詮大人になれば知っていても特にすごいと思われないような知識だ。

 若いうちが花と思い、自身を売ることにした。

 

 

 幼稚園生ブランディングである。

 

 

 まず、マルチリンガル幼稚園生による語学講座の動画を配信はじめてみた。

 

 

 3〜6ヶ国語くらいならインターにざらにいるけれど、24ヶ国語できるのは売りになるんじゃないかなー?

 と思って、語学学習講座をはじめたら、あっという間にお気に入りが増えた。

 

 

 コメントを見ると子供を持つ親御さんたちが多い。

 わたしの動画を見てモデリング、子供が勉強する効果があるようだ。

 

 

「うちの子供が、同年代の子供が語学堪能に話している動画をみて、子供がやる気になりました!」

「どういう風に勉強したらあなたのように話せるようになるんですか?」

 

 

 教育に熱心なのは異世界も変わらないみたい。

 

 

 次に、ゲームプレイ動画を配信。

 殆どゲーム経験のないわたしに自由度の高いDMMRPGのユグドラシルを上手にプレイできるかわからない。

 なので、ユグドラシルがオープンするまで他の類似ゲームをして、ゲームをプレイすることに慣れようとした。

 

 

 完全な素人のゲームプレイ動画になるので、見る人は面白くないだろうと思ったけれど、物は試しと中継してみた。

 意外にもウけた。

 コメントを見ると子供の視聴者が多い。

 

 

 

「ここは◯◯にいくといいよ」

「△△にも行ってみて!」

「今度一緒にレイドボスいきませんか^^」

「みーちゃんかわいい!かわいい!かわいいいいいいいいい」

 

 

 

 多分大きいお友達もいる……気がする。

 動画をきっかけに一緒にゲームしてくれるゲーム友達もできた、とっても楽しい。これ、前世でやってたら勉強しなくなってたなあ。

 

 

 だんだん語学とゲーム配信でお金が入ってきたけど希望金額にはまだまだだった。

 なので、投資する。

 

 

 この頃には、わたしは隠していた学力をさらけだしていたので、親から「社会勉強の範囲で」と投資許可がおりた。

 お金の勉強をしてると思ったようだ、そう思わせた。

 

 

 株や為替はギャンブルである。

 普通にやればいい鴨になって損をする。そして胴元とつるんだやつらが儲かる。

 前世で胴元側にいたわたしは市場が動くのはどういう時かはよく知っていた。

 いつでもどんな時も必ず胴元が儲かるようにできている。

 市場に偶然はない、あるのは必然だけ、問題はそれを誰がいつどこではじめるかだ。

 

 わたしは世界中の政府と企業のありとあらゆる発表をネットで集めて分析し、この世界の胴元のルールを確認した。よし、わかった。

 

 

 とりあえず、為替。

 世界中で行われる選挙と戦争に合わせて買ったり売ったり。

 次に株。

 各国の政府発表に合わせて、もりもり買う、売る。

 

 なかなかいい感じにお金稼ぎできた。

 ただ、相場がどう動くかわかるわたしには、作業ゲームになってきてしまってつまらない。

 試しに、「投資は自己責任で!」と注意書きを書き、体の大きさから幼い子供とわかるけれど、顔と声がわからないように、被り物をしてボイスチェンジャーをして、投資する様子をリアルタイム動画で流してみた。

 

 

 大反響だった。

 

 

 動画をながした初期についたコメントは、

 

 

「子供が投資とかあぶないよ」

「子供がやんなよ」

「生意気」

「金持ってるガキ死ね」

「これだから金持ちの子供は」

 

 

 と、批判8割、心配2割くらいだった。

 でも、わたしが投資利益を上げにあげていき、しばらくしてくるとコメント色が一気に変わった。

 

 

「なんでタイミングがわかるんですか?」

「子供じゃないだろ?」

「どうしてあの時売ったんですかあああ!」

「◯◯社の株は買いですか?」

「くっそおおおお」

「アフリカ・中東ファンドはどう思いますか?」

「ファンドマネージャーに興味はありませんか?」

 

 

 低姿勢7割、罵声3割になった。

 コメント欄が低姿勢と罵声コメントに変化したきっかけは、どこかの政治エコノミストの人のブログみたいだ。

 わたしの動画について話していたようで、そこからSNS経由で広まり、お気に入りが一気に増えた。口コミすごいなー。

 

 

 稼いだ大分お金がまとまってきた。

 この辺からちょっと一人じゃ無理かなーと思ったので、会社を設立。

 ゲーム仲間に声かけて、ネットで募集して面接して正社員エジプト系アメリカ人とシリア系ドイツ人とイスラエル人を雇って、いくつか会社を買った。会社の使い道はいろいろ考えてる。

 

 

 ここまでで、わたしがユグドラシルで重課金、廃人プレイを12年間できるだけのお金は手に入れた。

 βテスト開始までに終わってよかった。

 

 

 最初は、βデータ引き継ぎないかもしれないし、

 正式サービスから課金がはじまるし、

 ユグドラシルは12年運営されていたから、そんなに焦ってプレイすることはないかと思っていた。

 

 

 でも、慣らしのために類似ゲームをプレイしたら、期間限定アイテム、期間限定イベントがあるわあるわ。

 

 

 DMMORPGが、こんなにアイテムをゲットする機会が定期的にあるなんて知らなかった。

 運営期間中のユグドラシルの詳細は『オーバーロード』ではあまり書かれてなかったし。

 

 

 ーーー初期の期間限定イベントでワールドアイテムとかがでたら?

 

 

 アインズ・ウール・ゴウンは、ギルドランキングは第9位。

 それは、他にもっとランキングが上のギルドがあったということで、アインズ・ウール・ゴウンの面々よりも強いプレイヤーがいたということに他ならない。

 ワールドアイテムは総数200種類。

 そのうち、アインズ・ウル・ゴウンのワールドアイテムは、全ギルド最高11個所持。

 

 

 じゃあ、残りの189個は?

 

 

 デミウルゴスは、正直ステータスはナザリック基準でそんなに高くない。

 じゃあ、転移後の世界ではどうかというと、あの世界はプレイヤーの気配がある。

 

 

 転移後から数えて600年前に六大神

 、500年前に八欲王、200年前に十三英雄……。

 

 

 そして彼ら残滓が、

 未来の転移者が、

 ナザリックを、

 デミウルゴスも殺すかもしれない。

 

 ううん、アインズ・ウル・ゴウンのプレイヤーが死んでしまえば、主がいなくなれば彼らは暴走し追いやられた神ーー魔人となる。そして退治される。

 

 

 そんな事は絶対にさせない!!

 

 

 wiki判明してるワールドアイテムは50個までだった。

 傾城傾国で洗脳されたシャルティアのこともある。

 転移後のことを考えるとできるだけ手に入れたほうがいい。

 

 

 だから、βテストの段階で仮想サーバにコピーしてゲームプログラムを分析、計算、把握する。

 正式サービスがはじまったら、

 重重重課金して、

 レベル上げして、

 アイテム集めまくって、

 

 

 

 

 たっち・みーさんと同じワールドチャンピオンになる!

 




まだ小学生!

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