デミえもん、愛してる!   作:加藤那智

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気がつけば、結婚してた

 

 

 あれから物語の強制力にどこまで抗えるのか、どこまで世界改変することができるのか試してみた。

 できることできないことが明確になっていく。わかったのはユグドラシルのシステム根本に関わることーーゲームシステムを大幅に変えるような改変はできなかった。

 

 例えば、

 

「サービス期間を延ばす」

 

「ユグドラシルのゲームシステムを一新し、ユグドラシル2としてニューゲームかつキャラクター持ち越し」

 

 ……といったことはできない。

 つまりサービス終了延期はできず、サービス終了を止められないーー転移を止めることはできない。

 

 ……ならば、と物語(オーバーロード)の強制力の網の目をくぐろうと細かいことを試してみた。

 転移後の事を考え、備えようと思ったから。

 その結果『追加』という形なら若干修正はかかるけれど干渉できることが分かった。

 方法としては、いちプレイヤーとしてアンケート要望を出し、そのアンケート内容を叶えるべくプログラムを加える。ユグドラシルシステムの大きな改変を必要としないことなら多少修正はかかったが、魔法、アイテムを増加させることに成功した。おそらく元々の仕様に《ウィッシュ・アポン・ア・スター/星に願いを》やウロボロスなどの仕様変更効果が組み込まれているため、物語(オーバーロード)の予定調和と誤魔化せているのかもしれない。しかし油断はできない。

 

 

 気を張りつめながら転移対策をしているとき、ふと顔をあげると報告書のギルメンたちはそれぞれ望む幸せを手に入れているように見えた。よかった。

 

 このままでいたい、かわりたくない、現状維持しようとするのはわたしの一人よがりだったのかもしれない。みんなはそれぞれの道を歩んでいる。

 

 ーーでも、物語(オーバーロード)でたった一人転移してしまうモモンガさんはどうだろう。

 

 物語(オーバーロード)でモモンガさんは孤独を感じながらギルドメンバーに再び会える日をか細い希望とともに夢見ていた。モモンガさんを1人で転移させることは考えられない。いまもギルメンを求めて寂しかっているというのに。

ーー聞いてみたらどうだろうか。

 

「もしもゲームのアバターのまま異世界転移したらどうする?ですか?ウラエウスさんも面白いことを言うなあ。うーん……ギルメンに会いたいから戻ろうとするでしょうね。……でもそうですね……ギルメンたちがそれぞれの幸せをつかんでイン率も減り、ユグドラシルも終わるとするなら、そんな風に強くてニューゲームも面白いかもしれません。ちょこちょこ異世界で遊んで、週末は戻ってくる、とかがいいかもしれませんね」

 

 週末帰宅異世界転移か……そんな変更がねじ込めるかわからないけれど……。戻れるとしても種族による精神の変質を考慮する必要がある。転移先で異形種の性質のまま人を殺して元の世界に戻って人間の性質に戻ったら人によっては発狂する。設定だけもりこんだアイテムを作っておこう。ひょっとしたらわたしも強制力で転移できないかもしれない。そうしたらモモンガさんは物語(オーバーロード)のとおりに1人で転移してしまう。そんな寂しいことはさせたくない。彼はギルメンに会いたがっているのだから。けれどそうなったときのフォローも考えておかないと……。

 

 ーーよーし、やるだけやってやる!

 

 気合をいれて前向きに異世界転移準備をはじめなおした。

 本格的に現実の財産をゲームに移し、アイテム、装備を整える。そしてアイテムボックスを拡張、ナザリックを拡張しまくった。ワールドアイテムはユグドラシルゲーム開始直後からリアルマネーも使って集めていたのですでに多数所有している。しかし1人でこんなに持っていても使用条件に犠牲(サクリファイス)を必要とするものが多いため使い切れない気がする。

 

あー家族がいないモモンガさんのために異形種でも子供ができるアイテムも必要かも。なんかないかなー。わたしが転移できない可能性も考えてモモンガさんにわたしておかないと……。考えることたくさんありすぎる。アレキサンダー・セカークはどうだった?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなふうに様々な事態を想定しながら転移準備をしていたら、

「サブマスになりません?」とモモンガさんに突然言われた。

 

 ほふぇ?あ、変な声出ちゃった。何を言われた?サブマス?さ……ブ……。

 

「な、なにをいってるんですか!」

「え?何って、ウラエウスさんにサブマスやってほしいなあと思って、あ、難しいですかね……そうですよね、ウラエウスさん忙しいですもんね……嫌だったら」

「ややややややや!嫌とかないですし!」

「モモンガさん、あんね、みー多分よく分かってないからさ」

「おにおにいたん!?」

「みー、落ちついて。深呼吸よ、深呼吸」

「ヒッヒッフー」

「それはなんか生まれちゃうだろう」

「あのね、サブマスっていうのはサブギルドマスターのことで」

「いやそこはわかっていると思うよ」

「困ったな」

「ごほっはふっ、さ、サブマスとか無理ですー!わたし、そんな、責任ある肩書き、コホ、コホっ申し訳ない、です!」

 

 呼吸が整わないけど言わなくちゃと思っていったら、ギルメンの様子はなぜかなまあたたかいような空気。なんだこいつわかってないなーていう雰囲気?なんでなの?

 あれ?今日はギルメンが全員インして動いてる、しかも動いてる、なんてめずらしい。どうしたんだろう。

 最近モモンガさんとも「おは!」「こん!」「おやす!」位しか会話がないほど準備に夢中だったから、なんかの記念日を見落としたのかな?カレンダーを確認しようとしたら、菩薩のような雰囲気の骸骨がまた話しかけてきた。なんでピカ〜エフェクトだしてるの、久しぶりに見たなあ。

 

「ウラエウスさんは、ギルメンのクラスアップアイテムがなかったら取りに行ってくれてたり、ギルメンがPKされたら敵討ちにいってくれたりしましたよね」

 

「う、うん、いえ、はい。でも、わたしも最初みんながドロップアイテム分けてくれてたから、恩返し的なことしてただけだよ、だけです。仲間が殺されたら倍返しするのうちのギルメンなら普通じゃない……ですか?」

 

 うう、まだ動揺がきえない。

 

「倍返しというか殲滅戦というか」

「みーちゃん、敵には容赦ないからな」

「うんうん」

「そーそー、餡ころもっちもちちゃんがやられたときなんかすごかったね。相手方のギルドメンバーをひとり……またひとり……と陰からPKKしていって」

「俺もおどろいた、メッセージとんできたら「これから◯◯ギルドぶっこわしてきまーす」だもんな」

「ウルベルトさんの何かが感染したのかとおもった」

「す、すみません」

「おい、どういう意味だ」

「嬉しかったです」

「なー」

「イイ!ฅ(^ω^ฅ) 」

「あわてて加勢にいったけど終わってたし」

「早かったな」

 

 みんなだってギルメンがやられたらやり返しにいってるし……。

 

「みんなが作ったナザリックやNPCをとっても大事にしてくれてますよね」

「そ、そっそうですか、言われるほどしてました、っけ」

「してたしてた。NPCのAIをすごい喜んでくれてさーすこし動作追加してもすーぐわかってくれて」

「ですです、外装も細かいところまで見てくれて、作りがいがありますた」

「みー、ほんとNPCたち好きだよねしょっちゅう話しかけてるくらいだし」

「ね^^」

「み、みみみ見られてた!?」

「そりゃあんだけ長時間話しかけてたらねえ」

 

 うっ、勘違いされている。

 NPCたちは転移前の記憶も持っているから、転移前に話しかけたらおけば転移後仲良くできるかも!?と思って階層守護者から一般メイドまで各NPCに話しかけていたのだ。

 

 特に階層守護者たちは、朝と夜1回づつ声をかけてすこし立ち話してから狩りに出かけていた。

 

 アルペドは、タブラさんや他のギルメンもいなくなって、さみしんぼでああなっちゃったと思ったから、一緒にいる時間あったら彼女も寂しくないかな?と思って玉座の間にちょいちょい行ってお花とか宝石のアイテムでまわり彩ったりしてた。仲良くしていけたらなーて思ってたし。

 

 アウラはモフモフつるつる好き仲間として仲良くしたいし、引っ込み思案なマーレとはきゃっきゃっお茶のみ友達になりたい。

 

 コキュートスは戦士同士だから、がっつり向こうで手合わせ相手してもらいたいし。

 

 シャルティアは……。

 ……。

 いや!シャルティアは好きだよ!

 でも、兄の性癖がシャルティアを通じてわかってしまったときのショックを思い出して……。ね。昔は兄がペロロンチーノさんだと知らなかったし……。ね。

 

 デミウルゴスには一番話しかけている。だって好きなんだもん。朝の挨拶と、寝る前にその日あったことを話しておやすみなさいしてる。。デミウルゴスの日常モーションを知りたくて1日くっついて回ったこともある。抱っこモーションがついてからはずっと抱っこしてもらってた。わかってる。自重しなかった。

 

そうだ、あの日はヤバかった。

 「今日は△△カンパニーが融資してくれってきて、◯◯◯銀行頭取が預金おろさないでっていってきてね〜」といつもどおり日々の徒然ごとをデミウルゴスに話しかけているところをウルベルトさんに見つかって言い訳が大変だった。

(結局デミウルゴス好きがばれてウルベルトさんにデミウルゴスの執務室にいてもいいというお許しがいただけたのはよかった)

 

……けど!!!そんな様子を見られていたなんて!!恥ずかしい!

 

 立ち話といっても、NPCは反応しないから、はたからみたらわたしが独り言いっているだけにみえるのだ。一人相撲はっけよいのこったのこった。一人壁打ちテニスパコーン!

 

 なので……だから……誰にも見られないようにあたりを気にしながら話しかけていたのに……。

 

「特にデミウルゴスはお気に入りですよね」

「うんうん、1日2時間くらいははなしかけてますよね」

「なななななな、なな、なんで知って……!!」

「ウルベルトさんからの報告です」

「みんなで現場をのぞきにいきました」

「みー、おにいちゃんもそれくらい話しかけてよー」

「ウザい、弟」

「愛してるのね〜」

「ウルベルトさーん!いわないでっていったのにー!」

「俺は自分の作ったNPCをそんな気に入ってもらえて光栄だなって言っただけだぜ」

「みー本当デミウルゴスのこと気に入っててて、家でデミデミ結婚したいなあ〜とかいってるんですよー」

「やーーーめーーーてーーー!」

 

 前世からのキャラ愛いじらないでー!!ひいいー!死ぬー!羞恥でしぬ!!じたばた!じたばた!

 

「それはそれは。でもまだ結婚システムは実装されていないですからね」

「みー、おにいちゃんは許さないぞ」

「実装されてもプレイヤー同士だけになりそうだよな」

「あっじゃあ運営にNPCとの結婚システム希望を出しておいたらどうです?」

「子供システムもほしいところですね。異形種同士の子供がどうなるのか興味があります」

「子供は拠点に縛られないNPCとして育てられるとよいですよね」

「じゃあ、サブマス、みんなの要望をまとめて、運営に希望出しておいてください」

「ええええええええええーーーーーーーーー!!!」

「ニヤニヤ」

「俺は認めないからな!」

「多数決で決まりですね」

重重重課金者(お得意様)のみーさんが要望だしたらあっさり通りそうだよな」

「だなー」

「ですね」

「うんうん」

 

 ふうううえええええええええ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こんにちわ、精魂尽き果てぎみのウラエウスです。

ギルメンからの意見……を、とりまとめて運営に、要望をだしました。多数決サカラエナイ。

 まあ、そんな、ね。たしかにわたしは重課金者ですし、株も持ってますけど。それとこれとは、ね。ねー。

 結婚システムなんて導入するにはシステム弄らないといけないからおおきな『変更』になるだろうしスルーされると思ってた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー半年後。

 

『結婚システムと子供システムが実装されました』

 

 強制力仕事しろォーーーー!!

 

 きっと強制力で無理だと思っていたのに……!!『追加』扱いになったの……!なっちゃったの……!!

 

 よろめきつつ、追加されたシステムをチェックして、また驚いた。実装のあまりの早さに、プレイヤー2者が選択したらステータスに【既婚:○○○←相手の名前】が追加されるくらいのアプデかと思っていたら……。

 

 

▽▽▽

 

 結婚するにはガチャで【エンゲージリング】を2個GETが必要。

 リングの種類は属性分だけあって、装備者にあった属性でないと装備できない。

 プレイヤー同士は、結婚式を挙げるとリングを装備することができ、装備するとわずかな攻撃防御アップ効果がある。

 プレイヤーとNPC、NPC同士の結婚は、結婚式システムが実装されてなくて、結婚選択画面で結婚を選択→リング装備→結婚完了となる。

 実はこのリング、エンチャントできる。+2までだからナザリックメンバーが戦うときには使えないけれど、初期ならなかなかいいアイテム。

 ただし、離婚すれば破壊される。離婚は片方がリングを破壊したら離婚とみなされる。

 

 次に子供システム。

 子供をつくるには2つの指輪とも+2が条件。

 指輪をはめた既婚者がガチャをすると【卵】がでるようになる。指輪をはめている間しか【卵】はでない。低低低確率。

【卵】は譲渡可能、売買不可。

【卵】を両親それぞれ5ヶ月づつ心臓の鼓動を感じられる身体部位に装備しておくと孵化する。

 子供の外装は両親の属性からランダムで決定。武器、防具装備可能。

 そして、通常NPCのように育成することができ、かつ自由に連れ歩ける。

 離婚したり、片親のキャラクターを削除しても子供は消えない。

 子供のHPが2割をきったとき、親の

 HPの6割を移せる。

 

△△△

 

 

 説明以上。なにこのしっかりしたシステム。半年でおかしい。スタッフ死んでるんじゃないのかな。

 とにもかくにも……。

 

 

「子供システムまで実装されちゃったよーー!」

「さすが重重重課金者(お得意様)の要望は違うな、さあさあNPCと異種族交配実験をしようぜ」

「ウルベルトさあああん?!」

「お兄ちゃんは認めないぞおおおー!あだっ!いってええええ!姉ちゃん止めるなよぉぉ!」

「未練がましいぞ、弟」

「プレイヤーとNPCだと結婚式はないんですねー」

「じゃあ、勝手にうちらでやったらいいんじゃない?」

「おもしろそーおれも手伝う(๑•̀ㅂ•́)و✧」

「るし★ふぁーさんが手伝うと大変なことになるからだめです」

「えー( ˘•ω•˘ )」

「じゃあ、ウェディングドレスとタキシードつくりますよ!」

「ホワイトブリムさん!?」

「じゃあ、私たちはブーケつくろっ」

「どこでやりますかね〜」

「こないだのアプデの空中庭園でどう?」

「あーいいですね、立ち入り禁止にしてやりますか。NPCを連れ出すのにも必要だから……そっちウロボロス何個あります?」

「ちょおおおおおお!そんなことに使わないでくださ!」

「1個」

「3個」

「今使わずに」

「よきかなよきかな」

「できれば週末にやってほしいですね」

「来月6月でよかったねー」

「まってえくださーー!!みんな正気に、正気にかえって……!」

「ギルメンはこの上なく本気だよ(キリッ」

 

 そんなとこで本気ださなくていいから!人の恋路をイベントにしないでえくださーーー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 み……なさんこ、んにちわウラエウスです。

 めでたく……めでたいのか?いやめでたいはず……そう、サブマスにもなりましたし、とうとうデミウルゴスと結婚することができました。

 やったー(棒読み)

 

 いや、嬉しい……くもあるのだけど……なんていうか。ヒドかった……結婚式。さらっと誓いをいって終わりかとおもったら……。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 ギルメン、ウロボロスで、空中庭園エリアを占拠、わたしとデミウルゴスを連れ出した。ワールドアイテムこんなことに使わないでえ……っ!

 

 空中庭園エリアにいったら白亜の教会がたってた。なんで?ギルメンなんで?こんなに仕事が早いの。

 

 そしてご挨拶。タキシードのデミウルゴス。鼻血でそう。グッショブホワイトブリムさん。ウルベルトさんも礼服きてる。

「本日は誠におめでとうございます。これよりご両家の方々をご紹介させていただきます」

 

「新郎、製作者のウルベルト・アレイン・オードルでございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします」

 

「新婦、姉のぶくぶく茶釜でございますそこにすまきになってうごめいてるのが弟のペロロンチーノでございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします」

 

「皆様、今後とも末長くよろしくお願いいたします」

 

 なななななんでこんなにしっかり結婚式なの?なんで?ねえなんで?

 みんな、キリッとした感じにしようとして、いまにも笑い出しそうなのなんで、ひどい。

 

 介添人のたっち・みーさんとデミウルゴスが入場。

 この組み合わせにちょっと感動してしまった。そういえば物語ほどたっちさんとウルベルトさん仲悪くないなー、彼女へのプレゼントのアドバイスしてたし。

 

 わたしは、なんとか見られた様子になった兄と入場。

 進みたくなさそうなのを、姉がどついてる。みんなに笑われる、なんなの、これなんなの。おにいたん泣かないで。

 

 引き渡されて、聖歌斉唱。

 やまいこさんが指揮をとりながらギルメンが歌ってくれる。

 わりと揃っていて驚き。これはみんなで練習したの?

 

 司祭役モモンガさんに永遠の愛をたずねられる。モモンガさん《絶望のオーラⅤ》だすのやめてフレンドリィファイアでもやめて。

 

 「デミウルゴス、お前は

ウラエウスが

病めるときも、健やかなるときも

愛を持って、生涯

支えあう事を誓うか?」

 

 モモンガさん、デミウルゴスに聞いてもそんなふうにプログラムされていないし誓いの言葉は言えないからーー。

 

「誓います」

 

 え

 

 ええええー!!!???

 ちょ、どういうことなのデミウルゴス!?

 参列席をみるとプルプルしてるスライムがますますプルプルしてる……!こんのぉ……!!

 

 「ウラエウス、あなたは

デミウルゴスが

病めるときも、健やかなるときも

愛を持って、生涯

支えあう事を誓いますか?」

 

 ヘロヘロさん、誓いのために発言をプログラムわざわざするなんて……っ

 もはや、誓いませんということもできず、私も誓いの言葉をいう。

 

 「ち、ちかいます」

 

 互いに指輪を装備する。デミウルゴスは、ウルベルトさんがコンソール指示をして装備させている。

 

 やっと、やっと……っ、羞恥プレイが終わった……!

 

 とおもったらーー。

 

「みー、誓いのキスがまだよ」

「そうだよ〜」

「ニヤニヤニヤニヤ」

 

 な、な、なにいってんだこのひとたち!!!!????

 そんなキスとかいうプログラムはデミウルゴスあるはず……大体そういう行為は……ん?

 視界にうつる黒いスライムがさっきよりやたらと動きが激しい。なんだあそこのサムズアップしてるタコは。ままさかーー。

 

 視線を参列席からとなりに戻すとデミウルゴスの顔が目の前にあっ、

 

 

 ちゅ。

 

 

 ひ。

 ひいいいいいいいいーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!

 

 デミウルゴスの顔が離れていく。どこか遠いところでモモンガさんが結婚の宣言が聞こえた。

 

 

「……どして……!18……15禁にひっかからないの?」

「結婚式のキスは、ひっかからないって公式にかいてあったわ」

「おねえちゃんーー!」

「あははー!」

 

 狼狽えながらバージンロードを歩いて教会の外に出る。

 

「ひゅーひゅー」

「おめでとうー!」

「おめでとうごさいます」

「おめでとう!!」

「やーめでたいめでたい」

「おめ♡₍₍ ◝(・ω・)◟ ⁾⁾♡ おめ」

「おめでとうーーーー!」

「おめでとう」

「おめっとさん」

 

 

 外にはギルメンみんながいてお祝いの言葉をくれる。どいつも笑顔モーション飛ばしてる。

 結婚式をイベント扱いにされて素直にありがとうといいたくない気持ちでいっぱい。

(のちのち、おねえちゃんには「みーが嫌なら企画しなかったけど、本当にデミウルゴスのこと好きでしょ?」と言われ赤面しながら黙ることになった)

 けれど、前世も今世も着たことのないウェディングドレスを、締め切りが重なる中で作ってくれたホワイトブリムさんには自然と感謝の気持ちがわいた。

 他にも、リアルが忙しいのにギルメンみんなわざわざ来てくれたと思うと、だんだん胸が熱くなってきて……。

 

「みんな、ありが……?」

 

 お礼を言おうとしたとき、るし★ふぁーさん、ばりあぶる・たりすまんさん、ベルリバーさんがなにやら大きな筒状のものをかかえているのが目に入った。

 嫌な予感がする。

 

「お祝いっていったら花火だよね!ヽ( ε∀ε )ノ」

 

 そういって、るし★ふぁーさんは、思いっきり空に向かって花火とは思えないミサイルを打ち上げた。

 

 ドーン!ドドーン!

 

「わあ」

「キレイ……」

「たまには良いこともしますね」

「ですね」

「おおーたーまやー」

「すごい……」

 

 大迫力の花火は空で大きく花開いた。庭園の湖のように大きい池に反射してとても美しい。現実では見られない景色だ。

 澄んだ青空に繰り出された幻想花火は心と体に響き染み渡った。

 きっとこの光景も計算して作ってくれたんだろうな……なのにわたしったら先入観で……るし★ふぁーさんのことだからって思っちゃって……ごめんなさい。あとでお礼をいわないとーー。

 

「あ」

「あれ?」

「んあ」

「何発か地上に向かってない?」

「何発とかいう数じゃありませんね……20…100……258……」

「あー……」

「るし★ふぁーさん、あれって」

「あれぇ〜?おっかしいなーなんか手元が狂ったみたい!てへぺろ☆◟(๑•́ ₃ •̀๑)◞☆」

 

ええー!!?

 

「てえええめええええ」

「おおー」

「お、着弾した」

「るし★ふぁーさん!あなたってひとはああああ!」

「いま吹っ飛んだの人間種の街ですか。綺麗に吹き飛んで良い景気付けになりましたね」

「あああ、あああ」

「いやーこれはやばいなー(棒読み)」

「あわわわわ」

「どうしましょう?」

「わー……」

「まあ、いいんじゃないですか、うちらもよくわからない人間種のイベントのハロウィンにかこつけて『異形種狩りフィスティバル』被害受けてますし」

「そうですね」

「みー、派手になったね」

「派手婚」

「多分しばらくしたら人間種ギルドがここを強襲するでしょうから、先に打ってでますか」

「そだねー迎え撃つにしてもこの装備じゃあ。一回ナザリックに戻って装備整えない?」

「オッケー」

「了解です」

「承知した」

「は〜い」

 

 ……派手婚とかいう問題じゃななくない……!るし★ふぁーさんを一瞬でも見直したわたしがバカだったー!

 そして結婚式がそのままPK祭りになりナザリックに攻め込まれて撃退したりすることになった。

 

 なんでこんなことに……!

 

 頭を抱えて困ったけれどアインズ・ウール・ゴウンらしいなあとも思ったりしたーーギルメンの好意が嬉しかった。

 

 たとえ、その好意によって新しい問題が生じたとしてもーー。

 

 

 




顔文字文化は残っていた!

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