咲-Saki- 神域を継ぐもの   作:スレ主

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合宿の雀卓ってそういえば………


八話

宮永さん達が藤田プロにボコボコにされた次の日の部活

 

「宮永さんと和は知ってると思うけど、今週の土日に合宿がやることが決まりました、ハイ拍手」

 

誰一人拍手が起きない部室

なんでこんなテンション高いんだこの部長

全員が白けた感じで見つめていて、部長はノリ悪いわねーと言いつつホワイトボードをひっくり返した

 

「というわけで、来月の頭に県予選がありますので、土日で強化合宿をすることになりました、で、場所はちょっと遠いけど格安の宿があるところでやるわ」

 

そういって日程や場所や持ち物の書いたプリントを渡された

無駄に手際いいなこの人

 

「で、誰かノートパソコン持ってない?」

 

部長の質問に誰も手を上げない

 

「俺持ってますけど?」

「うんじゃ、小高君はノートパソコンも追加ね‼︎」

「はぁ」

「うんじゃ、県予選まで9日間頑張るわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、合宿の日の朝

 

ブーブーブー

スマホのバイブ音で目が覚めた

こんな時間にメール?

「あっ、ごっめーん宿に雀卓ないから男子は雀卓部室から持ってきてくるようにねー」

………殴っていいよなあの部長

 

ブーブーブー

今度は電話か

「はいもしもし?京太郎か?うん、まじで?分かったうんじゃ6時に部室前な」

ピッ

あの部長、京太郎の制服のポケットに部室の鍵入れてやがった

朝からダルいな

 

 

 

 

 

 

「で、ここからもうひと登り?」

「みたいだな」

 

京太郎が絶望仕切った顔で宿までの道のりを見ていた

宿は山の上の方にありこれから長い坂を雀卓を持っていくことを考えると俺でも気が滅入る

 

「着いたら部長に一言いうか………」

 

なんか普通にムカついてきたな、当日こんなこと言われても普通に困るに決まってんだろ

部室からバス停まで運ぶにしろ、一輪車とかの使用許可とかあればわざわざバス停まで2人で歩きながら運ぶ必要もなかったし

ここから運ぶにしろ俺のツテに連絡して適当に頼んで運ぶこともできたのにこんな朝早くからじゃ流石に気がひけるから無理だし

そもそも、自動卓じゃなくて普通にテーブルとマットと牌さえあれば麻雀できるよな?

なんでこれ運ばなきゃならないの?

 

「………た、達也さん?」

「あん?京太郎どした?」

「いや………とりあえず運ぼうぜ!(和を怒った時と同じプレッシャーを感じたわ)」

「はぁ、そうだな着くまでの我慢だ」

 

そして2人で運ぼうとした時

 

「達也じゃねぇかよ‼︎」

「ん?」

 

黒い車から男が車を降りた

その体格は京太郎よりほんの少し大きいが圧倒的に厚みが違う、そして雰囲気が伝わる

 

京太郎は達也から無意識を意識するというコツを教えてもらってから今に至るまでずっと続けている、そんな京太郎がこの人の第一印象は関わっていけないと感じた

 

(ダメだ、この人は俺と住んでる世界が違う関わっちゃいけない人だ)

 

足がほんの少しすくみ、顔を伏せてしまった

しかし、男は気にせずこっちへ向かってきた

 

「原田さんじゃないですか‼︎」

 

原田克己

関西屈指の大阪の暴力団の組長。

「現役の王」「赤木の再来」とも言われる裏プロの最強の打ち手

 

「確か葬式以来だったな、というかお前はそんなもん持ってどこに行くつもりなんだ?」

 

雀卓を指差し尋ねる原田

 

「今から高校の奴と麻雀の強化合宿をやるんですよ、んで、宿に卓がないから、俺らが運んでるんですよ」

 

原田、一瞬達也が言ってることを理解できない、そして

 

「くぁはっはっはっはっはっはっ、まさか、お前がそんなことしてるのかよっ‼︎くぅはっはっはっはっ」

 

原田笑う……ッ!圧倒的に……笑う……ッ!

 

「そんな笑わなくていいじゃないですかー」

「いや、悪かった悪かった。クッ、クッ、悪いまだ無理だ」

 

必死に堪えようにしているが、本人のツボが収まらないのか中々止まらない

 

「あ、あの、達也さんこの人は?」

「あー、なんだ知り合いのおっさん」

 

説明する気がないのか達也は軽く言う

 

「はぁー笑ったわ、で、このボーズは高校のダチってことか?」

「そーですね」

「えっと、須賀京太郎です」

 

挨拶をする京太郎、第一印象は怖い人のイメージだが、大笑いしたせいかその空気が薄れてよく分からなくなってしまった

 

「そーかそーか、達也と仲良くしてやってくれ」

「で、原田さんはどうしたんですか?大阪への帰りですか?」

「そうだな、取り仕切り役で長野に来て、帰りに雀卓持ったお前ら2人を見つけたんだよ」

「そーなんですか、で、原田さん頼みがあるんですけどいいですか?」

「どーせ、その雀卓を車で運ぶんだろ」

「話が早くて助かります」

「まっ、面白いものも見れたし、別に構わないぜ」

「ありがとうございます」

 

そういって、雀卓を車の中に入れる

 

「ほら、お前らも連れってやるから早く乗れ」

「ありがとうございます」

「あ、ありがとうございます」

 

そう言って俺たちは車の中に入っていった

 

「なんか顔色良くなりました?」

 

助手席に座った達也が原田に質問する

 

「そうだな、だいぶ仕事を部下に任せてるからな、随分軽くなったぜ」

「体は大事にしといたほうがいいですからね、あと、部下連れてこないで一人で運転ですか?」

「いろいろ見ながら運転も悪くないぞ」

「俺のこと散々笑ったけど、原田さんも随分丸くなりましたよ」

「お前の前だからだよ、部下の前じゃちゃんとしてるわ」

「そりゃ、どーも」

 

そうしてお互い少し黙る

しかし居心地が悪い感じではなく、むしろ居心地の良い感じの空間ができている

 

「その気配の無さは曽我のじーさん真似か?」

「えぇ、原田さんの真似すると高校生が全員ビビりますって」

「そりゃそうだ………あいつを越えられそうか?」

「あんまり興味ないですね、上か下かと言われたら向こうのほうが上ですね、でも負ける気はしないですけど」

「クックックッ、相変わらずだな」

「あの人は誰からも支配されず、誰からも理解されなかった、だから誰にも真似出来ない麻雀ができた」

 

超えるべき目標、人生を賭ける価値のある夢

 

「だから俺は俺の麻雀であの人を超えますよ」

 

原田なにも言わないが、その顔は少し笑っている

 

(………なにがあんまり興味ないだよ、がっつり目標にしてるじゃねえかよ)

 

「あっ、あのー、そろそろ宿なんですけど」

 

京太郎は二人の会話に全く着いて行けず、宿が見えてきたので二人に声をかけた

 

「すいませんね、こんな雑用させちゃって」

「気にすんな、帰りの時は俺にメールでもしてくれ適当に足になってくれる奴を呼んでおく」

 

サラサラっとメールアドレスを書いた紙を渡された

 

「ありがとうございました」

 

京太郎が頭を下げ雀卓を運ぶ

 

「あいつも随分といいもの持ってるな」

 

原田が京太郎を見てそう判断した

 

「引っこ抜いちゃだめですよ?」

 

今の麻雀ブームは女子プロの華やかな麻雀によって作られたと言っても過言ではない

男子はだんだんと隅に追いやられ、地味だの華がないだの言われているが実際は違う

 

女子が表に出れば出るほど、裏プロの男子の凄みは増していく

本当に強いやつと打ちたい為に裏プロになる雀士も多い

男というのは基本負けず嫌いが多い故に強さを求め裏に行ってしまう

 

そして、もう一つの原因はある男の死だ

 

その男の麻雀は美しく、華やかに、そして高みのまま死んでいった

そんな話に男たちが燃えない訳がない、憧れない訳がない

こうして今や裏プロもまた表と同じくらい盛り上がっているのだ

 

「まぁ、なんにせよ頑張れよ達也」

「やっぱり丸くなりましたよ原田さん」

「ほっとけ」

 

そういって原田さんは帰っていった

とりあえず雀卓を宿に運ぶか

 

「あら?私達より早く来てるじゃない」

「部長?ちょっとこっち来てもらっていいですか?」

「ヒッ、い、いや、本当に連絡するのを忘れちゃって」

「そんな訳ないじゃないですかー、用意周到に京太郎のポケットに鍵を入れたじゃないですかー」

「うっ、いや、その」

「言い訳向こうで聞いてやるから、さっさとこいよ」

 

あくまでにっこりと怒気なんて全く込めてないむしろ優しい声色で部長を連れて行く

 

「えっ、えっと、お疲れ京ちゃんそれ重くなかった?」

「正直達也と運ばなかったらどこかに置いていこうと思った」

 

京太郎の遠い目がその辛さを物語っている

 

「朝、男子二人居ないから寝坊かとおもったら、朝からこれを運んでたのかのぉ」

「さすが部長、やることが鬼だじぇ」

「その鬼が、悪魔に叱られてけどのぉ」

 

こうして強化合宿が始まった

 




とまぁ、天のキャラクター原田さんでした

原田さんは以外と茶目っ気があると思うんですよね、赤木の葬式の時もちぇっとか言ってますし、義理に厚い男だと思います

ここでは完全に近所のおっさん扱いですけど、主人公が赤木とのつながりゆえですね

とまぁ、ここでは読んでくださってありがとうございます
感想評価等お待ちしております

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