心を閉ざす者 完結   作:サイトメガロ

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新校舎のフェニックス
未だ貫く偽善


三大勢力の全てへの攻撃は難しいかもしれない。だが、相手を叩き潰すだけの力は得た。後は時期だ……三大勢力の全てが協力関係にでもなれば、こちらが三大勢力全てに攻撃できる理由が作れる

 

「それに……曹操を利用する手もある」

 

アイツらが三大勢力に戦争を引き換えて、敵の戦力を減らすと共に、戦争で新たな戦力を得たかもしれない可能性が0ではない以上、その戦いで情報を得るのも悪くないかもしれない

 

「最新の情報によれば、赤龍帝が悪魔に、白龍皇が堕天使に居るという事ぐらいか……片方は調べによればルシファーの血筋を持っているが……もう片方は只の塵だな……赤龍帝の力意外に取り柄が一つもないと見える……」

 

だが、逆に言えば興味がそそられるものだ。才能も魔力も、力さえもない存在が……どうやってこの地獄を生き伸びていくのか……

 

「俺らしくないな……誰かに興味を持つとは……」

 

まぁいい。コイツの事を見に行くとするか……もしかしたら……俺の前に立ち塞がるような存在へと進化するかもしれないのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アーシア side

 

「イッセーさんと部長さんが待ってます……!! 急がないと……!!」

 

私はある場所へと走っています。元々聖女と呼ばれていた私がこんな所に居るのは、私の祈りが届かなかっただけだとそう思っています

悪魔を治してはいけないのだと、そう教会から言われて、悲しくもありましたが……それでも、自分は間違ったことはしていないと思っています

 

その後、レイナーレ様に連れて来られたこの場所の教会で、私は一度殺されました。暗く何も見えない……そんな世界へと一度、落ちて行きました

でも、私の友達のイッセーさんが助け出してくれました。聖女から魔女になり、最後には悪魔に転生してしまいましたけど、後悔はしていません

だって、私は今とても幸せですから……

 

それでも、心に引っ掛かるものがあります……あの時……颯真さんに言われた言葉……

 

『自分よりも他人が大切なんてのは、偽善だと分かっているはずだ』

 

颯真さんは何故、そこまで人を助ける事を否定するのか……それが少しでも分かりたいと……そう思います

 

「………………っ!!」

 

ふと、私は足を止めました。いえ、止めないといけないと感じるほどに、足が固まってしまいました

視線の先には、冷たい表情のまま此方を見ながら壁に背中を預けている男の人……颯真さんがいました。まるで、私が来ることを知っていたかのように……

 

「感じたことのある気配がすると思って来て見れば………………貴様だったのか……『聖女』アーシア・アルジェント。悪魔が納める土地に住んでいるとは……気でも狂ったのか?」

 

「……颯真さん」

 

「悪魔を助けるほどに、貴様の偽善は狂っているようだな。自分の偽善を貫く通して、教会から追放されていれば世話がない」

 

事実をただ私の心に突き刺していく颯真さん。私を見る眼は先程よりもひどく、不愉快だとでも言いたげな表情だったと、私は感じます

何故この場に来たのか、それが聞きたくても……今の私は彼に拒絶されているのだと……そう思わざるを得ない程、その眼は失望にあふれていました

 

「聖女と呼ばれ、人々を助け続けてきた果てが……悪魔を助けて得た魔女の称号とはな。しかも、この気配……お前、悪魔に体を売ったな。転生悪魔の気配がする……」

 

「……この土地に来て、堕天使のレイナーレ様が私の神器を抜き取って……」

 

「そんな事はどうでもいい。俺が聞きたいのはその先だ………………何故教会から追放されて、悪魔に堕ちてなお……何故お前はそのような格好で、神に祈り続けているのかという事だ」

 

「………………捨てきれないだけです……今までずっと、信じてきたものですから……」

 

「……甘ったれた考えだ……祈りなんて届くはずがない……届いているのなら、何故貴様は一度死んだのだ? 神が居るのなら、貴様を生かすはずだろう?」

 

「それは……私の祈りが足りなかったから……」

 

「現実を見ない奴だ……まぁいい………………この先、悪魔陣営に居るのなら、いずれ何故祈りが届かなかったのか……それを知れるだろうさ……」

 

そういうと、颯真さんは消えていなくなりました……その場を……私は少しの間、動く事は出来ませんでした……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……どこまで行こうと、その偽善を貫き通すか……」

 

だが、今までよりは現実的な感じ方だったはずだ。アルジェントの目はそれが本当だという事を一つも言えていなかった

 

「……リアス・グレモリーとソーナ・シトリーか……よもや、貴様の血筋に出会う事になるとはな、サーゼクス」

 

目の前にある駒王学園と言われる学園を見て、そう言葉を漏らした。新人悪魔の中でも頭一つ抜けているリアス・グレモリー……その血筋には魔王であるサーゼクスがかかわっている

だが、俺が得た情報を見るに、愛情にあふれたグレモリー一族としては立派だろうが、一人の王としては失格どころかなる資格もありはしないと思っている

 

少なくとも、ソーナ・シトリーの方が王としての資格があると、俺はそう思っている

 

「仲間を斬り捨てることすらできない者に、王を名乗る資格はない」

 

俺はそう結論づける。王とは民を守り、民を導く事の出来るものこそが王になれる者。グレモリーは民を守る……眷属を守る事は出来るだろうが、眷属を導く事は出来ない

導くためには時に、眷属の一人は見捨てる思いで動かなければならない

 

「悪魔側へついた人間……赤龍帝はどんな存在へとなるんだろうな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イッセー side

 

オッス!! イッセーだ!! いや~、この頃周りに奴らが俺を見る眼が怖くてさ~。まぁ理由はオカルト研究部の天使、アーシアなんだが……

でも、そのアーシアに元気がない……

もしかして、好きな男が出来たのか!!?

 

「い、イッセー君? 顔がすごい事になってるよ……?」

 

おっと、心の中で暴走してしまった……とりあえず、横に居るこの子も紹介しておこう

彼女の名前は『木場裕香』。駒王学園のアイドルと言われる美少女なんだ!! 男子よりも女子に人気がある天才美少女……只、いつも気になる事があるだけど……

 

「今更だけど、裕香ちゃん……何時も持ってるその……刀は何なの?」

 

そう、彼女はなぜかいつも刀に布を巻いて持ち歩いている。この間の戦闘でも、裕香ちゃんの剣と持ち合わせて使っていた

でも、俺でもわかる事だけど剣と刀は違う。それを使いこなしながら、戦闘をする彼女は少し疑問に思えた

 

「ああ、これ?………………これは昔、私が悪魔になる前に助けてくれた人の刀なの……誰かに頼るだけじゃなくて、自分の手で道を切り開くことを教えてくれた……あの人の刀……」

 

……えっ? 何その乙女な顔……まさか好きな男なのか!!?(本日二度目)そしてそいつはイケメンなのか!!? やっぱり顔なのか!!?

 

「ゆ、裕香ちゃんはその……その人の事が好き……とか?」

 

「えっと……まぁ、そうなるのかな……えへへ//////」

 

ああ、はにかむ姿や顔は可愛いけど、こんな顔をさせる男が気にくわん!!? わぁぁぁぁぁん!! どうせ俺はブサイクだよぉぉぉぉぉ!!!

 

「冷たくあたる人だったけど、私の進む道を示してくれた人なんだ……」

 

いやぁぁぁぁぁぁぁ!!? やめてぇぇぇぇぇぇぇ!!? そんなラブなストーリーなんて聞きたくないよぉぉぉぉぉ!!!

 

はぁはぁ……でも、それと同じくらい気になることもある……昨日、部長が俺を夜這いに来た……その顔は必死で……誰よりも辛そうに感じたんだ……

そう思っている間に、部室の前に着いたけど……少し、裕香ちゃんが悔しそうな顔をした

 

「……私が此処に来るまで気付けないなんて……まだ、あの人には届かないのかな……」

 

そう言うと扉を開けた。その先には部長と、副部長の姫島朱乃さん……そして昨日初めてであったグレイフィアさんが居た

その場の空気はとても張りつめていて、とても良い物だとは感じられなかった

 

「揃ったわね……」

 

重い口から言葉が漏れるように話し出す部長……その様子を見て、俺は昨日の事と関係があるのかもしれないと、無意識に思っていた

部長が話をしようとしたその時、部室にある魔法陣が現れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほう……あの時の少女が、此処まで腕を上げるとは……正直思っても見なかったな……」

 

イッセー達が部室に現れた魔法陣を見ている時、颯真は部屋に居る木場裕香を見ていた。聖剣計画を潰したうえで生き残った少女であり、自分の刀を持って居る所を見て、その存在を思い出した

あの時の刀をまだ持っている事を知った時、少し驚きはしたが、別段何の意味もないので、直ぐに表情を戻した

 

「悪魔に転生したのは、あの場からは簡単に逃げ出せないだろうと判断し……その後、現れたグレモリーに救われて、今があると言った感じだろうな」

 

だが、奴も悪魔となった以上……俺の前に立ちはだかるなら容赦はしない……

 

「もっとも……面白い現場に立ち会っているようだな、俺も」

 

目の前にある光景は、悪魔の純血の結婚の話だろう。先程の魔法陣から出てきたのは力もない只の雛鳥のフェニックスの三男。現在では自分のフェニックスの力を過信しているみたいだな

愚かな悪魔の一人であり、俺が起こすであろう戦争で直ぐに死ぬだろう悪魔の一人だ

 

『いいかげんにしてライザー!!』

 

気持ちの悪い状態だな……だが、面白くもある。この場を見る限りでは、リアス・グレモリーはフェニックスの三男であるライザー・フェニックスに興味はないだろう

どちらかと言えば、奴の事を屑やろうと思っているに違いない。あの態度から見て、それに近い感情は抱いているはずだ

 

俺が面白いと思うのはその先だ。こういう悪魔の縁談は大体が無理矢理な感じであるが、最後にはレーティングゲームに至ることが多い

この場で赤龍帝の可能性を知るのはいいかもしれない

 

『双方の意見が違いました。ここはひとつ、レーティングゲームでお決めになっては……?』

 

レーティングゲーム。俺なりの見方で言えば、体を張ったチェスのゲーム……自分と自分の眷属を使い、闘うゲームであり、悪魔の娯楽の一つとなっている物

種類は様々であり、基本的には王が負ければ終わりという物がある

 

最高参加人数は両者合わせて32人が参加することの出来るゲーム

 

『ライザー、貴方を消し飛ばしてあげる!!』

 

お前もえげつない事をするものだな、サーゼクス……妹に負け戦をさせるとは……

そう思いながら、俺はその場を後にした。いや、後にすることによってある者を俺に来させるようにした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やはり、追いかけてくるか……最強の女王よ」

 

「貴方は悪魔の敵であり、世界の敵です。見つけたのならば、即座に始末するのが普通では?」

 

即座に先程の婚約の事を終わらせたのだろう。グレイフィア・ルキフグスは、公園で立って待っていた俺に近づき、結界を張って戦闘態勢に入っていた

 

「何故この駒王学園に来たのです? リアスお嬢様を攫い、サーゼクス様を脅す為ですか? それとも、ソーナ様を攫いに……?」

 

「おいおい、妄想もそこまでにしておけよ。痛々しくて涙が出るぜ」

 

「ふざけない事ですね。この状況で貴方は逃げられない……もう一時間もすれば、サーゼクス様がこの場に来ます」

 

ほう、こうなることを見越したうえで、サーゼクスへの連絡を入れていたのか。一時間と言ったが、早めに連絡したから残り40分程度が限度だな

俺はそう思いながら、グレイフィアを見る。見た目は只の美人メイドと言われるものだろうが、奴から発せられるその気迫やオーラは、この世界にそうはない実力を物語っている

 

「そうだな……サーゼクスを呼ばれれば、俺も分が悪いな……」

 

「ならば、私を倒してすぐにこの場を去ると……?」

 

その言葉を聞いた瞬間、俺はグレイフィアの目の前から消える。一瞬の驚きも命取りになるこの瞬間を、グレイフィアは無駄にせず、腕をクロスして防御態勢に入った。その腕に重い衝撃が走り、グレイフィアは公園の噴水にぶつかる

噴水は破壊され、その壊れた部分からは水が漏れ出している。その水を浴びながらも、グレイフィアは立ち上がり、自分の腕を見る

 

「(まだ痺れている……!! これが人間の出来る技ですか……!?)」

 

「流石に一筋縄じゃいけないよな……アンタを圧倒出来ればいいんだが、そうするには俺も……カードを切る他ないんでね……そこまでしたくないんだが」

 

と言いながら、顔への蹴りを入れるが……跳躍されて回避を許す。一定の距離で俺を見ているグレイフィアは、俺の戦闘能力から、自分の敵う部分を見つけ出そうとしていた

だが、その考える暇を与えるほど、俺も優しくはない。直ぐに戦闘へと戻し、俺は蹴りの連撃を繰り出す

 

全て弾き落とすグレイフィアだが、先程の蹴りで痺れが来ている手では防御しきれず、そのまま数回蹴りを受ける。骨を折るつもりでやっているが、それでも折れないのは素直に感心する

あの時の沖田も然り。サーゼクスの眷属は化け物ぞろいであると、改めて認識した

 

「上級悪魔なら既に骨がボロボロになってるんだけど……お前はやはり別格だな……」

 

「この程度……痛くもかゆくも……」

 

そう口に出すグレイフィアも限界がある。最初の一撃程の威力でないにしろ、その蹴りは強力。逆に言えば、神器(セイクリッド・ギア)どころか、手も使わないで戦っていることになる。だが、それはグレイフィアも同じこと……女王として立つものは、ほとんどが魔法系の攻撃をするばかり、だがグレイフィアはまだ魔法を使っていない

使うにしても、遅すぎる。だからこそ、颯真は違和感を感じていた

 

「………………なるほどな」

 

「っ!!?」

 

突然、颯真は拳を握り。グレイフィアを殴り飛ばした……蹴り程の威力はなったが、距離を開けられた

 

「お前、サーゼクスを呼んだと言うのは『嘘』だな」

 

「………………」

 

「沈黙は肯定。魔法を使わないのは、応援が来ると言い俺を焦らせて、懐に来ることを待ち、その瞬間に俺を一気にしとめる。だから、俺が踏みこまない限り、貴様は攻撃しなかった」

 

「……その通りです」

 

魔法を使えば勝てるとは言わないが、重症は負わせられると考えた言い判断だ。だが、その手に簡単に乗るとは思っていないのも事実だろうが……

 

「能力把握の為か……小賢しい真似をする……興が削がれたな……」

 

俺はグレイフィアに背を向けて、その場を去ろうとする……だが、グレイフィアは追いかけない。否、追いかけられない……

敵は自分の知らない戦闘方法で戦うかもしれないのだ。対して、自分の戦闘方法は情報経由で対策を練られているかもしれない

故にグレイフィアには、颯真を追いかける事は出来なかった

 

「サーゼクスに伝えな……今度のレーティングゲーム……俺も見に行くとな……」

 

「っ!!? ま、待ちなさい!!」

 

俺はその言葉を残して、その場を去った。自分の妹が負けるさまを見て、お前はどういう顔をするんだろうな、サーゼクス……

 

「自分の判断で、妹がどれほどの物を背中に背負っているのか……その眼で見るいい機会だ……」


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