心を閉ざす者 完結   作:サイトメガロ

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答え

暗い森の中、標的を探しながら俺は歩いていた。冥界と呼ばれる悪魔の住処。人間界の地下に存在して、人間界と同じように暮らしている存在が悪魔

 

「……自分たちは安全な場所で暮らすのか。人間を塵のように扱っている癖に、人間を悪魔に変えることで種族の存続をしているとは、無様なものだ……こけにしている存在に助けられている分際で……」

 

俺は険悪な雰囲気を出しながら悪魔を探す。目的の情報と戦闘経験を得る為、俺は森を歩き続けている。偶に聞こえる鳥の声は、森の恐ろしさを醸し出すような役割をし、揺れる木々は侵入者を拒むように音を出す

 

「ん………………誰かが争ってでもいるのか?」

 

森の音に隠れるコオロギのような声、争っているような声を聴き、俺は反応する。目的の悪魔の魔力は感じる。どちらにせよ、そこに向かうべきだな。他の種族の魔力も感じる……

 

「いや……向こうに行ってからでも遅くはない……」

 

得物を見つけたんだ。考えるのは後にするべきか……

 

俺はその場を跳躍し、反応がする魔力の元へと急ぐ。魔力が動いていない所を見ると、まだ争っているみたいだな。だが、戦闘を行っている感じでもない……

 

俺はその場につき、起きていることを確認するため、木の陰に身をひそめる。視線の先には、悪魔数人と……白い着物を着た猫又がいた……

 

「ははは!! コイツ置いて行かれたぜ!! よほど自分の身が大切だったんだろうな、あの黒猫!!」

 

「っ……」

 

いまいち理解が及ばないが、あの猫又は見捨てられたと見るべきか……面倒なところに来てしまったものだ。情報だけならいつも通りだが……

 

「助けて……姉様……!!」

 

………………嫌になるな。あの白い猫又の顔……昔の自分を見てるみたいで、嫌になる……

 

「さぁ、コイツを連れて……っ!!」

 

「悪いが、お前らに帰れると言う選択肢はない……」

 

俺は白い猫又を掴もうとした悪魔の男の首を刀で斬り裂く。体はそのまま崩れ落ち、首の斬り口からは血が流れ出ていく

 

「……えっ?」

 

「………………はっ?」

 

「……理解はしなくていい。これから死ぬ存在に、何を教えようとも無意味だからな……」

 

俺はもう一人の悪魔の服を掴み引き寄せ、雷を纏った突きで体を貫き、そのまま放り投げる。ドシャ、という音が最後の悪魔を現実へと引き戻し、悪魔は戦闘態勢に入るが……

 

「言っただろ。死ぬ存在だと……お前らがどう抵抗しようと、無意味なんだよ……」

 

俺は万華鏡写輪眼へと眼を変え、相手を目視する

 

「……天照」

 

「っ!! ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

目視された悪魔からは黒い炎が発火し、敵の体を燃やし尽くしていく……これで終わりだ。胸糞悪い感じはなくなったが、昔の自分の姿を見た所為か、情報の事を考えるのを忘れてしまったな

 

「……っ!!」

 

「………………本来なら、俺の姿を見た時点で消し炭にしてやりたいが、これは俺のミスだ。今回は見逃して……」

 

と、言い終わる前に少女は崩れ落ちた。なんだ、さっきの怯えていたわけじゃなくて、解放されたことでの震えだったのか

 

「……此処で見逃すと言った手前、殺す訳にもいかないが……俺の情報をはかれるわけにもいかない……」

 

俺は少女を抱き上げ、そのまま自分の拠点へと戻って行くことにした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グツグツと、昼食を作りながら回収してきたデータを見る。俺は全面的に悪魔を敵に回すことになるのは分かっている。敵勢力の確認は必須であり、俺の目的の悪魔探しにもつながる

 

あれから数日だが、白い猫又はまだ起きていない。家族に捨てられたのが響いているのは分かる。だが、家族の大切さは俺には理解できない。元々、家族は屑の塊だと思っている俺からすれば、家族を思う気持ちなんざわかる訳がない

 

「ズズッ……もう少し薄めにするか……」

 

データ上、魔狩りが事件の犯人である俺だと、相手は分かっているはずだ。たぶんだが、上層部の存在ならば、魔王に進言して俺に刺客を向かわせる可能性もあるか……いや、それはない。そんな事をすれば、自分が何をしてそれを頼むのか聞かれる事にも発展するだろうからな。だとしても、上層部もそろそろ動き出す頃か……

 

殺してきた悪魔の数は既に百は超えたはずだ。クラスもSに跳ね上がった。『本当の意味』での上級悪魔が出てきてもおかしくはない

 

「輪廻写輪眼の特有の能力も分かりかけてきてはいる。六道と言われる力も、少しだが使えるようになってきた。

悪魔全体を相手にするにはまだ足りないが……少しずつ近づけてはいる……か」

 

俺は料理を作り終えて、テーブルにまれべて行く途中……

 

「……遅い目覚めだな。悪夢でも見たのか……?」

 

「………………」

 

数日かかってやっと目覚めるとはな。精神の弱い奴だ。いや、俺の年齢でも、普通はその位かかるものか。俺が異常なだけ……

 

「あ、あの……」

 

「一つ言って置くが、俺はお前を助けたわけじゃない。俺自身、お前に興味もなければ、助ける気もなかった。俺があそこに居た理由はお前を追いかけていただろう、悪魔だけだ。感謝なんざするな」

 

何を言おうとしたのか知らないが、俺は少女に距離を置く。言った言葉に偽りはない……

 

「……なら、どうして……」

 

「何故助けたか、か……お前のあの時の表情が、俺にとって不愉快でしかなかったからだ。悪魔どもを消すことも目的の一つ、ならお前の表情を消すこともできるなら、ついでだと思っただけだ」

 

思い出したくもない……誰かが助けてくれるだろうと、そう信じ我慢し続けていた、あの頃の俺の顔を……この少女はやっていたんだ。誰も助けになんか来ないのに、それでも無意味に信じる昔の俺は……今でも愚かだと判断できる

 

「傷が癒えたなら、直ぐにこの場から去れ。飯なら今ある分を食い、そのまま出て行け」

 

「………………」

 

「傷ついているから、自分は子供だから、周りに優しくして貰えるなんて思っていたか? 人間は優しい存在だとでも思っていたか? なら、過大評価もいい所だ。人間ほど醜く愚かで、腐った存在はいないと、俺は思っている。当然、悪魔も天使も、堕天使さえも……俺にとっては塵同然だ」

 

「……見捨てられた私に……行く場所なんてありません」

 

「だから、自分を保護してほしいと? 抜かせ。俺にメリットがない……甘えるなよ、猫又。俺はお前の中でいう家族なんかじゃないんだからな。お前の面倒を見る義務はない」

 

俺は自分の椅子に座り、そのまま自分の飯を食い始める。顔を上げて見れば、涙を流しながら俯いている白い猫又。今度は泣き落としか……

 

「泣けば俺の返答が変わるとでも? 何一つ変わらないさ……」

 

……むかつくな。自分の中で答えすら出せないコイツを見ると……腹が立ち過ぎて反吐が出る

 

「そもそも、信じる者を間違えたんじゃないのか? お前があの時、姉と言っていた辺り……お前は家族に裏切られたんだろうな。俺には家族を信じているその心が分からないが……所詮、家族なんてそんな物だろ……」

 

「っ!!」

 

「元々、家族であれ他人な事には変わりない。結局、お前よりも自分が可愛かったからお前を見捨てて、自分が生き残ることを選んだんだろ……お前の信じた存在は、その程度の……」

 

「姉様の事を悪く言わないでくださいっ!!」

 

俺が語る言葉に、猫又は全力で否定を示す。思ったよりも大きかったその声は外へと響き、周りの小鳥たちを怯えさせるほどにまで至った

 

「貴方に何が分かるんですかっ!? 私の姉様はずっと、私の為に頑張ってきてくれました!!! どんな時でも笑っていて、辛くても弱音を吐かないで、ずっと私を守り続けてくれましたっ!! 今回のことだって、何か理由がある筈です!!! それを知りもしないで、勝手なことを言わないでください!!!!」

 

涙を流しながら、震える体を抱きしめながら、それでも視線をそらさずに俺に面と向かって自分の想いをぶつけてくるその姿……

 

「それが……お前の『答え』だろ」

 

「……えっ……?」

 

「お前は家族に裏切られたと言った。なら、普通はそいつを憎むのがほとんどだ。それでも、お前は心のどこかでそれを否定したかったんだろ。その気持ちを勝手に抑え込んで、偽りの想いを言ってたんだ」

 

下らない言葉ばかり言いやがって……

 

「姉を信じたければ信じると良い。それはお前の自由だろ……俺には、その気持ちは死んでも分からないがな……」

 

「………………」

 

「答えを見つけたんなら、とっとと準備して出て行け。涙を流す暇があるなら、自分の姉に真実でも聞きに行け。自分で勝手に結論づけて、現実から目を背ける奴なんかに、時間を割いてる暇はない……」

 

「…………ありがとうございます……ありがとう……グスッ……」

 

「感謝されるようなことを言った覚えはない」

 

泣きながら俺に感謝する意味が分からない。俺はお前を否定した、それなのに何故感謝をする……涙を流す猫又を見ながら、俺は箸を進めた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

情報……最近、ある事件がまた、悪魔の中で起こったらしい。よくあるいつもの主を裏切る眷属。今回は殺害にまで至ったらしい。指名手配度はSS級……俺よりも上の実力者という事だ

 

「……腑に落ちないな」

 

六道の一つ、畜生道。俺と同じ輪廻眼を持ち、視界共有が出来る生物を呼びだす事が出来る能力。これで小鳥のサイズを街にはなっていたが、それで見た限りではこの殺された主に問題がある筈だ

 

「いつものやつか……純血の悪魔がそこまで大事か……? 裏切る者にも罪はあるが、裏切られる方にも罪がある」

 

そんな事も分からない程、悪魔の社会は狂っていようとは……出来ているのは見た目だけか……

 

「……ん……」

 

俺の後ろから聞こえるのは、飯を食った後に泣き疲れて眠っている白い猫又。名は白音と言うらしい

 

「答えを見いだせたなら、もう迷う事もないだろ。いつもなら殺している所だが……俺も甘くなったか……?」

 

いや……それは違う………………形が違っただけだ……俺はコイツが悪魔なら、直ぐに殺していただろう……

 

そう思っていると、虚ろな目を開けて此方みる白音。俺はそれを無表情に見下ろし、意識が覚醒してきたみたいだ

 

「おはよう、ございます……」

 

「数日寝たあげく、まだ寝るとは思わなかったがな……」

 

「……颯真さんのおかげで、自分のやる事……やりたいことが見つけられました……これから、私……姉様を探そうと思います……姉様の口から真実を聞こうと思います……」

 

「勝手にするといい。俺からすれば、お前がどういう行動をしようと関係のない事だ」

 

俺は白音がどう生きようと興味はない。俺の目的は、俺を殺そうとした悪魔と、悪魔社会全てを破滅させることにある……

 

「……颯真さんからすれば、私の死のうとどうでもいいと思います。それでも、私は……颯真さんに会えてよかったと思います」

 

「何でだ? 俺はお前を否定したんだぞ」

 

「自分を……現実を見る事が出来たからです」

 

現実を見る事、か……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「数日間、面倒を見て頂き……ありがとうございました」

 

そう言い残して、白音は俺が言った通り出て行った。当然、寂しいなんて感情はない。そんな感情は、相手を認め、大切だと思うから生まれる感情だ。俺は、あいつを大切だなんて思わないし、信頼もしない。あいつと俺の間にあるのは、ただの偶然と悪魔に狂わされたという共通点のみだ

 

「最低限の感情だけでいい。裏切りが起こらない可能性がない分、俺は誰かを信頼する事なんて、一生ないんだろうな……いいや、何かを大切だと感じる事すら起きない……」

 

あいつが俺の前に立ち塞がるのなら、俺は躊躇なく切り捨てるだろう

 

「………………だが、俺が生かした存在だ……目的を果たす前に死なれるのは、気分が良い物ではないな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あきらめたほうがいいですよ」

 

「くっ……」

 

一時間後に白音は、自分の存在がばれてしまい。そのまま、追いかけ続けられていた。戦闘能力は前の悪魔とは違い、着物を着た男から逃げ出すことなど不可能だと思わされるほど、実力差があると実感させられていた。自分を追ってくる相手は目の前の着物の男のみ。だが、その戦闘力は前の悪魔よりも遥か上に居る

 

「大人しく来てください。僕達は、貴方を傷つける気は……」

 

「そうはいきません……私は決めたんです……姉様に真実を聞くと……」

 

そして……そんな白音の頭には、無表情で冷たい態度をとるが、自分の進む道を示してくれた颯真の顔が映っていた

 

「……自分の決めたことを、最後まで突き通すと……!!」

 

「……此処まで意識が硬いですか。なら、少し強引ですが、無理にでも連れて行かせてもらいます」

 

気がついた頃には後ろを取られていた。音もなく、風が通り抜けるような感じで、後ろに立たれていたんだ。気づくことが遅れた、いや……気づくことさえ許されなかった白音は、諦めかけていたが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪魔風情が、随分と上から物を言うようになったな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!!」

 

着物を着た男はその場を直ぐに飛び去った。自分が気付けなかったのかと、知らないうちに後ろを取られていたのかと、そう疑っていた

 

「ほう……今まで見てきた悪魔のどれにも当てはまらない存在か。傲慢なだけの悪魔と違い、警戒心があるのだな」

 

聞き覚えのある声だ。冷たくて、人を遠ざけるような意志が感じられる声。それでも、白音は少し安心する事が出来ていた

 

「助ける気は毛頭なかったが、目的を果たされる前に死なれるのも気分が悪いんでな。それに……今日の標的がこんな近くに居るんだ。殺さない手もないだろ……」

 

黒い髪をなびかせ、ゆっくりと男に近づいて行く

 

「貴様……確か、魔王サーゼクス・ルシファーの眷属だったな……」

 

「沖田総司だ。貴方はもしや……」

 

「俺は貴様らを消し続けている魔狩りだ。情報なんざこの程度でいいだろ。これで貴様と俺の関係は、理解できるだろうさ。俺は悪魔を狩る側、お前は悪魔を守る側」

 

「単純明快ですね」

 

さぁて、初めての強敵だ。今までの修業の成果をここで試せる……


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