心を閉ざす者 完結   作:サイトメガロ

21 / 27
元凶死す

アルジェントが消えて数日、俺はある場所へと向かっている。1、2日前の事、あの男……ガルダ・パイモンが追放されたのだ

理由は当然、俺の事だろう。俺をこのような状況にさせてしまった罰として、永久追放でもされたのだろう。馬鹿みたいな話だ

 

現在、グレモリー眷属はオーディンの護衛だそうだ。監視していた奴らの情報によれば、の話だがな。ロキが襲撃したとかで、大忙しらしい

自分の眷属が消えても、神の護衛とはご苦労な事だ

 

アルジェントが消えた日、少し遠くの方に居たから詳しい事は知らないが、あの場所から世界最強……赤龍神帝・グレートレッドが現れた

次元の狭間を飛び回り、生き続ける化け物。そのブレスは、大陸をも消し飛ばすだろう威力を持っている。俺ではまず、敵わない相手だ

 

あの化け物を倒そうとしている無限の龍神・オーフィス。あいつもまた、あの場所に現れた。知っている理由は、俺の天使の祝福の不滅天使(デュランダル・オブ・ベネディクション)が、奴によって殺されたからだ

あの場にはアザゼルとサーゼクスの戦闘が繰り広げられていた。祝福の不滅天使(デュランダル・オブ・ベネディクション)の戦闘中、途中から旧魔王派のクルゼレイ・アスモデウスが現れた

 

それと同時に、サーゼクスも現れたのだ。祝福の不滅天使(デュランダル・オブ・ベネディクション)は三大勢力を重視して殺すようにしている為、クルゼレイには見向きもしなかった

それを見て、好機と感じたクルゼレイは、同時にアザゼルを消そうとしたのだろう。だが、そこへ……現魔王のサーゼクスが現れた

 

「サーゼクス……!!!」

 

「……アザゼルの方に居るのは、魔帝の天使かな?」

 

「ああ、こいつはさっきここに来た魔帝が残していったもんだぜ。面倒な奴を残したもんだ……デュランダル持った天使とか、聞いた事がねぇぜ」

 

サーゼクスは祝福の不滅天使(デュランダル・オブ・ベネディクション)を見てそのオーラの違いを確認する。他の天使と違い、機械的に動いている天使。実力は最上級天使なみの力

いくらサーゼクスと言えど、三体同時に来られれば死ぬだろう。それほどの実力が窺える。その様子を見たクルゼレイは……

 

「いくらサーゼクスと言えど、この天使には恐れるようだな。貴様が死ぬところを見れるとは、さぞ快感だろうな」

 

「馬鹿だなお前……そいつは機械的に動いてて、今はお前を狙ってねぇが……俺らがやられれば、お前が今度は死ぬ番なんだよ」

 

「その程度の天使、我々にとっては殺すことも容易い」

 

馬鹿だ。そう映像を見た時に感じた。自分の力に慢心して、そのまま戦おうとするこの存在を、俺は愚かだとしか思えなかった

 

「さて……俺は天使を片付けるか……お前はどうする? サーゼクス」

 

「…………クルゼレイ。和解は出来ないだろうか……」

 

「貴様のような存在と和解だと……!! そんなものは必要ない!!! 今この場で、貴様を殺してくれる!!!」

 

只の嫉妬。俺のように、自己満足と知っての復讐ではなく、相手への劣等感と嫉妬。馬鹿みたいに新世界の王になると言う夢を掲げている

無様だ。何よりも無様だ……勝てもしないくせに、意地を張って死ににいく。あいつらに相応しい最後だ

 

「……クルゼレイ。私は現魔王だ……民を守る責任がある……」

 

そう言い、片手にそれは現れた。消滅の魔法……それも、他とは違う質を持つ存在の力

それはクルゼレイの体を一瞬で消滅させ、その場から消えた。最強の魔王の座、ルシファー。その名にたがわぬ強さだった

 

「さて……次はそこの天…!!」

 

そう言いサーゼクスが振り向いたところで、天使の映像を途切れた。只一瞬、黒い服の少女がこちらを攻撃したと言うだけ、威力でオーフィスだと断定した

 

さて、振り返るのもここまでだ……見せたな……あの屑野郎……ガルダ・パイモンの拠点……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

只、普通にある家の中……奥の方にある通路を通り、俺はゆっくりと進んでいく。奥からは、何故の音が聞こえてくる。音から察するに、何かを殴りつけている

どうせ、何故自分が裏切られたのか……追放されたのか分からないのだろう。だが、それすらも分からない奴が追放されるのは、当然だ

 

奥の開けた場所に出る。地面には魔法陣が書かれ、大きく広い場所へと出た。奥には置いてある者すべてを投げ飛ばし、破壊している馬鹿が居た

 

「…………よう、糞餓鬼……!!!」

 

「喋るな、自分の価値を落とすぞ…………」

 

「てめぇの所為で、俺は悪魔側から追放されちまったよ……!! ああ、あの憎たらしい存在共めが……!! 最初から俺に手を貸していれば、お前のような存在を生み出さないで済んだかもしれないと言うのに……!!!」

 

「まだ……まだ、気付けないとは愚かだな。お前が俺を目覚めさせたんだよ…………お前があの時、俺を殺そうとしなければ、悪魔が大量に死ぬ事は無かった。いいや、これは俺の言い訳だな。実際、俺はもう悪魔を殺してる。俺の罪を、お前に擦り付ける事はしない方がいいか」

 

「貴様を殺していれば……!! あの塵が失敗しなければ、俺はお前を殺し、貴様の持っている力を手に入れられていたんだ!!!」

 

よくしゃべる奴だ。自分が正しいと何処までも思っているから、ここまでつけあがる様な風になるんだ。これも、悪魔の汚点だな

悪魔と言う種族はそんな事はしないと、そう信じきっているからこうやって問題が起きる。それを解決するどころか、見逃して悪化させる

 

こうして、今追放したとしても遅すぎる。自分たちの事しか頭にない奴が、この世界に生きていると思うと、虫唾が走る……

 

「手に入れたとして、貴様に操りきれるものでもないわ……貴様の様な汚れきった存在が、俺を殺すと言うのもまた、夢物語に過ぎない」

 

「そうでもねぇさ……実際、この『眼』は……お前の母親から奪った物だからな!!!!」

 

………………何だと……? あの女から奪った……?

 

「知らねぇのも無理はねェさ!! 何せ、あいつを保護した時に、俺はあいつに催眠をかけて奪ってやったんだからな!! ずっと、この力を待ち望んでいた!!! あの女の種族はもう既に絶滅していると思い、諦めかけていた時、あの女とお前の正体を知った!!! あの女は種族最後の生き残りだった!! 保護すると同時に、あいつの眼を一瞬で奪ってやったんだよ!!!!! はっはっはっはっはっはっは!!! あーっはっはっはっはっはっは!!!!」

 

………………………………

 

………………

 

なるほどな、あのバカ女は……最初から利用されていたわけだ……この俺の能力を狙われ、自分を助けるものだと信じきった所為で、死んだんだ

 

「でもさぁ!!! あの女は催眠で気づかないんだよ!! 新しい眼を移植してやれば、気づかないでお前の所へと走って行きやがった!!! 見つかるはずがねぇもんな!! お前は既にその頃、父親を殺して立ち去っていたもんな!!! 滑稽だったよ、あの女の表情がな!!! 自分が助けたい存在が目の前から消えて、悲しそうに目からぽろぽろ涙を流してたんだよ!!!」

 

………………………………

 

「すげぇ色っぽかったぜ!!! いい女だったモンな、お前の母親!!! その日以降、催眠をかけてベットの上で慰めてやった!! 良い声だった!!!」

 

………………………………

 

「気持ち良かったなぁ……!!! だけど、どれだけ催眠をかけようとも、お前の事は一向に忘れなかった!!! だからよ、お前に会わせてやる事にした。だが、結果はあの様だ……」

 

………………………………

 

「性格はともかくいい体をした女を失うのは辛かったぜ。だが、別に構わなかった。お前があの場所で、死んでいたならな……だが、魔王でさえお前を殺さなかった。いや、あの場所にすら現れなかったんだ。あの堕天使総督や四大魔王に自分が貴様の母親だと言うように言い、死ねるように場所も作ったってのにな……」

 

………………………………

 

「無能な魔王だった……俺を何故ここに追放したのか、それすらわからない程……俺はあいつらが無能だと思うぜ」

 

「………………るな……」

 

「あん? 何だって? 聞こえないんだよ、もっとはっきり……っ!!?」

 

「喋るなと言った」

 

ドガァァァァァァァァァァ!!!

 

俺はガルダを須佐能乎の拳で殴り飛ばした。壁に激突して、そのまま地面へと落ちるガルダ。俺はそれを見ながら、呟いて行く

 

「あの女がお前に体を売ったと言う事に関して、俺は特に言う事は無い。何せ、もう家族と言うカテゴリの中にはいないんでな。だが……」

 

殺意に満ちた目で、俺はガルダを睨む。俺の体から溢れ出る覇気で、そこらに散らばっている塵が吹き飛び、壁にぶつかり、そのまま音を出しながら落ちる

 

「あの女と同じ存在だと、俺を同じ目で見られるのは不愉快だ。あれでも俺の元母親だ。同じ血が通っているあの女の血を馬鹿にするという事は……俺を馬鹿にすると同義だ」

 

「ごほぉぉぉ!! げほっ!! ごはっ!!」

 

腹に入っていた食い物をはきだしながら、俺の目の前に横たわるガルダ。そのガルダの眼は、俺と同じように赤く染まっている

それを見て、俺はさらに殺意が増した。ガルダの胸ぐらを掴み、強制的に立たせる。鼻や口から水をだし、俺を赤い瞳で見つめるガルダ

 

「ああ、汚れているな。その濁りきった赤黒い眼……同じ形をしている俺の眼が汚れる……」

 

いっそのこと……お前の眼をくり抜こうか……

 

ゾワァァァ!!!

 

体中を悪寒が走り抜ける。その無表情で、無慈悲で、無感情で、殺意に満ち溢れた目が……ガルダの顔を、体を、腕を、足を、この空間全てを凍てつくすのに、時間はかからなかった

ゆっくりと腕を上げ、指先をガルダの眼へと向ける。少しずつ近づけていくその指に恐怖し……ガルダは颯真の腕を払いのけ、その場を逃げ出そうとする

 

だが、颯真はそれを許さない。天道で唯一の出口を岩で閉じ込め……その空間全体を結界で覆い尽くした。既にそこは、颯真の手のひらの上

出口を失ったガルダは体をこちらに向け、首を振りながら来るなと小さい声で言う。逃げ道がなくなった時点で、コイツに生きると言う選択肢はない

 

「し……死ねぇぇぇぇぇぇ!!」

 

ガルダの手のひらから撃ち出される魔力弾を避けずに喰らう。それを見たガルダはニヤリと、笑うが……俺は煙の中からゆっくりと現れる

それを見て、さらに絶望が増すガルダ。避けなかったのは、相手に更なる恐怖を感じさせる為……そのまま、まだ撃たれ続ける魔力弾を避けずに進む

 

「来るな!! 来るな!! 来るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

無様な姿だ。自分が強いと慢心し続けてきた者の最後は、何時だって愚かで醜い姿だ。本当の意味で、自分を信じ慢心をせずに死んだ者は、死してなおその死にざまが素晴らしい物だ

それは、様々者達を殺してきた俺がよく分かっている

 

一度恐怖した者達は、その恐怖から立ち上がると手強い。恐ろしい物を見た後、それの耐性が付くからではない。恐れず、只ひたすら前を向いて生きるからだ

恐怖と言う奈落の谷の橋に、一歩踏み出す勇気を持つことこそ、強者の強みである。それが出来ないから、目の前に居る存在は怯えて縮こまっている

 

「何でだ!!! 俺は悪魔なんだぞ!!! 人間と言う下等生物を、生かして飼う上等種族なんだ!!!! こんな事があってたまるかぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「…………何を言っているのか、さっぱり分からないな。確かに人間は下等な種族だよ…………本能で戦争……戦いを求め、その犠牲で進化を遂げる。同じ人間での殺し合い……しかも、自分の思い通りにならないからそれを起こす。愚かだ。実に愚か……だが、それは悪魔にも言える。悪魔転生道具…………それの開発成功により、悪魔はさらにくそったれな存在へと落ちた。あれの所為で何にもの存在がしに、眷属の取り合いで、同じ悪魔が死ぬ。だが、人間よりも質が悪いのは…………それを反省しない事だ。人間はまだ反省と言う行動が出来るが、悪魔は魔王から下級悪魔にかけてまで、自分のしたことを反省しない」

 

実にふざけた奴らだ。悪魔が上等な生物だ? そんな事がある訳無いだろ…………人間よりも愚かで、醜い存在が何を言ってるんだ

そもそも、その下等種族を眷属にして生きながらえているのは何処の誰だ? 貴様ら悪魔だ……お前らも同じ下等種族なんだよ、ガルダ

 

「安心すると言い……それも、これまでだ。情報によれば、ロキとの戦争が始まると予感されているが、それはおそらく止められるだろう。その後、俺は全勢力を導入し、悪魔を殲滅させる。遅かれ早かれ、お前もどうせ死ぬ運命だったんだよ」

 

「やめてくれ……!! やめてくれ……!!」

 

「滑稽な状態だな。貴様が下等な種族と言った俺の元糞親父の方が……まだ抵抗していたぞ」

 

黒炎を纏った腕で、ガルダの体を貫いた。だが、心臓を貫いたわけでは無い。その近く、腹を貫いたのだ。そこから黒炎が発火。そして、痛みと共に苦しむガルダ

 

「痛いよぉぉぉぉ!! た、たずげでぇぇぇ……!!!!」

 

「はははは……!! 笑わせんなよ、ガルダ。お前を俺が助ける訳がないだろ」

 

俺はガルダに背を向け、そのまま出口を開けて出て行く。やがて、ガルダの体から漏れる黒炎が地面へと移り、そのまま広がって行った

俺は建物を破壊し、そのままその場所を去った

 

「もう既に冥界を攻めきった旧魔王派はいない。戦力もかなり減った……もう、時が満ちた」

 

 




次回からとうとう、戦争編へと入ります

此処からオリジナルとなりますので、投稿に少し時間が掛かるかもしれません

その辺をご了承していただければと思います

それでは、次回も見て下さい

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。