心を閉ざす者 完結   作:サイトメガロ

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俺は悪でいい

「……やはり、情報は手に入らないか……俺を狙っているとはいえ、そう簡単に尻尾を出す訳でもないのは分かっているが……駄目だ、どうにも焦りが来てしまう」

 

俺は悪魔どもの死体の上に乗りながら、そう言い漏らしていた。写輪眼の能力の一つ、幻術を使う事により俺は、悪魔どもから俺の事を狙っている存在はいないかと、探して続けているが……見つかりはしない

 

だが、納得はできている。何せ、俺はあの事件を越した張本人。時間が経つにつれて、俺への警戒心が高まるのも無理もない。危険だと判断していた俺が暴走した事件だ……俺の前にまだ姿を現す事は無いだろう

 

「だが、俺を狙っていたのが悪魔だという事を知れたのは、ある意味収穫だったな」

 

あの時、糞親父と話していたのは悪魔を名乗る、他の存在だと言う可能性がないわけではなかった。だが、俺の事を狙っている悪魔が居る事だけは知っている悪魔が居て、そいつの事を訊問できたのは良かった。その悪魔の名前どころか、姿さえも知らなかったようだがな……

 

「……どこへ行こうと、俺は嫌われ者だな……いや、裏世界での話では、俺がそうなる様な事をしている所為でもあるな」

 

俺は自分の手に持っている紙を見て、当然の結果だと言い漏らす。そこには、『魔狩り』と言わる存在の指名手配書だった。悪魔を狩り続ける事により、付けられた名前。クラスはA級だ

 

「ハッ……小学生に付けるクラスじゃないな……まぁ、別にいいけどな……」

 

もう、あの事件から既に数か月。たった数か月でA級クラスのはぐれ者扱いなのも、どうかと思うが……いいさ。もう既に、神器(セイクリッド・ギア)の能力の把握、その扱い方は覚えた

 

俺はそれを使い、新たな物を生み出す。生み出されたそれは、見た目は天使そのもの。だが、悪魔も同じように天使も見た目は翼のある人間。だが、俺の生み出した天使は、体全身が鎧で包まれていて、神聖さを通常よりも感じる。どちらかと言えば、機械的な存在である。そんな天使の横には、聖獣と呼ばれる生き物もいる

 

これが俺の神器(セイクリッド・ギア)であり、神滅具(ロンギヌス)の一つでもある聖獣創造(レイディアント・クリエイト)。聖なる獣を作り出すのだが、ならば天使が作れない通りもない。当然、周りの知っている天使ではないが……

 

「お前らは、コイツ等の消滅作業をしろ。俺はその間に、情報の整理をする」

 

そう言い終えると、天使と聖獣は俺の座っていた悪魔どもに光を浴びせ始める。聖獣は噛み砕いていると、そう言った方が正しいな

 

「元々、相手の戦力は分からないんだ。この能力は、今の俺には必要だという事か……少しずつだが、聖獣達を『ため込む』こともできてきている。一日に100体も作れれば上出来だな……」

 

元々、もう一つの神滅具(ロンギヌス)と対をなすのが、この聖獣創造(レイディアント・クリエイト)。異空間に天使達や聖獣達をためておくことに関して、何の問題もないのだから、これ程良い事は無い

 

「勢力も集まりつつある。他にも、俺にはやる事がある」

 

眼の力も使いこなせてきた。右眼の能力は神威、左眼は天照と呼ばれる能力。神威は俺の時空間を操る能力、あらゆるものを出し入れしたり、自分の体を時空間に飛ばすことにより相手の攻撃を無力化する事が出来る。天照は自分の目視したものを黒い炎が燃やし尽くすまで止まらない

 

そして、両眼能力である須佐能乎。この三つが俺の能力

 

「後は……時間と、経験……そして情報と勢力……」

 

須佐能乎はまだ第一形態。神威ももって2分……天照の乱発もまだできない……一年で創造できる聖獣は一日100体だとしても、3万程度。下級の聖獣をいくら集めても意味はない。上級聖獣を作り出すには時間が掛かり過ぎる。一日に10体作れるかどうか……

 

「どちらにせよ。この場合……拠点があった方がいいな……聖獣達を強い存在にするには、他の種族の力を利用するのもありだ。悪魔の魔の力を手に入れた聖獣……そんな存在が創り出せれば、素晴らしい」

 

今後の予定は、とにかく拠点を見つける事と、勢力の確保だな。経験と情報は悪魔を殺していけば、自ずと手に入るだろうさ

 

「やる事は決まった……さっそく実行だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

森……いや、樹海の辺りにした方がいいだろうか。その方が、隠れる事も出来るし、バレ難いだろう

 

「この辺り……か。此処が一番緑が深い。それに陥没しているような地面の深さ。此処でいいだろう……」

 

俺は荷物をおろし、その場で森を操る。樹海の木々を使い、その場にあるとは思えないような家を作る。いうなれば、隠れ家と言う感じか

 

「完成だな。思ったよりも、大きくなってしまったが……」

 

陥没しているような深さは消えて、その場には木々で覆われた家が出来た。周りから見れば、それが家だと思う事もないだろう

 

「とりあえず、やる事を先に終わらせよう」

 

俺は中へと入り、自分の荷物を置いて行く。聖獣の研究をするがための部屋作り。寝る場所。リビング。キッチン。戦闘訓練場所

 

「………………こんな物だろうな。さて、時間は無限にある訳ではない……さっそくはじめよう」

 

俺は作り上げた聖獣研究室に入り、そこに聖獣を作り出しておく。戦闘能力が低い事は当然だとして、その能力を上げる

 

「上級聖獣が創り出せない訳ではないが、まだ最上級聖獣や最上級天使を作り出す事は出来ない。なら、他の上級から下級までの聖獣や天使の質を上げる必要がある。まずは……」

 

聖獣の体を触り、その状況を見る。体の硬度は下級では剣で斬り裂かれれば普通にやられる。上級だけで言うなら、中級の悪魔どもにはそう簡単に傷はつけられないだろうが、それでもこの程度の防御力じゃ無理だな

 

「悪魔どもの魔の力を取り入れる事が出来るなら……はぁ!!」

 

俺はまた新たな聖獣を創造する。先程とは違い、白と黒の毛並みをした聖獣。質も先程とは変わり、強くなっていることが分かる

 

「なるほど……見た物、触れた物、その他知ったことのあるものを取り入れる事が出来るようだな。これなら、禁手(バランスブレイカー)になれれば……」

 

俺はそう考えて、行動に移す

 

禁手化(バランスブレイク)…………光輝の聖覇獣(ブリリアント・ラディウス・ビースト)

 

光り輝く光源の獣。その名の通り、圧倒的な輝きにて、敵を撃ち消し去す力を持っている獣が作り出せる

 

「と言っても、体のエネルギーを全て持って行かれる。生み出せた聖獣もまだ上級の少し上程度。これを最上級聖獣にするには、まだ時間が足りないか……」

 

だが、聖獣が殺した、もしくは戦った者から得た情報で、聖獣が強化できることは分かった。それだけも十分な成果だな……

 

「………………どこへ行こうと、ついて来る者はついて来るみたいだな……」

 

俺は腰を上げて、研究室から出る。追われる身になると、こうも生きてる実感がある。只殴られて生きてきた俺からすれば、この生活の方が生きてる気がする

 

「……この場所自体には気づいていないみたいだな。ならいい……」

 

俺はその場から察知した敵の場所へと向かう

 

「来たぞ!! 気を引き締めろ!!」

 

ほう、今回の相手は悪魔祓い(エクソシスト)か……胸糞の悪い奴らだ……

 

「何の様だ、偽善者共。俺はお前らの様な塵の相手をしている暇ないんだが……」

 

「黙れっ!! 我々教会の人間を侮辱し、あまつさえ神を冒涜した者を生かしておくわけがなかろう!!!」

 

「居もしない存在である神を信仰しているお前らが愚かだと言っただけだ。人を助けるどころか、導く事さえもしない存在を……こんな世界を作り出した存在を、俺が認める訳がないだろ……!!」

 

「この期に及んで、まだそのような口を叩くか!!! 全員掛かれぇぇぇ!!!」

 

認めてたまるか……!! 神が神聖な存在だと? ふざけるのも大概にしろ。俺は感情の籠っていない顔で、飛びかかってくる(エクソシスト)を見る

 

「来な。お前らの相手だ」

 

俺は光輝の聖覇獣(ブリリアント・ラディウス・ビースト)により生み出した天使を、敵に仕向ける

 

「我々を守護する天使まで汚すか……!! この汚物が……!!」

 

汚物? この俺がか……? お前らからすればそうかもしれないな。神を冒涜し、天使を汚し、お前らを否定する俺は、お前らからすれば汚物にも等しい物だろうさ……だからどうした

 

「……無実な人間を殺し、高笑いをするお前らのような存在に……そのような事を言われるとはな……」

 

俺はその場で静かに、そして少しだけ笑う。冷笑……それも、相手が怯むほどの残酷な笑みを浮かべているだろう

 

「俺は別に、お前らがどうなろうと知った事ではない。人の死は他人事だ。目の前で塵が死のうと、誰も悲しみはしないさ……」

 

「我々は正義だ!! 貴様のような悪を滅却するために存在している!!!」

 

「自分で無実な人間を悪に仕立て上げ、それを殺して生きているお前らが正義なら……俺は別に悪でいい……お前らと同じものを掲げているなんて、不愉快過ぎて反吐が出る」

 

「貴様ぁぁぁぁぁ!!!」

 

「やれ、光天使(ホーリー・アストラル)

 

鎧を纏った天使達は、俺の命令通り敵を斬り裂いて行く。たかが下級の悪魔祓い(エクソシスト)。普通の下級天使よりも強い光天使(ホーリー・アストラル)に勝てる訳がない。相手は段々と戦意を喪失して、逃げ出す者もいるくらいになって来たが、俺は誰一人として逃がすつもりはない

 

「た、助け……!!」

 

「何を言ってる。誰も助けに来る訳がないし、呼ばせにすら行かせないぞ。お前らは俺を殺そうとしたんだ……殺される覚悟位はあっただろ?」

 

逃げ出す雑魚共も光天使(ホーリー・アストラル)は逃がしはしない。桜のように儚く散ってゆく命……勝てる見込みもないくせに、挑んでくるのはいつも通りだ。最後の男を斬り裂き、残るは隊長のような男だけ……光天使(ホーリー・アストラル)の白い鎧には、奴らの汚い血がついている

 

「な、なんでもする……だから……命だけは……!!」

 

「……いつもそうだ。自分が不利になれば命乞いをする……それをすれば、助かると思い込んでいるからだ。命を狙った男に、命乞いをするとは……落ちたものだ」

 

「お、俺を殺せば……熾天使(セラフ)の皆様がお前を殺すぞ……!!」

 

「つくづく救えない男だ。お前如きの死一つで熾天使(セラフ)が動くわけないだろう。その程度で動く存在なら、俺は今頃、魔王にでも囲まれている……」

 

俺は光天使(ホーリー・アストラル)に命じて、奴の命を奪おうとする

 

「ま、待ってくれ……!!」

 

「慈悲は無いぞ。これはお前らが言ったことだ……正義を悪が殺して、何が悪い……」

 

それで問答は終わり、光天使(ホーリー・アストラル)が男の首を斬り裂いた。血しぶきが起こり、俺と光天使(ホーリー・アストラル)を赤く染めていく。また汚い血で汚れた

 

「……正義を語りたいなら、もっとそれらしい事をしてから言うんだな。悪魔祓い(エクソシスト)なんて名ばかりの偽善者共が……」

 

お前らが何を救ってきた……悪魔から人間を守ったとでも思ってんのか……? そんな訳がないだろ。なら、なんでお前らは助けた人間を殺した……結局はお前らも変わらない……人間ってのは何処まで行こうと、残酷な事に代わりはないのだから

 

「……人を救えない神、助けた人を殺す教会……神聖な存在が聞いてあきれる……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人間とは愚かだ。同じ過ちを何度も繰り返し、反省する所かさらに愚かな事へと発展させる。悪魔も天使も堕天使もまた然り。そう思いながら、俺は修行をしている

 

悪魔・天使・堕天使は昔……千年くらい前に戦争をしていたらしい。自身の勢力の土地の拡大でもしていたのだろう。それを聞けば、人間よりも愚かだと判断できる。今でこそ戦争はしていないが、いつ始まってもおかしくない状況だ

 

「それを解決できない上も……おかしいな」

 

修行を止めて、俺は空を見る。戦闘訓練場は樹海の開けた所にあり、空を見る事は出来る

 

「……人間を悪魔に変えてまで種族の存続をする。そのシステムの所為で、何人の無実な人間が眷属になり、そして死んだのだろうか。はぐれの80%は主を裏切るからだと言うが、残りの20%は無理矢理の眷属化が原因だ。それを裏切りだといい、はぐれ扱いにする……下らない……自分が選ばれた存在気取りの悪魔どもが……何様のつもりだ……反吐が出る……!!」

 

殺気を隠す事無く俺は、冷酷な表情をする。俺の殺気を感じた周りの生き物は、恐れその場を消え去る

 

「俺が正しいなんて言わない。俺がやっているのは殺人……それが正しいなら、奴らのやっていること全てを肯定することになる」

 

だが、俺はこれをやめるつもりはない。分からせてやる。俺の全てを奪ったことを……必ず後悔させる……それを阻む物はすべて、この手で消す

 

 




天使のイメージは、オーバーロードの四話に出てくる天使です

これからも見て下さい


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