俺はテストの召喚獣R 作:琥珀
この作品は「バカとテストと召喚獣」の二次創作であり、オリジナル主人公・版権ネタ等が含まれております。
それらの要素が苦手な方はご注意ください。
尚、リメイクと言ってもほぼ原型を留めておりませんので、にじファン時代に拙作を読んでいただいた方も、心機一転スタートということでひとつよろしくお願いします。
それでは、本編のほうをお楽しみください――
『待ってください先生! 体調が悪いだけなのに0点になるなんておかしいじゃないですかっ!』
――――そんな声が聞こえてきた。
思わず読んでいた雑誌から顔を上げれば、いつの間にか隣の教室がザワザワと少し騒がしくなっていることに気づく。
聞こえてくる声を聞いてみれば、どうやら一人の男子生徒と教師が誰かの処遇を巡って口論をしているようだ。
……いや、この表現は多分正しくない。話の内容をよく聞いてみれば、実際は生徒のほうが教師に食い下がっているだけに過ぎなかった。
男子生徒のほうの論理はメチャクチャで、傍から聞けば頭が悪い発言にしか聞こえない。
とはいえ、そこに誰かを助けたいという『熱意』が込められているのも確かだ。
だからこそ、応対する教師の声にも、少し困ったような感情が浮かんでいる。
「はぁ……何をやっているんだ、吉井のヤツは」
「バカやってるんだろうよ、いつも通りに」
「そうだな、これはいつも通りだったか……まったく」
どうやら同じ部屋にいた教師(西村宗一・通称:鉄人)にも今のは聞こえていたようで――俺たちは揃って、呆れた溜息をつく。
この学校のテストは普通の学校におけるテストよりも大きな意味を持っているというのに、自分のことも放り出して
なにしろ『有史始まって以来のバカ』と校内新聞にも載ったことのある人物だ。しかもこれが煽りや誇張ではないかもしれないというのが恐ろしい話である。
純粋な事実として、『アイツ』はバカだ。時折わざとやってるんじゃないかと思うくらいのバカだ。悪い意味でも、そして――良い意味でも。
「やれやれ、何故ここまで勉強を放棄していられるんだ……
「いや、明久は『今回はひょっとしたらDクラスくらいまでは行っちゃうかもね!』とか言ってたぞ。六角エンピツ握り締めながら」
「……Fクラスの担任、そのうち交代してもらったほうがいいのかもしれん」
あ、死亡フラグ。
……まあ、俺に対してのモノじゃないしここはスルーしておこう。
さて、ここまで聞いてもらえれば判ると思うが、俺達とあの『声の主』は知り合いだ。
それも並大抵の関係ではなく、文字通り
何故そんなけったいな関係になってしまったのかはまあ、話せば長くなるのだが――
「にしても、アイツがFクラスなら俺もかー。うわーめんどくさ」
「……本当にいいのか?お前の学力ならもっと上にも行けるんだぞ?」
「とは言ってもなぁ。俺の身体、『こんなん』だし」
――それは、俺の身体が普通ではないことに起因している。
改めて、俺の身体を確認してみよう。
まず手。何やらデフォルメされて丸っこい。
次に足。生物というよりぬいぐるみのような、ドラえもん型。
そして頭。デフォルメされた上、何やらケモミミのようなパーツ付き。
おまけに腰。……シッポつき。
加えて、これらの合計サイズは80cm程度。
自分で言うのはかなり虚しいが、俺……
どうしてこんなサイズになってしまったのかは俺自身誰かに問い詰めたいところだが――文句を言っても現実は変わってくれなかったので、今は元に戻る方法を探しつつ生きているところである。
まあ、要するに一言で言うと――――俺は『召喚獣』だ。
大事なことなのでもう一度言おう。
『俺』は、『テスト』の、『召喚獣』――――なのだ。
……いやはや、なんで本当にこんなことになったんだっけか?
思わず溜息をついた俺は、決して悪くないと思う。
「人外になるならせめてシリアス路線であってほしかった……」
「お前は何を言っているんだ」
▽▼▽
それから数日後。
一年生を終え、文月学園にとってこれからが本番である、二年生の春が始まる頃。
そろそろ授業が始まるであろう時間の廊下に、一人の少年と召喚獣が歩いていた。
「そんなわけで、Fクラスおめでとう明久!」
「バカな……どうしてこんなことに……!!」
――――文月学園という場所がある。
「くそう…十問に一問は解けたのに、どうして僕が最下位クラスなの!? 陰謀だ!」
「その問題も運頼りだったじゃねーかこのスーパーバカ」
「罵倒が激しい! ひどいよユキト……君だけは僕の味方だと思っていたのに!!」
「一分も勉強せずゲームやってた奴に何を言えというんだ……」
――――そこは、科学とオカルトと偶然に満ちた、世にも奇妙な学校だ。
「いやいや違うよ!そもそも、あれはユキトが遊んでたのに釣られたんだよ!」
「え、いきなり人のせいかよ……っつーか、ナニ? 俺が遊んだ? いつの話だそれは」
「だって何だか分厚いエロ本読んでたじゃん」
「おいこのバカ唐突に何言ってやがる!? 人がいないとはいえ廊下で俺を変態扱いするんじゃねぇ!!」
――――学校の授業に『召喚獣』を使うというその場所は、成績によりクラスの所属が変えられる。
「だって表紙に爆乳のお姉さんが描いてあったし……うん、アレはけっこうユキトを見る眼が変わりそうだったなぁ」
「あぶねぇ人は居なかったか……! おい明久、喧嘩なら買ってやるぞ。今のはベッドの下の本全部燃やされたいってことだよな?」
「お、横暴だぁ! 自分だけエロ本成分をチャージしたくせにぃっ!!」
「うっせーんだよこのバカ! ……というかな、明久。アレはそもそもエロ本じゃない」
「え?」
「アレは1600年代の歴史とかを題材にしたラノベで、俺は世界史のモチベ維持に使っただけだ」
「嘘つきなよあんなデカいラノベがあるわけない! 1000Pぐらいあるんじゃないの!?」
「ところがどっこい……! 最高記録は1149Pです……!」
――――成績の良い者には良い設備を、成績の悪い者には悪い設備を。
「ぐぬぬ……納得いかない……」
「別に嘘ついてねーっつの。……ま、とにかくだ。勉強なんてもんは要は積み重ねなんだ、お前だってやれば出来るぞ?」
「えー?それは出来る人の言い分でしょ?」
「やりもしないで諦めるからダメなまんまなんだろ。……まあ、成績はともかくお前のバカは一生治らないだろうけど」
「おかしい……発言の前半と後半が食い違っている……!!」
――――それが嫌なら、戦うしかない。
「ハハハ。いやーしかし、今日から新学期か……『試召戦争』も解禁されるし、俺らってどうなんだろうなこれから」
「露骨に話題を逸らしたね……まぁ、普通に考えれば強制参加じゃない?あのババアのことだし」
「
「僕もフィードバックで痛みあるんだろうね……」
――――召喚獣を用いた戦争で、上位のクラスに打ち勝つのだ――――
「……戦争、起こらないといいなぁ」
「おい馬鹿やめろフラグ立てるな」
▽▼▽
そしてようやく、物語は始まる。
予定調和のようにFクラスになった少年とその召喚獣は、己の場所へと歩き出した。
『成績』を受け入れ、『頂点』の凄まじさを知り、『少女』のことを想いつつ――
――――二人は、前へと一歩を踏み出した。
そんなわけで第一話でした。
元の作品を見てくださった方ならわかると思いますが、もう完全に別物ですねコレ。特に描写が。
これを作るにあたって昔の作品を読み直したんですが、アレです。心を抉るわ……!
まあ、これも自分の成長ということで受け止めていきましょう。多分コレも後で見て頭を抱えるんだろうなぁ。黒歴史というのはそういうものです。
さて、にじファンの方の元作品は既に消去してしまったので、本当にここから改めてスタートということになります。
前から見てくださった方も、今回から読みはじめてくださった方も、改めてよろしくお願いします。
次回投稿は明日の予定。
修正の量が凄まじい上、サーバーの都合もあるので本編はゆっくりと投稿する予定ですのでお楽しみに。
どうでもいいけどエクリプス火力ねぇ……!!