高2生最後の大イベントを控えた彼女たちの関係は果たして――
キーンコーンカーンコーン。授業の終わりを告げる鐘が教室内に響き渡る。
文化祭も体育祭も終わった私たち高校二年生は祭りごとが終わり、多少落ち着きを取り戻したかというとそういうわけでもない。まあ国立の大学を目指す私にとってはもうちょっと教室内の雰囲気も進学校らしく勉強しやすい感じになってくれれば嬉しいんだけど、その願いが叶うのはもっと先になるだろう。というのも、クラスメイトたちが何にこんなにそわそわしているのかというと来週なのだ。来年受験生となる私たち高校二年生最後の楽しみとも言うべきイベント―――そう、修学旅行。
そういうことでここ数日は皆ここ行きたいあそこも行きたいと、修学旅行のプランを立てるのに必死なんだ。ちなみに私たちは京都に行くことになった。
まあご存じの通り私は特段仲良くしている生徒というのもおらず、自由行動の班もまだ決まっていない。(ちなみに文化祭のあと、なぜか海老名がやたらと懐いてきたのだが彼女はいつもの女王様御一行と行動するので自由行動は一緒に行くことはない)
―――まぁ、班が決まってないのはもう一人いるんだけどね、、、
そのクラス内のもう一人のぼっち、彼――比企谷八幡に目を向けると退屈そうに欠伸をしながら帰る準備をしている最中だった。
―――私と友達になって
あの夜、いきなり友達宣言してしまったのだがあの後自分で恥ずかしくなり、比企谷が突然の私の謎の宣言に混乱しておどついている中、アパートにダッシュで帰ってしまった。。。
そしてあの日以来(と言ってもあれからまだ三日しかたってないけど)比企谷と会話もなく、まるで何もなかったかのように時が流れていた。
だけど、私は決めていたんだ。今日は奉仕部が休みらしいということを耳に入れたのでチャンスは今日しかないと思っていた。
比企谷が教室を気だるげに去るのを視界に入れ私も席を立ち、気付かれないように彼から12メートルくらい離れて昇降口まで下りていく。彼が下駄箱から靴を取り出し、校内用シューズと履き替える。
―――いまだ!
「比企谷!」
「!・・・川崎か、どうした?」
平然を装っているように素気ない返事を返す比企谷だが、明らかに少し落ち着きがない。・・・まあ、もちろん私もソワソワしているのだがそこはスルーで。
―――少し恥ずかしいけど、勇気出せ、私。
「えっと、、、ちょっと一緒に帰らない・・・?」
明らかに比企谷は渋々であったけど、了承した彼が駐輪場から自転車を持ってくるのを校門前で待っていた。ちなみに私は先日自転車が故障したので最近は徒歩かバスで通学している。
―――ど、どんな会話すればいいんだろう?
―――とりあえず、修学旅行のことかな・・・
そんなことに頭を巡らせていると彼の声が聞こえた。
「またせたな・・・」
「あ、・・・うん」
「とりあえず、校門でようぜ。・・・ここは人が多すぎる」
下校時刻となったこの時間は部活をやっていない帰宅生徒も多く、確かに一目につきやすい場所だった。
それは私も同じ考えだった。というのも私たちぼっちは何か人が多いところやざわざわしているような場所は苦手だ。よく分からないけど、多分全国のぼっちさん共通なのであろう。
私たちはしばらく歩を進め、ようやく落ち着いた場所に出た。信号機が赤に変わり二人同時に歩を止めたところで彼が口を開いた。
「で、どうしたんだ? 珍しいこともあるもんだな」
「え、いやその・・・・・・」
―――うーん、やっぱり少し恥ずかしいね。。。
―――でも!
「・・・修学旅行の自由行動、一緒にまわらない?・・・なんて」
「・・・・・・は?」
彼は口を開けたまま、硬直した。何かついこの間も同じような比企谷のぽかーんとした顔を見た気がするけど、デジャヴ?
「だれか一緒にまわる人、いた・・・?」
私が再び質問すると彼の硬直がようやく解ける。
「いや、いねえけどよ・・・。俺ぼっちだし」
「なら、・・・いいよね?」
しかし、彼は首を縦に振らない。
「海老名さんとかとまわればいいじゃねえか。最近仲いいんだろ?」
「海老名は三浦たちとまわるし・・・」
「それもそうか・・・」
―――なんかこいつ、遠回しに私をさけてない?
―――むぅ・・・少しイジワルしてやろう
少し恥ずかしいながらも、上目使いで
「わ、私じゃ・・・嫌なの?」
「っ、い、いやそういうわけじゃないんでしゅけど」
こうかはばつぐんだ!▼ 噛んでるし。顔を赤くして比企谷は下を向いた。
―――こういうあざといのがいいのかね、男って
なんかの雑誌で見たあざといスキルを披露したことで、比企谷に効果抜群ということは分かったのだけどそういうことはどうでもいい。まだ、肝心の答えがまだ聞けていない。
「で、どうなの・・・?」
「ど、どうして俺なんだよ・・・?」
信号が青に変わり彼が歩を進めようとした瞬間私はその問いに答えた。いや、答えなら三日前のあの日の夜、もうすでに言っていた。
「ともだちだから」
それからお互い会話がなく、無言で歩き続けた。
彼は私の問いをどう思っただろうか、
彼は私の答えをどう受け取っただろうか。
隣にいるにも関わらず、聞けないことに少しもどかしさを感じながらも、私は彼の気持ちがよく分かった。おそらく彼は以前、友達関係などで嫌な出来事があったんだろう。
だから信じ切ることができない。だって彼はあの夜由比ヶ浜たちを友達ではないといったのも、普通の人から見るとハテナだろう。はたからみると明らかに彼らの関係は友達のように見える。それに、同じクラスの戸塚、そして・・・ざ、材木?みたいなのも友達と彼は呼ばない。
友達になってしまえば、裏切られたときがつらいから。彼はもしかしたらそのように思っているのかもしれない。
でも、それは間違いだ。もしそのようになるのだとしたらその友達は『本物』ではない。それはクラスメイトたちがよくやっている薄っぺらい関係、社交辞令のような、レプリカのような。
だから、私もかれもそのような関係は望まないんだ。
なら、答えは一つしかない。
私は彼と『本物』の関係を築きたい―――
分かれ道まで来たがまだ彼は答えてくれなかった。
―――しょうがない、かな。また今度誘うしかないね・・・
「私こっちだから、じゃあ
私が彼に別れを告げようとした時だった。彼のほうを見ると彼もこちらを見ていた。
「じ、じゃあ、どこ行くとか・・・相談したいし。・・・よかったらメールアドレス教えてくれないか?」
「え・・」
「・・・と、友達なんだろ」
夕日が眩しく差し彼の表情を詳しく見ることはできなかったけど、彼が多分顔を赤くして、一歩を踏み出してくれたことは理解できた。それだけで十分だった。
私は彼の勇気(こたえ)に力いっぱい答えた。
「うん!」
そうして、彼と私は、友達になった。
-- 3話end --
なんだか途中いろはすがサキサキに憑依しりゃってましたね(汗
次回は修学旅行編です
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