がっこうぐらし!~もう1人の顧問~   作:ダイダロス

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どうもお久しぶりです。
ちょこちょこ書いていたがっこうぐらし!の分が1話完成したので投稿します。
アニメの方は終わりましたが、このSSは更新不定期ですけど続けていきます。


火飛《ホタル》

 建宮健次が寝起きする場所は生徒会室の隣、生徒指導室だ。建宮は基本的にここで生活する。

「先生、起きろよ。先生」

 誰かに呼び掛けられて建宮健次は目を開いた。

 建宮は大きなあくびをした。まだ頭は眠ったままだが、ツインテールを見て誰かわかった。

「…おぅおはよう恵飛須沢」

「おはようって、先生も案外寝坊助なんだな」

 さっさと朝ご飯食べに来いよー、と言って恵飛須沢は生徒指導室から出ていく。

 時計を見ると8時過ぎと少し寝坊したようだ。

 奴らも元が人間だからか、昼間と比べて夜はあまり活動していない。それでも万が一の事を考え、建宮は時々夜に見回りを行っている。昨日も1人で深夜に見回りを行い、建宮はちょっと寝不足だった。

 軽く身支度を整え、建宮は学園生活部の部室に向かう。建宮が生徒会室の中に入ると既に部員が3名とも揃っていた。

「おはよう」

「おはようございます」

「おはよーございます」

「おっはよーございます」

 もう一度建宮はおはようと言って、鼻をひくつかせた。

「いい匂いだな、今日はカレーか」

 机を見れば既に3人分のカレーが並んでいる。

「先生の分もすぐできますから待っていてください」

「ん、すまんな」

 最近は非常食ばかりだったため、例えレトルトだとしてもカレーはカレー、久しぶりに豪華な食事の気分になった。

 丈槍が建宮に注意する。

「先生、寝坊しちゃダメだよ。皆で食べるって決めてるんだから」

「悪い悪い。最近、やることが色々溜まっててな」

「先生って大変だな…」

 若狭がカレーを運んできた。

「おまちどおさま」

「ありがとう。じゃあ」

『いただきます!』

 しばらくはカチャカチャと食器同士がこすれ合う音が響いた。

「おいしかったー」

「早っ!」

 あっという間にカレーライスを食べ終えた恵飛須沢に丈槍が思わず叫んだ。

「くるみちゃん太るよー」

 丈槍はカレーを食べながら言った。

 女子としては言われたくないだろう台詞トップテンの一つを丈槍に言われ、即座に恵飛須沢が言い返した。

「いいんだよ、運動部なんだから!」

「え?うちって運動部だっけ?」

 恵飛須沢の言葉が軽く引っかかった丈槍が聞いた。

 一瞬漂う気まずい雰囲気。咄嗟に思いついた事を建宮が言った。

「カレーは今じゃ国民食だが、昔の日本人はカレーは卑しい人間が食う料理って思ったらしいんだよな」

「えっ、そうなんですか!?」

 建宮の狙い通り、丈槍が反応した。建宮からアイコンタクトされた若狭が話に合わせる。

「どうしてそんな風に思われたんですか?」

「確か幕末に欧州に行った使節団の随行員が、船中のインド人がカレーと穀物を混ぜて手づかみで食うのを見てそう思ったらしい。カレーもインド人もほとんど見たことがなかった当時の日本人からしたら、見慣れぬ異邦人が変なものを手で食ってるって映ったのかもな」

 薀蓄を聞いて恵飛須沢は興味深そうに頷いた。

「へー」

「まぁ、それを言うなら寿司食う日本人も外国人から見たらおかしく思っただろうけど」

「ははは、確かにそうだよなー」

 建宮と恵飛須沢の会話を横に、丈槍がスプーンの先を舐めながら呟いた。

「むー。じゃあ手づかみで食べた方がいいのかな?」

「行儀が悪いからやめなさい」

「は、はい。ごめんなさい…」

 静かな若狭の声を聞いて、丈槍はスプーンでカレーを食べる。

 どうやら上手く話を逸らすことができたようで、丈槍を除く3人は小さく頷き合った。

 その後雑談を交えながら朝食を終える。

「あっそろそろ授業に行かなくちゃ。先に行くね」

『いってらっしゃい』

 パタンと戸が閉まる音が鳴ると、残った3人の間にホッとした空気が漂う。

 若狭が珍しくSっ気を出してからかうように恵飛須沢に言った。

「ちょっと危なかったわね」

「うん、口が滑った」

「全く、気をつけろよ」

「はーい…」

 申し訳なさそうに恵飛須沢は建宮に答えると、シャベルを担いで立ち上がった。

「では、恵飛須沢胡桃!心入れ替えて朝の見回りに行ってきます」

「気を付けてね」

「無理はすんなよ」

「はーい」

 そう返事して恵飛須沢は校内の見回りに行った。

 生徒指導室に戻ろうとした建宮は若狭に呼び止められた。

「先生、ちょっとご相談が」

「どうした、若狭」

 備蓄などを記入した家計簿代りのノートを持って、若狭が建宮に声を掛けた。

 建宮は一人暮らしで部屋はゴミ屋敷ではないが、洗濯物が畳まれずに放置されていたり教科書や資料が乱雑に積み上がっていたりほどほどに汚い。

 私生活のだらしなさを自覚しているが、授業の準備やプリントの作成、課題のチェックなどで直す暇はなく、改善される傾向は全くない。

 そのため帳簿は学園生活部部長の若狭悠里に一任していた。

「ちょっと電気が不足してまして。物資も減ってきてますし」

「そうか…。このところ曇りだったからな」

 太陽光発電のお陰で電気の供給が絶えてもこの建物は電気を使用する事ができる。だが、曇りの日はほとんど充電されない欠点がある。

 浄水機構があるため水にも困らないが、これも電気が無ければ意味がなくなってしまう。

「天気はどうにもならんが、物資はまぁ近い内に購買に取りに行くか」

 建宮は顎を撫でる。髭反りが手元にないため伸びるに任せた不精髭が指先に軽く刺さった。

「それしかありませんよね…」

 2階にある購買部にはまだ物資が残っている。だがそこまでバリケードは構築されていないため、当然奴らが徘徊している可能性がある。

 しかし夜は昼と比べて奴らが徘徊している可能性は格段に下がる。

 何が減ってきているのか、それが購買部にあるか、などを話し合い、夜になったら建宮と恵飛須沢で購買に行く事となった。

 ふと腕時計を見て、建宮は恵飛須沢が見回りに行ってから30分くらい経っていることに気づいた。

「そういや、恵飛須沢遅いな」

 3階と2階の半分くらいしかない範囲の見回りなど15分もあれば終わるものなのだが。

「くるみ、ひょっとして…」

 何かに気づいた様子の若狭に従って、建宮は若狭と一緒に屋上に行く。

 恵飛須沢は水道でシャベルに付いた血を洗い流していた。さらに服には真新しい血の跡が。だが怪我をしている様子はない。大方見回り中にバリケード付近で奴らと遭遇して始末したのだろうが。

 建宮は思わずため息をついて言った。

「またか、お前は」

「見回りだけでいいって言ってるでしょう」

 若狭も咎めるように言うが、恵飛須沢は特に気にした様子はない。

「たまたまいい位置にいたからな。一体だけだったし、痛っ」

 建宮に軽く頭を小突かれ、恵飛須沢はムッとした表情で見上げる。

「何すんだよ?」

「少しはこっちの気持ちも考えてもらいたいもんだな」

「先生の言う通りよ」

 大人である建宮も体育系ではないため体力や力に自信はない。運動神経は特に問題ないのだが、中高大と文化部所属のため同年代の成人男性と比較しても細い。

 なので奴らとの戦闘に関しては主に恵飛須沢が行い、建宮は補助に回るのが定番になった。

 しかし、なまじ戦闘経験が豊富になったせいか独断で戦闘を行うこともあった。

「心配しすぎなんだけどな」

「部長ですから」

 えっへんと大きな胸を張った若狭に対し、建宮は鼻を鳴らしただけで何も言わなかった。

 見回りの時に戦闘をさせたくないなら建宮が恵飛須沢からシャベルを取り上げてしまえばいい。だが見回りの時に何も起こらないとは限らないし、恵飛須沢がシャベルに対し相当な思い入れがあることも知っている。

 やっぱり朝も夜も自分が見回りを担当するべきだろうかと建宮は考えた。しかしそうなると恵飛須沢が文句を言いそうな。うーん、と建宮は悩み始めた。

 シャベルを洗い終えた恵飛須沢は、フェンスに凭れながら校庭を眺めた。

 なんだかいつもと様子の違う恵飛須沢の事が気になった若狭が声をかけた。

「どうしたの?」

「ゆきが野球部が練習してるって言ってたじゃん」

「言ってたわね」

「…トラックで、誰か走ってないかなって」

 感傷的に恵飛須沢が呟いた。

 恵飛須沢胡桃は陸上部の生徒だった。

 事件以前は2年B組担当で文芸部の顧問だった建宮が彼女の事を知ったのは、事件の後だった。

 建宮が事件の後で知ったのは恵飛須沢の事だけじゃない。

 何もかもが後手だった。知るのが遅すぎた。

 風に当たりながら3人は無言で校庭を眺めていた。

 これから夏の暑さが厳しくなると言うのに、目の前の光景は心が凍ってしまいそうだ。

 何もせず、ただ校庭を眺めていると屋上の扉が開いた。扉が開いた音に3人が振り向くと、丈槍が立っていた。

 丈槍は開口一番、突拍子もないことを言った。

「肝だめししよう!」

「はぁ?」

「え、よくない?夜の学校でハラハラドキドキだよ!」

 よくねえよ、と毎晩見回りをしている建宮は心の中で突っ込んだ。いくらバリケード越しとはいえ、夜中に人を襲う奴と鉢合わせるかもしれないというのは慣れるものではない。

 建宮の心中を知らず、丈槍は言葉を続ける。

「それでめぐねえが建宮先生にも許可もらってきなさいって」

 チラリと建宮は若狭と視線を合わせる。

「どうしますか?」

 若狭が建宮に聞いた。部の運営は若狭が主に担当するが、最終的な行動の決定権を持つのは保護監督責任者の建宮だった。

「そうだなぁ…」

 基本的に今の丈槍は子供のような性格で、一度言い出した事は中々下げようとしない。

 却下しようにも、現在の状況を正しく把握できていない丈槍にそれを説明するのは無理だ。初めから全員で固まって行動するのと、勝手に行動されるのとどっちがいいかとなると、最初から全員で行動するほうがいいだろう。

「わかった。ちなみにどこまで行く気だ?校外に出るようだったら許可しないぞ」

「それは、えっとぉ…」

 丈槍は目を反らす。

 何処を回るとか全然考えてなかったな、と建宮や若狭、恵飛須沢は察した。

「はぁ、その辺は若狭と俺で考えとくわ」

「わかりました」

 楽しそうに肝だめし~♪と言いながら丈槍は屋上から降りて行った。

 本当に楽しそうだ。この状況じゃなければ微笑ましさも感じられるんだろうなと思いながら建宮は息を吐いた。

 

 

 ◇◇

 

 

 そのまま夜になった。肝試しの準備を終えた学園生活部は深夜の校内に繰り出す。

 建宮と若狭は肝だめしと言う事で、購買部と図書室の2つから必要な物資をたどり着いた証拠の品として確保するという風に設定した。この設定は丈槍にのみ適用されるものだ。

 バリケードの向こうは安全が確保されていない危険区域。万が一奴らに遭遇した場合に備え、建宮はショルダーバッグの他にモップを持つ。

「先生、何でモップ持っているの?」

「これはお化けが出た時のためだな」

 ある事情で奴らと遭遇したとは丈槍に言えない建宮はそう言った。恵飛須沢も肝試しに不釣り合いなシャベルを持っているが、あれはいつもの事なので論外。

 軽くモップを振り回す建宮に丈槍が質問した。

「先生お化け苦手?」

「まぁ苦手だな」

「怖いのか?さては先生お化け屋敷に1人で行けないタイプだな」

 からかう口調の恵飛須沢に少し考え込んでから建宮は言った。

「…怖いとは違うな。お化けよりお化けとかを思い付く人間の方が怖いと思うし。あと饅頭も怖い」

「は?」

 何で饅頭が怖いんだと恵飛須沢は呆れた視線を送ってきた。微笑みながら若狭が会話に混ざってきた。

「フフ、お茶も怖いんですか?」

「ん?…あぁお茶も怖いな」

 わかってくれる奴がいたと建宮は少し嬉しそうに答えた。

「くるみちゃん、お茶と饅頭怖い?」

「いや、全然」

 恵飛須沢と丈槍はわかっていない様子。

「お前らは後で古典の補習だな」

『え~!?』

 古典というより落語の補習ですよね?とは言わず、若狭は軽く手を叩く。

「さて、ここからはお喋りを小さくして進むわよ」

「うん、めぐねえも早く。……はーい、佐倉先生」

 丈槍はそう、誰もいない場所(・・・・・・・)に向けて話しかけた。建宮は痛ましい物を見るように目を伏せた。だが、顔を上げると恵飛須沢と並び若狭と丈槍の前に出る。

「よし、じゃあ肝試しといくか」

 建宮と恵飛須沢が前を進み、それぞれ武器を構えて奴らを警戒する。

 特に何事もなく第一目標、購買部に学園生活部は到達した。

「電気点けて大丈夫か?」

「ここは窓がないから、外に見えないはずよ」

 そう言って若狭が電気を点けた。奴らは街灯に集まる蛾のように光に反応する。他には音にも反応する事が今までの体験からわかっている。

 建宮は一番に購買部に入り、棚の間にいないか確認する。幸いにも奴らの姿はなかった。

 建宮が手を振り、安全だと二人に伝える。が、それより早く丈槍がお菓子が陳列してある棚に向かった。

「何かないかな~」

 明るい丈槍の声を聞きながら、建宮も何か武器になるものがないか物色する。

 だが、生活用品かお菓子、非常食ばかりで特に武器になりそうなものは見当たらない。

 武器がないならせめて髭反りとクリームでもないかと探すが、消費者が高校生に重点を置かれているせいかどちらもなかった。

 さて、どうするかと建宮が顔を上げると偶然恵飛須沢が視界に入った。何か棒のような物を持っている。

「…何であんなのが購買で売ってあるんだ?」

 建宮は恵飛須沢が持っている高枝切狭を見て呟く。

 リーチが長く、刃物だから使えるかもしれないと建宮は一瞬思った。

 だが、人など動物の骨に刃物がぶつかると刃こぼれしやすいと聞く。油も付いて使う度に切れ味も落ちる。砥石などもないし、シャベルやモップよりも扱いにくそうだ。

「皆、証拠の品は取った?」

 どこかから若狭の声が聞こえてきた。あまり長居するわけにはいかない。

 結局、建宮は食料品と生活用品だけを取ってカバンに入れた。

 最初の目的地をクリアした学園生活部は、次の目的地に向かう。

 やはり夜ということで奴らの姿はなく、無事図書室に辿り着く。

 だが、購買部のように窓が塞がれていない図書室は、光が外に漏れてしまうため電気を付けられない。

 出入口の見張りに立った恵飛須沢を残し、懐中電灯片手に三人は本を探しに行く。

 本棚の列を進みながら丈槍は質問した。

「先生とりーさんは何の本を探すの?」

「日本史の資料」

「教科書と問題集」

 2人に即答され、ウッと丈槍は言葉に詰まった。

「先生はともかく、りーさんは勉強好きだねぇ」

 自分は関係ないと呆れた風に語る丈槍は勿論勉強が好きではない。しかし、現実は甘くなかった。

「何言ってるの、これはゆきちゃんの分よ」

「俺のもお前らの授業で使う奴だな」

 それを聞いた丈槍は冷や汗を流して及び腰になった。

「うっ…。私も本探してくるねーーー!!」

「あ、おい!」

「ゆきちゃん!」

 脱兎の勢いで走り去った丈槍を止められず、建宮と若狭は暗闇に消えていく背中を見送ってしまった。

「行っちまったな…」

「えぇ…」

 呆然と建宮と若狭は丈槍が消えた方を見た。

 恵飛須沢ならまだしも、状況を正しく認識できていない丈槍が1人で行動するのは不味い。

 慌てて追いかけようとした建宮達は何か低く唸る音が聞いた。割れた窓ガラスから入り込む風の音ではない。

 聞こえたのは一瞬だけですぐに小さくなったが、間違いない。

「今の、聞こえたか?」

「えぇ…」

 暗闇の中で建宮と若狭は見合わせる。懐中電灯に照らされた顔は少し血の気が引いていた。

「不味いな…。急いで丈槍を見つけないと」

「でもこの暗さじゃ…。それより奴を誘きだした方がいいんじゃないですか」

 探すよりも向こうから出てきてもらった方が早い。建宮は若狭の提案に乗った。

「ナイスアイデア。よし、恵飛須沢と合流するぞ」

 モップでは奴らを仕留めるのは難しい。恵飛須沢のシャベル

 駆け足で入り口まで戻った建宮と若狭は見張りをしていた恵飛須沢に声を掛ける。そして丈槍とはぐれたこと、図書室に奴らがいることを伝えた。

「えっマジか?」

「多分一体だけだ。音を出して奴を誘きだし、始末する。いいな」

「わかった…」

 険しい顔で恵飛須沢はシャベルの取っ手を握り締めた。そしてそれぞれの役割を確認しあい、配置につく。

 若狭が物音を立てる。しばらくすると、音に引き寄せられた奴が現れた。奴は音を出している若狭に向かっていく。

「はぁっ!」

 奴が若狭に掴みかかるより前に、物陰から現れた建宮がモップを奴の頭めがけて思い切り振りかぶった。

 奴は横から加えられた衝撃で横に倒れる。だが、刃物でも鈍器でもないモップの一撃だけで奴を仕留める事は不可能。

「はあああああああああああ!!!」

 そこに恵飛須沢が突撃し、シャベルの切っ先で床に倒れた奴の首元を貫く。

 奴を一体仕留めた恵飛須沢は荒い息を吐いていた。

「よくやった…」

 重々しく建宮は恵飛須沢に言った。ポン、と恵飛須沢の頭に手を置き、すぐに離す。

 建宮はもう動かなくなった奴を図書室の隅に移動させる。そうしている間に他の二人は丈槍を探しに行った。

 図書室の隅まで移動させ、もう動くことのない男子生徒の手を合わせさせる。

「ゆっくり眠ってくれ」

 もう苦しそうに唸りながら徘徊しなくていい。

 建宮は手を合わせ冥福を祈った。

 建宮は図書室の出入口で3人が無事に来るのを待った。

 暫く待つと、若狭と恵飛須沢に挟まれた丈槍が無事な姿を見せた。

「ったく、こいつは。1人で行動するなって言っているだろう」

「ごめんなさい…」

「まぁ先生、せっかくの肝試しだから説教もほどほどにしといてやれよ」

 恵飛須沢に取り成され、建宮もここで長話するわけにもいかないと説教はほどほどにすることにした。

「今後は勝手な行動を慎むように」

「はーい…」

 沈んだ様子で丈槍は返事する。

 だが喉元過ぎればとも言うし、しっかり見張っておかないとと建宮は心に決めた。

「来年もしたいね」

「来年かー」

「…そうね」

 頷き合う3人を見て純粋な疑問が浮かんだ建宮は思う。

 楽しい日常が、平和な日常が続けばいいのに、なんでこんな風に壊れてしまうのかと。

 答えのない疑問を、夏の夜空を飛ぶ蛍の灯火のように建宮はあっさりと忘れた。

 

 

 

 

 




今回の話ですが、原作ではなくアニメの2話を参考に構成しました。
生徒指導室の位置についてですが、原作の3のマニュアルに書いてある地図を参考にしてます。
感想などよろしくお願いします。

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