「アッハハハハハ!モンちゃんモンちゃん!コレ凄くない!?ヤバくない!?異世界だよ!草原だよ!夜空キレー!!」「あの、キャンさ「アルちゃん喋ってる可愛い!エンちゃんも可愛い!!コキュートスカッケェ!」」   作:カミカミュ

2 / 12
一般プレイヤーから見たキャンちゃん


2話 一般プレイヤーは彼女を思い出す

 

 

 

 

‐YGGDRASILサービス開始一週間目とあるプレイヤー‐

 

 

 

開始から少し遅れたが今日からYGGDRASILをプレイすることにした。

 

最初のレベル上げに最適な場所は初心者用の森林フィールドか草原フィールドである。

 

俺は普通に人間の種族を選択し、初心者装備にNPCが売っていた剣を持ちフィールドに行くことにした。

 

まず、草原フィールドに行くと複数のプレイヤーがおり、効率が悪そうだったため、森林フィールドに入ることにした。

 

こちらは空いており、というよりプレイヤーの姿を全く見かけない。

 

なんだか不気味になった俺だが、レベル上げをしないと始まらないのでモンスターを探す。

 

 

「きゃはははは」

 

 

バッと後ろから聞こえた声に反応し振り返るが何もいない。

 

聞き間違いかと思ったが、先ほどの笑い声のせいでフィールドの不気味さが増した気がする。

 

出ないはずの冷や汗が背中を伝う様な感覚。

 

手に持つ剣に自然と力を入れる。

 

 

「あははははは」

 

 

再度後ろから聞こえる声に固まる。

 

少女の様な笑い声が近づくように大きさを増していき、後ろから右から左から上から前から。

 

 

「いひひひひ」         「あははははは」      「きゃははははは」       「ふっひひひひ」   「ははははは」    「にひひひひひ」  「きひひひひ」     「あはは」      「きゃははははは」     「いひひひひ」    「にひひひ」  「ひひひ」  「あひゃはははは」  「はははあっははは」     「ふふふふふふ」     「きひひひひ」     

 

 

「「「「「あはははははきゃはははふははひゃははきひひひにひひひひふふふふふははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」」」」」

 

 

 

「ひぃ!?」

 

 

泣きそうになりながら辺り一帯から聞こえる笑い声から逃げるように走り出す。

 

必死にフィールドから出ようとしていると笑い声がだんだんと収まり出し、安堵からか、走るスピードを落とし始める。

 

笑い声が小さく聞こえる位になった。

 

が、次は違う音が聞こえ出す。

 

最初はピコン♪とシステム音が聞こえた。

 

最初に受けたチュートリアルでの説明を思い出す。

 

たしか、感情エモーションを出した時の音だったはずだ。

 

 

ピコンッピピコンッピピピピピコッピピピピピピコンピピピピピピピコピピピピピピピピピピピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!

 

 

連続して聞こえるシステム音が走ってきた方向から聞こえる。

 

後ろを振り向き俺が目にしたのは、笑顔のアイコンが連続表示で黒装束のプレイヤーを覆い隠し、自分に迫ってきている場面だった。

 

悲鳴を飲み込み再び走り出す。

 

何だあれは、もう一度確認のため後ろを振り向けば全身を覆い隠す黒い装束の中にある紅い瞳が目の前に迫ってきていた。

 

振るわれたナイフがHPを削り、1Lvしかなかった俺は呆気なく死んだ。

 

それから、あのPKのことが気になり、公式のプレイヤー掲示板を見ると【『キャン×2』によるプレイヤー被害状況について】というタイトルが観覧数とコメント数が多く一番上に来ていた。

 

開いてみると、『森林フィールドにて遭遇する黒装束のプレイヤー【キャン×2】にPKされた人は《死亡》のボタンをクリック!』とあり、一応押してみる。

 

そこには【被害者人数 12万2076人目】。

 

情報によると【キャン×2】はサービス開始と同時にPKを始めたプレイヤーであり、性別は女、種族不明、見た目は黒装束そして、一度PKされると、次に狙われることはないらしい。

 

しかし、たった1週間しか経ってないのに既に被害人数が10万を越えるとは、恐ろしいプレイヤーがいたものだ。

 

それからしばらくすると、彼女は単独でギルドを襲いだしたらしい。

 

彼女による被害情報は毎日のように掲示板に挙げられる。

 

俺はたった一度しか会わなかったプレイヤー【キャン×2】に少し憧れた。

 

あれから数年経ち100Lvになった今でもソロで活動を続けている。

 

無様に逃げながら怯える事しかできなかったけど、今度会ったら彼女に一撃でも当ててやりたいと思いながら。

 

しかし、社会人となった俺は仕事の忙しさからINすることもなくなった。

 

YGGDRASILのサービス終了の知らせを知ったのは、サービス最終日の22:00。

 

残業が残っており、YGGDRASILにINする事は叶わなかった。

 

帰宅後、掲示板を開いてみると、彼女が最後に1~30位のギルドを荒らし回ったといったコメントがズラズラと並んでいた。

 

これは惜しいことをしたと苦笑いし、伝説となった彼女と出会った時を思い出す。

 

本当惜しいことをした。

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。