城下町のダンデライオン-ちょっと変わった生活-   作:ダラダラ

8 / 11
皆さん、大変ご無沙汰しておりました。
ダラダラです。
やっとの第八話です。ダラダラと書いているうちに9月半ばでビックリしました。

さて今回は、清掃活動と、輝・栞のはじめておつかい編です!
清掃活動に関しましては、ほぼオリジナルとなっております!
はじめてのおつかいに関しては、アニメと漫画の混合になっております!
ご了承ください!

では、長くなりましたが、読んでほしいですっ!お願いいたします!!


第8話 男の夢は、ずっとHERO

週末、清掃活動当日

 

天気は快晴で、まさにお掃除日和だ

これから始まる清掃活動の前に生徒会からの挨拶があるとのことで、俺を含めた全生徒は、河川敷で整列をしていた

 

「それでは皆さん、がんばって町中をピッカピカにしちゃいましょー!」

 

そして、全生徒の前で、生徒会長を勤める卯月は、スピーカーを片手に挨拶をする

 

「なんて、軽い挨拶…」

「本当に生徒会長か?」

「みんなの前で初の挨拶なんだし、仕方がないよ。今日は体調良いみたいで良かったね」

 

俺たち3人のクラスの整列順は、前回と同様で、俺の前に琢磨がいて、その前に翔が並ぶ

そして、生徒会が話をしている最中に、俺は、卯月に対して、ツッコミを入れ、それに琢磨も乗るが、翔だけは卯月をフォローした

 

「翔って卯月のことになると、優しくなるよな」

「そうそう」

「え…いや…そ、そんなことないよ…ははは…」

「「…」」

 

あやしい…

 

俺と琢磨が後ろから翔を凝視するが、翔はそれをかわして、前を向いた

 

 

 

 

挨拶が終わり、それぞれクラス毎に担当する掃除場所へと移行し、清掃活動スタート

俺たちのクラスは、川辺のゴミ拾いを担当する

 

「うぉ~!気持ちいい~!!」

 

清掃活動の時に聞こえるはずのないセリフが琢磨から飛んでくる

琢磨は、裸足になり、川の中へと入ると、テンションが急上昇し、普段の倍の喧しい声で叫んでいた

 

 

 

俺たちのクラスは、川辺のゴミ拾いなのだが、それは主に女子の仕事であり、男子は、川の中のごみ拾いを担当する

川の水深は浅く、流れは穏やか、そして、綺麗で透明感のある水のため、男子たちは大はしゃぎだ

男子全員は、全力で水の掛け合いを始め、すでに全員がボトボトになり、大声で笑っていた

もちろん、男子全員には、変えの服を持参するように支持があったのだが…

 

…はしゃぎすぎだろ

 

俺は、川辺で靴や靴下を脱ぎ、川の中に入る準備をゆっくりとしていた

 

「蓮は行かないの?」

 

その時、川ではしゃぐ男共を見ながら、葵は、俺のところへと歩いてくる

 

「おぅ、葵。もうすぐ、鬼が飛んで来そうだから行かない」

「鬼…?」

「そう、鬼」

 

葵は、分けのわからないという顔をしていた

まぁ、葵は怒られたことがないし、仕方がない

怒られたやつは、全員、口を揃えて言う言葉が、鬼だ

 

「男の子たち、楽しそうだね。川の中に入れるのは、ちょっと羨ましいかな」

「そうか?暑くなってきたとはいえ、川の水温はまだ、冷たいぞ。お嬢様の葵はすぐ、風引いちまうに決まってるって」

「そんな弱くありませんっ!」

「ははっ、冗談だって!」

「もう、蓮っ!」

 

笑ってからかう俺に、葵は、ふくれて俺から顔を逸らした

とその時、葵は、逸らした先で見たものに、いつもの表情に変わる

 

「あ、あそこにいるの茜ね」

 

葵の視線の先を辿り、俺もそちらへと目を向ける

葵が見たものは、俺たちの近くで清掃を担当する1年生と、その中にいる茜の姿

 

「あぁ~ほんとだ。すんげぇ、縮こまってるけど…」

 

茜は、クラス委員のため、全員の前に出て何かを話していたのだが、微妙に聞き取りにくい

 

「え、えと…それじゃ…みんな…がんばろ…」

 

ここは、外でいろんな人に見られているからな…

土手の上には頑張る王家の人たちを見ようと、人だかりが出来ていた

特に、この川辺には、王家の葵・修・奏・茜の兄弟4人がいることでひとだかりは尋常ではない

 

「聞いたか、みんな!櫻田さんの名誉の為にもうちのクラスが一番多くゴミを収集するんだ!!無論、各班連携して櫻田さんへの配慮も怠るなよ!!」

「「「「「おーうっ!!!!!」」」」」

 

「おーうっじゃねーよ。あれじゃ余計に目立って配慮になってないぞ…」

「茜、大丈夫かな?」

「やるときはやるだろうから、大丈夫だとは思うけど…」

 

 

 

葵が静流や菜々緒、卯月の元に行った後、俺は、川に入るために、ジャージの足と腕の裾をしゃがんで折り曲げていた

 

「「「きゃぁぁ~!!!」」」

 

すると、川の方から女子の甲高い叫び声が聞こえる

何かと思い、目を向けると、川の中にいた琢磨と翔を含むクラスの男子が、川近くにいる女子に向けて、水を掛けていたのだ

 

「何やってんだあいつら…」

 

男子が水を掛け、女子は怒っていても、男子は無駄に高くなったテンションでは、女子の怒りなど物ともせず、より、水を掛け、女子は逃げるという光景だ

びしょびしょになるほど、女子は濡れていないが、それでも、彼女たちには迷惑極まりない行為

 

「はぁ~…おいっ!お前ら、その辺にしとけって。でないと、掃除終わんねぇで、居残りさせられんぞっ」

「なんだよ、蓮斗!いい子ちゃんぶってないで、一緒に遊ぼうぜっ!!」

「意外と楽しいぞっ!!」

 

川の方へと近づき、男共に言っても、何も聞かない様子…

男共は、未だに男同士の水の掛け合い、女子に向けての水掛けをしてふざけまくっていた

女子は、怒り心頭で、ぶちキレる瞬間だが、それを、葵と卯月で宥めているようだ

 

あぁ~、そろそろ、まずいよな…

 

呆れてため息が出るも、放って置く訳には行かず、俺は、川に入り、男共を無理矢理掃除に取り掛からせようとした

 

「いい加減にしてよっ!」

「落ち着いてっ、ね?」

 

すると、俺が近づいた先で、一人の女子が男子に注意したところだった

女子の近くには葵も居て、女子の方を宥めている

 

「うるせぇ…っよ!!」

ザバ-ンッ!!

「「きゃっ!!!」」

 

しかし、男子はふざけたまま、笑いながら、女子に向けて水を掛ける

しかし、水の量は予想以上に大きく、さらに、その水の先には葵だった…

 

バシャッ!

 

はぁ~…やっぱり、そんなかっこよく助けられるわけないか…

 

「…っ!蓮っ!?」

「…わりっ、防ごうと思ったんだけど、水が相手だから、全部は庇いきれなかったわ。ごめんな?」

 

頭から勢いよく水を被り、ボトボトになった俺

咄嗟に頭を守るように出たのだろう手を下ろしながら、葵は、目の前にいる俺に驚く

葵を庇おうと、水と葵の間に入ったのだが、水相手では全てを塞げず、葵は、頭や上半身が濡れてしまう

 

まぁ、俺みたいに全身ずぶ濡れではなくてよかったのかな…

 

「蓮、大丈夫っ?ごめんなさい、私が避け切れなくて…」

「何言ってんだ?お前のせいじゃねぇだろ?」

 

葵は、申し訳なさそうに繭を下げて謝っているが、どう考えても葵のせいではない

 

…さて…

 

「やばいぞっ!」

「早く、謝れってっ!!」

「れ、蓮斗っ!ご、ごめんなっ!悪かったっ!!!」

「…謝る相手が違うだろうが…」

「えっ!あっ、さ、櫻田さん、申し訳ございませんでしたっ!!」

「私は大丈夫だからっ!」

 

水を掛けた男子は、周りに言われ、青ざめていた顔で、葵に土下座をして謝る

 

「…てめぇら、マジでいい加減にしろよ…ふざけすぎんのも対外にしろ…頭冷やせ…」

 

今のことで上がっていたテンションが一気に下がり、川の中で棒立ちになった男子たち

俺はボトボトになった髪をかきあげながら、激しい怒りが湧き上がり、怒りを込めて男共を睨みつける

 

すると、さっきの騒がしさが嘘の様に静まり返り、場が凍り付いていた…

 

 

 

「…葵、こっち来て」

「えっ…?」

「着替えなんて持ってきてないだろ?俺の貸すから、着替えた方がいい」

「え…でも、蓮の方が濡れてるんだから…」

「だぁぁもう!!いいから、行くぞっ!」

 

強引とは分かってるし、言い出しておいてなんだけど…引けるような性格じゃないんだよっ!!

 

俺は、葵の腕を掴み、自身の着替えが入ったスポーツバッグを持ち、強引に近くにあるトイレまで葵を連れて、歩き出す

トイレしか着替えるところがないので…

 

「(こういう時、連は強引になっちゃうんだよね。お言葉に甘えた方が良さそうかな)」

 

最初、葵は、引っ張られる形で歩いていたが、その言葉と共に、一緒のペースで横に並び歩く

 

はぁ~…かっこつけても、付けれてないし…なんか、かっこ悪いな、俺…

 

「ふふっ、ありがと、蓮。さっきも助けてくれたし、今も、ね」

「…別に」

 

俺は、葵の言葉に思わず顔を赤くする

 

まぁ、かっこ悪くても良いか…葵は、笑ってるし…

 

実に不思議なことだ…

俺は、葵の笑顔見ると、今まで考えていたごちゃごちゃがどうでもよくなって、俺の心は満たされる…

 

「はぁ~…(惚れた弱みって奴かな~…)」

 

小さく出たため息に、葵は気付かなかったようだ

 

 

 

 

トイレに行き、着替えた葵が中から出てくる

 

「やっぱり、男のジャージじゃデカかったな…わりぃ」

「ううん、大丈夫だよ。裾を折ってるから引きずってないし。でも、やっぱり、蓮って男の子なんだね。こんなに大きさが違うなんて…蓮?」

「…へっ?あ、あぁ、そ、そりゃそうだろぉ~…はははっ」

 

葵から心配そうな表情を向けられる

俺が固まっていたのは、葵の言葉が原因だ

言える訳無いだろうっ!!俺が男で、葵が女で意識してしまう…いや、葵は女の子であると意識していたのはずっと前からだけど、今はそういうことじゃなくて…あぁぁ!!

 

「本当に大丈夫っ?もしかして、風邪引いたんじゃない…?」

「い、いや、そうじゃないっ!つか、なんでもないっ!」

「そう?でも、早く拭かないと風引いちゃうからっ!はい、タオルっ」

「おぉ、ありがとう」

 

 

 

 

 

川辺へと戻ると、俺たちの元に3人が駆け寄る

 

「葵~!」

「大丈夫か?」

「葵さん、大丈夫ですか?」

 

それは、菜々緒と静流、卯月だ

 

「うん、蓮がタオルと着替え貸してくれたおかげでね」

「ほ~さすがね~蓮斗~」

「うっせぇ」

 

菜々緒は、俺を見てニヤニヤと嫌な笑みを向けてくる

 

「それにしても蓮斗のジャージじゃ、葵には大きすぎじゃない?その上着脱いだ方がよくないか?」

「私もそう思って脱ごうとしたんだけど、蓮に脱いだらダメって言われて…」

「え?なんで…はは~んっ」

「…んだよ…」

 

静流が葵のジャージ姿を見て、上着を脱いでせめて半袖になればいいのにと提案した

それは、先ほど葵にも言われたが、俺はそれを断固拒否するっ!!

すると、静流はしばらく葵の服を見、そして、俺へと視線を移すと、急にニヤニヤと笑い出した…

 

なんだ、こいつ…

 

「なるほど、今、葵が白の半袖になると、下着が透けて見えちゃうから、ダメって言ったんだな」

「ばっ!それいうなっ!!」

「えっ…?」

 

そして、静流の馬鹿に俺の考えていたことを見透かされ、俺は一気に顔に熱が集まるのを感じた

 

「それなら、そうと理由をちゃんと言えばいいじゃない?ジェントルマンっ!」

「そうそう、優しい男だぞ!ジェントルマンっ!」

「だぁ!うるせぇ!!何だよ、それ!!言える訳無いだろ!!」

「蓮斗さんは、照れ屋なんですね…あ、ごめんなさいっ!」

「…卯月にまで、笑われた…」

「笑ってないですよっ!」

 

菜々緒と静流のふざけた、からかいに怒っていると、卯月にはいつもの優しい笑みで、弾丸を飛ばされた…

そして、葵を見ると、葵は顔を赤くしているも、俺を見てくすくすと笑っていた…

 

畜生…!なんだよ…!俺だって、男なんだよ!!

そっちに目が言ってしまうのは当然だろうが…!!

 

菜々緒と静流は、ニヤニヤと気色の悪い笑みを浮かべて、俺を見てくる

俺は、何も言えず、熱が顔に集まり顔を逸らす

 

「じゃ、じゃぁ、俺は先に行くからっ!」

「あ、うんっ!ありがとうね、蓮っ」

 

菜々緒に静流、ニヤニヤと嫌な笑みを向けられ、その場に居ずらくなって、俺は一足先に川辺へと向かう

 

「逃げたな」

「逃げたわね」

 

静流と菜々緒の言葉を俺は完全無視

 

 

 

 

 

「ちゃんと掃除してんだな」

「蓮斗、お帰り!!葵ちゃん、大丈夫だった?」

「さっきはごめんな。全員、心を入れ替えて、全力で掃除に入ってるぜっ!」

 

川辺に着くと、クラスの男子は全員一生懸命、川の中で掃除を行っていた

そして、俺が来たことに気付いた翔と琢磨が俺へと声を掛ける

どうやら、全員、さっきのことを反省し、しっかり掃除をすることにしたようだ

 

「蓮斗が本気で怒ったからさ、俺たち頭冷やして掃除を頑張ろうってことになったんだ」

「それを見て、俺たちを怒りにきた先生たちも怒るのを止めたみたいだよ」

「そっか、良かったよ。んじゃっ、俺もやるかなっ!!」

 

琢磨と翔から、事の顛末を聞いた後、川の中へと入り、俺も一緒に掃除を始める

 

「そういや、お前ら着替えたのか?」

「うん、そのままじゃ風邪引くから、一回川から出て、水を拭いてからまた掃除を始めろって先生から言われてね。連斗は着替えないの?まだ、服ボトボトじゃない?」

「あぁ、葵に貸したからな~でも、大丈夫だろ。ちょっとは、乾いてきたし…」

ドンッ!

バシャンッ!

 

翔と話をして掃除をしていると、突然、後ろから押される

 

「…」

「わ、ごめんっ!蓮斗!!後ろ、見てなかった!!」

 

後ろ向きに歩いてきた琢磨が俺の背中にぶつかった結果、俺は前のめりに川の中へとダイブする

 

「…なんでだ…」

 

再び、全身水浸しになり、余りのことに呆然としてしまう

 

 

 

 

 

 

いろいろあった清掃活動も終え、俺と葵、茜の3人で帰っていた

 

「…ヘックショイッ!」

「蓮、大丈夫っ?」

「蓮兄が川遊びするなんて珍しいね」

「いや、川遊びをしていたわけではない…」

 

結局、掃除が終わっても服は乾くことなく、ボトボトの状態で家へと帰ることになった

 

 

 

 

 

「「「「「「「「「「いただきまーすっ」」」」」」」」」」

 

自分の家で風呂に入り、さっぱりした後、櫻田家に向かう

今日も今日とて、櫻田家へとお邪魔をし、昼御飯と晩御飯をいただく事になった

そして、櫻田家の子ども9人と俺で食卓を囲み、五月さんの昼御飯を頂く

 

「蓮兄は、晩御飯も一緒なんだよね?」

「あぁ、そうだよ。五月さん、お世話になります」

「いいのよ~気にしないでね」

「やった!じゃぁ、一緒に遊ぼっ!蓮兄と遊ぶの久しぶりだねっ」

 

全員で、五月さんの料理を頂いている時、光が唐突に俺へと質問する

最近、サッカーことばかりで、みんなと遊んでなかったことを、光の言葉で思い出した

 

「僕も蓮兄上と遊びたいです!」

「…私も蓮お兄ちゃんと遊びたいです」

 

輝も身を乗り出し手を挙げ、隣にいる栞は、俺の服の袖を引っ張りながら言う

 

「光や輝、栞は本当に素直で可愛いな~昔は、修も奏も茜も岬も…特に遥はベッタリだった…」

「なっ!でたらめを言わないでよっ!蓮兄さん!」

「…事実だぞ…?」

「私も、遥はずっと、蓮兄に引っ付いてた記憶あるよ~だから、私も一緒になって引っ付いてた」

「ぐっ…!」

 

俺が懐かしむように腕を組んで遠い眼をして話すと、遥が勢いよく立ち上がり否定するが、俺は嘘を付いていない

そして、岬も証言した

そのため、遥は顔を赤くして、静かに席に着いた

 

 

 

 

 

 

 

 

御飯を食べ、片づけを終えてから、光と輝、栞とゲームをして遊ぼうと思い、ソファーに座る

 

「来週の当番決めるよー」

 

しかし、葵の声で俺、光、輝、栞は後ろを振り返った

そこには、葵・修・奏・茜・岬・遥が集合し、葵の持つ筒に手を伸ばしている

 

これは櫻田家の恒例行事

櫻田家では、毎週、年長組の6人がくじを引いて家事の割り当てを決めている

ちなみに、下の3人といつもお世話になっている俺は、各々自主的にお手伝いをする

くじの内容は、掃除・洗濯・料理・買い物・休憩×2となっていて、葵が持っている筒の中の棒を引く形式だ

 

みんな、休憩を引きたいだろうが、異様に殺気立ってくじの棒を睨んでいる者がいた

 

「監視カメラのある外になんか絶っ対に出たくない…!買い物以外なら掃除・洗濯・料理全部やったっていいくらいよ!」

 

それは、茜だ…

茜はカメラが苦手なため、買い物当番は本気でやりたくないようだ

 

けど、結構、茜が買い物当番をしているところを見るんだけど…あいつ、くじ運悪いからな~…

 

「はぁ、茜姉さん、そこまで言わなくても…」

「じゃぁ、買い物以外はみんな、あか姉にやって貰おうよ!」

「ダメよ。みんなで手伝うって決めたでしょ?ちゃんと分担してやらないと」

 

遥・岬・葵の話の後、修から順にくじを引いていく

 

「俺、掃除」

 

修が引き…

 

「私は…洗濯ね」

 

葵が引き…

 

「え~料理…」

 

岬が引き…

 

「ラッキー!」

「ごめん、茜姉さん…」

 

奏、遥が休憩を引く

 

「…ということは…また、買い物ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

「茜、うるさい」

 

茜が引いたのは、引くまでもなく、買い物

余りの大声に、思わず、俺がツッコミを入れてしまった…

俺の話を聞いているのかは分からないが、茜はテーブルに突っ伏してしまった

 

 

そして、葵がくじを回収し、リビングから出ようとした時、俺の隣にいた輝が葵を呼び止める

 

「葵姉様!当番くじ引かせてください!」

「輝がもう少し大きくなってからね~」

 

輝の必死な叫びはあっさりと葵に受け流されてしまう

 

「くっ…!」

ダッ

「おい、輝っ」

 

泣きそうになっている輝が走って部屋を出ようとする

 

ガンッ!

「うぐぐっ…」

 

それを、俺は呼び止めようと思ったのだが、呼び止めるまでもなく…輝は肘を打って、縮こまっていました

 

「おい、輝大丈夫か…?」

「お兄ちゃん、だいじょうぶ…?」

 

俺と栞はソファーから立ち上がり、輝のところへ行く

すると、輝は…

 

「くっ…こんな時に…!今は鎮まれジャッカル(右腕)…!!」

「…」

「…ファニーボーン打って、痺れてんだな」

 

輝は右腕を抑えて、よく分からないことを言ったが、どう見ても、ファニーボーンを打って、神経が痺れているようにしか見えない

栞の顔は、呆然としていた…

 

「はぁ~買い物行きたくない…」

 

俺が輝の右肘を察すっている時、茜は未だに突っ伏していた

 

「茜…そろそろ諦めろ…俺も一緒に行くからさ」

「外に出たくないんだよ~…」

 

茜にフォローを入れても無駄のようだ

 

「なら、明日から一ヶ月、茜のツインテール位置を高くするなら、俺の掃除当番と代わってやらんでもない」

「なにその条件!?修の考えていることが偶に本気で分からん…」

「割に合わない!!当番は一週間で変わるんだよ!?それだけの為に…!?そんな…子どもみたいな髪型…!」

 

すると、修はよく分からない交渉を持ちかけた

茜はもちろん反論する…するのだが…

 

「そん…なの…っ3週間でどうか…」

「いいだろう」

「「やるんかい」」

 

茜は決死の思いで、出した結論のような顔をして、修の交渉を受諾

修もそれを、親指を立てて、了承した

俺と奏は、半分呆れ半分どうでもいい顔で、おもむろにツッコミを入れた

 

そして、修は紙とペンを持ち出し、何かを書き始める

それを覗くと、ツインテール契約書と書いていた…

 

「…」

「蓮兄、どうかしたのか?」

「…いや、もう何も思いませんよ」

 

やっぱ、修はよく分からない…ってか、王族が分からない…

 

その時、痛みから復活した輝がこちらへとやってくる

 

「兄上たち!僕に買い物をやらせて!」

「いや、俺に言われてもな…」

「さっきからどうした輝。理由を言ってみろ」

 

輝は必死に訴えていた

 

「…僕は、大切なものを守るために、もっともっと強くならなくちゃいけないんだ…そのためには-

 

-試練が必要なんだ!!」

「気に入った!いいだろう、任せる!!葵姉さんには内緒だぞっ!!」

「兄上!!」

 

大切なものって、何…?

 

輝の必死な訴えに何かが伝わったのか…?修は輝の肩に手を置き、買い物を任せた

…が、俺にはやっぱり理解できなかった…

 

「特に、蓮兄、葵姉さんには内密に頼むぞっ」

「いや、別に言わねぇよ…ただ、輝だけで行くのか?それはちょっと、不安なんだけどな…」

「…僕は、信用ならないですか…!?」

「いや、そういう意味じゃなくてさ…心配なんだって、輝一人じゃ…栞?」

 

輝が泣きそうな目で必死に訴えてくるものだから、思わずたじろぐ

が、その時、輝の服の袖を引っ張る栞

 

「私もいく」

「…栞、これは試練なんだ。どんな危険が待ち受けているか分からないんだぞ…」

「いく」

「栞…栞は本当に甘えん坊だな…分かった!絶対に僕から離れるんじゃないぞ!?」

 

栞は顔を明るくし、コクンッと頷いた

…なんか、栞の考えていることが分かった気がする…輝だけじゃ不安だから、一緒に着いて行くと言ったんじゃ…?

これじゃ、どっちが上か分からん…いや!きっと、輝は大丈夫だろう!!あいつは強い!

 

「よしっ!輝、栞、頑張って…あれ…?」

「もう、2人とも行ったわよ~蓮兄さんがそこで頭抱えている間に」

「なにっ!?」

 

そして、俺は俺自身を鼓舞し、思考の中に入っている間に、奏曰く、2人だけで買い物に行ってしまっていた…

 

 

 

 

2人のことが心配だが、頑張るって言ってるんだし、大丈夫だよな…と自分に言い聞かせる

そして、落ち着かせるために、テーブルの上に置いてあったお茶を飲む

 

「そうだ!光!変身よ!!」

「ぶふっ!!!」

「…え?なに突然…ごっこ遊び…?ごめん、ちょっと付き合えない…」

「違う!!!!引くなっ!!!!」

 

そして、先ほどまで輝と栞だけで行かせたことに悩んでいた茜が急に立ち上がり、分けのわからない高校生とは思えぬセリフに俺は飲んでいたお茶を噴き出しかける…

 

「蓮兄も一緒に付き合ってっ!!」

「なんで、俺!?確かに昔は、茜が好きだった変身ごっこに付き合ってたけど、今はちょっと、無理だぞ…」

「だから、違うってば!!」

 

茜は光の能力で、姿を変えて二人の無事を見届けようということらしい

俺も心配だったから丁度いい

 

「でも、俺は変身しないからな」

「え、なんで!?」

「別に、バレてもいいし、明日、部活あるから」

 

ということで、俺以外の光と茜が変身することになったのですが…

 

「27だってば!!!」

「7歳って言いましたー!!!」

 

茜はまたまた幼児化していた…

 

「茜は一歳ずつ成長していくんだな。狙ってんのか?」

「狙ってるわけないでしょっ!!」

 

いや、だって、この前は6歳、その前は5歳だった気が…

 

そして、光は16歳に成長し、俺、茜、光の3人は栞と輝の後を追った

 

 

 

 

 

「あっ、いたよ」

「本当だ…犬に吼えられてんのか…」

 

茜が見つけた先には、リードに繋がれ柵の中にいる買い犬に、輝と栞が吼えられ道を進めないところだった

 

ヴァンッヴンッワンッ!!

「ぼっぼぼぼくをあまり怒らせないほうがいいぞ…!!」

 

輝は震える体で、必死に叫んでいるけど…威嚇したら、ダメだろ…

 

「し、しずかにしろ!しないと大変だぞ!!」

 

だが、しばらくして、犬は泣き止み静かになった

そして、その隙に輝は栞の手を引き、犬がいる家の前を全速力で走っていった

 

「あれって、どう見ても、栞が犬と会話して治まったね?」

「だろうな…」

「輝は分かってなさそうだけどね…」

 

光の言葉に俺も茜も納得する

 

 

 

 

その後、2人を尾行し続ける俺と茜と光

電柱の陰に隠れ、輝と栞の様子を見ていた

 

「にしても、ちょっと近すぎない?」

「何言ってるの!そのための変身でしょ?」

「ばかっ!声が大きいって!こんなんじゃすぐに気付かれるぞっ!」

「むっ!そこのお前たちコソコソと何をしている!!後をつけていたのか!?何が目的だ!!」

「げっ!見つかった!」

「ほら、気付かれた…」

 

隠密のはずが、とうとう輝と栞に気付かれてしまい、2人がこちらへと歩いてくる

 

「蓮兄上ではありませんか!!?」

「どうしてこちらへ…その者たちは蓮兄上の知り合いですか!?なぜ、僕らの後をつけていたのですか!!?」

「え~と…だな…そうっ!輝と栞の試練を邪魔しようとする奴らが居るって聞いて、捕まえに来たんだよっ!」

「そうだったのですか!」

 

輝からの疑問に対してどう答えるか悩んでいると、頭の中に浮かんできた言葉を適当に言ってしまった

 

「ちょっと、蓮兄!」

「私たちを売るつもりなの!?」

 

茜と光に問い詰められるが、2人に問い詰められるより、輝と栞に問い詰められる方が俺の心は傷つくのだ

 

「許せ、2人とも…それより、栞は気づいてんじゃね?」

 

俺が栞の方を見ると、幼児姿の茜と、高校生の光をじーっと見ている

 

「確かに…」

 

光も栞を見て、そう感じたようだ

輝は…

 

「おまえたちどこかで…は!ささささてはしめいてはいはんか!?」

「ちちちがうの!怪しいものじゃないの!!」

「すごく怪しい!大声出すぞ!?」

 

輝の動揺に茜まで振り回されている構図…

どうやら、輝は全く気づいてないようだった…

 

「輝、この指名手配犯は俺に任せて、試練を乗り越えに行け」

「「誰が、指名手配犯だっ!」」

「ありがとうございます!蓮兄上っ!ご武運を!!」

 

そして、輝と栞は走ってその場から居なくなった

 

 

 

 

 

 

俺たちは再び、尾行をスタートする

 

「さて、スーパーに着いたか…」

「2人とも大丈夫かな~?」

「あれ?入り口で何かわたわたしてない?」

 

スーパーに到着した輝と栞を見たのだが、光の言う通り、どうも、入り口で何やら問題が発生したようだ

 

「…買い物メモを無くしたんだな…」

「輝が持ったまま、忘れてたんだね…」

「栞の能力で見つけたのね…」

「「「栞が居て良かった…」」」

 

買い物メモを輝のポケットから見つけ、2人一緒にスーパーの中へと入っていった

 

良い妹を持ったな…輝…

 

そう、心の中で思いました

 

そして、買い物を無事終えた輝と栞は、再び来た道を歩く

 

 

「後は帰るだけだから大丈夫かな…」

「あぁ、何事もなくてよかった」

 

3人、一安心したようにほっと息を落とす

しかし、その時、

 

 

グルルルルル…

「「「っ!!」」」

「ひぃぃ!!お、お前!あっち行け!!」

 

一安心した束の間、輝と栞の前に、一匹の犬が現われ、2人を威嚇する

首につながれたリードの先は、何にも繋がれてなく、犬はいつ襲ってきてもおかしくない状態

 

栞はおそらく能力を使い、その犬に話掛けているのだろう

しかし、栞の言葉は聞かず、その犬は、栞目掛けて襲う…!!

 

ヴァウッ!

「やばいっ!!栞っ!!」

「「栞っ!!」」

 

栞の危機に立ち上がり、俺、茜、光は駆け出そうとする

 

ダゴオオオオオンッ!!!!!!

「「「っ!!」」」

 

「おい、お前…弱いものを攻撃するなんて卑怯なやつだな…生き物相手に向けて能力を使っちゃ駄目って母上に言われた。悪が立ちはだかろうとも正々堂々戦うって約束したっ!」

 

…輝…

 

「でも、お前が栞を傷つけようとするなら、僕は契約をやぶるぞ…!」

 

輝の怒りのオーラにより、犬は鳴きながら逃げていった

まさに、負け犬の遠吠えだ…

 

「栞、だいじょうぶか?」

「うん…」

「よし!栞は強い子だな!さぁ、早くうちに帰ろう!!」

 

輝はビックリして座り込んだ栞に手を差し伸べ、そっと立ち上がらせる

そして、家へと向かおうとした時、栞は輝の服の袖をぎゅっと掴んだ

 

「ん?ほんとに栞は甘えん坊だなー疲れただろ?バッグ貸して!」

「ううん、大丈夫」

 

そして、2人仲良く、歩いて帰っていった

 

「ふぅ…無事でよかった…」

「輝はすごいな…ちゃんと妹を守れる強い子だ」

「蓮兄?どうしたの?」

「ん?なんか、輝がどんどん大きくなっていくなぁ~ってな」

「なんか、蓮兄、親父くさいよ」

「お前は、反対に退行してるけどな…」

「それは言わないでっ!!」

 

輝の成長に驚かされ、少し寂しくも思うが、嬉しくもあり、複雑な感情を持つ

茜に親父くさいと言われたことは心外だが、俺も年を重ねていくわけだな…

 

「あれ、蓮兄、どこかいくの?」

「あぁ、ちょっと用事~」

 

そして、2人をおいて、俺は輝と栞が家に着く前にとある場所へと向かった

なにやら、後ろの方、茜と光のところが人だかりになっているが、俺には関係ありませんので

 

 

 

 

「栞、もうすぐ、家に着くぞっ!試練はもうすぐ終わるっ!!」

「うん…あ、蓮お兄ちゃんっ」

 

輝と栞がまっすぐ家に向かって歩いてきている

俺はその道の先で、2人を待っていた

一つのビニール袋を提げて

俺に気付いた輝と栞がぱたぱたと俺のほうへ駆け寄るので、俺も2人に合わせしゃがみ込む

 

「蓮兄上っ!どうしてこちらへ!?」

「2人を待ってたんだ。一緒に帰ろうと思ってな。後、2人への初めてのおつかいの祝福に、アイス買ったんだ。帰ったら、食べよう」

「わっ!僕の好きなアイスです!!ありがとうございますっ!!」

「ありがとう、蓮お兄ちゃん」

「うん、あっ、でも、みんなには内緒なっ!買ってないからな~これは2人へのご褒美だからさ」

「はいっ!」「うんっ」

「んじゃ、帰るか~」

 

家へは残り数メートル

その道のりを俺が買い物鞄を持ち、輝と栞と手を繋ぎ、一緒に帰っていった

 

「ヘックシッ!」

「大丈夫ですか?蓮兄上?」

「あぁ、ごめんな。さっき風呂に入ったから湯冷めしたかも…暖かくして寝るから大丈夫だよ」

 

 

 

 

櫻田家で晩御飯を頂いた後、輝と栞で一緒にアイスを食べ、ソファーに座って、テレビを見ていた

当然、そんなことをしていれば、アイスのことを他の連中に知れ渡る

茜、岬、光がぎゃいぎゃい言っていたが、俺は完全に無視

しかし、優しい輝と栞は、そんな3人にアイスを分けていた

その後の記憶はほぼない

俺はいつの間にかソファーで熟睡していたようだ

 

スー・・・スー・・・

「あら、蓮君も輝も栞まで、熟睡しちゃってるわね~どうしましょ」

「蓮がこんなところで寝るなんて珍しい…疲れたのかな?お母さん、私が起こしておくから、お風呂に入ってきて」

 

寝ている俺、輝、栞以外、リビングには誰もいなくなった

俺は、ソファーの背もたれに頭を乗せ、寝顔を晒して寝ていたようだ

葵は、五月さんがリビングを出て行くのを見送ってから、俺たちへと視線を落とす

 

「蓮の寝顔、久しぶりに見た気がするな~ふふっちょっと口開いてるっ」

 

そんなことも露知らず、俺は夢の世界へと旅立っていた

 

「さて、そろそろ、蓮は起こさないとねっ蓮~起きて~客室の布団、敷くから上に来て?」

 

葵は俺の前へと移動し、肩を揺すって俺を起こしてくれる

 

「ん~…あぁ…葵…?」

「ふふっすっごい、寝起きの声だね」

「あぁ、ごめん…完全に寝てたわ…」

「うん、大丈夫だよ。ここだと風邪引いちゃうし、輝と栞は運べるんだけど、連は茜呼んでこないといけなかったから起こしたの。ごめんね?」

「いや、茜に運ばれるほうが辛いから…起こしてくれて助かった…」

「客室に布団敷くから今日はこっちで寝る?」

「いや、帰るよ。迷惑かかるし…って、腕が動かないと思ったら、こういうことか…」

 

俺は、徐々に覚醒した頭で、何故か動かない両腕に視線を落とす

そこには、右側に輝と左側に栞が俺に寄りかかるようにして熟睡していた

なるほど、通りで動かないわけだ…

 

「きっと、2人とも初めての買い物で疲れたのね」

「あぁ、そうだな…って、何で知ってんだ…!?」

「聞かなくても分かります」

「怒んないの?」

「怒らないよっ2人とも頑張ったんだから」

「…そっか。輝はちゃんとお兄ちゃんだったよ。しっかり、栞を守ってた…さすがだった…ヒーローになってたよ」

「そう、輝に直接言ってあげたら喜ぶんじゃないかな。蓮に直接言われたら、この子きっと喜ぶと思うよ?」

「俺?それなら、修とかの方がよくないか?」

「もう、連は自分が思っている以上にヒーローなんだよ?今日も助けてくれたしね?」

「…あれ、助けたうちに入んないだろ…?」

「でも、助けてくれた…ありがとっ」

「…お前がそれでいいなら、いいか…」

 

赤くなる顔を隠すために葵から視線を逸らす

葵にはバレていると思うけどな…

 

その後、寝てしまった輝を俺が、栞を葵が抱きかかえ、それぞれのベットへと移し、寝かせる

そして、俺は、櫻田家を出て、自分の家へと帰り、今日の忙しさを払拭するように眠りへと着いた

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。