城下町のダンデライオン-ちょっと変わった生活-   作:ダラダラ

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こんにちは、ダラダラです。
また、随分と御無沙汰しておりました。

今週は、月曜日から胃腸炎になり、体調不良でやっと昨日、全快しました。
皆さんも、お気をつけて下さい!

では、第六話です!
今回は完全なオリジナル!そのため、話がぐちゃぐちゃです!
書いていても、?マークが浮かんだくらいです!
申し訳ございません!!
でも、読んで頂けると幸いです。よろしくお願いします!



第6話 蓮斗と葵の映画デート

半袖のワイシャツを上着として着用し、鞄を持って、洗面所にある鏡の前に立つ

部活終わりの汗はちゃんとシャワーで落とした

 

何も問題ないよな…よしっ!行くか!

 

気合いと共に玄関へと俺は向かう

 

 

昨日の夜、葵と映画に行くことを忘れていた俺は、今日の午前中にあったサッカー部の練習の時に、どうしようか悩んでいることを琢磨や翔たちに相談した

 

「葵ちゃんと映画?」

「何!?蓮斗!いつの間に、そんなに進展してたんだ!?聞いてねぇぞこの野郎!!」

「うるせぇから言いたくなかったんだよ…特に琢磨」

「当たり前だろ!こんな面白いネタ!」

 

ネタと言われた時点から、やはり相談すべきではなかったと思った

 

「で、何を見に行くの?」

「あ~、確か、恋愛系の映画なんだけど、なんて名前だったかな…」

「それぐらい知っとけよ…」

「この間、教室で菜々緒たちと葵が話していた映画なんだが…あ、あなたと…?」

「あ~わかった!"あなたと共に"って映画でしょ?今、めちゃくちゃに人気があって、漫画が原作の映画のはずだよね?」

「翔、さすが、琢磨と違って詳しいな」

「おいっ!つか、蓮斗には言われたくねぇよ!知ってるっての!!今、ブレイクしてて、特に女性人気はすごいらしいぞ。話はベタなんだけど、そこがいいとかで」

「琢磨が、恋愛映画の話すると気持ち悪いな…」

「琢磨が言うと、変な感じする…」

「お前ら、いい加減にしろぉぉ!!」

 

琢磨が大声で怒鳴るもので、最後は、監督と孝也に話し込んでいたことがバレて、怒られてしまった

そして、結局何の成果も得られずに終わった部活…

 

 

そして、靴を履き、休日だが両親は働きに出ているため誰もいない家を出発

道を挟んだ向かいの家のインターホンを鳴らす

 

「はぁい!」

「あ、どうも。蓮斗です、葵いますか?」

「あら、蓮君!ちょっと待っててね~」

 

インターホンから出たのはいつもの声、五月さんだった

五月さんの葵を呼ぶ声が聞こえて、しばらくすると、玄関の戸が開く

 

「蓮!お待たせ!」

「っ!お、おう」

 

葵が家から出てきたのだが、服装がいつもと少し違う気がする…たぶん…

 

「葵、今日はいつもと格好が違う気がするな」

「あ、うん…変だったかな?」

 

俺の何気ない一言を気にしてしまったのか葵は影を落とす

 

「あ!違う違う!その…すごい似合ってる…」

「っ!ありがと!」

「っ!おう…」

 

葵はいつものように明るく笑顔になって返事を返すのだが、当の俺はというと、

 

すごく恥ずかしい…

 

普段、そんなこと言ってないから余計に緊張し、顔が少し熱くなった

それを隠すように葵から視線をズラすと

 

ジーッ・・・

「…あれは隠れているつもりなのか…?」

「え〜と、どうだろう…?」

 

葵が出てきた玄関の扉の隙間から除く8つの視線

扉の上の方から年齢順に顔の半分だけだして、じっとこちらを見ている櫻田家の兄弟たち

修・奏・茜・岬・遥・光・輝・栞の8人だ

 

休日なのに、暇だな王家…

 

「この服のコーディネート、奏と茜と光と岬なの。蓮と映画に行くっていったら、茜と光の部屋に連衡されちゃって…」

「なるほど…でも、似合ってるぞ…いつもの葵と違うし、なんか、新鮮っていうか、あの、そのだな…」

「え?」

「…か、可愛い、のではなでしょうか…」

「…ふふっ」

「…笑うなよな…」

「だって、蓮がなんか可愛い」

滅多に言わない言葉を、俺は手を首に回し、顔を葵や茜たちの方から逸らして照れてしまいながら言うと、葵は楽しそうに笑う

可愛さはいらないんだけど…つか、男に可愛いとか言うなよ…

 

でも、葵の楽しそうに笑う姿にまぁいいかと思ってしまう

 

 

 

滅多に言わないことを口走ったのには一つだけ琢磨と翔に相談した時に得たことがあった

監督と孝也に怒られた後、翔に呼び止められ、囁かれたこと

 

「蓮、さっきの話だけどさ、プランより、僕は蓮が素直に、その時感じた気持ちを葵ちゃんに伝えればいいと思うよ」

「その時感じた気持ち伝える?って、どういうこと…?」

「ん~なんていうかな…素直に葵ちゃんに対して思ったことを口にする感じ?一番いけないのは、思ってないことを言うことだよ。女の子に嘘は通じないからね」

「素直に…か…」

「うん。たとえば、楽しいと思えば楽しいと気持ちを伝えるとか、葵ちゃんが可愛いと思えば、可愛いって言うとかさ!」

「なっ!?…いや、俺にとってはなかなかハードルが高いことを言うな…」

「え?簡単だよ!僕はいつもそうしているしね~」

 

翔の軽さというかなんだろう、見てはいけないものを見てしまったような気持ちになってしまった

 

 

 

…翔に言われたとおりにしたが、なかなかに難しいな…でも、伝えてよかったかな…

 

少しばかり、翔に感謝の気持ちを持った

 

 

 

 

<その頃>

 

「ねぇ、2人ってさ、ここが家の前だって気づいてるのかな?」

「それだけじゃないわ。私たちに気づいていたのに、もうすでに、眼中にないわよ」

「リア充は爆発すればいい!」

「兄上、リア充とは、何ですか?」

「輝は、まだ知らなくていいことだよ…」

「っていうか、いつ出発するの?」

「私も映画観たいな~」

「(どうして、ずっと隠れてるんだろう…)」

 

茜・奏・修・輝・遥・岬・光・栞のそれぞれの言葉は俺には届かなかった

 

 

 

 

「んじゃ、行くか」

「うん!」

 

そして、映画館へと2人一緒に向かった

映画館へはバスを使って行く

昼を過ぎているからか、乗っている人は少なく、俺たちは後ろの方にある2人掛けの椅子に座った

しばらく窓の外を見ていた葵が、唐突にこちらを振り向き俺に問う

 

「ねぇ、蓮。お昼御飯は食べたの?」

「あぁ、今日は母さんは仕事だったし、昼まで部活だったから、帰ってからコンビニで買ったおにぎり一個なら食べてきた」

「もぅ、全然食べてないじゃない…急いで来てくれたのは嬉しいけど、しっかり食べないとだめだよ?スポーツ選手でしょ!」

「悪かったって。そんな膨れるなよ…」

 

俺がしっかりと昼御飯を食べていないと知るや否や、葵は怒ったように膨れっ面になる

 

まぁ、本気で怒ればこんな顔はしないのだが…本気で怒れば…やめておこう、恐ろしい…!

 

そして、他愛のないいつもの会話をしている内に、駅は映画館のある停留所に到着する

 

「さて、映画館に行ってまずはチケット買わないとな」

「その前に何か食べよう?」

「なんだよ、もうお腹すいたのか?昼御飯食べたんだろ?」

「もう!違う!蓮が食べてないんでしょ?」

「俺は大丈夫だって。映画館のホットドックでも食べるから」

「ダメ!行こう!」

「おわっ!ちょ、わかったって!」

 

下車すると、映画館のある方向ではなく、ファミレスがある方向へと葵に引っ張られ、行くことになった

昼御飯をちゃんと食べてない俺が悪いのだから仕方がないのだが、葵に引っ張られると抵抗ができない

力の差ではない

力なら確実に俺の方が上だろうが、葵の言葉や行動に強く抵抗できないのは、いつものことだ

 

 

そして、近くにあったファミリーレストランに入る

 

「いらっしゃいませ、何名様葵様!!?」

 

俺たちが店に入ったことに気付いた店員がこちらに来て、慣れた動作でお馴染みの挨拶を告げるのだが、葵がいるとわかった瞬間、たじたじになっている

理由は簡単、葵がこの国の第1王女であるから

このリアクションには見飽きているが、偶に面白いリアクションをする人がいるから俺は目が話せない

当の本人、葵は、いつも困った顔をしているけど

 

そして、今回は…

 

「ぶっふ…くっくっく…」

やばい…なんか、「何名様葵様」にツボった…!!すっげぇ、仕様もないのになんか笑える…!!!

 

完璧にツボに入りました…

それを前にいる葵にバレないように、後ろに顔を向け口を手で押さえて笑いを必死に堪えていました

しかし、近くにいるのだから当然…

 

「もう、蓮!」

 

笑っていたことは、葵に筒抜けで、腕を引っ張られ注意される

 

 

そして、たじたじな店員から席へと案内され、俺の少し遅めの昼御飯・ハンバーグ定食を注文する

 

「ねぇ、蓮。今度の試合っていつなの?」

「あぁ、次は、もうインターハイ予選だな~対戦表も発表されてるし、そろそろ本格的に始動って感じかな?もうすぐしたら、紅白戦やって、選手決定になるだろうから」

「そっか、決まったらまた教えてね?応援に行くから!」

「おう、ありがとな。最後のインターハイだし、予選も本選も突破して、全国の頂点に必ず立つよ」

「うん、私も応援頑張るね」

 

その後、ハンバーグ定食が運ばれ、やはりおにぎり一つでは耐え切れなかった俺の腹は、料理が来た瞬間に、お約束なのか、盛大にお腹の空腹を知らせる音が鳴り響いた

その音を聞いた葵はやっぱりって顔をしてクスクス楽しそうに笑っている

俺はやっぱり葵に勝てる気がしないと気にしないと感じた

 

 

 

 

<その頃>

 

「ねぇ、お姉ちゃんと蓮兄の様子見に行かない!?」

「え~それって、尾行するってことだよ?そんなの2人に悪いよ…」

「茜ちゃん!!2人のこと気にならないの!!?」

「だって、お邪魔したら悪いしさ…それに、外に出ることになるんだよ!!?」

 

暇を持て余していた櫻田家兄弟の8人は、全員集合し、リビングで寛いでいた

その時、光は唐突に立ち上がり、ある提案を全員に向ける

それに答えるのは近くにいた茜

 

「それなら、変装すれば良いじゃない」

「あれ!?カナちゃんが意外と乗り気!?」

「だって、あの2人、いつ進展するか分からないから、じれったいのよね。さっさとくっつけばいいのに…それに、ちょっと面白そうだし」

 

「蓮兄の面白い一面が見られそうだな…行くか」

「修ちゃんも!!?」

 

「僕は行かないよ。面倒くさそうだし…葵姉さんと蓮兄さんだから、バレる確率の方が高い」

 

遥の確率予知(ロッツオブネクスト)の能力で出た数値はバレる方が高いと示していた

 

「なら、光の能力で全員成長したら良いんじゃない?」

「無理だよ。それでも、あの2人なら気付くと思うよ。だから、僕は行かない」

「あら、遥。もしかして自分の能力が当たらないかもしれないから、行かないって言ってんの?自分の能力に自信がないのかしら?」

 

奏が提案したことも、却下にする遥に、奏は遥を挑発するよう笑いながら遥の背後に立つ

 

「僕の能力は絶対に当たる!!」

「じゃ、一緒に来るわね~」

 

そして、奏の挑発に簡単に乗ってしまった遥である

 

「遥がいくなら私も行くー!!」

「冒険ですか!?それなら、僕も行かせて下さい!!」

「っ!私も行く…」

 

そして、岬、輝、栞も加わり、全員参加となった

栞は輝が心配だからであるが…

 

「よしっ!!みんなで行こう!!!」

「ええぇぇぇえ!!?」

 

光の合図に茜はただ一人嘆いていた

 

 

 

 

 

映画館に到着し、チケットを購入した俺と葵は、シアタールームへと向かう

チケット購入時、俺が全部出すというと、予想通り葵は自分も出すと言い出した

だが、何の計画も立てず、俺の昼御飯に付き合わせてしまったんだ

ここは俺が奢りたいと言い切り、その場は収まった

葵は、不服そうな顔をしていたけどな

 

そして、席に着き、上映を待つ

 

やはり、琢磨や翔が言ったように、この映画は人気作のようだ

たくさんの人が来ている

そして、恋愛映画であるからか、恋人同士で来ている人たちが多いし、女子同士で来ている人も多く、女性率が非常に高い

 

なんか、居づらい…

 

「やっと、この映画が見れるんだな~」

「そんなに楽しみだったのか?」

「うん!だから、蓮が行こうって言ってくれた時、すごく嬉しかったよ。それに、2人でって言ってくれた時も…嬉しかったから」

「あ~あの時か…」

「うん、あの時…」

 

2人して、以前俺が誘ったときのことを思い出し、顔が赤くなる

 

思い出し笑いならぬ、思い出し照れだ…

…何言ってんだ、俺…

 

今日で何回、照れれば良いのか分からんな…

 

そして、顔が赤くなるのを片手で隠すも葵には気付かれているだろう

ちらっと葵の方を見ると、少し赤くなっているけど、嬉しそうにしていた

 

そんなにこの映画、見たかったんだな…誘って良かった…

 

居づらいとか思っていたけど、葵と来れたことが俺は嬉しい

 

「ん?どうした?寒い?」

「うん、ちょっとね。何か掛けるもの持ってくればよかったかな…」

 

葵を見ると、手で腕を擦っていた

映画館は結構、冷房が効いていたので、寒くなるのは当然だ

 

「それじゃ、これ掛けろよ。大分マシにはなるんじゃないか?」

 

俺は着ていた半袖のワイシャツを脱ぎ、葵渡す

しかし、葵のことだから、素直には受け取らない

 

「いいよ、そんな!蓮だって寒いでしょ?」

「いや、俺はそんなことない。女性は体を冷やしやすいって聞いたことあるし、葵が体調悪くなったら嫌だからさ。葵が着といて」

「…ありがと」

「あぁ」

 

そして、俺から受け取った上着を膝に掛け寒さを凌いだ

 

「ふふっ、あったかいね」

「そりゃ、さっきまで俺が着てたからね…」

 

 

 

 

 

<その頃>

 

 

櫻田家のリビングでは、修・奏・茜・岬・遥・光・輝・栞の8人は、俺と葵の様子を尾行する計画を練っていた

そして、光の能力・生命操作(ゴッドハンド)で全員が年齢を変えればバレないだろうという作戦が決行される

 

まず、最初は、光だ

能力で自身を成長させる

 

「じゃじゃ~ん!!」

 

成長したのは、これまで能力を使った時以上に大人な姿に変身した光は、推定25歳といったところ

 

2番目は、奏

奏が成長した姿は、大人な雰囲気を醸し出した、光と同じくらいの推定27歳といったところ

 

3番目は、茜

 

「私も20…5?いや、6歳かな?」

「おっけい!」

 

そして、変身したのは、6歳の少女でした…

 

「えぇぇえ!!?またぁぁぁ!!?ちょっと、光!26って言ったじゃん!!」

「えぇ!?6歳っていったよ!」

 

また、小さい体になった茜

(注)24時間はもとには戻りません

 

4番目は、岬

岬が成長した姿は、少しあどけなさの残っているがきれいな大学生くらいの女性だった

 

5番目は、遥

遥が成長した姿も岬と同年齢だが、こちらはかっこいい大人の男に近づいた大学生だった

 

6番目は、輝

輝はまだ小学生だったのが、見違えるほどかっこよくなった高校生くらいの男の子に成長した

 

7番目は、栞

栞もまた、実年齢は幼稚園児だったが、今は、高校生くらいのきれいな女の子になっている

 

「輝と栞がこんなに成長するなんて…」

「立派になったな…兄は嬉しいぞ!!」

「私、輝や栞よりも小さいんだけど…」

 

奏は驚き、修は何故か感極まっているし、茜は茜で落ち込んでいた

それぞれの反応に一番困っているのが、栞だったことは言うまでもない

 

そして、最後に、修の番となった

 

「それにしても一気にみんなを成長させたから、疲れたよ…」

「光、あと修ちゃんだけだよ!」

 

光は一気に7人に対して、能力を使ったため、疲労していたので、岬が励ます

残りは、修一人だ

 

「わかった、いくよ!!最後の力を振り絞って!!えぇぇぇい!!!!」

 

修がどんどん成長していく

回りもどんな風になるのか気になってみていたのだが…ちょっと、おかしい…それより、能力を使う時間が長い…

 

そして、やっと終わってみると…

 

プルプルプル・・・

「…」

「「「「「「「…」」」」」」」

 

…まあ、最後だからちょっと力んだようだ…

 

成長した修の姿は、どう見てもよぼよぼなおじいさんでした…

 

「やりすぎたぁぁぁ!!!」

 

光の絶叫が家中に響きわたり、全員が棒立ちになっていた

 

 

 

その後、俺たちがいる映画館へと修の能力・瞬間移動(トランスポーター)で行くことになるのだが、現在よぼよぼのおじいさんと成り果てた修の能力は、安定せず、砂漠や北極などいろんな所へと飛ばされていったとか…

 

 

 

 

 

 

上映が開始してしばらくが経った

 

…にしても、本当にベタだな…

 

映画の内容は、身分違いの恋の話

お屋敷に住むお嬢様と、そこで庭掃除をする貧しそうな男の話だ

お嬢様のことをただ見つめ、片思いを胸に宿していた男が主人公だ

しかし、お嬢様には、親が決めた婚約者がいて、その人は身分も高くすごく優しそうな人だった

底辺な身分を持ち、貧しい暮らしをしている男はそれを影から見ているだけ…

 

ある日、男が庭掃除をしているところに、お嬢様が現れる

男は、使用人とは言えど、バイトのようなもので、お嬢様とはこの日、初めて話をすることになった

そこで意気投合した二人は、徐々に引かれていった

そして、ある日の出来事…

男とお嬢様が仲良くしているところを婚約者に見られていた

男はお屋敷から追い出され、男とお嬢様は引き離されてしまう…

思いも告げることができないまま、離れ離れになってしまった2人

男は忘れられない思いを胸に別の仕事をするが、親友に諭され、ようやくお嬢様に思いだけでも伝えようと行動し、お屋敷へと向かう

そして、お屋敷に侵入し、お嬢様の部屋の近くにある木を上り、到着したのだが、そこには婚約者に閉じ込められたお嬢様の姿が…

その姿に、男は決心する

窓の扉をたたき、お嬢様を呼ぶと、手のひらを差し出した

そして、2人はお屋敷を抜け出し、駆け落ちをする

 

…うん、ベタだ…でも、

 

隣を見ると、一生懸命食い入るように見ている葵の表情を見ると、自然と苦笑してしまう

 

まっ、葵が楽しそうでよかった…かな?

 

 

 

 

「どうだった?」

「うん、すごくよかったよっ!」

 

映画が終わり、2人一緒に歩いて、映画の感想を言う

 

「でも、主人公の男の子には、もう少し早くに思いを伝えてほしかったな」

「あ、あぁそうだな…」

 

あの主人公の気持ちがなかなかに共感できたので、何もいえない…

俺も未だに思いを伝えてないし…

 

若干、冷や汗が流れてしまう

 

その後、俺と葵は、ショッピングモールで買い物をすることに…

 

葵の服や俺の服をそれぞれが見立てて、購入したり、雑貨屋によっていろいろな小物を見ていた

 

「あ、このキーホルダー、ボルシチに似てる!可愛いな~」

「あぁ、ほんとだ」

 

色や顔がまるっきりボルシチだ

あ、ボルシチというのは、以前、茜と光が買い物に行ったが、光が迷子になり、一緒に俺と茜で捜索した時に、光が助けた猫のことだ

あのまま、お持ち帰りをし、今は櫻田家のペットとして、ボルシチという名が与えられた

 

 

 

 

<その頃>

 

「2人とも出てきたわね」

「よし、追跡スタートだぁ!!」

 

成長し、20代の大人の女性になった奏と光の合図で、全員が動き出す

どうやら、映画館の外で俺と葵が出てくるところを待ち伏せていたようだ

 

「どうやら、ショッピングするみたいだよ」

「いつもと変わらないわね…」

「でも、2人とも楽しそうだよ?」

「葵ちゃんが蓮兄の服選んでる感じだね」

「あれで、進展しないのが不思議じゃ…」

 

遥、奏、茜、光と壁に隠れながら、俺たちを観察してそれぞれ言っていたが、突然声を出す老人に全員固まる

 

「…え、修ちゃん、喋れたの?」

「少しな…」

 

茜は、老人、になった修に思わずツッコミを入れてしまう

なぜなら、修は、全く喋らずにプルプルと震えているご高齢の老人だったからだ

杖をどこからか持ってきた修は、それをつき、輝と栞に介抱されながら、2人の尾行についてきていた

 

「兄上、しっかりしてください!きっと、たどり着けます!」

「?」

 

輝の冒険魂は大きくなっても変わらないようで、何を言っているのか分からない栞の頭に?マークが浮かぶ

 

 

 

 

 

 

その後、俺と葵はスポーツ用品店へと入る

俺は、そこでサッカーのスパイクやグッズを食い入るように見てしまい、葵を完全に置き去りにしていた

 

「うわぁ、このスパイクいいなぁ!!あ、これほしかったやつだ!!」

「ふふっ」

 

だけど、葵はそんな俺をそっと隣で見ていてくれた

 

「(蓮って、本当にサッカーが好きだよね。あんなに目を輝かせちゃって…あ、これ…)」

 

そして、俺はようやく葵のことを置き去りにしていたことに気がつく

あっ!!やばい!!怒ってるかな…?

 

「あっ、わりぃ、葵。一人でテンション上がってた…って、どうかしたのか?」

「っ!ううん、大丈夫だよ。私も楽しんでたから!蓮、子どもみたいにはしゃいでて、面白いよ」

「っ!…子どもみたい言うなよな~」

「ふふっごめんね。拗ねちゃった?」

「拗ねてねぇよ!!」

 

葵が変なことを言って、楽しそうに笑うものだから、こちらが照れてしまう

だが、子どもとは余計だ!俺は子どもじゃねぇ!!

 

 

「あ、私、あっちのほう見てきてもいいかな?」

「え、なら俺も行くよ」

「だ、大丈夫!蓮は、サッカーのグッズ見てて!」

「あっ葵!…はぁ、やっぱ、放ったらかしにしていたのは、まずかったよな~…」

 

葵は違うところへとそそくさと行ってしまった

俺は、葵が起こってしまったような気がして、深く後悔をしてしまう

 

そして、戻ってきた葵と一緒に再びほかの店を回っていった

 

 

 

 

夕日が沈み始めたころ、バスを降りて、家へと帰る道のりを2人歩き、いつものように他愛のない話をして笑って帰った

俺の手には、葵が買った服や俺が買ったものがある

 

「あ、そうだ。今日のお礼にこれ買ったんだ…はい」

「え?俺に?あ、ありがとう…開けていい?」

「うん!」

 

そして、唐突に葵は持っていた鞄の中から、小さな袋を取り出し、俺に差し出した

戸惑いながらも、それを受け取り袋を開けると

 

「リストバンド…」

「そう、蓮に似合うかなって思って…さっきのスポーツ用品店に行った時に見つけて、買ったんだけど、どう?」

「そうだったのか…ははっ!ありがとう!大事にするよ!!」

「っ!…うん」

 

どうやら、先ほどのお店で俺に怒って一人で行ったのではなく、俺にこれを買うためだったらしい

 

すっげぇ、嬉しい…

葵から何かをもらうことは初めてではないが、いつも心が暖かくなって、嬉しい気持ちが溢れ出る

 

「これ、インターハイ予選で絶対につけるよ!」

「ふふっ、うん」

 

葵からのプレゼントに喜び少し大きな声になってしまったが、葵は照れているのか赤くしながら笑ってくれた

 

あ、そうだ…

 

「俺も葵にプレゼントがあるんだった…はい、これ。お返しに…ってそんなに高くないけど…」

 

俺は、雑貨屋に行ったときに買っておいたものを葵に渡す

他のものと一緒に買ったし、葵はレジの時、店の中を歩いていたから気付かれてないだろう

 

「あ、ありがと。まさか、蓮も買っているとは知らなかった」

「ははっ、葵に気付かれないように頑張ったからな」

「開けていい?」

「あぁ、どうぞ」

 

たぶん、気に入ってくれるとは思うが、ちょっと一物の不安はあるので、平静を装っていても俺の心臓はドキドキだ

 

「あ…これ…」

「…あぁ、雑貨屋さんで葵が可愛いって行ってたキーホルダー…なんだけど…」

「ありがとっ、蓮!大切にするね!!」

「お、おう」

 

葵は満面の笑みを浮かべて、俺が買った、ボルシチに似た猫のキーホルダーを大事そうに握る

 

買っといてよかった…

葵の一番の笑みを見れたのだから…

 

「そんなに気に入った?」

「うん、これ可愛かったし、それに、蓮が買ってくれたからだよ」

「っ!そうか…まぁ、喜んでくれたなら俺も嬉しい…かな…」

「…うん」

 

がぁぁ!!なんか本当に照れくさいんですが…!!

顔が赤くなり、照れくさくて仕方がない

だけど、次の瞬間、もっと赤くなる

葵の方を見ると、葵も少し顔が赤くなり、こちらを目線だけ見上げていた

2人の視線が交差する…

 

「「っ!」」

 

が、すぐに逸れる…

 

「きょ、今日は本当に楽しかったよ。ありがとっ」

「お、おう…まぁ、俺も楽しかったし、葵が楽しんでくれたならそれが一番よかったかな」

「今度もまたどこか行きたいね」

「あぁ、もっといろいろ連れて行くよ」

「うん、ありがとっ」

 

照れくさく思いながらも、二人気まずさはなく、同時に笑いあった

なんとか、無事に終わったお出かけ…

いい思い出をまた一つ増やすことができました

 

 

 

 

「…んで、お前らはいつまで後ろで隠れて、追ってくるつもりだよ…もう、家着くぞ?」

 

もうすぐしたら、家にたどり着くところで、俺は、立ち止まり、後ろを振り返る

そりにつられるよう、葵も止まって振り返り、視線を後方に向ける

すると、道の壁から覗いていた複数の目が一瞬で隠れるが、もうとっくに気付いていたから意味はない…

それより、驚いているのは、全員の容姿についてだ

 

「隠れても無駄だっての…早く出て来い!」

 

俺が叫ぶと壁の奥に隠れた集団がぞろぞろと出てくる

 

怖いし…8人もいるぞ…

 

「で、俺たち尾行して何してんだよ…」

「その前に全員の姿についてはガン無視っ!!?」

 

小さくなっている茜の言葉を聞いてもなんら驚くことはない

 

「当たり前だろ。買い物している時からずっとつけてきてたことは知ってたし、姿は鏡とかで丸見えだったよ…最初は、不審者に付けられてんのかなって思ったけど、よく見れば、お前たちだなって思って」

「じゃぁ、声かけてくれればよかったのに!!」

「あ~あ、バレてたんだ~」

 

茜と光がそれぞれに愚痴を言うが、そんなこと知ったことではない

 

「つか、茜はまた小さくなったんだな…」

「光が間違えちゃったんだよ!」

「んで、奏と光はまた随分と大人になったな…」

「光が25歳で、私は27歳よ。この姿なら、カメラの前でも普段通りにできるから楽だけどね」

「奏は容姿が変わっても性格は相変わらずだとわかった」

 

 

「それで、岬と遥は何歳なの?高校生くらい?」

「僕と岬は、大学生くらいの年齢かな」

「お姉ちゃんより年上だよ~!」

 

葵が遥と岬に聞くと、2人も成長した姿で少し違和感を残しながらも、口調や雰囲気はいつもの調子で答えた

そして、俺はあることに気付いてしまった…

 

「はっ!っていうか、もしかして…栞…か?こっちは輝…か?こんなに大きくなったのか…なんだろう、とっても複雑な気持ちなんだけど…」

「蓮兄上!僕も立派に成長できました!」

「蓮お兄ちゃん、どうかな?」

「え!?あ、あぁ、いいんじゃないか…な…?」

 

すっげぇ、複雑で違和感が半端ではない!!

輝は成長して俺と同い年くらいのカッコいい男になってるし、幼稚園児の可愛い栞も、俺と同じくらいの年齢で、美人に育っている

 

あぁ、なんか、兄ちゃんは複雑です…

成長した姿を見られたことは嬉しいのだがな…

 

…一人、悶々と頭の中で葛藤していました

 

「…蓮お兄ちゃん、変だったかな?」

「い、いや!そんなことはないぞ!栞は可愛かったのが、綺麗な女性になっているし、輝もカッコいい男性になってて、なんていうか…嬉しいんだけど、反面悲しいというか…」

「え?」

「どういうことですか?蓮兄上」

「ふふっ、蓮ったら、2人のお父さんみたいね」

「というより、お父さんみたいなお兄ちゃんだね」

 

栞の質問に俺は自分自身でも何を言っているのか分からない回答をした

自分でも分かってない言葉に、輝と栞が分かるわけがない…

 

すまん、2人とも…俺にもよく分からん…

 

そう、心の中で思っていると、葵と奏は、そんな俺を見て楽しんでいるようだった

 

俺、まだ、お父さんって年齢じゃねぇし!つか、国王に失礼だから!

 

「さっ、みんな、帰ろっ!今日は、蓮も晩御飯は一緒なんでしょ?」

「ん?あぁ、お邪魔します」

「はっ!今日の料理当番、私じゃん!!早く帰って御飯作らなきゃ!!でも、この体じゃできないよ~…」

「あははは…茜ちゃん、私も手伝うからさ」

「はぁ、今日は何か疲れたわ~」

「それより、奏姉さん、僕の勝ちだからね。蓮兄さんと葵姉さんにバレたんだから」

「勝ち?その前に勝負するなんていってないでしょ」

「…くっ!」

「遥、なんか勝負してたの?」

 

葵の合図で、全員一緒にあと少しの帰り道を歩く

 

葵とのお出かけは、進展はそんなになかったかもしれないけど、楽しく過ごすことができた

葵の楽しそうな表情も見れたしな…本当に楽しい一日だった

 

そして、これからまだまだ楽しい一日は終わらない

いつもとはちょっと違うみんなでの食事が今から始まるのだから…

 

 

「お~い、ちょっと、待っておくれぇ~…」

「ん?どうかされましたか?」

 

俺は、みんなで帰ろうとしている時、杖をついた一人のご老人が俺たちを呼び止めるので、返事をする

 

「もう少しゆっくりで…」

「え?」

 

なんのことかさっぱり分かっていない俺と隣にいる葵

目を合わせて、お互い疑問を頭に浮かべる

 

「おじいさん、どうかなさいましたか?」

 

そして、葵は後ろにいるご老人のところへ行き、話を聞いてみることに

 

「いや、俺だよ…姉さん」

「え?姉さん…?」

 

すると、おじいさんが葵のことを姉さんという…誰かと勘違いしていらっしゃるのか…?

と、俺は思っていたのだが、周りにいる他の奴らは全員苦笑いを浮かべていた

 

「あ、あのね、お姉ちゃん…その人、修ちゃんなんだ…」

「「…しゅう…ちゃん…?…修ちゃん!!?」」

「え!!?この人って、修なのか…?」

「修君!?」

「光が一気に能力を使ったせいで、体力が限界だったんだけど、残り、兄さんだけを変えるときに力み過ぎたみたいで…」

 

茜の言葉で、修だと分かったのだが、俺と葵は驚きを隠せない

そして、詳しくは遥が説明してくれた

 

「いや、力んだって…ここまで…!?」

「あははは、ちょっと、やりすぎちゃった…」

 

光の苦笑いに俺たちは棒立ちとなった

 

「修…どんまい…それより、接しづらいわぁ!!」

 

修の肩に手を置き、励まそうと思ったのだが、どっからどう見ても、今の修はご高齢のおじいさん…

接しづらいこと、この上ない…

 

 

 

帰った後、国王陛下と王妃様が驚きの表情で一杯になっていたこと、食事がし辛かったことは言うまでもない…


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