城下町のダンデライオン-ちょっと変わった生活-   作:ダラダラ

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ダラダラです。
本日の作品は、光と茜のお買い物ハプニングです。
これは、一応、原作沿いになると思います。
アニメとは少々異なる所もあるとは思いますが、どうぞ、よろしくお願い致します!




第4話 茜と光のお買い物ハプニング

「じゃぁな!蓮斗」

「おぉ、また明日な~」

 

学校の授業の後、放課後の部活はいつもより早く終わることになった

俺は、琢磨と一緒に途中まで帰っていたが、分かれ道になり、今は一人で帰っている最中だ

 

そういえば、今週の土曜日の練習が午前中だけって言ってたよな…

葵、誘って、映画でも行くか…

確か、恋愛のものの映画で見たいものがあるって言ってたし

 

俺は今週の土曜日に昼から先日、葵が見たいと言っていた映画に、葵を誘うことを決める

葵と映画だけではなく、出掛けたことは何度もあるが、その度に誰か櫻田家の兄弟が一緒に居る

葵と二人で出掛けたことは数えるほど少ないと気付いた

 

…一回、葵に二人で行きたいって誘ってみるか…

 

無謀だと思う者の俺も男だ

やるときはやらねば!という決意を胸に帰り道を歩く

そして、どう誘うか、考えながら、曲がり角を曲がった瞬間に俺は、思わず、ぎょっと驚き、立ち止まってしまう

 

「…っ!!?」

「うっ…うぅうちの妹見ませんでしたかっ!?」

「ひっ!?」

 

思わず、立ち止まり驚いてしまった理由は、今にも人を襲いそうなドスの聴いた声で話す女の子が居たからだ

俺からは後ろ姿しか見えないのだが、その女の子に襲われそうな、通行人のサラリーマンは、お化けでも見たかのように、驚き悲鳴を上げている

 

サラリーマンは勢い良くその場から立ち去ってしまう

その後も、道行く人を捕まえては、同じ言葉を繰り返す恐怖の女の子と、その場から早く逃げたいと思い全力で逃げる通行人の様子を俺は、驚きを通り越して、呆れてしまった

 

俺は一つのことに悩んでいた

その恐ろしい少女に声を掛けるべきなのか、否か

 

…声掛けなかったら、後で見つかったときに何されるかわからねぇしな…だけど、声を掛けても、嫌な予感しかしない…

 

どうするべきかと考えていると、後ろにでも目が付いているのかと思おう程、俺がいることに気づいたように、勢い良く少女はこちらに振り返った

 

 

「っ!!」

ギュンッ!!

 

「っ!!」見つかった…!!

ビクッ!!

 

またしても、驚きで肩が跳ね上がる

そして、間髪居れずに俺だとわかった少女、櫻田茜は何故か涙を浮かべながら、物凄いスピードで飛んでくる

 

「蓮兄ぃぃぃ!!!」

 

おいぃ!!学習してくれぇぇ!!

 

ドンッ!!

「ぐはっ!!」

「はっ!!また、やってしまった!!蓮兄!大丈夫!?」

「…やる前に気付いてく…れ…」

チーン・・・

「…ご、ごめんなさぁぁい!!」

 

能力で飛び込んできた茜のダイビングヘッドをもろに俺のお腹に命中してしまう…

あの世へ旅立つ瞬間だった…一瞬、川が見えた気がする…これが三途の川…

 

ということは冗談で、いつものことなので、俺はすぐに復活をする

常に起こる日常にはなってほしくないものだけど、まぁ、何はともあれ、茜に、怪我がないだけ良しとするか…

 

 

 

「それで、茜はなんで道歩く人に襲いそうな恐ろしい声で突っかかってたんだ?」

「そんなことしてないよ!!」

「え?違うの?」

「そうじゃなくて、光が居なくなったの!!」

 

俺は立ち上がり、茜が謎の行動を取っていた理由を聞いたのだが、どうやら買い物に付いて来てくれた光が突然居なくなったらしい

 

「光、もしかしたら1人で泣いてるかもしれないと思って…」

「なるほどな~まぁ、光が1人になって泣いているとは思えないけど、心配だから、俺も一緒に探すよ」

「ほんとっ!?ありがとうございます!!」

 

茜に深々と頭を下げられた

しかし、ここは公衆の面前であり、王家の一族にして時期国王候補の一人である茜と、ただの一般庶民である俺

 

ザワザワッ・・・

 

うん…周りの人がざわつくのは当然だよな…だから、早く顔を上げてくれ茜ちゃん!!

 

未だに茜は深々と頭を俺に下げる

周囲の視線が痛いです…

 

「…茜、頼むから頭を上げてくれ。俺はまだこの国から追放されたくないぞ。ってか、追放よりも公開処刑されそうだ…」

 

俺の目から涙が若干浮き出る今日の夕暮れ時です…

 

 

 

その後、茜と一緒に光の捜索を始める

二手に分かれたほうがいいのだが、如何せん俺の背中にしがみ付いて離れようとしない茜にそんな提案はできない

 

しかし、周りを見渡し、光の名を叫んでも、未だに見つからず、陽も暮れて来て、本格的に心配になってきた

 

そういえば…

 

俺は一つ思いつき茜に問いてみる

 

「なぁ、茜、光が家に帰ってるっていうことはないか?」

「…あ、それ思いつかなかった…」

「おい…じゃぁ、取り敢えず、一旦うちに帰ろう。もしかしたら、家にいるのかもしれないし、居なかったとしても、皆で探した方がいいだろう?大丈夫、光はちょっとおバカだけど、しっかりしている子だよ」

「うん…そうだね…」

 

俺の提案で、茜と共に一度櫻田家へと帰ることになった

茜は本当に光のことが心配なようで、俺の背に隠れながらも辺りをキョロキョロと一生懸命探していた

俺の服を掴む腕も、いつもと違った震えを感じ、焦る気持ちが此方にも伝わってくる

俺自身、普通を装っていたものの、光は俺にとって大切な妹のような存在

何かあったらと思うと気が気ではない

それに、光は王家の人間だから、良からぬことを企む人間に襲われる危険性が十分ある

だけど、俺がここで焦った行動や態度、表情に出すと茜をもっと不安にさせてしまう

こういう時こそ、冷静に考えなければならない!

 

光、どうか無事でいてくれ…

刻々と陽が沈むのと同時に、俺の心は不安で満たされていく

 

 

家へと歩いていると、

 

「っ!?ねぇ、蓮兄!止まって!」

「うぉ、どうした?」

 

後ろにいた茜が急に止まり、俺も引っ張られるように止まった

茜に視線を向けると、茜は隣にある公園に目を向けていた

俺もそれを辿り公園へと視線を向ける

 

「ねぇ、蓮兄、あそこにいる金髪の子って光じゃない?」

「え?どこにいんだよ?」

「ほら、あそこ!」

 

すると、茜は光がいると指す方向に向かって走り出した

俺には全く見えなかったが、とにかく、俺も茜の後を追って走る

近づくと草むらの陰でしゃがんでいる金髪の女の子がいた

 

本当にいた…さすが、茜…いや、さすが、お姉ちゃんだな

 

俺は茜の姉としての凄さに驚かされ、嬉しく思った

妹としての茜しか見てこなかったが、時に弟や妹に対する態度から、姉としての茜を見ることができた

 

茜もお姉ちゃんってことだな…

…にしても、光にしてはちょっと大きくないか…?

 

草むらの陰にいた光に茜が声を掛ける

 

「光!こんなところに…もう、探したんだよ!!」

 

茜の言葉に振り返る光…ひ、光…?

そこに居たのは、光の面影があるものの大分成長した高校生くらいの女の子だ

 

「…人違いでしたっ!!」

「おい、茜!!」

「合ってるよぉー!!って、蓮兄も一緒だったんだ」

 

茜は思いっきり方向転換をして、去ろうするが、俺にはどう見ても光だし、光自身も合っていると叫んでいた

 

「おう、やっぱり光か…なんで、大きくなってんの?」

 

急いで立ち去ろうとしていた茜の襟を掴んで、俺は引き止めた

その時、茜からぐえっ!という声がしたが、そんなこと知らん

 

光は恐らく自身の能力である生命操作(ゴッドハンド)を使って自分を成長させたのだろうが、なんで…?

 

「実は、にゃんこが木から降りられなくなったみたいで、助けようと思ったんだけど、枝に手が届かなかったから、自分を成長させて、助けてたの」

 

「あぁ、なるほど。偉いな、光は」

 

猫を助けようと頑張った光の頭を撫でたのだが、何とも違和感があることこの上ない…

光が一気に成長してしまうとな、どうも慣れない…

 

「猫も助けられたんなら、帰ろう」

 

正気に戻った茜が未だにしゃがんで猫を抱える光に手を差し伸べる

 

「そうしたいんだけど…」

「ん?」

「ふ、服の丈が…!」

「ぶふっ…!」

 

光は言葉と共に立ち上がるのだが、近くに居た俺は思わず吹き出し、咄嗟に後ろを向いてしまう

 

光はどうやら成長してしまったせいで、服のサイズが合わなくなったようだ

しかも、光の能力は24時間経たないと元の姿には戻れない

このままできっと帰れないだろう

 

「お、俺は彼方に行ってるから問題が解決しそうだったら呼んでくれ…」

 

あまり、この問題対策に深入りしない方が良いと思い、未だに顔を赤くしてしまう俺は、公園の遊具がある所で、顔を冷まそうと考えた

ついでに、誰もこないよう見張っておく

 

10分くらいしてから、草むらの中から、2人が出てくる

 

「は…?」

「えへへへ…」

「蓮兄ぃ~…」

 

草むらの中から出てきたのは、先ほど見た成長している光と、何故かやたらと小さくなり、推測すると5歳くらいの茜だろう茜がいた

あまりの驚きに固まる俺にたいして、光はやってしまったという顔で笑い、茜はうるうると目を泳がせながら、赤い顔をし、俺の名前を呼んだ

 

「いや、ごめん…なんで…?」

「あのままじゃ帰れなかったから、服を取り替えるために、茜ちゃんを小さくしたんだけど…」

「小さくさせ過ぎたってことだな…」

「うん…」

「…今思えば、俺が持ってるサッカー部のジャージを光に渡せばよかったのか…」

「「…蓮兄!!」」

「わりぃわりぃ…はははは…」

 

 

陽も完全に沈んだ頃、俺と成長した光、小さくなった茜で櫻田家の家に着いた

家のドアは、修に開けてもらったのだが、もちろん反応は凄い

ちなみに、俺は茜をおぶって帰ってきた

服の丈が小さい茜には合わず、よく転びそうになっていたため、仕方なく、俺がおぶさることになった

 

「おかえりー…って誰だおまえらっ!!」

 

やっぱり、修の盛大なツッコミが来た

そして、その声を聞きつけた奏は、目を輝かせながらリビングから飛び出してくる

 

「なになにどうしたの!?」

「げっカナちゃん!」

 

ハプニングには目がない次女だな…

それに、嫌な予感がした茜は俺の背中から降りた後、少し後ずさっていたが、奏には絶対見つかる

奏は勢い良く茜を抱きしめて、叫びまくる

 

「何この子!どこで捕まえてきたの!?」

「アンタの妹だよっ!!!!!!!」

「なるほどー!!!!!!!」

 

なるほどーって…

可愛い物には目がない奏は、家の中であるため、素に戻っている

 

「あ~茜が連れて行かれた」

「あれは朝まで弄ばれるな」

 

冷静に茜の行く末を見つめる俺と修

リビングへと俺も通され、その後、光から事情を聞いた修は、俺を見ると

 

「それにしてもビックリしたよ。蓮兄がとうとう過ちを犯してできたのかと」

「は?…んなわけあるか!!?」

 

修は至って普通の顔とトーンで話すため、俺の反応も遅れてしまったが、その言葉の意味を理解した

 

「?やったって、蓮兄、何かしちゃったの?」

「…光…頼むから、修の話を掘り下げないでくれ…兄ちゃんの心は折れそうだ…」

 

光からの純粋な眼差しで聞かれた質問に俺は心がギシギシと痛んだ

光にはまだ早い!!

 

「蓮が何したの?」

 

次に登場したのは、葵だった

 

「べ、別になんでもない!!つーか、何もしてない!!」

 

葵にだけは変に思われたくねぇぞ!!

 

どうやら、葵も修の言葉を理解していないようだった

俺に対して、いつもの表情で話しかけてくれていた

そのため、俺は必死で話を打ち切ることに

 

「つーか、光は、木を小さくすれば良かったんじゃないか?」

「あっ!」

 

修の的確な今気付いたのだろう光の反応

 

「それより、買い物はどうしたの?」

「あぁっ!!」

 

そして、リビングでテレビを見ていた遥の質問に、またしても今気付いたのだろう光の反応

 

 

 

 

結局、夕飯は、出前をでピザを取ることになった櫻田家だった

その時、五月さんが俺にある提案をする

 

「そうだ!どうせなら、蓮君も食べていきなさいよ!確か、今日は美紀も居るんでしょ?美紀も一緒に!ね?」

「い、いえ!そんな悪いですよ!!」

「もう、遠慮しないで!それに、最近、美紀とお話してなかったから、呼んできてくれると私は、嬉しいんだけどな~」

「…し、しかし…」

「蓮お兄ちゃん、一緒に食べよう?」

「わかりました。直ちに連れて参ります」

 

五月さんの好意は嬉しかったのだが、申し訳ない思いで一杯だった

しかし、栞が俺のズボンの裾を少しひっぱり上目使いでお願いされると、断れるはずがない

すぐさま母さんを呼びに行った

 

 

 

 

出前を取った後は、各自好きな物を選び、ピザを頬張って、団欒を楽しむいつもの食事風景が広がっている

 

茜は小さい姿で光は大きい姿だが…

 

「テリヤキもうないのぉ!!?」

「ピザの取り合いは戦争だ」

「茜ちゃん、小さいから取り辛そうだもんね。私はいつもより早く好きな物を取れるけど!」

 

茜の悲痛な叫びに、戦争とか言う修と、光の余裕になって嬉しそうな表情

 

光…茜のあの姿はお前が元凶だぞ…

と、心の中でツッコミを入れておいた

 

 

ちなみに、俺の母さんと五月さんは違う席でお酒とおつまみ、ピザを頬張りながら、楽しく大笑いで談笑している

 

 

なんか、今日も今日とて疲れたな~

まぁ、光は無事だったし、全員でまた楽しく過ごせたからよしとしよう

今日の一日ももう終わる

明日はどんな大変なことが起こるのやら…

 

 

少し開いたカーテンの隙間から窓越しに見える月や星が輝く夜空を見上げて、今日の幸福を喜んだ

 

 

 

 

「えぇ!!オレンジジュースもうないの!?」

「コーラももうなくなったよ」

「私、全然食べれてないよぅ!!」

「戦争だと言っただろう」

「ほら、茜、私の分あげるから」

 

光の怒号から始まり、遥、茜、修、葵とそれぞれに騒がしくなる

 

今は楽しいというより飲み物がないだの、全然足りないだのなんだののわがままタイムに突入している…

まだまだ、騒ぐ幼なじみの兄弟たち…

 

ギャイギャイギャイギャイ!!

「…だぁぁぁぁ!もう!!うるせぇ!!人が折角いい感じに今日を締めようとしてるのに何してくれとんじゃぁぁぁ!!」

 

シーン・・・

「「「「「「「「「…。」」」」」」」」」

 

俺の怒りの叫びに全員の動きがピタリと止まる

 

「…はぁ、もういい!ちょっと、コンビニに言ってくる」

 

俺は、幼なじみたちをそのままに櫻田家を後にし、コンビニへと出掛けた

 

ったく、毎度毎度、ほしい物があるなら買いに行け!

王家がこんな時間に出歩くことはできないから、仕方ないけどな

だから、俺がコンビニに向っているわけなんだが…

 

俺が近くのコンビニを目指して歩いている時、後ろから声が聞こえた

 

「蓮!待って!!」

「?…葵、栞」

 

振り返ると、葵と栞が二人手を繋いで走ってくる

 

「どうしたんだよ?何か伝え忘れか?だからって、お前らがこんな時間にうろついてちゃダメだろうが…」

「あれ、蓮お兄ちゃん、怒ってないの?」

「え?どういうこと?」

 

栞の表情は何故かすごく不安そうだ

 

何か、栞のこの表情を見ると、俺がすごく悪いことをしたような、気分になるな…それより、俺が怒るってどういううことだ?…栞に怒ることなど、これまでに一度もなかったはずだが…

 

俺の頭は混乱する

栞の突然の言葉に疑問符が浮かんだ

その時、一緒にいた葵は何もかも分かっているように小さく微笑む

 

「葵…どういうこと…?」

「ふふっ、さっき、蓮がみんなの前で大声出したでしょ?それを栞は蓮が怒って出て行ったんだって思って、追いかけようとしていたの。私は大丈夫だからって言ったんだけど、栞も頑固だからね。蓮に謝りに行くって聞かないから、一緒に出てきたの」

「あぁ、なるほど…そういうことか…」

「蓮って、私たちに怒鳴ったりすること余りないでしょ?栞の中では、いつも優しいお兄ちゃんが怒っちゃって不安になったんだと思うよ」

 

俺は葵の言葉で栞の表情の意味がようやく理解できた

 

確かに、俺はめったに怒鳴ることはないな…特に、櫻田家の9人兄弟に対しては

それは王家だからではなく、俺にとっても大切な妹・弟のような存在だと俺自身は思っているからだ

 

その時、未だに不安そうにしながら栞が小さく呟く

 

「怒ってない…?」

 

その様子に居た堪れなくなってしまう…

 

しゃがみ込み栞と同じ目線になってから俺はできる限り優しい笑顔で栞の頭を撫でる

 

「怒ってないよ。ごめんな、心配させて」

 

その瞬間、栞の不安そうな表情の面影は消え去り、その小さな体が俺へと飛び込む

 

「おっと…」

ギュウー・・・

 

栞は精一杯、力を込めて俺に抱きついてきたので、俺も栞を優しく抱きしめ返した

その様子を、優しい笑顔で葵は見つめていた

俺は葵と目が合い、二人同時に思わず笑顔が溢れた

 

 

その後、一緒にコンビニへと行き、それぞれが先ほど要求していた飲み物やご飯、お菓子を買って帰ることになった

コンビニ店員が葵と栞を目の前にして、驚き、変な敬語を使うという面白いこともあった

 

荷物は俺が持ち、葵と栞が手を繋いで、3人一緒に櫻田家を目指していた

葵と栞が俺の前で、楽しそうに話している姿を見て、こういう幸せな家庭を築きたいなぁ…葵と俺と子どもで暮らす平和な家庭を…て、何考えてんだ俺!!これじゃ、まるで変体じゃねえか!大体、葵と結婚できるわけねえのに…あぁ、言ってる側から心が痛む…

 

「…蓮?さっきから、何で赤くなったり、一気に暗くなったり百面相してるの?」

「え…してねぇ!!」

 

葵と栞にどうやら見られていたようで、二人ともに笑われた俺は、また顔を赤くしてしまった

 

 

 

 

櫻田家についた後、何故か全員(奏を除く)から深々と頭を下げられ、謝罪される

どうやら、栞と同じで俺が怒鳴ったことに驚き、本気で怒らせたと思ったのだそうだ

俺の考えに気付いていたのは、葵と奏だけだった

 

付き合い長いのに…

 

少し、悲しくなってしまう

 

その後、俺が怒ってない事を伝え、コンビニで葵と栞と買った物を渡した

また、戦争になったことは言うまでもない

 

 

 

 

明日も学校があるので、俺は櫻田家から帰る時間となった

母親は酔っ払っていたので、さっさと帰らせた

玄関先までは、葵が見送りに来てくれる

 

「だぁ~本当に今日は疲れた…」

「お疲れ様。今日は本当にありがとう、蓮」

「ん?なんだよ、改まって」

「今日は光のためにいっぱい動いてくれたんでしょ?とっても、心配して探してくれたんだね。みんな言ってたよ?茜と光と帰ってきた時の蓮の顔がすごく強張った顔をしてたって…その後は、すっかり安心しきった顔になっていたのは、私も見たから、光のことを本気で心配して、茜の前では冷静で居てくれたんだって…ね」

「…なんだよ、その推理ショーみたいに…」

「ふふっ、また、赤くなった。連は小さいときからすぐに顔に出る癖があるよね」

「うるせぇ…あ、そうだ、葵。今度の土曜日の練習が午前中だけだからさ、この前言ってた映画、見に行かないか?」

 

ドアノブを掴んだところで、今週の土曜日に葵を誘おうと思ってたことを思い出し、振り返りながら、聞くと、葵は顔をパァッと明るくさせた

どうやら喜んでれるみたいだ

 

「うん!行きたい!ずっと、見たかったの!ありがとう、蓮!茜たちにも聞いて…「葵!」ん?」

 

俺の予想通り、葵は映画のことを茜たちにも聞こうとリビングに向おうとする所を、俺は、咄嗟に葵を呼び止める

そして、今日の夕方、絶対に言うと決意した言葉を葵に少し震える声で呟く

 

「あのさ、その…映画は、俺と二人じゃダメか…?」

「え…?」

 

俺は精一杯の言葉を告げたが、最後の方は、葵の顔を見ていられず、徐々に視線が落ちて行き、目を逸らしてしまう

言い終わった頃、葵からの反応は余り得られない…

 

…やっぱり、だめだったか…みんなで行こうって言い直すべきかな…

 

俺は諦め、全員で行くことを再び提案しようと葵に視線を向けるが、葵の顔は俺を見たまま、赤くなって固まっていた

その様子に、俺も固まる

 

なんで、赤くなってんの?こいつ

 

「…葵?」

「っ!!あ、え…っと、その…」

「あ~…無理しなくて良いぜ?嫌なら全員で…「違うの!」」

 

今度は葵が俺の言葉を遮る番になった

俺は静かに何か言葉にすることを渋る葵を待った

そして…

 

「わ、私も、蓮と二人で映画に、行きたい…です…」

「っ!ほ、本当に…?」

「うん…」

 

葵が出してくれた答え

俺は一気に顔が赤くなる…

 

あぁ、やばい…まじか…まじかぁ~超嬉しい…

 

耳まで赤くなる自分の顔を隠すために、咄嗟に手を口元に抑える

そして、これ以上、ここに居たら俺の頭が爆発しそうなので、俺は精一杯の見栄を張って、普段通りに装い、葵に別れを告げた

 

「わ、わかった…また、連絡するな…んじゃ、また、明日…」

「うん…また、明日ね…」

 

何とか紡いだ言葉を告げてから、櫻田家を後にし、俺は自分の家の中へと入る

玄関のドアを後ろ手に閉めてから、俺はその場に勢い良くしゃがみこんでしまう…

 

「あぁ…マジでやばい…可愛すぎ…」

 

つーか、二人で映画を観ることを誘うだけで、こんなことになってたら、当日どうすんだよ…

 

俺の心の容量、小さすぎ…

 

 

小さな俺の言葉は誰にも聞こえていないと思う


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