城下町のダンデライオン-ちょっと変わった生活-   作:ダラダラ

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こんにちは、ダラダラです。
現在、ハイスクールD×Dの連載完全に止まっていますが、この漫画を好きになり、夢小説を始めました。よろしくお願いします。では、主人公の紹介を簡単に・・・

主人公
日高蓮斗(ヒダカレント)
高校3年生で王家長女・葵と同じクラス。サッカー部のエース。毎度、国際ユースに呼ばれるほどの実力を持つ、MF(ミッドフィルダー)である。


※サッカーに関する知識は、漫画「エリアの騎士」で知っている程度です。知識に関して、間違っていたらすみません。



第1話 王家の幼なじみは大変

…ピピピピピピピ!!

 

「…」

 

ピピピピピピ…バシッ!

 

朝6時半丁度

カーテンの隙間から零れる日の光によって、朝が来た事を告げられる

この部屋にあるベッドには、一人の男が眠っていた

6時半丁度にセットしてある目覚まし時計が鳴り響くことに煩わしく思い、アラームを解除し、二度寝を決め込む

 

10分経過…

 

バンッ!!!!!!

「いい加減に、さっさと起きろっ!!!!!」

 

その時、部屋を盛大な音で開け入ってくる中年女性が大声で男を起こす

 

「ん~…!」

 

「全く毎朝毎朝!!さっさと起きてご飯食べなさい!!お母さんもお父さんも、もう出勤の時間なんだから、早くしてよ!!」

 

中年女性は男が被る布団を盛大に引き剥がす

そして、文句を言いながら、部屋を後にしていった

 

「毎朝毎朝…声でかすぎなんだって…」

 

男・日高蓮斗(ヒダカ レント)はようやくベッドから体を起こし、去っていった中年女性・蓮斗の母親に眠い目を擦りながら、呟く。

 

ここは、日高家の家。ごく普通の一般家庭である。両親は共働きで、父親は建築関係の仕事を、母親は看護士の仕事をしている。そして、その二人の間に生まれた子が、蓮斗である。

 

 

 

 

 

「くぁ~…父さん、はよ…」

 

母さんに起こされ、起きた俺は、階段を下りてリビングに行くと、テレビを見ながらネクタイを締めている父さんがいた。

 

「おう、蓮斗。今日も朝練か?」

「いや、今日はない。放課後の部活もないんだ」

「そうなのか?まぁ、体を休めることもうまくなるためには必要なことだからな」

 

俺はサッカーを小さい時からやっている

やり始めたきっかけは父さんだった

サッカー好きの父さんは、俺が物心着く前からサッカーボールを俺に持たせ遊ばせていたと母さんから聞いたことがあった

その影響からか俺は今日までずっとサッカーボールを追いかけて生きてきた

 

「ほら、二人とも!ぼーっとしてないで!お父さんはもう行く時間でしょ!蓮斗は顔を洗ってご飯食べる!」

「「はーい」」

 

俺の家族はいつも平和だ

しっかり者の母さんがいて、少しのほほんとした父さんがいて、そして俺がいる

 

 

 

「じゃ、行ってきます」

「今日は、お父さんもお母さんも遅くなるけど、櫻田さんにお願いしたから、お向かいでご飯もらってね」

「はいはい、今日“は”じゃなくて、今日“も”だけどな~行ってらっしゃい」

 

 

午前7時15分

俺よりも早く父さんと母さんが仕事に出かけ、俺は食べ終えた朝食の皿を洗う

洗っとかないと、母さんがうるさいからな…

 

 

洗い物も終え、朝のニュースを見ていたけれど、暇になってしまった

 

「よし、ちょっと早いけど、もうそろそろ学校に行くか~」

 

現在通っている高校の制服に袖を通し、スポーツバッグを肩に掛けて俺は玄関の扉を開けた

 

「行ってらっしゃい、お父さん」

「行ってらっしゃい」

「行ってきます。あ、そうだ。今日は夕飯までには帰りますから。」

「おっけい!」

 

玄関を開けると、家の前の道路に黒の高級車が止まっている

そして、その声に俺は目を向ける

お向かいさん一家の父親が出勤のようだ

 

車が走り去った後、その車を見送るように三人が向かいの家の前に立っていた

 

エプロンを付けた女性と俺と同じ高校の制服を着た女性と、その女性に背負われた少女

これだけぱっと見ると普通の一般家庭だが、どういうわけかお向かいさんである櫻田一家は、この国の王家であった

 

「皆さん、毎朝騒々しくてすむません」

「すみません」

「ほんとにな~」

「っ!蓮、おはよう!」

「蓮君、おはよう!」

「蓮お兄ちゃんおはよう」

 

制服を着た女性・櫻田家長女にしてこの国の第一王女である(アオイ)は、蓮斗の声に反応する

それに呼応して、櫻田家の奥さんにしてこの国の王妃である五月(サツキ)さんと末っ子で第六王女の(シオリ)も反応する

 

「おはようございます、王妃様、葵様、栞様」

「もう、わざとらしく“様”を付けないでよ」

 

葵は困ったように笑う

俺は家の鍵を閉め、葵たちの方へと向う

 

「今日は、朝練ないの?」

「あぁ、今日は朝から職員会議で先生がいないからな。おかげでやることなくて退屈だったからさ、ちょっと早いけど学校行こうかな、と」

「そうなの?じゃぁ、一緒に行こうよ!久しぶりに、ね?」

「ん?あぁ、まぁいいか。んじゃぁ、ここで待ってるよ」

「うん!ちょっと待っててね!」

 

俺の返答を聞き、葵は栞を連れて家の中へと入っていった

 

「ふふ、葵ったら嬉しそうにして、よっぽど蓮君と一緒に行きたかったのね~蓮君、いつも部活で早く行って帰りは遅いでしょ?」

「っ!そ、そんなことないでしょ~あ、今日もすみませんが、晩御飯お世話になります」

 

俺は苦笑いで誤魔化すしかなかった

いや、本当に葵が嬉しく思ってくれていたら、俺も嬉しいけど…現実は、甘くないだろ…

 

「いいのよ~晩御飯の面倒を見るって言い出したのは、私なんだから!美紀も幸一さんも忙しそうだしね~」

 

それだけ言い残し、五月さんは家の中に戻っていった

ついでに言うと、美紀(みき)とは、俺の母の名であり、幸一(こういち)は父の名だ

俺の両親と五月さんたちご夫婦は、全く異なる立場にありながら、仲のよい友達のような関係を築いていた

そして、俺もこの国の王女・王子である櫻田家9人の子どもと幼なじみの関係となっている

俺は一番上の葵と同じ学年であるため、他の8人からは“蓮兄”という呼び名で慕われ、俺にとっても8人は弟・妹のような存在であった

 

 

ほんと、どういう因果かな~俺が王家の子どもと幼なじみなんて…

 

そう空を見上げながら、考えていると、櫻田家の家の扉が開く

 

「蓮、お待たせ」

「あ、蓮兄、おはよう」

「蓮お兄様、おはようございます」

 

葵が先に出てくると順に長男で第一王子の(シュウ)と次女で第二王女の(カナデ)が出てきた

修は相変わらずのやる気がなさそうな飄々とした挨拶

そして、他人の目がある外では性格を変える奏の畏まったいつもの挨拶が俺に向けられた

修と奏の制服の形状は俺と似ているが、色は緑色になっている

ちなみに俺と葵は青色だ

二人とも俺と同じ高校の一つ下、二年生に所属している双子の兄妹である

 

「よう、修、奏。今日は俺も一緒に登校させて貰うわ」

 

そして、最後にもう一人

 

「蓮兄!?よかった!今日は一緒なんだ!?」

 

出てきたのは、4人の制服の色と異なり、赤色の制服を着た一年生の(アカネ)。三女で第三王女の立場にあるのだが…

 

「お願い!!壁になって!!!」

「またかよ…」

「だって、カメラが…」

「はいはい」

 

極度の恥かしがり屋であり、町内に存在する監視カメラにひどく脅えているのだ

そのため、登下校はたいがい葵の後ろに隠れて帰っているが、俺のように大きくて背の高い奴がいるときは壁代わりをお願いされる

修より少し背が高い俺はいつも利用される

 

そして、俺と葵、修、奏、茜の5人で学校へと向う

 

 

 

 

 

向っていたのだが…

 

「蓮兄は、今日の晩御飯どうするの?」

「あぁ、母さんも父さんも遅くなるし、俺も今日の放課後は、部活がないから、毎度悪いが、お邪魔させてもらう」

 

茜が思いついたかのように質問してくるが、これは毎回恒例になってしまった質問だ

俺の親は忙しく帰りはいつも遅いため、部活のないときには櫻田家で晩御飯を頂いていた

部活があるから今では、晩御飯を頂く回数が減ったものの小学校の時には毎日のように頂いていた

 

「部活ないの!!?それじゃぁ!」

「はいはい、下校のときも壁になれ、だろ?茜様の仰せのままにー(棒読み)」

「もう、蓮兄!」

 

いつもの調子で会話をする俺たち

 

その時

 

「おはようございます」

「「「おはようございます」」」

「っ!おはようございます…」

「「「「…」」」」

 

通りすがりの一人のご老人から挨拶を受けた葵たちは、挨拶を丁寧に返す

しかし、極度の人見知りをする茜は、さっと俺の後ろに隠れ、極々小さな声で挨拶を返す

そんな茜の様子に、全員が溜息を吐いてしまう

 

「はぁ、相変わらずだね。あんたの人見知り」

「奏」

「だって…」

「確かに極度すぎるとは思う」

 

奏の言葉を制する葵だが、奏に便上する俺

 

「蓮兄までひど…ひっ!!!」

 

と、そこで反論し掛けた茜が何かを避けるよう道路の脇に勢いよく隠れる

それに気付いた一同は、電柱柱に取り付けられた監視カメラに目を向けた

茜は苦手なカメラから隠れたのだ

 

「週末に監視カメラの位置変わったんだよね…折角全部覚えたのに…」

「全部ってすごいね…」

「だって映りたくないんだもん!!」

 

茜に合わせ葵も道路脇で膝を折る

茜の必死さには常に驚かされる

 

「仕方ない、これが俺たちを守るためって事はお前も分かってるだろ?」

「分かってる…でも…町内だけで2千以上って多すぎじゃない!!!?」

「カメラの位置なんてよく全部覚えたわね…私だったらそれ、国民へのアピールに使ったのに」

「アピール?」

 

いつも飄々としている修がまさに正論を述べることはいつものことだ

そして、奏もまた…

 

「だって、私たちみんな次の国王選挙の候補者なんだから」

「もぉぉ!!何で選挙で決めるのよぉ!!」

「仕方ないでしょ…お父さんが決めたことなんだから…」

「それ以前に、民の意見を取り入れることは必要だと思うぞ~俺も含めて」

 

奏が選挙に一番力を注いでいることもいつものことだった

 

国王選挙とは、櫻田家9人の王女・王子に課せられた王からの命令

次の国王は、その9人の中から選ばれることになる

 

誰になろうと、幼なじみが国王になるのは、変な感じなんだよな…

 

「そういえば、蓮兄さんは誰に入れるの?」

 

奏はここがカメラも人の目もないところのため、普段の口調で聞いてくる

 

オンとオフの切り替えが素早いな…

 

奏の言葉に全員が俺を見る

俺も、この国の国民のため、選挙権は当然ある

小さい子どもにまであるのだからな

 

奏は明らかに自分に入れてほしそうな顔、茜は明らかに自分に入れないでほしそうな顔

葵・修は選挙に興味がないが、俺が誰に入れるのか少し気になっている顔

 

この兄弟ってほんと分かりやすい

 

「…黙秘権を行使します」

「なにそれ…」

「教えてくれてもいいのに…」

 

俺は誰の目を見ることもなく、答えると茜と葵からブーイングが飛んできていた

 

「まぁ、どうせ、葵姉さんでしょうけどね」

 

しかし、奏だけは分かったような顔をして言う

残念ながら、それは違うぞ~と思ったけど、なんか言うとまた、根掘り葉掘り聞かれるので、素知らぬ顔をで答えながら俺は腕時計に目を向ける

 

「そんなことより、時間やばいぜ」

「あぁ、もうこんな時間じゃない!!生徒会に遅れるわ!!!」

「じゃぁ、俺も…学校でな」

 

奏と修は先に学校へと向っていった

 

「私たちも行こう?茜」

「早くしないと遅刻だぞ?茜、皆勤賞狙ってんだろ?」

「…だって、カメラが…」

「じゃぁ、私が先に行って引きつけようか?カメラの動き鈍間だし」

「お願いします!!!!」

 

茜は、葵の提案にきれいな土下座をして、葵も俺も苦笑いをする

そして、俺と葵でカメラのあるところを先に通り、ひきつけることに成功し、茜がそっと通ろうとした

しかし、カメラは位置だけではなく、性能もアップしていたようで、俊敏な動きで茜を捉えた

それに気付いた茜はもう奪取でその場から逃げていった

 

「あのままの速さで行けば、カメラにそんなに映らず、学校行けるんじゃ?」

「ちょっとでも映るのはダメみたい」

「「はぁ」」

 

俺と葵は走って逃げる茜を見て呆然とするも、茜の後を追いかけていった

公園の茂みに隠れる茜を見つけ、俺たちもそこへ行く

 

「…折角、カメラのないルート見つけたばっかりなのに…」

「でも、このままじゃ本当に遅刻よ?」

「…こうなったら!」

 

そう言い、茜は立ち上がる

 

「いいの?茜、ズルしているみたいだからなるべく使いたくないって…」

「だって、お姉ちゃんと蓮兄まで遅刻させちゃうわけには行かないもん…二人とも手貸して」

「おう」「ありがと」

 

俺と葵はそれぞれ茜の手を握ると、宙に浮き始める

 

「うわっ、相変わらず、この感覚には慣れねぇわ…」

「学校に着くまでの辛抱だから頑張って!蓮兄!」

 

俺が宙に浮いている非現実的なことがなぜ起きているのかというと、これは茜の能力が原因である

王家である葵や茜たちは、王族の証として、それぞれ特殊能力を保持していた

そして、三女の茜には、自身と自身が触れたものの重力を操れることができる能力『重力制御(グラビティコア)』が備わっている

そのため、俺たちは空を飛ぶことができる

カメラが苦手な茜は空を飛ぶことで映らなくて済むし、学校にも早く着くことが可能だ

毎日、そうすればいいのだが、茜はそれをズルだと思い、一般生徒と同様に歩きで普段は登校する

こういった王族であるのに、庶民的な考えを持つこいつらの性格が結構好きなんだ

 

そう考えながら、茜に引っ張られ、空を飛んでいたのだが…少しスピードを出しすぎている茜、俺は引っ張られる形で茜の後ろを飛んでいる…

そして、何より、茜が着てる女子高生の制服はスカート…

つまり…

 

「茜、そのな…言い辛いんだけど…」

 

俺は視線を他所へ向けながら茜へと声を掛ける

 

「え?何?」

「その…スカートの中見えてるぞ…」

「え…」

「うん、私も言おうと思ってたんだけど、もう少し、スピードを落としたほうがいいんじゃないかな…」

「えっ…いやぁぁぁぁぁ!!!!!」

ゲシッ!!

「ぐへッ!!…っ!!!」

 

俺と葵の言葉に顔を盛大に真っ赤にした茜は、あろうことか空に浮いている状態で俺の頭を蹴飛ばした

結果的に、茜の手を離してしまい、王族と違って能力なんて持ってない俺は、重力に従って落下していく

ビルの上から飛び降りたかのように

 

「蓮!!!!」「蓮兄!!!」

 

葵と茜が必死に上空から叫んでいたが、俺にはどうする事もできない

 

あ、俺、死ぬの?

ガシッ!!

 

「せ、セーフ…」「よ、よかった…」

「…頼む…寿命を縮めないでくれ…」

「ごめんなさい…」

 

間一髪で俺の腕を掴んだ茜によって、なんとか無事に済んだ

まぁ、こういうことは今までにも何度もあった事だが…

 

「仕方ない…ほらこれ」

「えっ?」

 

俺はスポーツバッグの中から、サッカー部の上着を茜に差し出す

 

「これ、腰に巻いてろよ。茜にはサイズ的にでかいと思うから腰に巻いてれば、見えることもないだろ?」

「でも、悪いよ!」

「いいから、さっさと巻く!!本当に遅刻しちまうぞ?」

「う、うん…」

 

茜は渋るも素直に受け取り、腰に巻いた

そして、スポーツバッグを肩から外し、制服の上着を葵に渡した

 

「ほれ、こっちは葵」

「え?私も?」

「何言ってんだ?当たり前だろ?茜のも見えたんなら、葵のも見えちまうだろ…下に人がいて、見えちまったらどうすんだよ」

 

ちょっと恥ずかしいが、葵のを他の奴らに見られてたまるか!!

 

「…うん、ありがとっ」

「…おう」

 

葵の嬉しそうな笑顔に少し照れながらも、上着を渡した

そして、もう一度、茜の力で宙に浮き、今度こそ学校へと向っていった

 

 

 

「間に合った!!あ、私、こっちだから行くね!!」

「茜、帰り迎えに行くから待っててよ!?」

「はーい!」

 

学校に着き、遅刻ぎりぎりの中、何とか到着すると、茜は一年の教室へと急いで駆けていった

そして、俺と葵もまた同じ教室へと向う

 

「よう、蓮斗!」

「おーす」

「なんだよ、朝練ないからって、葵ちゃんと仲良くご登校か?くっそぉ、羨ましい奴め!!」

「本当に羨ましいと思うか…?」

 

俺は、親友の琢磨(タクマ)の言葉に、今朝起きた騒動のことを思い出しながら疲れたように小さく呟く

琢磨は中等部の頃、共にサッカー部に入った時からの知り合いだ

 

「あれ、蓮斗、上着どうしたの?」

「ん?あぁ、葵に貸したままだった」

「貸す?」

「おう」

 

今、話しかけてきた奴は琢磨同様、中等部からの知り合いで親友の(カケル)

こいつもまたサッカー仲間だ

 

その時、葵がこちらへ歩いてくる

 

「蓮、ごめんね。これ、借りっぱなしで。腕のところに皺になっちゃったんだけど、今日、アイロンして返すから学校終わりにまた貸しくれる?」

 

「ん?そんなの別にいいよ、俺が無理やり渡したんだしな。それに皺になんて気にしたこともないから、気にすんな」

 

葵に貸していた制服の上着を受け取り、眉を下げて申し訳なさそうにする葵に笑顔を向け、葵の頭に手を置く

葵は何故か顔を赤くしてじっとしていたが、その様子を見ていた琢磨と翔、そして、葵の親友である3人組卯月(ウヅキ)菜々緒(ナナオ)静流(シズル)にからかわれる様に嫌な笑みを向けられた

 

「「「「にやにやっ」」」」

「えーと…」

 

…訂正、琢磨、翔、菜々緒、静流の4人にだった

卯月はそんなことをするやつではない

 

「…んだよ」「…」

 

「「「「にやにやっ」」」」

「え、えーと…」

 

しばらく、嫌な視線が続いたことは言うまでもない

 

 

 

放課後

 

「さて、茜の教室に向かいますか」

「蓮斗!翔と3人で遊びにいかね?」

 

帰宅準備をし終えて席を立った時、琢磨と翔が俺のもとへとやってくる

 

「わり、今日は先約があるんだ」

「先約?葵ちゃんか?まさか!デートか!!?」「ちげーよ」

 

琢磨の無駄にでかい声とリアクションに教室中の生徒が俺たちに目を向けるが、俺は間髪入れずに冷静に突っ込む

 

「茜に、部活内なら壁になってくれと頼まれた…」

「あぁ、茜ちゃんか。やっぱり人見知りは直らないんだね」

「しゃーねぇ、翔、二人で何か食いに行くか」

「うん、じゃぁ、蓮斗、また明日」

「じゃぁな」

「おう、わりーな、また明日~」

 

そして、俺は琢磨と翔と分かれ、葵の下へと向う

 

「葵、帰ろうぜ」

「うん、でも、いいの?折角部活ないのに、琢磨君と翔君と遊ばなくて…」

「別に大丈夫だよ。茜との約束の方が先だからな。それに、今日は晩御飯をそっちでお世話になるのに、準備を手伝わないのはおかしいだろ?」

「そんなの気にしなくていいのに…」

「ほら、いいから、早く茜んとこ行こう」

「うん、そうね」

 

 

 

帰り道

 

「お姉ちゃん、すごいね…どこでも人気者で…」

「そうかな?」

「あれで自覚ないのか…?」

 

茜を迎えに行き葵が声を掛けると、教室中の生徒が葵の周りに集まってきていた

 

「でも、蓮兄も人気あるよね」

「俺?」

 

妬み恨みの人気なら知ってるが、お前たちのような人気はないぞと心の中で思う

王家といつも一緒なんだから使用がないんだが、俺も好きで傍にいる訳だし

 

「そうだよ!だって、国際ユースにも選ばれる天才サッカー青年って世間でも有名じゃん!学校のサッカー部でもエースだし。この前、ニュースで言ってたよ?この国のサッカー界を背負って立つことになる逸材だって!」

 

茜の力弁に耳が痛くなる

何しろ俺のすぐ後ろに立っているため、声が近いしでかい

 

「そんなに期待はされてないと思うけど、まぁ、ありがたいことですね」

 

信号待ちで立ち止まって何気ない会話をしている時、

 

ドンッ!!

「きゃっ!」「うわっ!」

 

茜が後ろから誰かにぶつかられ、茜の前にいた俺も押される

 

「大丈夫?二人とも」

「あぁ、俺は平気」

「ごっごごごごめんなさい!!後ろに目が付いてなく…って…?」

 

「きゃぁっ!!」

「「「っ!!?」」」

 

茜にぶつかってきた小太りの男が俺たちの近くにいた女性の鞄を無理矢理引ったくり逃走する

 

「ひっ…引ったくりよぉ!!!!」

女性は悲鳴を上げるが、男は足を止めることなく逃げていく

 

その時、

「お姉ちゃん、これお願いっ!!」

「あっうん。茜、気をつけてね?」

「大丈夫、エレガントに行くよ」

「おい、茜!無茶するな!!」

「いけるよ!正義は…勝ぁぁぁぁぁぁぁつ!!!!!!」

ドッガアーン!!!

 

「「エレガント…」」

 

茜は俺の静止も聞かず、能力を使ってものすごい速さで引ったくり犯を追いかけていった

俺と葵はツッコミを入れるがそれどころではない

 

「葵、俺たちも茜を追わないと!」

「え、えぇ」

「ったく、能力を持っているからって、過信しすぎだ!あの馬鹿!」

 

そして、ようやく茜に追いついたのだが…

 

「ふ…ふぅー少々取り乱してしまったわ」

 

茜によって完全に伸びている引ったくり犯の男

 

「茜!この馬鹿!」

「っ!?ご、ごめんなさい。パンツ見られそうになってやりすぎちゃって…」

「そうじゃない!!いや、まぁ、お前の力は手加減がいるだろうけど…もしものことがあったらどうするつもりだったんだ!!?お前は能力を持っていても普通の女の子なんだぞ!!?こいつがナイフを隠し持っていればどうする!!?」

「…ご、ごめんなさい…でも、ほっとけなくて…」

「お前の性格上、放っておけないことはわかるが、あまり心配させないでくれ」

「…はい」

「無事で良かった」

 

俺は茜の無事に安心して、思わず茜の頭を撫でてしまう

それに驚き、顔を耳まで赤くする茜

そして、葵が呼んだ警察が来たときには、すでに多くの人だかりができ、取材陣に囲まれる茜と葵を俺は隅で見ていた

当然、茜は葵の背に隠れていたが…

 

 

 

 

…ピンポーン

 

「はーい!」

 

騒動が静まり、俺たちはそれぞれの家へと帰っていった

俺は取り合えず、私服に着替え、向かいの家・櫻田家へと足を運ぶ

そして、家のチャイムを鳴らすと、中から五月さんが出てきた

 

「ども、お世話になります」

「そんな、畏まらないで!さっ、上がって上がって」

「お邪魔します」

 

広い櫻田家の家へとお邪魔し、リビングへと向った

中に入ると、

 

「あっ!蓮兄!今日は一緒にご飯食べるの!?」

「本当ですか!?蓮兄上!」

「蓮お兄ちゃん、いらっしゃい」

「あぁ、お邪魔するな、光、輝、栞」

 

リビングのソファーには、この家の五女にして、第五王女の(ヒカリ)と、三男で第三王子の(テル)、そして栞が座っていた

光は小学4年生、輝は小学1年生、栞は幼稚園児である

 

「3人とも何してんだ?」

「茜ちゃんのニュース見てたんだ~!」

 

光の言葉にキッチンで晩御飯の手伝いをしていた茜が勢いよく反応する

 

「もう、その話はいいよぉぉ!!」

「もう、ニュースにでてんのか~さすがだな、記者の人たち」

「そこに注目!?」

 

茜からのツッコミは軽くスルーし、俺はキッチンで料理をする葵の下に行く

 

「俺も手伝うよ」

「ありがとう、蓮。じゃぁ、これ切っててくれる?」

「おう、任せろ」

 

葵から包丁を受け取り、キッチンでは俺と葵の二人で料理を作ることになった

 

「いやぁ~本当、蓮君は働き者ね~いい婿さんになるわよ、きっと!一体、誰のお婿さんになるのかしらね~」

 

五月さんのからかうような視線を一身に受け、返答に詰まる

 

「蓮兄って、彼女いないの?好きな人とかは?」

 

そして、五月さんに便乗するかのように光が聞いてくる

ますます返答に詰まる

 

「お母さんも光もその辺にしてあげて。蓮がこういう話題苦手なの知ってるでしょ?」

 

助け舟を出してくれたのは葵だった

俺は終止無言でやり過ごし切ることに専念していた

葵の隣でそんな話できるか!!

俺の心の叫びは誰にも聞かれていない…いや、それを分かっていて質問しただろう五月さんと一番年下のくせに勘のいい栞は気付いていたと思うが…

 

と、その時、リビングのドアを開けて入ってきたのは、岬と遥だった

 

「あれ、蓮兄!何してるの?」

「毎度のことながら、晩御飯をご馳走になろうかと思ってな」

 

「でも、最近はあんまり来てなかったから、久しぶりだね、蓮兄さん」

「そうか?言われてみればそうだな~」

 

岬と遥のそれぞれの質問に答えていた

(ハルカ)はこの家の次男で第二王子であり、(ミサキ)は四女で第四王女である

二人とも修・奏同様、双子の姉弟であり今は中学2年生だ

 

そして、買い物をしてきた修と生徒会で帰りが遅くなった奏も帰ってきてリビングに集まり、9人の王子・王女がリビングに揃っていた

 

いつ見ても俺がここにいることが不思議でならない…

 

「蓮、ありがとう。もう、大丈夫だから、座ってて」

「いや、最後までやるよ。お皿を運ぶだけだろ?」

「そう?ごめんね、ありがと」

 

そして、葵から受け取ったお皿を持ち、テーブルーの上に並べていった

どこに誰が座るかなんてもうすっかり覚えてしまった

それぞれにお皿をおいていっていると、またリビングのドアが開く音がする

そこには、先ほど帰ってきたらしい子の家の大黒柱にしてこの国を治める王が立っていた

 

「ただいま~」

 

王様の挨拶にその家族たちは口々に「おかえり」と述べていく

そして、王様が俺に気付いた

 

「ん?蓮君じゃないか。久しぶりだな~最近、全然、家に来てなかっただろ?心配してたんだぞ~今日は一緒にご飯を食べれるようだな」

 

「はい、お邪魔させていただきます」

 

俺は深々と頭を下げる

しかし、それをよく思わなかったのか、王様は俺の背中をばしっと叩く

 

「蓮君、何を畏まっているんだ~君はもうわれわれ家族の一員のようなものであろう」

「本当にね~畏まらなくていいのに~さっ、ご飯食べましょ」

 

国王の言葉に便乗する五月さん

そして、全員が席に着いた

 

櫻田家の父親・国王、母親・五月さん、長女・葵、長男・修、次女・奏、三女・茜、次男・遥、四女・岬、五女・光、三男・輝、六女・栞の11人と、お向かいさんで9人の王子・王女と幼なじみの関係ってだけの極普通の庶民である俺、日高蓮斗で一つのテーブルを囲まれみ、今晩の夕食を頂いた

 

個性豊かなこの国の王子・王女と幼なじみであることは大変だ

普通じゃありえないことも起こるし、非日常的かもしれない

だけど、俺にとっては、とても大切な日常である

 

 


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