ISってなに?   作:reレスト

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親しき仲にも礼儀あり、親しくないなら尚更だ……

「ではこれより、水無月 悠夜vs帯 片時の試合を始めます。両者、用意はいいですか?」

 

 

「ハッ、瞬殺してやるよ!!」

 

 

「あーもーいいですよー。……めんどくさ」

 

 

 空中で、俺と変態君は向かい合う。変態君の乗るISは、『打鉄試作式』という、日本の第2世代量産型ISの試作機だ。対して、俺の乗る機体はフランス製のIS『ラファール』である。……皮肉なのかそうじゃないのか悩む所だな。各自乗る機体は様々な国のISの中から抽選で決められた物だ。

 

 

 第2回IS世界大会モンド・グロッソ『男性』代表決定戦。

 これが、今回俺が変態君と戦うはめになった理由の建前だ。

 前回のモンド・グロッソの後に告知された、第2回モンド・グロッソではIS男性操縦者が参加する。という迷惑かつ面倒な内容に捏造された事により、2人いるIS男性操縦者のうちから代表決定戦の後、その勝者が代表になる。 本来なら『俺』が、出るはず

だったのだが、IS男性操縦者同士の戦闘という、各国《自分たちに》『おいしい』話にすり替えられた。

 とてもめんどくさい。

 ……俺は出たくもなかったのだが。

 

 

 まぁ、IS学園を卒業するまでに、モンド・グロッソに出場する方を決めておいたほうが都合がいい。卒業してからでは他国の干渉が酷くなり。試合場所、時間、機材、金、どこのISを使うか等、様々な問題が沸き起こり、いつまでたっても代表なんざ決まらんだろう。

 下手をすれば、適当な理由をこじつけて何度も何度も試合《データ収集》をさせられる可能性もある。

 ……それもかなりの高確率で、だ。

 

 

 そういったメリットもあるにはあるんだが……なんでこうなった。

 朝普通に起きて教室に行ったら、「1時間後に試合開始ですよ」と、担任にいきなり言われ。試合? 誰のですか? と聞き返したら、きょとんとした顔をされた。 その後、事情を聞き、理解した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 天災どもが俺に隠した上で根回ししやがった──と。

 

 

 今日の日付は月曜日。

 諸々の準備は土日に終わらせておけば、俺は気付かない、気付けない。

 各国へのデータ提供は、後でまとめた物を出せばいい。生徒には教えず、当日に告知する。当日に告知されるのだから、噂にもならない。

 土日は自宅に帰っていた、俺には天災どもの動きを知る術はなく、 機体の抽選は試合直前にしたので、不正のしようもない。

 

 

 変態君も同様に知らなかったようだが、やたら張り切っている……ポジティブなのか、馬鹿なのか──馬鹿だな、うん。

 

 ISの【ハイパーセンサー】により、観客席にいる。今回の騒動の元凶を捉える。ハイテンションでこちらに向かって手を振るボケウサギに、それに苦笑しつつ、ボケウサギ同様にこちらを見上げるブラコン。

 ……鉛弾でもぶちこんでやろうか。俺が自分の提案を実行するかどうか、わりと本気で検討し始めたら、元凶どもはビクリ、と身を震わせた。良い勘してんじゃねぇか。後で覚えてろよ?

 

 

 とりあえず、戦わないと駄目なので、武器を確認する。

 100%勝てるとは思わないが、多分勝てる。わざと負けても、変態君は五月蝿そうなので、ちゃんと戦う。マシンガンが2丁にグレネードが3発だけ、と。

 第2世代のISなら『後付武装(イコライザ)』により、武器を量子化して、機体にインストールしておけば、わざわざ最初から武器を腰に提げたりしなくても、取り出したり仕舞ったり出来るんだが、ラファールは第1世代。つまり、仕舞えない。……邪魔だな、これ。

 

 ところで、俺制服のままなんだが……良いのか? まぁ何時ものことなんだけどな。

 

 

 変態君の武装はIS用ブレード1本、他にはなし。『後付武装』で仕舞っている訳でもなく、本当にIS用ブレード1本。

 曰く「お前ごとき、これ1本で十分だ!!」だとさ。

 

 

 楽で良いんだけどさ、何時までたっても変わらないな、変態君。 ある意味すごいな、本当に。

 

 

 

 そこまで考えた所で、試合開始のブザーが、アリーナに鳴り響く。

 

 

「死ねぇぇえええええええええええ!!!!」

 

 

「やる気というか、殺る気満々だな」

 

 

 開始と同時に、構えも何もなく突っ込んできた変態君と同じスピードでバックし、マシンガンを構え、連射する。

 変態君のシールドエネルギーがどんどん減っていく。変態君の攻撃が届かず、かといって離れすぎる訳でもない距離で、発砲を続ける。

 

 

「その程度の攻撃なんか効かねぇよ!!」

 

 変態君が声を荒げながら怒鳴ってくる。

 いや、ガッツリ効いてます。ガンガンお前のシールドエネルギーを削ってるよ。

 

 

 しばらくバックしたまま連射を続けていたが、だんだんとアリーナの壁が近づいて来た。

 

 1丁目のマシンガンはそろそろ弾切れになのだが、流石防御能力をコンセプトに置き、開発を進めている『打鉄』の試作機だ。結構削ったんだが、まだエネルギーに余裕があるな。

 

 

「もう逃げられねぇぞ!!」

 

 

 違和感がないくらいに、ゆっくりと減速し、変態君との距離を縮める。もうちょい、かな。

 

 

 壁にぶつかるギリギリで、『PIC(パッシブ・イナーシャル・キャンセラー)』をフルに使い、急停止する。

 

 

「墜ちろぉぉおおおお!!」

 

 

 型も何もなく、ブレードを滅茶苦茶に降り下ろす変態君。観客席で声が上がるが、特に気にせず、置き土産を残し『瞬時加速(イグニッションブースト)』で一気に下降する。

 

「ん?」

 

 

 変態君は疑問の声を漏らす。

 目前にあるグレネードに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゴッッッッッッッ!!!! という激しい爆発が生じ、爆煙が変態君がいた辺りに立ち込める。 ふむ、上手くいったな。『瞬時加速』の直前にマシンガンを捨て、グレネード2個を置いていく。たったそれだけだが、これでなかなかタイミングが難しい。高速で飛んでる途中は避けられやすい、だから壁ギリギリで急降下することで、変態君の攻撃を誘い、動きを止める。で、目前で爆発と。

 

 

 織斑相手にもやったことがある戦法だが、多少ダメージを与えただけで、ほっとんど無駄だったからなぁ。なんで初見でかわせんだよ。理不尽な奴だ。

 

 

 煙が消え始め、変態君の姿が露になる。マジで頑丈だな、あのIS。

 

「くっ、壁に爆弾を仕込むとは、この、卑怯ものが!!」

 

 

 アリーナにいる全て人々が沈黙する。俺も例外ではなかった。

 

 

 ……………………あぁ、そういう結論になるのか。ほんと、めんどくさいな。思考を切り替え、残りの武器を確認。グレネード1個に弾丸MAXのマシンガン1丁、まぁ大丈夫だろ。

 

 

「お遊びはここまでだ、次の一撃で終わらせてやるよ。」

 

 

 変態君が自信満々で一撃必殺を言ってるが、織斑のISである『暮桜』位しか、エネルギーがほぼフルな機体を一撃で倒すなんか無理だろ。

 

 

 変態君はサッカーのスローインのように、ブレードを頭の後ろに反らす。……反らしたからって威力が上がる訳じゃないんだが。

 

 

「行くぞ! 『瞬時加速』!!」

 

 

 変態君が叫びながら『瞬時加速』をし、

 

 

「アホだろ、おまえ」

 

 

 同時に『瞬時加速』した俺の飛び蹴りが、顔面に突き刺さる。あ、絶対防御が発動した。

 

 

「ブゲャ!?」

 

 

 変態君が壁に叩きつけられ、落下する。両手を挙げて、まったく無防備な状態の顔面に飛び蹴りだからな、ダメージもデカイだろ。 ただでさえ使い所の難しい『瞬時加速』を、叫びながら使う奴がいるとは思わなかった。自分から教えてどーすんだよ。

 

 

 重さ×速さの2乗だったかな? 力の大きさは。速度×質量だったっけ? ……どうでもいいか。

 

 蹴り飛ばした時にブレードを落としたようで、変態君は丸腰だ。 地面に倒れている変態君の所まで飛んで行き、背中を足で押さえつける。

 

 

「テメェ! 何しやが」

 

 

 言い切る前に、後頭部に向けてマシンガンを乱射する。大丈夫、死にゃしない。ビジュアル的にはアウトな絵だが、敵には情けも容赦もないと思わせられたら行幸だ。

 

 

 扱いにくい奴と、扱いやすい奴なら、後者を選ぶに決まっている。各国にどう思われるか分からんが、甘いと思う奴は少ないだろう。

 

 

 シールドエネルギーがギリギリのラインでマシンガンの乱射を止める。

 

 

「そういえば、どうでもいいことなんだけどな」

 

 

 グレネードのピンを引き抜きながら、話しかける。ほとんど気絶してるから、聞こえてるか分からないが。

 

 

「親しくない年上には敬語を使えよ」

 

 

 ポイッとグレネードを投げ捨て、距離を置く。先ほどよりは小規模ながら、止めには十分な威力の爆発が起き、変態君のシールドエネルギーがゼロとなり、試合終了の合図がだされた。

 

 

 だらだらとピットに戻る途中で、ふと気付いた。

 

 

「ボケどもの罰を考えてねーや」

 

 ……適当に思いついたらでいいか。


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