あぁ〜、疲れた、あの天災達の相手以外でこんなに疲れたの久しぶりじゃね?とりあえずそろそろ準備やら手続きやら終わってる頃だろうし、戻っても大丈夫だろ
すぐに帰るつもりだったけど近場の露店商にいい感じのアクセサリー用の材料があって思いの外時間がかかったが、いいもん買えたし準備なんか俺なしでも出来るからなぁ〜、別にいいだろ、っとここだったな
ガチャ、パタン
……疲れてんのかな?部屋はここだし、間違いないな、よし、入るか
ガチャ、バタン!
……人外魔境?いやいやいや、なんで部屋の中が戦場よろしく、あんなに殺伐としてんだよ、意味わかんねぇよ、しかもなんかファイルスが居たっぽいし………さてと、ちょっと疲れてるみたいだから先にホテルに行って寝るか、うんそうしよう!そうと決まればとっととかえr
ガシッ×3
「「「悠夜(さん)(ゆーくん)ちょっと話ましょうか?」」」
「嫌だ、拒否する」
「「「ダメ(だよ)(です)(よ)」」」
ズルズル、ガチャ、バタン
そうして俺はいつの間にか部屋から出ていた三人に魔境(部屋)に引きずり込まれた……
「それで、ゆーくん、これは何なのかな?」
と言ってファイルスを指さす篠ノ之、いやいや、これ扱いは………いつものことだな
「悠夜さん、私も説明して欲しいのですが?」
説明って言われてもねぇ、厄介事に絡まれたとしか言えねぇしな
つーか、おまえら怖ぇーよ顔は笑ってるけど目がマジじゃねぇ〜かよ、しかも真剣と前に捨てさせたスタンガンよりも明らかに出力が上がってるやつを持ってるし、殺す気かよ
「あらあら、悠夜はモテモテね、でも女の嫉妬は見苦しいわよ?篠ノ之さん、織斑さん」
やめろよ、火にガスボンベ焼べんじゃねぇ〜よ、勝手にやってるならいいが、俺が巻き添え喰らうんだよ、めんどくせぇな
「なに、ゆーくんのこと馴れ馴れしく呼んでるの?耳障りだから止めて」
「そちらは私達を知っているようだが生憎と私達は貴様のことを知らんのだが?挨拶という基本的なこともできない愚か者なのか?それとも自分のことは知られていて当然等と考えている自意識過剰なバカなのか?」
……なんかしばらく続きそうだし珈琲でも飲むか
コポコポ、カチャ、ズズッ
はぁ〜、落ち着くなぁ、けど珈琲ってあんまり胃に優しくねぇからなぁ、控えないとだめかね?
「あら、私が悠夜のことをどう呼ぼうと悠夜がなにも言わないなら私の勝手でしょう?」
「それに他国の代表選手ぐらい全員覚えておくのが常識だと思っていたからつい忘れていたわ、ごめんなさいね、あらためて、私はアメリカ代表のナターシャ・ファイルスよ、よろしくね?」
「そうだ!悠夜、あのアメ美味しかったわよ『悠夜の』食べかけだったけど気に入ったからまたくれないかしら?」
ファイルスが色々とはしょって話をした途端、篠ノ之と織斑に睨まれた、こっち見んな
「ゆーくん?食べかけってどういうことかな?束さん説明して欲しいなぁ〜」
「どういうことですか?悠夜さん?それとこの女とはどういった関係で?」
………ほらな?結局俺が被害を被るんだよ、だから帰りたかったんだよ、はぁ
「おまえら」
「「「(なんですか)(なにかな)(なにかしら)?」」」
「いい加減にしろや」
ガン!ガン!ガン!
「「「〜〜〜っ!?!?」」」
あぁ〜、イッテェ、強く殴りすぎたな
「「「なにする(の)(んですか)(のよ)!」」」
おぉ、復活が早ぇーな、まぁ涙目だけど
「うるせぇ〜よ、周りと俺に迷惑だろうがTPOを考えろや、俺に迷惑だろうが」
「そ、それは結局悠夜さんが面倒になっただけじゃ」
「わざわざ二回言ってたしそっちが本音なんじゃ」
「あ゛ぁ゛?」
「「ごめんなさい」」
こいつらはいい加減慣れて来てるからすぐにちゃんと謝るな、問題は
「ゆ、悠夜?女性の頭を叩くのはどうかと思うんだけど、それに今の女の子にする威力じゃないでしょ、絶対」
「そんなもん知るかよ、で?お前はなにをしに来たんだ?ファイルス」
「知るかって、まぁいいわそれよりファイルスなんて他人行儀じゃなくてナターシャとかナタルとかターシャとか親しみを込めて呼んで欲しいな」
「ファイルス、何をしに来たんだ?」
「だからファイルスじゃなくて」
「ファイルス、なにをしに来たんだ」
「ゆ、悠夜?聞いて」
ガシッ、ギリギリ
「質問に答えろ」
俺がファイルスの頭を優しく掴みながら心からお願いするとファイルスは顔を青くしながら直ぐさま了承してくれた
なんか天災二人も若干顔色が悪かったけど風邪でもひいたんだろ
やっぱり真心って大事だよなぁ、真心って、そう思うだろ?
〜色々説明中〜
「……つまり、色々な準備が終わって暇になったから日本代表である織斑とISの産みの親である篠ノ之に挨拶しにきた、と」
「そうよ、もちろん悠夜にも会えるかなぁって思って来たわよ♪」
「そうか、ならもう目的は果たしただろ?帰れ」
「つれないわね〜、悠夜は」
と言ってファイルスは楽しそうに笑う……めんどくせぇから早く帰れよ
「事情は分かりました、要するにこの人もあいつの被害者なんですね」
「そして俺はおまえらの被害者だ」
「大変だったでしょう、あいつの相手は」
「えぇ、しかも政府の馬鹿どもはあの銀髪と懇意にして情報を引き出せ〜、とか言って来てたから殴ることも出来なかったし、最悪だったわ」
「オイ、こら、サラっと無視すんじゃねぇよ、なに顔背けてんだよ、こっち見ろや」
……駄目だ聞こうとしやがらねぇ、しかしなるほどね、行動派っぽいファイルスがなんで殴らなかったのか分からなかったんだが、そういう理由か
「あらためて、日本代表の織斑 千冬だ、よろしく」
「こちらこそ、よろしくね」と言って一見、和やかに握手する二人なんだが……
握った手から血管が浮き出てミシミシと音をたてているから色々と台なしだった
「ところでファイルスさん、さっきの悠夜さんからあめをもらったと言っていましたが、どういうことですか?」
と笑顔でさらに強く手に力を入れる織斑
「ナターシャでいいわよ、そのままの意味だけど?本当はキスしてあげようとしたんだけど悠夜が恥ずかしがって逃げるから、代わりにくわえてたアメをもらったのよ」
こちらも笑顔で負けじと力を込めるファイルス
「こちらも名前でいいですよ、単に嫌がられただけでは?」
「分かったわ千冬、面白い冗談を言うわね?」
「さぁ?冗談でしょうか?」
「「ふふふふふ」」
……あいつら結構仲いいな、まぁ織斑の方は自分とこんなに対等に話して来る相手がなかなかいなかったから表面上は怒ってるけど、実際はちょっと楽しんでるみたいだし
………訂正、マジで潰しにいってる、音がミシミシからメキメキッ、にシフトしてるし
「さぁ!ゆーくん!今のうちに束さんとチューしよう!チュー!」
ウサ耳バカがアホみたいなことをほざきながら俺の方に飛び込んできた、が、そろそろ何かしてくると思っていた俺は普通に避けた
ゴチン!
「きゅう〜、い、痛いよ〜ゆーくんなんで避けるの〜」ウサ耳バカは顔面から壁に突っ込んで相当痛かったのか半泣き、いや泣きながら文句を言ってきた
「アホか、なんでお前とキスせにゃならんのだ、それに普通飛び掛かられたら避けるだろうが」
「だってゆーくんそれとはキスしたんでしょ、ズルイよ〜」
「してねぇよ、お前はなにを聞いてたんだよ」
「え〜と、ゆーくんがお詫びにちーちゃんと束さんにチューするってところまでは聞いてたよ?」
「何一つあってねぇよ、しかもお詫びってなんだよ」
「束さんとちーちゃんというものがありながら浮気しようとしたお詫び?」
「そもそも付き合ってすらいねぇのに浮気も何もあるか、むしろ俺がもらいたいわ」
「じゃあお詫びにチューしてあげるね!」
結局それに戻るのかよ………駄目だそろそろ限界だ、マジでとっととホテルに行こう
「篠ノ之……」
目をつむってこちらに唇を向けている篠ノ之の頬にゆっくりと両手をそえる
「ゆー、くん」
頬を紅潮させて艶っぽい声を出しながら顔を近づけて来る篠ノ之
そして俺は………
おもいっきり頭突きをかました
「らぁっ!」
ゴン!!
「にゃ!?」
とさっきのげんこつの比じゃない音と威力の頭突きをくらいウサ耳バカは気絶した
調子に乗りすぎるからだ
「ふぅ、これで帰れるな、ってどうした?おまえら?じゃれあいは終わったか?」
さっきまでやり合っていた織斑とファイルスが顔を引き攣らせてこちらを見ていた
「悠夜、今のはさすがに……」
「悠夜さん、いやよかったんですがちょっと……」
「何がだよ、あぁ、流れでキスするとでも思ったか?」
同時に頷く二人
「んな簡単にキスなんかしねぇよ、別に大切にしてる訳でもないが一応ファーストキスだからな、そう簡単にはやらねぇよ」
呆れながら俺が答えると二人は顔を寄せ合ってなんか話し出した
「今の流れでキスしないなんて、焦らしてるのかしら?」
「いや、悠夜さんに限ってそれはないと思うが……」
「どちらにせよ」
「どっちにしろ」
『今のは束(篠ノ之博士)がかわいそうだったな(わね)』
「おい織斑、そろそろ帰るぞ、お前明日から大会だろ?体調を整えるなら早めにホテルに行って寝た方がいいんじゃね?」
気絶したウサ耳バカを肩に担ぎながら織斑に声をかける
あん?お姫様抱っこ?………完全に気を失ってる人間をお姫様抱っこなんてしたらめちゃくちゃ疲れるんだぜ?首が据わってないから手で支えなきゃならんし色々と面倒なんだよ
「……そうですね、そろそろ行きましょうか」
「私も戻らないとね、それと悠夜、その持ち方はどうなの?」
「楽なんだよ、放置しないだけマシだ」
微妙な目で見られるが無視だ、無視
「いつもあんな感じなの?」
「いや、いつもはもう少し優しいんだが、今日は機嫌が悪いみたいだな」
「聞こえてるぞ」
ビクッと反応して少し汗をかく二人、機嫌が悪くなったのは誰のせいだ、誰の
「はぁ、それじゃあなファイルス」
「ちょっと待って下さい悠夜さん、ナターシャ、明日トーナメントがどうなるか分からないが当たったら全力でやらせてもらう」
「そう簡単には負けないわよ?それじゃあね、千冬、悠夜も」
とお互いに笑いながら拳を当てていた、どこぞの少年マンガかよ
その後、ホテルに着いた俺は織斑達の部屋までウサ耳バカを運びベッドに捨てておいた
「あぁ疲れた、さて俺はもう自分の部屋にいくぞ」
と自分の部屋に行こうとしたら織斑が声をかけてきた
「あの、悠夜さん」
「なんだ?」
「その、明日の大会で優勝したら賞品というかご褒美みたいなものを頂けませんか?」
……どうすっかなぁ、正直世界大会つっても織斑なら優勝しそうだし、賭としては三対七くらいで負けそうなんだよな、けどここで断ったら明日の大会に響きそうだし、もしそうなったらめんどくせぇしなぁ
「やっぱりダメ、ですか?」
……はぁ〜、このままダメだって言ったらマジで大会に響きそうだな
「……ものによるが、何にするつもりだ?」
「それは、えっと、まだ決めてません」
「決めてないのに要求してきたのかよ」
「すみません」
「はぁ、謝るなよ、まぁあんまり無茶なものじゃなけりゃいいだろ」
「本当ですか!」
「あぁ」
「ありがとうございます!」
「優勝したらだぞ?分かってるよな?」
「はい、必ず優勝しますよだから応援して下さいね」
と笑顔で言ってきた
すっげえ自信、さて眠いし早く部屋に戻るか
「そうか、まぁがんばれよ〜、応援は……多分するから」
「多分って、ありがとうございます、少し緊張してたんですが楽になりました」
と苦笑しながらも礼を言ってきた
「そいつは重畳、じゃあな織斑後そこで寝たフリしてるウサ耳、運んでやったのはサービスだ、感謝しろよ」
と声をかけて俺は部屋に戻った、やれやれやっと寝られるな〜、明日はもう少し楽できますようにっと
悠夜Sideout
千冬Side
パタン、と悠夜さんがドアを閉めて出て行った、相変わらず鋭い人だな、それに優しい人だ
私が緊張しているのを見て普段なら絶対にしない悠夜さんにメリットのない賭をしてくれて、いつものように接して緊張を解いてくれた
「ズルイ人だな、なぁ、束?」
ベッドに俯せになっている束に声をかけるとモソモソと起き上がりながら返事をしてきた
「そうだね〜、でもゆーくんだしね!」
「そうだな、悠夜さんだからな」
本人が聞いたら嫌な顔をするだろうが『悠夜さんだから』という言葉でだいたい納得してしまうのだから不思議だ
「でもでも!ちーちゃんズルイよ!束さんもご褒美が欲しい!」
「お前はここまで運んでもらっただろう?それがご褒美じゃないか」
笑いながら少し意地悪な問い掛けをする
「ぶぅ〜、ちーちゃんの意地悪、あんな運び方されてもあんまり嬉しくないよ〜」
「ふふっ、冗談だからそんなに拗ねるな、それにお前も頼んだらどうだ?上手くいけばお前もご褒美、もらえるんじゃないか?」
「そうだね!そうしよう!ちーちゃんナイスアイディアだよ!そうと決まれば早く寝なきゃ、ちーちゃんおやすみ!」
と早口でまくし立てて束は直ぐさま寝てしまった
やれやれ、悠夜さんが絡むとここまで違うか……………私も束のことは言えない、か
さて、私も明日の大会に備えて寝るとするか、ご褒美は何にしようかな?
そんなことをつらつらと考えながら私はその日を終えた