……前回、というよりも昨日だな、変態が何をしたのか、言ったのか全く知らんが、まぁ何かしたんだろ、織斑に聞いても何でもないの一点張りだし周りの奴らは今は関わりたくないのか俺を避けるし変態は論外だしウサ耳……は今は付けてない篠ノ之はそもそも学校に来てないっぽいから現状、俺に何があったのか知る術はない……ないのだが、
何だよ、この空気、俺が教室に入った途端こっちを窺って来る女子の皆様方、で次に視線を移すのが何時もよりも硬い表情をしながら時折、学校に来てない篠ノ之の席の方を心配そうに見る織斑と、
……俺にどうしろと?
で、そんな感じの何とかして!というような女子の皆様方からの無言の、言葉よりも重いプレッシャーをかけられながら、お通夜のような授業を耐え切り、やっと昼休みだ、昼休みなんだが、
「………」
暗い、暗すぎる、俺は久しぶりに静かだからいいんだが、周りの視線が痛い……
あの変態が何をしたのか知らないが俺に皺寄せが来てるじゃねぇかよ!責任取れよ!……つっても今変態は学校全体からはぶられてるがな、俺以外全員女子だからな、俺の中学時代より酷いかも知れん、憧れの相手とその親友を完全に怒らしたからなぁ、皆さんめちゃくちゃご立腹なんだよ、女子の結束力は半端ないからソッコーで昨日の話が広まってあっという間に孤立したな、全く同情する気が起きないがな、
さてさて、どうしますかねぇ、このまま放置したら俺の胃がストレスでマッハだし、かと言って何かしら俺が行動したらなんか注目集めてめんどくせぇことになりそうだしなぁ、どうすっかなぁ、はぁ……
ピリリ、ピリリ、
ん?着信か?誰からだ、ってあぁ、なるほどね、っとここじゃなんだから屋上に行くか、
スタスタ、
「はい、もしもし、どしたよ?こんな時間にかけて来るなんて珍しい……」
悠夜Sideout
Side千冬
はぁ、駄目だな私は、親友が落ち込んでいるのに何もしてやれないなんて、自分の力不足にイライラする、そのせいで悠夜さんにも迷惑をかけてしまっている……これはいつものことだな、
そもそも、何故あんなやつがISに乗れるんだ、あいつがここに居なかったらこんなことには……たらればを言っても仕方ないか、それでもあいつのしたことは許せることではない、馴れ馴れしく話しかけて来て勝手なことを言って……その後のことは思い出したくもないが、結果として束が大切にしてきた物を壊し悪びれもせずに言ってはならないことを言った、私はそれを聞いた瞬間あいつを刀の峰で叩き伏せた、
咄嗟に峰にしなければ本当に斬っていたかも知れない、それくらい冷静じゃなかった………刀は鍛練に使うために持ち歩いている、たまに剣道部にも参加させてもらっているが物足りないのでな、
束が学校に来ていないのは『悠夜さん』に貰った(あの場合奪ったか?)ウサギの耳が付いたカチューシャを壊されたからだ、束は本当にあれを大切にしていたからな、貰った日やその後一週間くらいは皆に、といっても私や一夏、箒くらいだが、見せびらかしていたくらいだ……あまりにうるさいのでアイアンクローで黙らせたが、
そんな思い入れのある物を壊されたから、特に悠夜さんに貰った、というのが大きいだろう、あの人は食べ物などはたまに、本当にたまにだが、奢ってくれることがあるが形のある物をくれたことはなかった、そんな悠夜さんが形のある物を初めてくれたのだ、表面上はいつもよりテンションが高いだけに見えたが内心は本当に嬉しかったのだろう。
束にとって世界とは身内とその他で構成されている、自分を自分として扱ってくれる、束自身も大切な者達とどうなってもいい、どうでもいい者達、そんな世界で束は生きている、だから身内には甘いし我が儘も言う、逆に他人にはとことん無関心だ、けれど束は身内に嫌われることを恐れている、それは悠夜さんのおかげで束と真剣に向き合い話をして聞いたことだ、嘘はないだろう。
悠夜さんには嫌われているのでは?と思うかも知れないがあの人にはめんどくさがられているだけなので嫌われてはいない……と思う、
だから今回、あいつのせいだとはいえ悠夜さんに貰ったカチューシャを壊したせいで嫌われてしまったのではないかと落ち込んでいるのだ、あの人はそんなことでどうこう言う人ではないと束自身分かっているのだろうが、それでも最悪の場合を想像してしまいあの状態になっているのだろう、
……数年前の私のようにな、
束にとって悠夜さんは本当の他人から身内になった人だ、箒のように妹だからではなく、私のようにものごころ付く前からの仲だからでもなく、一夏のように私の弟だからでもない、繋がりの全くなかった、そんな状態から自分を分かってくれて、自分自身を見てくれるそんな束にとって今までに居なかった初めての相手だ、よけいに嫌われるのが怖いのだろうな、
悠夜さんが私達を似ていると言っていたときがあって、その時は否定したがこの状態を見ると納得せざるおえないな、なんだかんだ言ってよく見ているなあの人は、いつになったら追いつけるのか、
部屋に篭っている束を引っ張り出すのに1番簡単なのは悠夜さんにどうにかしてもらうことだが、私が言って行動してもらっても束の心にはしこりが残るだろう、私に言われたからやったんだと、かと言って悠夜さんが自分から行動するのは目立ちたくない悠夜さんからしたらなるべくしたくないだろう、
本当にどうすればいいのか、
そんなことを考えていたら一週間ほどがたち、いよいよどうするか、と思っていたら悠夜さんから、今日バカの家に行くから雪も海を連れて来い、というメールが送られてきた……私達に散々主語を入れて話せと言っているのだからもう少しちゃんとしたメールを送って欲しいと思った私は悪くないと思う、
とりあえず考えていてもしょうがないので一夏を連れて束の家に向かった、
千冬Sideout
Side束
………ゆーくんから貰ったウサ耳が壊されてから一週間くらいたったと思う、
あの日、家に帰ってからずっと部屋から出てないからどれくらい時間が経ったのか正確には分からない、ご飯は箒ちゃんが持ってきてくれるのを食べてるから死ぬことはないと思う。
ベットの上で目の前にある壊れたウサ耳をぼーっと見ている、このウサ耳を直すのは簡単だけど問題はそこじゃない、これを壊したこと自体が問題なんだ、
このウサ耳はゆーくんから初めて貰った形に残る物だった、ほとんど奪うみたいな感じだったけどゆーくんがくれるって言ってくれた、本当に嬉しかった、だからいつも付けて、壊さないようにして、大切にしてきた、なのに壊した、壊されたって言った方が正しいかも知れないけどそれでも、私がもっとしっかりしていたら壊れなかったかも知れない
ゆーくんから貰ったのに壊しちゃって、ゆーくんに呆れられたかな、それとも怒ってるかな、………嫌われ…ちゃったかな、ゆーくんは優しいからそんなことはないと思う、それでもゆーくんに嫌われるのは嫌だ、耐えられない、だから怖い、もし本当に嫌われてたらどうしよう、そんな考えが頭から離れなくてずっと部屋に閉じこもっている、
ゆーくんは私に、私達にとって特別なんだ、天才と言っていいだけの才能と頭脳を持っていた私達、周りは距離をとっていた、私は他人なんてどうでもよかったけどちーちゃんはつらそうだった、そんなちーちゃんを助けてくれた、そのおかげでちーちゃんはすっごく明るくなった、それに私のことを気味悪がらずにいてくれてそのままの私として受け入れてくれた、それからだ、ゆーくんが私の大切な人になったのは。
面倒だって言いながら世界中から追われるはずだった私と、孤立していたちーちゃんを同時に自分が死ぬかも知れないのに救ってくれた、嬉しかったなぁ、………その後の取材とか告白とかは全く手伝ってくれなかったけど、
久しぶりに会ってもゆーくんは何にも変わってなかった、いつも通りめんどくさそうにしながらちーちゃんのことで悩んでた私にちーちゃんと話し合うようにしてくれた、ゆーくんは自分を緩衝材がわりに使われるのがめんどくさいって言ってたけど本当は私達に仲直りして欲しかったんだとおも…………本当にめんどくさかっただけかも知れない、けど、
ゆーくんに嫌われたくないなぁ、…ゆーくん………
コンコン、
誰だろ、箒ちゃんはノックの後に声かけてくれるから違うし、
「束、私だここを開けてくれ」
ちーちゃん?心配して来てくれたのかな、でも今は誰にも会いたくない、だから
「ちーちゃん、来てくれてありがと、けど、ごめんね今は誰にも会いたくないんだ、」
「……はぁ、重症だな、束、悠夜さんが来ているから早く出てこい。」
何で!ゆーくんが来てるの
「ゆーくんにも会いたくないから帰って」
「何を駄々をこねているんだ、早くしろ」
「やだ、絶対に出ない」
「だ、そうですよ、悠夜さん」
ゆーくんがそこにいるの!
ドンドン、
「オイ、こら、とっとと出てきやがれ、そして学校に来い、おまえが学校に来ないせいで俺がやたら注目されてんだよ、胃がヤベェんだよ、ストレスが溜まってマッハなんだ、」
「怒ってないの?」
「何にだよ、いや、ストレスが溜まってることに関してはイラついてるが」
「……ウサ耳を壊したこと」
「何だ、おまえが壊したのか?雰囲気的に変態がやったのかと思ってたんだが」
「でも、壊したのにはかわりないよ」
「あぁ〜、もうどっちでもいいから一回出て来いや」
「………やだ」
ブチッ、
「あぁ、そうかいならいい、おまえは動かなくても」
やっと帰ってくれ
「引きずり出すから」
え?
「おらぁ!」
バッキィ!ガラガラ、
「おし、開いたな」
「これは開いたって言わないよ!?壊したって言うんだよ!?」
「なんだ、元気じゃねぇかよ、つか足いってぇ、ドア硬すぎだろ」
人に散々天災だなんだって言ってやってることはあんまり変わらない気がする、
「あぁ、ウサ耳マジで壊れてんのな、まぁ壊れたもんはしゃーないだろ」
「っ!でもゆーくんが初めてくれた物なのに、壊し、ちゃった、」
壊れた日に一回見られてたけどあらためて言われると泣きそうになる、
「大切にして、たの、に、壊し、ちゃったぁ、ごめんね、ゆーくん」
ダメだな、泣きそうなのガマン出来そうにないや、
「はぁ、お前らマジで似過ぎ、類友ってマジなんだなぁ、まぁいいや、ほれ、これやるからテンションを元に戻せ」
と言ってゆーくんが持っていた袋の中から何かを取り出し投げてきた
「っ!これって」
投げ渡された物を見てみたら、新しいちょっと形の変わったウサ耳だった。
「ウサ耳だが?他の何に見えるよ?」
「私、壊しちゃったのにまたくれるの?」
「自分から破壊したなら流石にやらんが今回は不可抗力だからなぁ、」
「それに、お前が学校来ないといつまでたっても俺が見られ続けるんだよ、だからそれ付けてとっとと学校に来い」
と言って私の頭に新しいウサ耳を付けてぽんぽんと頭を撫でてくれた、
ゆーくんはいつもこうだ、普段はめんどくさがって何にもしようとしないのに、本当にしてほしいことには敏感で助けてくれる、
ずるいなぁ、本当に、
だから私は、
「ゆーくん」
「何だよ?」
「ありがとう」
この人のことが大好きだ。