リンゴーン、リンゴーン
海の見渡せる場所にある純白の教会で俺はやっと掴んだ平穏とこれから共に歩んで行くパートナーを待っていた、思えばここに来るまでとても長かった、それでも俺は今こうしていられることを考えればそれもいい思い………出とは言えないが、これからは違う、俺はここから始めるんだ、新しい人生を!
考えている内に式つまり俺の結婚式が進み牧師が神に捧げる言葉を読み上げ、後は誓いのキスだけとなった、神よ、俺は今までおまえのことは黒いGくらいの認識だったが今この時からちゃんと神様として認識してやるよ。
「では誓いのキスを」
「「はい」」
俺はゆっくりと新婦達の方を向く、
………新婦『達』?
『さぁ、私と誓いのキスを!!』
な、なんで何人も相手がいるんだよ!しかも織斑が大人になったみたいな奴とかなんか見覚えある奴に全く見覚えない奴がいるし!
と、とにかく逃げ、
『ゆーくーん、結婚なら私としよ〜』
逃げようとした俺の前にウサ耳が大量に現れた、軽く百人はいるなぁ、
『さぁ、結婚、結婚』
そう言って何人もの花嫁と増殖したウサ耳が迫って来る、もうダメだ、誰か
「~~っっっ!?!?!?!?」
ガバッ、
「はぁ、はぁ、ゆ、夢か?」
朝からなんでこんな目に……神よ、おまえは今日から黒いG以下だ、もはやこれは履らねぇよ。……朝っぱらから体力をかなり消耗した俺は学校に着いてからソッコーで机に突っ伏した、
夢の中まで休めねぇとか、俺はどうしたらいいんだよ、と割と真剣に悩んでいるとその悩みの大半を占める奴らが寄ってきた。
「ゆーくん!おは」
スッパァン、
俺はこの時のために持って来ていたハリセンでウサ耳をおもいっきり叩いた、はぁ〜、少しスッキリした。
と俺が爽やかな笑顔を浮かべるているとウサ耳が文句を言ってきた、
「ゆーくん!なんでいきなり叩くの!?束さん今日はまだなにもしてないよ〜!」
「確かに今日はいきなり過ぎませんか?」
『まだ』なのかよ……
「うっせぇ、俺の安眠を悪夢に変えた罰だよ」
「?、なんのこと?」
「どういうことです?」
と聞いてきたので仕方なく俺が朝見た悪夢を話した。
「そ、それは……」
「ゆーくん!いくらなんでもそれはひどいよ!束さん何にもしてないのに叩かれたことになるよ〜!」
と織斑は若干顔を引き攣らせながら、ウサ耳バカはプリプリ怒りながら言ってきた、
まぁ、確かにさっきのは理不尽だったかな、
「あ〜、悪かった、悪かった、さっきのは確かに理不尽すぎたな」
「ダメだよ!束さん何にもしてないのに叩かれたたんだから、何かお詫びしてもらわないと!」
怒っていたのが嘘のように今度はニコニコしながらお詫びを求めてきた、めんどくせぇ、
「お詫びって何だよ?」
「うーん、今は思いつかないから保留だよ〜」
なんか更に厄介事の予感がするな、くそぅ、衝動のままに叩くんじゃなかったなぁ、
「あ、あの」
「あん?どうした?織斑」
さっきまで黙っていた織斑が急に話し掛けてきた、どうしたんだ?
「ど、どうでしたか?」
「何がだよ?つかいい加減会話の主語抜くのやめろ、意味分からんから」
「その、私のウェディングドレス姿は」
「あぁそのことね、うん、普通に似合ってたぞ、てか元がいいから基本何でも似合うと思うが?」
「そ、そうですか、ありがとうございます///」
顔を赤くして織斑が礼を言ってきた、まぁ身近な異性にそんなん言われたら照れるか、自意識過剰じゃないならある程度好意を持たれてるみたいだしなぁ、
うっせぇよ、調子にのるなとか言うな、普通に考えてただ親しいだけの相手をわざわざ世界中巻き込んでまで同じ学校に入れようとするか?ウサ耳バカならしそうだが織斑は一応考え方は常識人だからな、多分そうなんじゃねぇの?違うなら違うでいいしな
こいつと付き合ったらそれこそ平穏なんて消え去りそうだから今のところ全くそんな考えはねぇが、後々どうなるかは知らん、
「あ〜!ちーちゃんずるい〜、ゆーくん!ゆーくん!私は!私は!」
「うるせぇよ、似合ってたが百人規模で来られたらただの悪夢だよ、」
「わ〜い、ゆーくんに褒められた〜♪」
後半の言葉は無視かよ……やたら嬉しそうだがコイツのことだからさっきのお詫びは忘れてないんだろうなぁ、
「ゆーくんには何して貰おうかな〜♪」
やっぱり、めんどくせぇなぁ、さて、そろそろめんどくせぇ、授業が始まるなぁ、理論とかはこのバカみたいに分厚い参考書を読んどけば分かるんだが………読む気にならんな、よし、寝よう、今朝の悪夢のせいでろくに寝られなかったからなぁ、もう限界だ、おやすみ〜、
二人を自分の席に戻して俺は机に突っ伏して寝た。
「……く…くん……みなづ……水無月君!」
「はい」
おぉう、びっくりした〜、急にでかい声だすなよな、ん?全然そんな風に見えないって?……あれだよ、こんなことでビビってたら屋上で寝てたらいきなりダイビングして来るウサ耳バカに対処できねぇからな、要するに慣れだ慣れ、
「あの、今までのところで分からないところはありますか?分からないなら言ってくださいね」
「はい、分かりました、ありがとうございます」
何だそのことかよ、教師も大変だな、いちいち生徒のことを気にしないとダメ何だから、
その後の授業を一応真面目に受けて休み時間になった、
「ゆーくん、ISについての参考書ちゃんと読んだの?」
「あん?んなもん読む筈ねぇだろ、めんどくさい」
「え?あんなに自信満々に返事をしていたのに全く分かってなかったんですか?」
「いや、だって全部分からないなんて言ったら先生かわいそうだろ?」
「何ですかその微妙な優しさは……」
織斑が疲れたように言ってきたがそんなもん知るか、俺の勝手だろうが、それよりもだ、
「おまえら、休み時間の度にこっち来んの止めろ、目立つだろうが」
「えぇ〜、嫌だよ〜、だってゆーくんといると誰も寄って来ないし、楽しいもん!」
「まぁ、そういうことです、騒がれるのはあまり好きではないので」
諦めて下さいと言ってきやがった、そりゃ入学初日にあんなことをした学園で二人しかいない男の一人とISを開発した天災で人当たり、というよりも他人に興味を全く示さないウサ耳バカにISが広まる原因となった英雄ってことになってる織斑の三人が揃っててここに話しかけて来ようとする猛者はよっぽど度胸があるやつか、
「束、千冬また同じ学校だな、とりあえず三年間よろしくな!」
空気の読めないバカぐらいだろう、こいつみたいな……な、
うっわ、織斑と篠ノ之顔が筆舌しがたい表情になってる、関わりたくないなぁ、
「片時君って織斑さん達の知り合いなの?」
変態の後ろにハーメルンの笛吹よろしくついて来ていた女子の一人が変態に質問した……嫌な予感がするなぁ、
「まぁな、幼稚園からずっと一緒で家も近いからな、所謂幼なじみってやつかな」
変態がキザったらしい、態度でそういうと周りは黄色い声をあげた……今のうちにっと、
「すごーい!美男美女の幼なじみなんて、小説みたい!」
「じゃあじゃあ、片時君も専用機持ってるの?織斑さんは篠ノ之さんに作ってもらって持ってるんだし」
「いや、『まだ』持ってないよ」
「まだってことは持つ予定があるの!」
「それは、ほら、束次第かな」
また歓声、そして変態が喋り周りが騒ぐ度に天災達から瘴気のようなものが膨らんでいく、そろそろまずいなぁ、よし後少し!
「篠ノ之さん!実際のところどうなの?もう作ってたりするのかな?」
「………」
「え、えっと、篠ノ之さん?」
「ははは、相変わらずだな束は、ごめんね、束は興味が沸いた人としか話そうとしないから、なぁ、千冬?」
「………」
うわぁ、織斑まで黙ってるよ、周りに人がいるのにあんな態度を取るってことは相当きてるな〜、さてと包囲網からも抜け出せたしやたら遠くにある男子トイレに行ってチャイムがなるまで時間を潰しますかねぇ、
トイレから戻って来た俺が見たのは、教室の床で頭にたんこぶを作って気絶している変態と真剣を持ってものすごく怖い顔をしている織斑にとてつもなく冷たい目をしながら、俺から奪っていつも付けていた今は壊れたウサ耳を大事そうに抱えている篠ノ之、呆然とそれを見るギャラリー達だった。
……一体何があったんだよこれ、
あ、織斑、銃刀法違反だぞ、それ。