前回ウサ耳天災と斬軼天災の策略にのせいで平穏という字が絶縁状をたたき付けて去って行くのを幻視した、
世界で初めての男性IS装着者という全力で遠慮して拒否して突き返したい肩書を押し付けられた男こと、水無月 悠夜だ
……このくだりも久しぶりのような気がするなぁ、
ん?そんなことどうでもいい?どうせまた現実逃避だろ?いい加減諦めろ?もうそんな平穏なんて夢捨てちまえ(笑)?
……最後の奴ちょっとこいや、体の原型が分からなくなるまでボッコボコにしてやるから、逃げるなよ?
んん!すまんな、少し本音が出たようだ、聞き流してやってくれ、だが!俺は絶対に俺の夢をあきらめねぇからな!
……分かってるよ、こんな状況で平穏なんて夢のまた夢だってことぐらいな、でもな、これくらいの支えがねぇと俺は多分いろいろと折れちまうんだよ、心とか
……あぁ、今回の現実逃避は長いと俺も思うよ?思うけどな、仕方ないんだよ、ISが男なのに動かせたからそのせいで世界中から調査協力……ようするにモルモットになれ!って感じの依頼が多量にきた。
そんなもん絶対にやる筈がないが正直俺という存在はもはや誘拐や拉致をしてでも手に入れる価値がある、
女性しか使えない筈のISを使える男、もしその男を調べてISが何故女性にしか使えないのか……ISとは何なのか?という疑問を他国よりも先に解決したらそれだけでその国は世界のトップに立てるかもしれない、
そんな鍵を握っている存在だ、人の倫理なんてものはその魅力の前ではゴミ以下のものでしかない、
だから俺の取れる道は少ない、一つはモルモットとしていつ死ぬか分からない生活をすること、
一つは逃げること、
一つはどこかの国に庇護を求めてその見返りに死なない程度の実験に協力すること、
一つはウサ耳バカに頼んで俺に干渉しないよう世界を脅すこと、
一つ目は死にたくないから当然却下だ、
二つ目は世界中の国から逃げるとかあのウサ耳バカをもってしてもムリ……あいつならやりそうだな…まぁ俺にはムリだ、
三つ目はやっぱり誘拐とかの危険があるから却下、
四つ目はそれこそ世界中から狙われるわ、ISを作った篠ノ之に言うことを聞かせられる存在としてな……それ以前にあのウサ耳バカに貸しを作るとかありえねぇよ、何言われるか分かったもんじゃねぇ、
で、普通なら此処で手詰まりなんだが、ここには都合のいいものがある、世界中の国から独立し世界中の国が手を出すことのできない砦にして俺にとっての天災という災厄が待ち構える牢獄、そこは……
「はじめまして、どこかの天災達のせいで人生の選択肢を奪われてこのIS学園に通うことにされました、水無月 悠夜です、なんで本来高二なのに高一からスタートなのか原因は分かっていますが納得は出来ていませんがどうぞよろしくしなくてもいいのでそっとしておいて下さい。」
そう、IS学園だ、此処ならとりあえずの安全は保証されている……安心はかけらも出来ないがなぁ、
と、一息でまくし立てた俺にポカンとした表情を浮かべている女子達とさっきからずっとこっちに笑顔で手を振っているウサ耳バカ、俺の態度に苦笑している斬鉄ブラコン、そして心底めんどくさそうな顔をしている俺と困惑している教師といった何とも微妙な空間に俺はいた。
少しして正気に戻った女子達が息を目一杯吸い込んでいる、
やばい、とりあえず耳を塞いでっと、
「「「「「きゃ〜〜〜!!」」」」」
うるせぇ〜!何だよこのテンションは!男がそんなに珍しいかよ、はぁ〜、マジで帰りたい。
「男子、ほんとに男子だ!」
「しかも年上!髪長い!」
「でも、ルックスだけなら隣のクラスの男の子の方がいいな」
「いやいや、こっちのお兄さんの方が落ち着いてるよ!」
……もうやだ、この学校、入学して一日で辞めたくなったのは初めてだよ、天災達が入って来て辞めたくなったのはよくあったがな……
その後教師がめちゃくちゃ頑張って生徒を静めていた。
で、何やかんや騒ぎつつ昼休みになった、
「やぁやぁ!ゆーくん!また同じがっこ」
ガッツン!
「〜〜っ!?!?」
「ゆ、悠夜さん?急にどうし」
ガッツン!
「〜〜っ!?!?」
ふぅ、これで少し溜飲が下がったな、
「「な、何する(の!ゆーくん)(んですか!悠夜さん)」」
ゲンコツが本気で痛かったのか篠ノ之だけでなく織斑まで半泣きで文句を言ってくる、が
「なんで殴られたか本当に分からないか?」
と、俺がとてもイイ笑顔で言うのを見て二人は目を逸らした。
「なんでだろ〜、束さんにはわから、嘘ですごめんなさい、謝るからその振り上げてる手を下ろして〜」
相当さっきのが痛かったのか半泣きで真面目に謝ってくる、
「ちょ、ちょっと待って下さい、実行犯は束なのになんで私まで殴られてるんですか?」
ウサ耳がちーちゃんひど〜いとか言ってるが無視して質問に答える、
「まぁ、そうだな、確かに実行犯はこのウサ耳だ、……だが」
途中まではその通りだと頷いていた織斑だが最後の言葉に首を捻っている。
「お前、こいつを止めようとしなかっただろ?」
「暴走した束を止められなかったんです、」
「ほぉ、そうかそうか、『止められなかった』てことは止めようとしたと、」
「……はい」
目を逸らして若干歯切れ悪そうに答える織斑、
「ところで、そこのウサ耳に聞いたんだが、このバカは最初普通に家で俺にISを触らしてそれを録画して世界中に流すつもりだったらしい」
「そ、そうなんですか」
織斑がうっすらと汗をかき始めた、ウサ耳がバカじゃないよ〜とか言ってくるから少し音のおかしいデコピンで沈めた(誤字に非ず)
「だが、それでは効果が薄いし最悪、悪ふざけだと思われるから、人通りの多いところで見せつけた方がいいと、提案した奴がいたそうだ」
「………」
「何か言うことは?」
「すみませんでした」
「最初からそう言っとけ」
観念した織斑を謝らせて周りを見てみると俺の行動にビビったのか女子達が遠巻きにこっちを窺っていた。
よしよし、上手くいったなウサ耳バカ達に罰を与えるついでに周りに対する牽制にもなったな、
満足そうな俺を見て周りを見回し俺の考えに気付いた織斑が聞いてきた。
「……悠夜さん、もしかしてこの為に叩きましたか?」
「それもあるが主な理由はさっき言ったやつだ」
俺の言葉に顔を引き攣らせていた織斑がため息をついた、ため息をつきたいのは俺の方だよ。
「相変わらず、容赦がありませんね」
「知るか、そもそもお前らがあんなことしなけりゃこんなことにはならなかったんだよ」
「とりあえず、これから三年間よろしくお願いします」
「話しをきけや、こら、何スルーしてんだよ」
はぁ、もういいや、チョップチャプスでも食べよう。
カサッ、パクッ、カリコリ
「……それは食べてもいいんですか?」
「ここに入学する時にいくつか条件を付けたからな、問題ねぇ」
「それを食べる為にわざわざ?」
「まぁ、他にも理由があるけどな」
呆れたような顔をして見てくる織斑と復活したウサ耳に聞きたかったことを聞く
「そぉいえば、なんか俺以外にも男の奴がいるんだって?さっき女子が言ってたが」
そうなのだ、こいつらを叩いて牽制したのもあるが半分くらいの女子は隣のクラスに行っている、俺以外の奴を見に、そのおかげでまだこうしてゆったりしていられるのだ。が聞いた途端二人は顔をこれでもかと言うくらいに歪ませた、どうしたんだ?
「おい、どうした?」
聞いても返事をせずに顔を歪ませたままだ、何なんだよ、また厄介事か?もういいよ、せっかく俺以外の犠牲者だから仲良くなれるかと思ったらこいつらが顔を歪ませる程のめんどくせぇ奴かよ、
あん?なんでもう一人の男でISを使える奴が分かったのか?だって?……あれだよ、一人いたなら他にも居るんじゃないかって世界中で希望した男のIS適正を調べたらしい、普通ならそんなことする筈がないが俺という事例が見つかったためにやることになったらしい、
で見つからないと思っていた二人目が見つかってこの学園に入ることになったんだと、俺は自分の交渉と準備のせいでろくにテレビも見れてなかったからここに来て初めて知ったってことだ、説明が長くなったな、まぁいいか。
「……悠夜さんも知っている奴です」
「はっ?俺の知り合いかよ、誰だ?自慢じゃないが俺の交友関係は特殊だから知り合いだったら分かる筈だぞ」
「……なんであんなのが私のISに、訳分かんない、気持ち悪い」ぶつぶつ
おいおい、ウサ耳が此処まで嫌う奴って……コイツは基本他人に無関心だから、此処まで表に出して嫌ってるのは逆に珍しいな、
「なぁ、結局誰なんだ?」
「……髪の色は銀でオッドアイです」
銀髪でオッドアイの俺が知ってる奴ねぇ、んで女子のさっきの話を信じるならルックスがいい、つまりイケメンと………
………よりによってあの変態かよ、いっそ逃げた方がまだ平穏がありそうじゃねぇかよ、どうなってんだよ俺の人生よ。
その日の後の授業を凄まじく低いテンションで受けてとりあえず、自分の家に帰った、普通は寮に入らなければいけないが、ウサ耳の知り合いとして交渉して一々許可を取らなくても家に帰れるようにした、まぁなるべく寮にいるように言われているが今日くらいは勘弁してくれ、憑かれたんだいろいろと……
……後の学園生活を考えて絶望しながら眠りについた、せめて夢の中くらい平穏に暮らせることを切実に祈りながら。