刀剣男子ってなんぞや?   作:甚三紅

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今回は特に勘違いはないです。そして短い。
前半の本編はほのぼのまったり回。
おまけは殺伐NETORIネタ。
特に後半は苦手な方は見ないようお気をつけ下さい。




本日の任務は遠征でーす。何と何と、戦いはなくて見回りが仕事なんだってさ!やったね!

実は本丸と合戦場以外って初めてだからちょっとわくわくだよ!…あれ、なんかしょっぱいなぁ…何でだろ…。

ま、まぁそれはいいとして!行き帰りはゲート的なものを使うけど、数日かけて見回りしたり資源を探したりするんだってさ。資源調達用の資金もある。

メンバーは私の他に真っ白あんちゃんと眼帯スーツにガングロ学生服だ。魔王様とは別行動だよ、ひゃっほう!

そういえば、遠征先では私達の姿は違和感なく受け入れられるようになってるんだってさ。まぁ確かに格好バラバラだからね。腐っても神がつくだけあるのかな?

 

遠征の準備をしてワクドキしながらゲートを潜る。

その先にあったのは綺麗な青空と緑の山々、街道は賑やかで人通りも多い。その人達の格好は着物だ、時代は昔らしい。

空気は私が知ってるものより澄んでて、何だろ…元気が溢れてる感じだ。

 

「そう言や大典太は初めての遠征か。驚いたろ」

 

目の前の光景をつい見てると真っ白あんちゃんに声をかけられた。

うんうん、すっごい驚いた!昔ってこんな風になってたんだね、ちょっと感動かもしれない。

 

とりあえず旅籠ってとこに行くから、て移動する事になった。

うわ、平和にのんびり歩くのって本丸以外初めてだよ。空気がのんびりしてて、こう…ちょっと癒されるかも。

 

暫く歩いてて気になった事が出てきた。

…あのさ、この集団って顔面偏差値高くね?

擦れ違う女の子とかがすっごい見てくるんだけど。

や、最初鏡見た時は自分の美形っぷりに驚いたよ?でもさ、面「だけ!」なら本っ当に腹立つくらい極上な魔王様を毎日見てるせいかそこまででもないかなー…て思ってたよ。

つーか美形ばっかで完全に感覚麻痺してた。

え、何、もしかして顔が良くないと刀剣男子になれないの?顔判断基準なの?

…何か恐ろしい事に気づいた気がするけどまぁいいや。

 

町?街?に入ったら更に活気があるね、うわ凄い。わいわいと楽しそうな感じだ。

お、眼帯スーツと真っ白あんちゃんが声かけられてる。誘われまくりで…逆ナンだあれ!

あー、確かにこの面子ならあの二人が声かけ易いよね。真っ白あんちゃんは薄幸の美少年タイプだし眼帯スーツは表情柔らかいし。…まぁ真っ白あんちゃんの中身は悪戯好きな元気爺だけど。

 

二人が逆ナンされてる最中だから暇になって辺りを見渡す。

何か縁日に似た雰囲気感じるなー、それともここが特別なのかなー。

とかぼんやりしてたら眼帯スーツに声かけられた。

 

「君って意外と容赦ないんだね…。行こうか」

 

…何が?

あ、それより行くんだね。ぼんやりしててごめんごめん。

 

その後は特に問題なく旅籠に到着。

手続きやら何やらは眼帯スーツがしてた。流石みんなのおかん!

部屋は一部屋で雑魚寝、食事は普通にしたし…あ、何か軽く旅行みたいだ。ちょっと楽しいな。

いつもは魔王様とか魔王様とか魔王様とか魔王様にストレスマッハだから凄い開放感だ。

 

その日は夜までゆっくり休んで、夜に軽く見回りをした。

私が初参加だから流石に色々教えて貰ったよ。勿論おかんに。

同じ場所に何日か泊まって資源集めたり見回りしたり、息抜きにちょっと買い物したりして楽しい。見回りもいつもに比べれば気楽なもんだ。

実は給料なんてもの貰ってるから個人的な事にもお金を使える。審神者ちゃんってば素敵だね!

そうそう、真っ白あんちゃんにやたら絡まれたけど害は特にないし何気に物知りだし退屈はしない。暇潰しの名人?

あ、この紅、審神者ちゃんに似合いそう。王子には根付けかな、いい感じに王子の目の色とお揃いだ。おっちゃーん!これちょーだい!

 

さて、特に波乱もなくすご~く平和に遠征終了!こういう任務なら喜んでー!内番も好きだけどね。ただし手合わせは除く。

はぁ、これから帰る方が気が重いなぁ。誰がとは言わないけど。

審神者ちゃんと王子、お土産喜んでくれるかな?

よし、それを楽しみに帰ろう!

…魔王様には…その辺の雑草…いやいや、可憐な花でいいや。

何で魔王様にも持って帰るのかって?や、だって魔王様にも何か持って帰らないと大変だ、て何か受信したんだよ!!

 

 

審神者ちゃんと王子、お土産を凄く喜んでくれた。審神者ちゃんは満面の笑みで、王子はちょっと照れた風にありがとう、て言ってくれたよ。

やっぱり喜んで貰えると嬉しいね!

…魔王様も喜んでくれたよ、可憐な花だけなのに。丁寧に押し花にしたらしくて流石に罪悪感が…。

あの、えーと…次があればちゃんとしたの持ってくるから。

ご、ごめんね?

 

 

 

- - - - - -

 

 

 

大倶利伽羅は今回の遠征に少しばかり緊張していた。

何故ならば別格とでも言うべき大典太光世と同じ部隊で出る事になったからだ。

それこそ独りで何もかもをこなしてしまえる大典太光世に大倶利伽羅は少なくない憧れに似た気持ちを持っていた。故に馴れ合いは嫌いでも今回の遠征は悪くはないと思っている。

まぁ、若干二名ほど余計なものもついているが。

 

ゲートをくぐり抜けた先、何度も遠征に赴いている者ならば見慣れた風景。

それが目の前に広がると大典太光世が足を止める。様子を伺い見れば何やら感動している風であった。

思えば大典太光世が顕現して初めての穏やかな外である、と大倶利伽羅は気が付く。そして何事にも心を動かさないと思っていた大典太光世の様子を意外に思った。

この男でも心を動かすのか、と、意外に思うのと同時に大典太光世の事を少しばかり身近に感じた。

 

野晒しでは刀が劣化する為、宿をとれる時はとるのが常である。今回は数日かけての遠征である事もあり宿をとる事になっている。

日が暮れてしまう前にと早速移動する事になった。その最中、普段よりも視線を感じて大倶利伽羅は眉を寄せる。

原因は十中八九大典太光世であろう。

研ぎ澄まされた刃の氷のような雰囲気に皆、畏れを抱き惹かれているのだ。女子以外、それこそ手練れの武士らしき人物からも視線を集めているのがその証拠だ。

原因に思い至ると大倶利伽羅は深く納得し足を進める事にした。

 

移動中は勿論の事、旅籠街についてからの女子の視線に大倶利伽羅はまたかと溜め息を吐く。

見目の良さは自覚しているが、正直鬱陶しくて仕方がなかった。

愛想の欠片もない自分はともかく鶴丸国永と燭台切光忠はよく捕まる。いつもならば上手い事流すのだが…近づきがたい大典太光世の雰囲気を突破してきた女子が相手の今回は勝手が違うらしい。二人がいくら柔らかく追い返そうとしても食いついてきて離さない。おまけに自分にまで獲物を狩るような目を向けてきた。

肉食系の猛獣か、と思わずには居られなかった。

挙げ句の果てには大典太光世にまでちょっかいを出し始めたが…彼は反応などまるでせず街の方ばかりを興味深そうに見ている。どうやら女子には道端に落ちている石程も興味がないらしい。

何とかして大典太光世の視界に入ろうと頑張る女子も居たが、最初から居ない者のように扱われ女子達はすごすごと離れていった。

 

他者に優しいと思っていた大典太光世のその態度に三者とも驚きを隠せない。特に主…女性に対してはフェミニストであるから余計に。

少なくともへし切長谷部のような主至上主義という訳ではない、何やら彼なりの基準でもあるのだろうか。

 

四人は旅籠に着き手続きを済ませて部屋に入る。その後の夕食も、大典太光世にとっては初めてであろう見回りも何の問題もなかった。

もっとも、大典太光世の優秀さを知っている三人は全く心配はしていなかったが。初回である為説明こそしたものの、大典太光世に限って何かある方が驚きである。

 

今回の遠征は幸運な事に戦いもなく穏やかに過ぎていく。

大倶利伽羅はその中でも、鶴丸国永がこの機会にひたすらに大典太光世を驚かそうとあの手この手を使っても悉く空振りに終わるのを見るのが面白かった。

燭台切光忠が二人のやり取りを見て笑顔で

 

「あれで懲りてくれたらいいのにね」

 

と言ってきた事には大倶利伽羅も正直に頷いた。

 

数日一緒に居れば大典太光世の色々な事も見えてくる。

初日の肉食獣のような女子以外には穏やかに接する事から、ああいった者が苦手である事。

さり気なく困っている者を助ける事が多く、その気質によく惚れ込まれる事。

店を眺める雰囲気がどこか楽しげで、好奇心が意外に旺盛である事。

近づきがたいと思っていた大典太光世を身近に感じれば感じる程、その事が大倶利伽羅は嬉しく感じた。

 

予定の日数を消化し、資源も十分に仕入れ遠征は穏やかに幕を閉じる。

ゲートで本丸に帰ると大典太光世は出迎えた者の中で三日月宗近に最初に土産らしき花を渡した。思わぬ物に三日月宗近は驚き目を開く。

次いで主、山姥切国広に土産を渡すと寡黙な彼の刀は早々に自室へと引き上げていった。

遠征部隊の者も引き上げようとした時に、三日月宗近への土産を見たらしい主が声を上げる。

 

「あ、オオイヌノフグリだ。あはは!大典太らしいなぁ」

「…?主よ、大典太らしいとは?」

「花言葉ってあるでしょ、オオイヌノフグリの花言葉は…この場合だと『信頼』かな」

「…やれやれ、どうにもこそばゆいな」

 

擽ったそうに笑う三日月宗近を見て大倶利伽羅は目を瞬かせる。

今見たのは目の錯覚か?

しかしながら燭台切光忠も鶴丸国永も、果ては山姥切国広まで物凄い顔をして三日月宗近を見ているのでどうやら錯覚ではないらしい。

平然としているのは主くらいだ。流石審神者だけあると妙な所で感心する。

その後に普段と変わらぬ笑みを向けられ、背筋を凍らせた遠征部隊は早々にお暇する事にした。

 

 

 

- - - - - -

 

 

 

おまけ

 

※注意※

NETORIネタ。

大好物なアンチネタ満載の為、苦手な方は回れ右。アンチされるのはNETORIする方です。

大典太光世にいつものゆるゆるダルダルがありません。

 

OK?

 

 

 

「えっと、初めまして!見習い審神者の○○です!」

 

突然やってきた新しい審神者ちゃん。ベテラン審神者ちゃん…あ、私達の主な審神者ちゃんの事ね…のとこで研修する為に来たんだって。

大広間で皆の前で挨拶する姿は礼儀正しいし、見た目清楚系で美人だ。

でも…何だろ…果てしなく、こう…女の子に言っちゃいけない言葉だけど…気持ち悪い。

彼女が来てから体の中を滅茶苦茶にかき混ぜられてるみたいで正直不快だ。

あー…これが霊力ってやつ?たま~に聞く言葉だったけど初めて実感したよ。

気持ち悪さから段々不機嫌になってくのが分かったんだろうね、魔王様が私の前に出て新米ちゃんに挨拶をした。

うぅ…ごめん、でも本当無理。吐きそう。

限界になった私はさっさと広間から出ていかせて貰った。

 

その次の日から研修が開始された訳だけど…新米ちゃんは何で私につきまとうの?面なら魔王様の方がいいじゃん。つーか君が側に居ると気持ち悪くて具合悪くなるんだよ。

女の子相手に手は上げないけど正直勘弁して欲しい。気持ち悪くて仕方なくてキレそうだ。

まぁ、そうなる前に王子とか魔王様の待ったが入るけど。

しかし、まさか魔王様に感謝する日がくるとは…でもありがとう、女の子は守るものだからね。可能な限り大切にしないと。

にしてもきつい…。

 

新米ちゃんは私につきまとう他にも皆にちょっかいをかけているらしい。ちみっこ達と頑張って遊ぼうとしてる姿とか、えーと…大人連中?にさり気なーくタッチしてる姿とか、よく見かける。

おいおい、研修は?うちの審神者ちゃんは優秀だし面倒見いいし研修先としちゃ破格だよ?

 

まぁそんなこんなで研修期間の一ヶ月が終わろうとした時の事。

やっと苦しい期間が終わるーってほっとしてた時だ。新米ちゃんに呼ばれて庭にやってきた。

うえー…私君嫌いだな。でも可能な限りは女の子には優しくしたいから仕方なく来たけど。

庭にて新米ちゃんと向かい合う。そしてゆっくりと新米ちゃんが口を開いた。

 

「大典太光世様、あなた様ほどの方にこの本丸は相応しくありません。私ならここの方より霊力も多く質も良い、必ずやあなた様を満足させてみせます」

 

自信満々に言い切る新米ちゃん。

あー…ごめん、具合悪くて君の話半分も分かんない。

 

「ここの刀達は私の魅力に気づかない鈍ばかりですが…あなた様は違いますよね?」

 

でも、皆の悪口を言われたのだけは分かった。

あ、ヤバいな。

と思った時には既に遅くて、気がついたら刀を抜いてた。

けど…目の前にはいつの間にか来てたらしい顔を歪めた魔王様。どうやら私の刀を自分の刀で受け止めてくれたらしい。

 

「こやつはお前が斬る価値もない、鎮まれ。荒御魂になるつもりか」

 

荒御魂って何?

まぁいいや、魔王様本当にありがとう。危うく女の子を斬っちゃうとこだった。

ほっとしつつ、背筋を震わせて後は魔王様に任せる。

無理、もー無理、審神者ちゃ~ん、癒してー…。

 

 

 

- - - - - -

 

 

 

大典太光世が去ると三日月宗近は新米の審神者へと振り返る。

何を期待しているのか理解したくないが…三日月宗近は彼女のその期待に満ちた笑顔が鼻についた。

 

新米の審神者は初見では極普通の女子のようであった。礼儀正しくハキハキと喋り、明るい笑顔は確かに愛らしい。

しかしながらその初見で大典太光世が尋常でない程の殺気を彼女に叩きつけようとしたのだ。

人死にが出ると咄嗟に三日月宗近はその殺気を遮ったが、大典太光世が何かを感じ取ったのは一目瞭然である。

何だかんだと礼儀正しい筈の大典太光世が早々に中座し、彼に続くように石切丸と太郎太刀が広間を出ていく。

石切丸だけは一応フォローを入れていたが、あまり意味をなさない言葉の類であった。

 

目の前のこれは良くないものか。

 

霊刀である三振りの様子に三日月宗近以外もそれを感じ取り、広間に揃った刀剣男士達は新米の審神者に対し一気に警戒する事となる。

そしてやはり、この本丸にとって彼女はよくないものであった。

 

新米の審神者は最初は真面目に研修を受けていた。

しかしながら、段々とその本性を表し始める。

短刀達を遊びや菓子などでつろうとし、体の出来上がっている男に対しては女の武器を使い媚びを売る。

更には彼女の霊力は絶望的に自分達とは相容れない。

霊力の影響を受けすぎる霊刀の三振りは連日具合いが悪そうで、特に新米審神者につきまとわれている大典太光世は常の無表情が崩れる程に苛立っている。

下手をしたら今にも手を上げそうであるが、その度に山姥切国広や三日月宗近が大典太光世を止めた。

勿論新米の為ではない。女子を大切にしたい大典太光世を落ち込ませない為である、でなければ誰が止めるかと二人は思う。

 

主である審神者の女性は政府に逆らいきれず、すまないと刀達に頭を下げる。

主は悪くないのだからと彼女を慰めるのは短刀達の役目となった。

 

苦渋に満ちた日々がようやっと終わる頃となり、皆がほうと安堵に胸を撫で下ろす。

だがここでも新米審神者がやらかしてくれた。

この一月、疲れ苛立ち限界に近かった大典太光世に新米審神者は爆弾を落としたのだ。

心配になり二人の後を追った三日月宗近は驚く暇もなく二人の間に入る。今人を斬れば、大典太光世は荒御魂になると焦りながら。

初動は押さえられなかったが、何とか己の刀で大典太光世の刀を受け止める事が出来た。が、その一撃は刃こぼれしそうな程に重く受け止めた手が痺れる。

自然と三日月宗近の顔が歪んだ。

 

自分の一撃を止めてくれた事に、大典太光世は心底安堵したようだった。ゆっくりと刀が引かれ、疲れた様子で庭を去る。

その様子に三日月宗近は心配を募らせたが、今はこちらが先だと新米の審神者に振り返る。

刀をその手に握ったまま。

 

「ああ…三日月宗近様はやはり違うのですね!あなた様ならば私の…「神々の住まう神域にて神隠しに会う…不幸よなぁ…」…え…?」

 

主も、大典太光世も辛かったろうに我慢していた。故に自分も我慢し他の者を抑えていた。

しかしながら我慢には限界がある。

地雷を悉くぶち抜いてくれた相手に加減は不要であろう。

 

なに、主にも大典太光世にも分からぬよう上手くやる。万事このじじいに任せておけ。

 

いっそ優しげな笑みを浮かべ三日月宗近は刀を構える。

白刃が月光にきらめいた。


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