人間不信な俺と隠れオタクな彼女の青春ラブコメ   作:幼馴染み最強伝説

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どこからどう見ても戸塚彩加は男に見えない

月が変わると体育の種目も変わる。

 

我が学校の体育は三クラス合同で、男子総勢六十名を二つの種目に分けて行う。

 

この間までやっていたのはバレーボールと陸上。今月からはテニスとサッカーだ。

 

俺も材木座もチームプレーより個人技に重きを置くファンタジスタ的存在なので、体育のサッカーでは寧ろチームに迷惑をかけるだろうと判断し、テニスを選んだ。………若干二名が執拗にサッカーに誘ってきたのはウザかったが、『今やると球技大会でジョーカーとしての効力を失うだろ』というちょっと厨二的な言い回しをしたら、これが予想外に通じ、球技大会まで俺の素晴らしいテクニックは封印される事となった。ミスディレクションは伊達じゃない。

 

今年はテニス希望者が多く、ジャンケンで負けたら説得の意味も無かったのだが、幸いにして、ジャンケンの強い俺は勝利、材木座は敗北し、サッカーへと振り分けられてしまった。余談だが、その若干二名もテニスの方に来た。お前らどんだけ俺の事好きなんだよ。

 

「ふぅ、八幡。我の『魔球』を披露してやれないのが残念でならん。お前がいないと我は一体誰とパス練習をすればいいのだ?」

 

最初こそ気丈に振舞っていた材木座だが、最後の方は完全に涙目でこちらに懇願するような視線を向けてきていたのが印象深い。そんなの俺が聞きてえよ。

 

そしてテニスの授業が始まる。

 

適当に準備運動をこなした後、体育教師の厚木から一通りレクチャーを受けた。

 

「うし、じゃあお前ら打ってみろや。二人一組で端と端に散れ」

 

そう厚木が言うと、皆が三々五々めいめいにペアを組んでコートの端と端に移動する。

 

なんでそんなすぐに対応できるんだよ。周り見渡すことなくペア組めるとかお前らノールックパスの達人かよ。

 

と、その時、俺のぼっちレーダーが高まるぼっち機運を察した。

 

だが案ずるなかれ。こういう時のために対策を……

 

「おーい、ヒキタニくーん!」

 

打つ前に軽そうな声が俺の背にかけられた。

 

染められた金髪に長い前髪をカチューシャで留めている見るからにチャラい風貌の男子。

 

その男子はテニスラケットとボールを片手にこちらに走ってくると人の良い笑顔で言う。

 

「ヒキタニくん。ペア組まね?」

 

俺の事をヒキタニと呼ぶこのチャラ男の名前は戸部翔。

 

俺の活躍した球技大会にて、葉山チームではなく、俺の方のチームにいた奴だ。

 

最初は葉山のいるチームに勝てるはずがないと意気消沈していたものの、チームプレーに見えるワンマンプレーによって、何故だかこいつの中では『ヒキタニくんは隼人くん並みにヤバい』となっているらしい。や、だからヒキタニくんて誰だよ。三回くらい訂正したのに聞く耳持たないから今は諦めた。

 

「葉山がいるだろ。あいつはどうした?」

 

「隼人くんは他の子と組んでるし、これを機にヒキタニくんと親交?深めようと思ってさぁ~」

 

戸部の言う通り、葉山は他の友人と組んでいた。

 

おそらく、あいつのことだ。戸部は俺と組む事に対して、嫌がるどころか嬉々として受け入れそうだから、自分は他のメンバーと組みつつ、戸部を俺に差し向けたに違いない。そしてあわよくば勧誘しようという魂胆か。頼むからいい加減に諦めてくれ。

 

「それにさ!ヒキタニくんて超運動神経いいじゃん?」

 

だから「じゃん?」じゃねえよ。知らねえよ。由比ヶ浜といい、お前らホントそれ好きだな。

 

「……俺、あんまり動き回るの嫌なんだが」

 

「だーいじょうぶ!俺、テニス初心者だけど、ヒキタニくんならいけんじゃね?」

 

「……………ん?それ俺動き回らなきゃいけないよね?人の話聞いてる?」

 

大丈夫な要素が一つもなかった。大丈夫は大丈夫でも「俺がミスしてもカバーしてくれるから大丈夫」的な意味合いの大丈夫だった。

 

「んじゃ、ヒキタニくん。ラリーしようぜ、ラリー」

 

「や、だから俺は………人の話聞けよ……」

 

こうして社会の嘆きの声は他ならぬ愚衆によって淘汰されるのだろうか。というか、本当に話を聞いてください。目立ちたくないし、動きたくないのに。

 

俺の意見も虚しく、戸部はラリーをおっ始めた。

 

初心者というだけはあり、三球に一球くらい明後日の方向に飛んでいく。

 

本来なら、それを無理に拾わずとも近くにいるやつに「ごっめーん☆そのボール取ってくんなーい?」と言えば一発なのだが、俺の場合、その行為の方が何倍も面倒な上にハードルが高い。戸部が言うなら話は別だが、俺が言うと空気も「あ、うん……」みたいな事になるからな。

 

仕方ないので、俺は無理して拾わなきゃならん。

 

その度に戸部が「うおっ!ヒキタニくんスゲー!」って言ってるのもうざい。そんなリアクション取ってたら、皆注目しちゃうでしょ?お前は俺のぼっちライフを潰したいの?もしかしたら、本当にそういう作戦なのかもしれない。

 

ーーとその時、飛んで来る球が『二つ』になった。

 

顔付近に飛んできた球を左手で受け止め、もう一つをラケットで受け止める。流石に受け止めながら、華麗に打ち返すなんてことは出来ない。俺は庭球のプリンスじゃないからな。

 

戸部の打ってきた球ではなく、もう一球の飛んできた方を見てみると、案の定というべきか、葉山隼人が柔かな表情を振りまきながら、こちらに歩いてきた。

 

「悪いな、比企谷。打ち損ねたら、偶々スライスしてね」

 

「偶々……ね」

 

狙ってやったんじゃないかと思った。

 

「それにしても凄い反応速度だったね。流石にぶつけたかと思ったよ」

 

「俺の自己防衛機能甘く見るな。なんなら、あと一球くらいならギリ避ける自信はある」

 

「何かものすごく微妙なラインだね」

 

俺も自分で言ってそう思った。一球だけなのかよと。

 

「次からは気をつけるよ」

 

「そうしろ」

 

じゃないと俺の超人的なスペックが俺の危機に反応して解放されちまうからな。その技術は最早宝具の域にまで達しているまである。プリンス達と良い勝負は………無理だね。超次元だから、あれ。

 

危惧したものの、先程の葉山のスライスを見ていた他の奴らは皆一様に葉山の所に行き、最終的には戸部も葉山の方に行ったので、図らずも俺の元には平穏な、ボーッとしているだけの体育の時間が帰ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休み。

 

いつもの俺の昼食スポットもとい特別棟一階の保健室横の購買の斜め後ろにあるスペースで昼飯を食っていた。位置関係で言えばテニスコートを眺める形になっている。

 

購買で買ったウインナーロールとツナおにぎり、ナポリタンロールをもぐもぐと食べる。

 

実に安らぐ。

 

ポンポンと一定のリズムで打たれる鼓のような音をBGMにボーッとする時間は至福の時間である。

 

昼休みの時間は女テニの子が自主練をしているようで、いつも壁に向かって、打っては返ってくる球をかいがいしく追い、打ち返している。ご苦労な事だ。さぞ、テニスが好きに違いない。

 

「あれ?八幡?」

 

「ホントだ、ヒッキーじゃん」

 

心地よい風向きに乗って、聞き慣れた声と最近聞き覚えた声がした。見れば、吹きつけてくる風にスカートを押さえた茜と由比ヶ浜がそこにいた。

 

「なんでこんなとこにいんの?」

 

「教室はうるさいからな。普段はここで飯食ってんだよ」

 

やー、ほんとうるさい。飯時くらい静かにしてくれませんかねぇ、ホント。

 

「八幡は騒がしいのは苦手だもんね」

 

「苦手っつーか、気に障る」

 

「そこまでなんだ⁉︎」

 

とかなんとか言いつつ、二人は良い感じに俺の両サイドに座った。

 

やだ、なにこれ。はたからみれば俺超リア充じゃね?茜は当然のことながら、由比ヶ浜も由比ヶ浜で頭の中はともかく見た目は良い方だ。そして両者ともにスタイルも良い。

 

「二人はなんでここにいるんだ?」

 

「あたしはゆきのんとのゲームでジャン負けして、罰ゲームの最中」

 

「私はそこで偶々結衣ちゃんと会ったから、私も奉仕部の部室で雪乃ちゃんと結衣ちゃんとご飯食べようかと思って」

 

そういう茜の腕には珍しくビニール袋がぶら下がっていた。

 

「珍しいな。茜が弁当じゃないのは」

 

「今日は寝坊しちゃって、時間が無かったから」

 

おそらくは深夜アニメ観てたんだろう。茜の寝坊の理由なんてそれぐらいしかない。割と真面目に。

 

「で、由比ヶ浜。罰ゲームっつーのは?」

 

まさかとは思うけど俺と話すことじゃないよね?会った当初の雪ノ下はともかくとして、今はそんな事はないだろう。そうであると信じたい。

 

「ジュース買ってくるってやつ。ゆきのん、最初は『自分の糧くらい自分で手に入れるわ。そんな行為でささやかな征服欲を満たして何が嬉しいの?』とか言って渋ってたんだけどね。『自信ないんだ?』って言ったら乗ってきた」

 

「あはは、雪乃ちゃんらしいね」

 

「だな」

 

「でさ、ゆきのん勝った瞬間、無言で小さくガッツポーズしてて……もうなんかすっごい可愛かった……」

 

ふうっと、由比ヶ浜は満足げな溜息をついた。え?なに?茜と雪ノ下もアレだけど、由比ヶ浜もそこに乱入?ゆるゆりしちゃうの?

 

「なんか、この罰ゲーム初めて楽しいって思った」

 

「罰ゲームに楽しいも何もないだろ」

 

「私はあるよ?八幡からの命令なら罰ゲームも嬉しいし、ね?」

 

や、『ね?』って言われてもなぁ………。罰ゲームは罰ゲームな気がするし。

 

ん?それはつまり何をしても良いって事ですか、茜さん。つまりあんな事やこんな事……

 

「ヒッキー、なんかやらしい顔してる」

 

「ばっか、してねえよ!何時だって俺の顔はキリッと引き締まってる」

 

「うーん、残念だけどさっきは鼻の下伸びてたよ、八幡。………もしかして、前の事思い出してた?」

 

「ッ⁉︎」

 

囁くように告げる茜。その言葉が意味するのは以前の風呂場での出来事だ。

 

その場の空気と勢い、そして溜め込まれた愛が暴走した末の結果であるが、全く後悔していない。なんなら、次はいつしよっかなーと考えるまである。

 

「?どしたの、ヒッキー。顔赤いよ?」

 

「なんでもない。なんでもないぞ。何かあるはずがない」

 

「うんうん。なんでもないよー」

 

そう言って茜は手にしていたビニール袋から昼食のあんぱんを取り出す。

 

まくしたてるように否定する俺とは裏腹に茜は余裕の表情だった。多分、恥ずかしい云々ではなく、別に知られてもいいと思っているからだろう。毎度の事ながら、茜の俺に対する好感度の高さは尋常ではない。や、ホント。ラノベのヒロインでもここまでの子はいないよ?

 

「う〜、なんか疎外感感じる……ゆきのんも茜ちゃんばっかだし……」

 

あいつ茜の事大好きだもんな。性格は正反対と言っても過言ではないのに、何故あそこまで仲良しなのか……多分茜のコミュ力の高さが雪ノ下の孤高さを上回ったんだろうな。ほら、孤高のぼっちだった俺と仲良くなれるくらいだし、仲良くなれないやつなんて本当にいないんじゃなかろうか。

 

「まぁ、仕方ないだろ。ぼっちは群れるのを嫌うが、逆に友達ができると大切にしすぎてもう友達の枠組み超えてね?ってなる。ソースは俺」

 

「どゆこと?」

 

「つまり、大好きなお菓子をいざという時の為に置いておこうって思ってたら、消費期限過ぎてたみたいな感じだよね」

 

「あ、それある!敢えてまた今度にしておこうって考えてたら、日が過ぎてるやつ!あれショックだよね〜」

 

水を差すのは悪いので言わないが、俺は食べたいと思ったら、その時既に行動は終わっているタイプなので、そういう事はないが、女子は割とそういうことがあるらしい。

 

「そういえばさ、茜ちゃんとゆきのんって何時知り合ったの?」

 

「うん?最初に話したのは入試の時かな?本格的に話し始めたのは中間テストの時だったんだけど、同率一位だったから興味がわいたらしくて、ちょっと遠くの方から見られてたから、話しかけてみたら、初めて会った時の八幡みたいだったから、面白くて」

 

雪ノ下さん……いくらコミュ力が低いって言っても、せめて興味が湧いた時くらいは話しかけましょうよ。貴女、見た目が整ってるからいいけど、それ俺がやると犯罪者になるからね?

 

「入試……入試かぁ……」

 

「どした?合格ギリギリラインで魘されでもしてたのか?」

 

「ヒッキー馬鹿にしすぎ!……あ、でも入試前日は魘されたかも……じゃなくて。入試で思い出したんだけど、入学式の日の事、ヒッキー覚えてる?」

 

また凄い連想ゲームだな。入試から入学式って。

 

入学式ねぇ………そりゃまあ、覚えてるよな。

 

「寧ろ忘れられねえよ。犬助けようとしたら軽く事故って途中参加だったからな」

 

入学式のあの日。

 

俺は日課となっている朝のランニング(リスト装備)をしていた。

 

その日はたまたま、いつも使用していたルートが工事で使えなくなっていたので、これから通う総武高校までの道のりの再確認も兼ねて、軽く流していこうかと考えていた時、目の前にいたなんかアホっぽい奴が犬のリードを振り切られたかなんかで手放して、その犬っころが撥ねられそうになったのをそれはもう漫画の主人公ばりの勢いで助けた。

 

まあ、リスト着けてたから分、全力疾走よりも遅かったせいで若干掠っただけなのにものすごく痛かったし、ギリギリで受け身も儘ならなかったから打撲や擦り傷もあった。

 

一応病院で診てもらおうということになり、実際に入学式に着いたのはもう殆ど終わりかけていた時だった。ほりゃもう目立つ目立つ……と思いきや、殆ど俺に気づかない。流石のステルスヒッキーさんである。

 

「それがどうかしたのか?」

 

「え?な、なんでもない!と、ところでヒッキーは犬の飼い主さんの事覚えてる?」

 

「?いや、大した怪我はしてなかったんだが、軽く脳震盪を起こしてな。よく覚えてないんだ」

 

何なら運転手さんの顔すら覚えてないまである。

 

「そっか……」

 

どこか残念そうに由比ヶ浜は呟き、視線をテニスコートの方へとやった。茜に目配せしてみるが、当然わかるはずもなく、茜もキョトンと首を傾げていた。

 

「おーい!さいちゃーん!」

 

と、その時、由比ヶ浜がこちらに戻ってきている女テニの子へと話しかけた。知り合いだったらしい。

 

その子は由比ヶ浜に気づくと、とててっとこちらに向かって走ってくる。

 

「よっす。練習?」

 

「うん。うちの部、すっごい弱いからお昼も練習しないと……お昼も使わせてくださいってずっとお願いしてたらやっと最近OKが出たんだ。由比ヶ浜さんと比企谷くんと来栖さんはここで何してるの?」

 

「やー別に何もー?」

 

そう言って由比ヶ浜は、だよね?とこちらに振り返った。

 

まぁ、やってた事は単に駄弁っていただけだったので、強ち間違いではない。あ、一応飯は食ってたし、由比ヶ浜は使いの途中だったはずだ。

 

「さいちゃん、授業でもテニスやってるのに昼練もしてるんだ。大変だね〜」

 

「ううん。好きでやってることだし。あ、そういえば比企谷くん、テニス上手いよね」

 

予想外に俺に話が振られたので、黙り込んでしまう。

 

いや、だって初対面の女子で俺に話しかける物好きなんて、茜と由比ヶ浜くらいのもんだよ?雪ノ下なんて話しかけるじゃなくて罵倒だったからね?後、なんで名前知ってんの?

 

「そーなん?」

 

「うん、フォームがとっても綺麗なんだよ」

 

「そう面と向かって言われると恥ずいな…………茜、あれ誰だかわかるか?」

 

最後の方は小声で茜へと耳打ちする。

 

茜は俺の問いに目を瞬かせた後、同じように耳打ちしてきた。

 

「……あの子は戸塚彩加くん。一年も二年も八幡と同じクラスの子だよ?」

 

え゛っ。一年も二年も同じクラスなの?

 

この際、茜が俺のクラス事情を知っているのは置いておくとして、今茜『くん』て言わなかったか?このどこからどう見ても『立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花』みたいな子を。

 

「リアル男の娘だよ、あの子」

 

「……本当は女なのに男と偽っている可能性は?」

 

「……普通の学校だし、無いと思うよ?」

 

「二人ともどしたー?こそこそ話して」

 

「「なんでもないなんでもない」」

 

俺と茜は揃って首と手を横に振り、否定する。

 

それを見て、戸塚彩加くんはくすくすと笑った。うん、やっぱり男にゃ見えん。

 

「仲良いね、比企谷くんと来栖さん」

 

「まあな。それはそうと、よく俺の名前知ってたな」

 

認識されているか危ういレベルの存在だというのに、覚えているというのはきっとこの子が真面目だからに違いない。

 

「え、あ、うん。だって比企谷くん、有名だよ?」

 

「何が……ああ、そういえばそうなんだっけか」

 

部活動をしていない人間はともかくとして、球技大会で俺は運動部にはわりかし名前が知れ渡っていた。まぁ、ちゃんと名前を呼ばれる事はなかったから、おそらく大部分に『バスケの人』で覚えられているし、何回か名も知らぬ一年生に「あ!バスケの人先輩だ!」と珍動物を見つけたみたいなノリで言われた。

 

「それよりさ、比企谷くんテニス上手いよね?もしかして経験者?」

 

「いや、身体鍛えた延長線上だ。元々、器用な人間だからな」

 

でなければ、ぼっちで社会を生きていこうと決意し、実行するというのは至難の技である。具体的に言うと心が折れる。一人で頑張ろうにも手先が不器用だと出来なさすぎて目立つから。

 

キーンコーンカーンコーン。

 

昼休み終了を告げるチャイムが鳴った。

 

「じゃあ、私戻るね。皆も遅れないように」

 

そう言って茜はパタパタと教室へと走っていった。そういえば国際教養科の教室は少し離れてるし、急がないとマズイもんな。まあ、それは俺達も同じだが。

 

「僕達も戻ろっか」

 

戸塚彩加くんが続けてそう言って、由比ヶ浜と後に続く。

 

教室が同じなんだから、これが当然なのだが…………由比ヶ浜め、忘れているな。

 

「ヒッキー?何してんの?」

 

「……お前、ジュースのパシリはいいの?」

 

「はぁ?………あっ!」


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