ストライク・ザ・ブラッド〜獅子王機関の舞剣士〜 作:倉崎あるちゅ
三月からWOTという戦車ゲームをやり始めて、それにハマっていました。申し訳ございませんでした!
さて、今回、これまで以上にコピー感が半端ないです。
それでも良いと思いましたら、ご覧下さい。
それではどうぞっ!
α
喚く紗矢華の手を取りながら、俺はアッパーデッキに到着した。後ろから雪菜、古城の順についてくる。
ふと、微量の魔力を二つ察知した瞬間、暁目掛けて光り輝く炎の蛇と蒼い焔を纏う狼が襲い掛かってきた。
「──先輩!」
呆然とする暁を守ろうと、雪霞狼を取り出した雪菜が動き出す。その雪菜を庇うように紗矢華も動く。瞬きするような速さでその行動をしている最中、俺は手を掲げ、紅色の魔力を手に纏わす。
「弾け、
紅色の魔力を纏った手を横に薙ぎ、紅色の膜が俺達四人を覆う。
その直後、 二つの炎が紅色の膜にぶつかる。威力が少しあるのか、魔力が削れるような感覚に見舞われる。
ぶつかった二つの炎は二手に別れ、光り輝く炎の蛇は上へ、蒼い焔の狼は後ろへと回り込んだ。
蛇は落下の速度を活かして突撃をし、狼は俊敏な動きで暁を狙う。
「暁! なんでもいいから眷獣ぶっ放せ!」
「どうなっても知らないからな!?」
流石に暁もこの状況で焦っているのか、自棄になりながら俺に返事をする。
噂に聞く第四真祖の眷獣はそれぞれが天災に匹敵する程の威力と聞く。それが本当なのか確かめるにはもってこいだし、何より、この状況をなんとかして欲しい。
「
暁が叫ぶと同時に、彼の左腕から鮮血が飛ぶ。その鮮血は雷を纏い、段々と雷の量が増えて獅子の姿を象った。
獅子は暁を狙っていた狼に向かって突き進み、狼の首を咥えて噛み殺した。
狼の方が終わったと思っていると、忘れていた蛇が紅色の膜を突き破らんとばかりに突進を繰り返していた。
「いい加減しつこいよ! ヴァトラー!!」
キレ気味に怒鳴ると、炎の蛇は霧散した。
すると、アッパーデッキの奥の方から金髪の青年と蒼髪の女性が現れた。
金髪の青年──ディミトリエ・ヴァトラーは肩を竦めてやれやれ、と言った表情でこちらに歩いてくる。
「アハハ。流石に、翔矢が怒ると困るから諦めるヨ。……それに、目的も果たしたからネ」
「ふふっ。そうですわね。翔矢さんったら、怒ると怖いですもの」
ヴァトラーに続いて蒼髪の女性──セリア・オルートが微笑みながら歩いてくる。
二人の吸血鬼は暁の前まで近付き、片膝をついて恭しく貴族の礼をとった。
「御身の武威を検するが如き非礼な振る舞い、衷心よりお詫び申し奉る。我が名はディミトリエ・ヴァトラー。我らが真祖"
「わたくしの名はセリア・オルート。"旧き世代"の貴族ですわ。今宵は御身の尊来をいただき、恐悦の極みです」
二人の口上を聞き、暁は狼狽える。
雪霞狼を構える雪菜とその雪菜を庇おうとする紗矢華、そして手に魔力を纏わしている俺達は呆然と立ち尽くす。
未だに狼狽えている暁に、ヴァトラーは追い討ちをかけた。
「初めまして、と言っておこうか暁古城。いや、"
言い終えて投げキッス。
それには暁、雪菜、紗矢華、俺の四人は背筋を凍らせた。
ただ、救いだったのはオルートはヴァトラーまでとはいかないのか、愛しの第四真祖発言はしなかった。
逆にオルートは少しキツめの視線をヴァトラーに送っていた。
これが、暁とヴァトラー、オルートのある意味運命的な出会いだった。
β
アッパーデッキから"オシアナス・グレイヴ"の広い客室へ場所を移した俺達は、それぞれソファなどに座り、ただ一人オルートは紅茶を飲んでいた。
「そういえば、さっきの気配、"
「そのようですわね。わざわざこの絃神島に来たのも無駄足ではなかったようですわ」
軽薄そうに笑いながらヴァトラーが、優雅に紅茶を飲むオルートがそう言う。
「……"
困惑した面持ちで暁は二人を睨むように見た。
困惑するのも当然か。初対面で自分が使役している眷獣を知られているなんて気味悪い以外ないからな。
問われた二人はクスリと笑って答えた。
「ええ、勿論存じてますわ。"
「制御の効かない暴れ馬と言われてたけど……案外手懐けてるじゃないか。よっぽど霊媒である血が良かったんだネ」
オルートがアヴローラという言葉を発すると、急に暁が顔を顰める。
雪菜は何か知っているのかと思い、俺は雪菜に視線を送るがその当人である彼女は何故か一筋の冷汗を流している。
「アンタらとアヴローラ……一体どういう関係なんだ?」
二人の様子が変だと思いながらも暁とヴァトラー、オルートの話に耳を傾けた。
そして、暁の問いに答えたのはヴァトラーだった。しかしその答えは些か……いや、マジメに気持ち悪かった。
「言わなかったっけ? ボクは彼女を愛してるんだ。永遠の愛を誓ったんだよ。──だから、暁古城」
「な、なんだよ」
気持ち悪い笑みを浮かべ、暁に躙り寄るヴァトラー。暁も気持ち悪いと思ったのか、彼はじりじりと後退していき、俺の後ろに暁は隠れた。
「暁…………」
「わ、悪ぃ……でも気持ち悪くてよ……」
ジト目で暁を見ると彼は冷汗をかいていた。
小声で言葉を交わす俺と暁だが、ヴァトラーは気にせず腕を広げて話し続ける。
「──ボクと一緒に仲良く愛を語り合おうじゃないか。君が第四真祖の力を受け継いだということは、彼女が君を認めたということだ。それに比べれば、ボク達が男同士だという事実なんて些細なことサ」
「些細じゃねぇーよ! そこは重大な問題だから!」
俺の後ろで怒鳴る暁。
うん、こればっかりは暁に同情をするしかない。これを半年前から言われ続けてる俺なんて、寒気が起きる。
「ディマ……ちょっといい加減にしたらどうですの?」
「「え?」」
予想外の人物の反撃に俺と暁の声が重なる。
オルートはこめかみに手を当て、ヴァトラーを愛称で呼び、彼を諌める。
というか、ヴァトラーの愛称ってディマだったんだ。どうでもいい情報入手しちゃったよ。どうしてくれるんだよ。
「アハハ、セリア嬢から怒られてしまったか。古城、愛を語り合うのはまた今度でいいカナ」
「いや、語り合わねぇから!」
苦笑しながら言うヴァトラーに、暁は何度目かの怒鳴り声をあげる。
すると、先程から黙っていた雪菜がソファから立ち上がり、前に進み出た。
「アルデアル公──恐れながらお尋ねします」
そんな雪菜に、ヴァトラーは今までいなかったかのように首を傾げた。
ちょっとイラッとしたけど自重するかな。紗矢華みたいに暴走はしないけど俺も少しシスコンの気があるみたいだし。
「君は?」
「獅子王機関の剣巫、姫柊雪菜と申します。今夜は第四真祖の監視役として参上致しました」
雪菜が名乗るとヴァトラーは、少し驚いたように表情を変えて小さく頷いた。
「あぁ……翔矢と紗矢華嬢のご同輩か。君の話は二人から聞いてるヨ、しつこくね」
「待て待て、俺はそんなに話してないだろ。紗矢華の話に補足しただけじゃないか」
誤解されかねないので、俺はヴァトラーの最後の言葉を聞いた瞬間に訂正に入る。
「いいや、君も結構話してたよ。セリア嬢もそう思ってるはずサ」
そう言って話をオルートへと振ると、彼女もヴァトラーと同じ思いなのか、コクコク頷いている。
俺は、えぇ……、と声を零して肩を落とした。
だって、そんなに話してないと思ってたのに傍から見れば結構話してたなんて。
「──ところで」
俺が落ち込んでいると、オルートが呟く。
「古城さんの身体から、雪菜さんの血と同じ匂いがするのですが……もしや、貴女が"
「っ!?」
ニヤッと笑いかけるオルートに、雪菜が不自然に硬直した。
俺はそうなのか、と思い暁の方に視線を送ると彼は俺の方を見て引き攣った笑みを浮かべた。
暁の判決──
「暁……弁明は?」
俺はあくまで冷静に、にこやかに暁に訊く。俺の傍では紗矢華が鋭い殺気を彼に向けて放っている。
すると、彼は目を泳がせて冷汗を流しながら言う。
「い、いや、アレはなんというか、その……ふ、不可抗力だ」
弱々しく答える暁に、俺はフッと鼻で笑った。
「不可抗力、ねぇ? ……まぁ、それは今度訊くかな。それで、雪菜。
これ以上訊くと少しややこしくなりそうだったため、少し強引ではあったが話を変えた。ヴァトラーが何か言いそうだったし、紗矢華も眉間に谷を刻んでて怖いし。
俺に言われ、雪菜は険しい表情で重々しく頷き、ヴァトラーとオルートを見据えた。
「
雪菜が咎めるように発言するが、ヴァトラーは軽薄そうな笑みをより一層強くした。
確かに、今回の目的は俺も知らない。第四真祖である暁に接触するのは分かってはいたが本格的な目的は不明だ。
「あぁ、そういえば忘れてたヨ。古城と縁を結ぶのもあるけど、別にあるよ」
「あるのかよ……」
「……ディマ」
暁はうんざりしたように呟き、ヴァトラーの発言を聞いたオルートは目を細めて彼を見た。
ヴァトラーはゴメンゴメンと笑って、雪菜を見た。
「ちょっとした根回しをね。この魔族特区が第四真祖の領地だというなら、まずは挨拶を、と思ってサ。もしかしたら迷惑をかけるかもしれないからねェ」
そう言ったヴァトラーは優雅に指を鳴らした。それが合図となり、客室の扉から使用人がぞろぞろ現れて豪勢な料理を運んできた。
「……迷惑とはどういう意味ですか? アルデアル公」
運ばれた料理に視線すら動かさず、雪菜はヴァトラーを睨む。
「クリストフ・ガルドシュという名前を知っているかい、古城?」
「いや知らない。誰だ?」
ヴァトラーに訊かれ、暁は首を振る。すると、ヴァトラーの執事が暁にワイングラスを手渡した。
物腰は静かで知性的なのだが、威圧感を備えた強面の老人だ。彼の頬に大きな傷が苛烈な人生を想像させるが……何故か違和感が湧いてくる。
気のせいかと思い、俺はオルートが淹れてくれた紅茶を飲む。
ヴァトラーが言ったクリストフ・ガルドシュとは戦王領域出身の元軍人で、欧州で名を知られた黒死皇派というテロリスト集団の幹部だった。
約十年前の事件では民間人約四百人以上の死傷者を出している。
しかし、黒死皇派は数年前に壊滅した。指導者が暗殺されたからだ。殺した人物は目の前で優雅に微笑む──
「指導者を殺したのはわたくしですわ。少々厄介な特技を持っていた御老人でしたけど、炭すら残さず焼き殺して差し上げましたわ」
──セリア・オルートだ。
その事件はヴァトラーも一緒にいたという目撃情報もらあるがそこまでは解らない。だが、このセリア・オルートという人物はアルデアル公であるヴァトラーと同等に世界的に重要人物なのは確定している。
俺は思考していた頭を小さく振り、暁とヴァトラーの話に耳を傾ける。
「ガルドシュは黒死皇派の生き残りだ。まぁ、正確に言えば黒死皇派の残党達が、新たな指導者として彼を雇ったんだ」
そこで、俺は遅まきながら疑問に思った。
何故ここでガルドシュの話題になった? と。
「ちょっと待て。アンタらが絃神島に来た理由に、そいつが関係してるってのか?」
どうやら暁も俺と同じ疑問を抱いたようで、彼はヴァトラーに問うた。
「察しが良くて助かるよ、古城。その通りだヨ。ガルドシュが、黒死皇派の部下達を連れてこの島に潜入したという情報が入った」
それを聞いた俺はヴァトラーを凝視する。
何故、そんな情報を手に入れられるか。欧州周辺を領域とする第一真祖の直系だから手に入れられたのか? 俺達獅子王機関よりも? それか情報は入ったが、獅子王機関の上の連中が止めたから、俺達下の人間に情報が行かなかったのか?
如何せん情報が少な過ぎて詮索すら出来ない。師匠に訊いてみるか。
「……なんでヨーロッパの過激派が、わざわざこんな島に来るんだよ?」
「さぁね……何を考えているのやら」
ヴァトラーのとぼけた応えに暁は歯を食いしばった。
すると、ずっと黙って眺めていた紗矢華が急に事務的な口調で暁に言う。
「黒死皇派は差別的な獣人優位主義者達の集団よ。彼らの目的は聖域条約の完全破棄と、戦王領域の支配権を第一真祖から奪う事」
そんな事も知らないのか、と言いたげな冷たい目で紗矢華は暁を睨む。暁も今のに気分を害したのかムッとした表情になって、
「ますますこの島は関係ねぇじゃんかよ」
「いいや、違うよ。暁」
俺はまだ解っていない暁をたしなめるべく、口を開く。
「何がだよ?」
「絃神島は魔族特区。つまり、聖域条約によって成立している街だ。──簡単に言えば、この島で事件を起こせば黒死皇派の健在を証明できるということだよ。まぁ、自己満足だろうけどね」
「な……」
俺の言葉に暁は絶句する。
解らなくもない。そんな勝手な理由で被害が出るかもしれないのだから。
「とはいえ、魔族特区があるのは何も日本だけじゃない。黒死皇派が絃神島に来た事は、他の理由もあると考えてもいいはずだよ」
「他の理由……?」
「そこまで俺も予測はできない。ヴァトラー、オルート、何か知ってないの?」
流石に情報が暁と同じくらいしかない俺が予測できるのはそれくらいだ。
ヴァトラーとオルートに訊いてみると、オルートが一つだけ、と呟いた。
「わたくしが考えられるのは、真祖を倒す手段を手に入れるため、というものですわ。黒死皇派の最終目的は第一真祖を殺すことですもの」
「アンタらはそれでいいのかよ?」
「別に構わない……と、あの
ただただ紅茶を飲みながら、オルートは微笑む。
ヴァトラーはそういう事サ、と他人事のような態度で彼女に便乗した。
「クリストフ・ガルドシュを暗殺なさるつもりなのですか?」
オルートの話を聞いた雪菜が真剣な面持ちでヴァトラーとオルートを睨みつけながら訊く。
ヴァトラーはまさか、と呟いて肩を竦めた。オルートも彼と同意見なのかゆっくりと首を振る。
しかし、俺はこの二人の性格を知っている。
どこまで行っても戦闘狂。この二人の性格はそうだ。こいつらがガルドシュと戦闘をしないなんて有り得ない。若しくは自分達が面白くなるように何らかの企みはある筈だ。
すると、俺の思った事は的中し、ヴァトラーはでも、と言葉を続けた。
「もし仮にガルドシュがボク達を殺そうと仕掛けてきたら、勿論、応戦するヨ? 自衛権の行使ってやつだよ」
「ええ、わたくしもそのつもりですわ」
軽薄に笑う青年と冷笑する美女を見て、暁は冷汗を流している。
やはりこいつらは油断ならない。監視役の任務が紗矢華だけだったら、と思うとゾッとする。
「アンタらが絃神島に来た理由は、その黒死皇派を挑発して誘き出すのが狙いか。こんな馬鹿みたいに目立つ船で乗りつけたのも……」
「いやいや、どちらかと言えば愛しい君に会うためなんだが……おっと」
そう言うヴァトラーは、首を横に倒した。瞬間、ヴァトラーの顔があった場所に橙色の焔を纏った手刀が通過した。
「そろそろ、その色目を潰さないといけませんわね」
いつの間にヴァトラーの背後に回ったのだろうか、オルートはジトーっとした目で彼を見ていた。ヴァトラーはそんな彼女に苦笑いを浮かべ、勘弁して欲しいナ、と呟いた。
それを見たオルートは溜息を吐き、暁に対して真剣な表情で告げた。
「はぁ……。ハッキリ申しあげますわ、古城さん。わたくし達は、ガルドシュに攻撃された場合、自衛権を行使してこの島を沈めてしまう可能性がありますわ。なので、貴方には最初に謝罪しておこうと思いましたの」
「なっ……」
二度目の絶句。
襲われた場合、この島を沈めると言ったのだ。それで驚くなというのは酷というものだろう。
そして、このオルートの発言はもう一つ意味がある。
もし暁がこの二人を止めに入ろうとした時、暁までも倒しにかかるだろう。
俺達獅子王機関はヴァトラーとオルートが正当防衛を主張する限り手を出せない。
どうするか、と俺は思案した。
雪菜が住むこの絃神島を沈むのを黙って見ているなんて、そんな情けない事をしたくない。
どうする。何が出来る……?
八方塞がりのこの状況に、若干の苛付きを覚え始めたとき、雪菜が口を開いた。
「折角ですが、そのお気遣いは無用でしょう、アルデアル公、オルート卿。──わたしが
いやぁ、ほんっとうに申し訳ありませんでした!!
読み返したら思った以上に原作劣化コピー感が半端なかったです。申し訳ありません。
紗矢華もヒロインなのにちょっと空気になっちゃったし。次は紗矢華成分多めに行きますよ。じゃなきゃ私の生活に支障がでますのでw
あと、今回話の流れ的にキリが悪かったです。なので微妙なキリかたになってしまいました。
そして最後に……この作品の更新をお待ち頂いた読者様方、遅くなり申し訳ありませんでしたっ!!
それでは失礼します!