ストライク・ザ・ブラッド〜獅子王機関の舞剣士〜 作:倉崎あるちゅ
今年もよろしくお願いします!
今回、あとがきの方に挿絵を貼りましたので良かったらご覧下さい!
そして! お気に入り登録が180以上に! ありがとうございます!頑張ります!
それではどうぞ!
α
オシアナス・グレイブから出た俺達に、強い日差しが降り注ぐ。俺は手をかざして空を見上げた。
吸血鬼でもないのに一気に活力が低下していく気がする。
「翔矢、大丈夫?」
俺の顔を見て、紗矢華が心配そうに訊いてくる。笑顔を彼女に見せて、俺は紗矢華の手を引く。
「大丈夫だよ。暑過ぎだなって思っただけだから。さ、行こう?」
「ええ」
そう言って俺達は肩に背負うキーボードケースと竹刀袋を背負い直して歩き出す。
まず行く所は、紗矢華の提案もあって携帯ショップに行く事になった。何故行く事になったかは、俺が携帯を持っていないからだ。
別に携帯の形とかは気にしないため、俺は適当に選んでいると、紗矢華が自分自身が使用している色違いの携帯を俺に見せてきた。
「これなんてどう? 一応最新機種の物なんだけど」
小さい声で"私と同じのだけど……"と言っていたが、本人は聞こえていないと思っているだろうけど、ちゃんと聞こえてるよ。
紗矢華から携帯を受け取り、物色する。
色は紗矢華の紅色ではなく黒色だった。相変わらず、服のセンスもそうだが、その人その人のコーディネートが凄く上手だ。
「うん、色も好きだしこれにするよ。ありがとね、紗矢華」
「ど、どういたしまして」
俺がお礼を言うと、紗矢華はプイッと顔を背けてしまった。変わらないなと思いつつ、俺は店員の方へ向かった。
β
携帯の契約を終え、次に来たのはショピングモール。
だんだん第四真祖が通う私立
ショピングモールに来た理由は、俺が喉乾いた、と思って提案した場所だった。自販機よりもモールで買ったほうが少し安いと思ったからである。
そして、買ったの物はというと、俺はミルクティー。紗矢華はオレンジジュースだった。
紗矢華がオレンジジュースというのは意外だった。思っていることが顔に出ていたのか、若干紗矢華の機嫌が斜めになってしまった。
俺が必死に宥めていると、前の方からガラの悪い男が三人が歩いて来た。チラリと紗矢華の顔を伺う。その表情はまるで、鋭い刃のような、という感じだった。
「紗矢華、抑えて」
「ええ、分かってるわ」
俺が窘めてもその返事は堅い。
紗矢華は所謂、男嫌い、というものだ。特に彼女が毛嫌いするのは野蛮、がさつ、臭いが一つでもある者である。
幼い頃、紗矢華は霊力などが高く生まれたがために、自分の父親に過度な虐待を受けていた。
その影響で、紗矢華は男性が皆そういう生き物だと思ってしまったのだ。
しかし俺と母さん、父さんによる説明により、紗矢華の男嫌いは少し緩和された。
だが、平気なのは俺と父さんだけだった。
ガラの悪い男達は雑談をしながら俺達の隣を通り過ぎ、ゲームセンターの方へ向かっていった。
「はぁ……絡まれなくて良かった…………」
胸を撫で下ろして、俺は小声でそう呟いた。
別に俺が臆病という訳ではない。俺が危惧したのは、もし絡まれたら彼らの哀れな末路を思ったのだ。
酷いものでは去勢寸前までの者が昔いた。
ある男性の降魔師が、当時発育の良かった紗矢華にセクハラ行為をした。した行為としてはありふれた肩を触るなどと言った類だった。
当然、男嫌いの紗矢華はその相手を八つ裂きにした。その後、紗矢華が俺の父さんと母さんにその事を愚痴を言ったのだ。すると、驚愕の事実を知った。
なんと、そのセクハラ行為をした男性降魔師は、母さんにもセクハラ行為をしていたのだった。それを知った父さんは荒れに荒れ、その男性降魔師の所へ殴り込みに行った。
紗矢華と母さん、父さんに責められた男性降魔師は泣きじゃくった。トドメに母さんが"去勢したらしなくなるんじゃないかしら?"などと言った時は、本当にするのではないか不安だった。
以上の事により、俺は絡んでくる相手がいないことを心から安堵した。
「絡まれたとしても、返り討ちにするけど」
そんな俺の気持ちを露ほども知らない紗矢華は、そんな事を言う。俺は溜息を一つつき、苦笑を見せた。
「お願いだから、先に手だけは出さないでよ?」
「…………し、しないわよ。勿論」
「最初の間が怪しいんだけど?」
釘を刺す俺に、紗矢華は妙な間を置いて冷や汗をかきながら答えた。ジト目で彼女を見つつ、俺は紗矢華に良い人が出来ますように、と祈った。紗矢華の隣を歩く男性。そんな想像をした。
しかし、俺はそれを想像した途端に、無性に腹が立った。居もしない紗矢華の隣を歩く男性に対して。
「…………」
「どうしたの、翔矢?」
急に黙り込んだ俺の顔を、紗矢華が覗き込む。直ぐになんでもない、と言って笑顔を見せた俺だが、心の中は穏やかではなかった。
紗矢華が遠くに行ってしまうような感じがしたのだ。ただでさえ任務で二年間一緒にいなかった分、遠く感じるのにこれ以上遠く感じるのは辛いと思った。
「…………依存、かな……」
小さく、紗矢華に聞こえないように呟く。
長く一緒にいた弊害なのか、それともほかの原因か。そんな考えを振り払うように、俺はミルクティーを喉に流し込んだ。
γ
第四真祖が通う彩海学園に向かいながら、寄り道をしまくった俺達は、その彩海学園に到着した時間が四時頃だった。
第四真祖の具体的な場所を探知するため、俺は探知系の使い魔の能力を行使する。
レーダーのようなイメージが浮かび、第四真祖の居場所を割り出した。
「いた。付いてきて、紗矢華」
「分かったわ」
返事を聞いた後に、俺は人目を盗んで黒翔麟を抜く。
霊力を注ぎ込み、黒翔麟の刃がリンと鳴った。横薙に振って虚空を割り、第四真祖のいる場所付近と俺達のいる場所の空間を繋げた。
ブゥン、と旧式テレビのような音を立てる割れ目に、俺達は足を踏み込んだ。
空間の狭間を歩いていき、俺達が着いた先は第四真祖の近くにある屋上だった。第四真祖はというと、体育館の近くにある自販機で飲み物を買っている。
「あれが、"
俺は自販機で飲み物を買ってベンチに座ろうとしている、狼の毛のような髪の毛を持ち、灰色の瞳をした気怠げな少年を見た。
魔力の量は桁違い……流石第四真祖、俺より魔力が上か。
俺が暁古城に関して考えていると、背後で殺気が漏れ出ているのに気付く。
「紗矢華、落ち着いて……って…………」
俺は紗矢華を抑えるように声をかけたのだが、少し遅かった。
紗矢華は呪術を、暁古城が座っていたベンチにかけた。瞬間、ベンチが暁古城のすぐ近くで爆ぜた。
そのすぐ後、紗矢華は煌華麟を弓の形態に変えて、いきなり爆ぜたベンチを見て硬直している暁古城に向けて金属製の矢を放った。
「な、なんだっ!?」
地面に突き刺さる矢柄を、暁古城は呆然と見つめた。
俺はその矢を睨みつける。おそらく、あの矢は紗矢華の式神だ。すると、俺の予想通り、矢はするすると解けて形を変えた。
変えた形は薄板状になり、そして次は、
「犬!? いや…………ライオンかっ!!」
暁古城がそう叫ぶと、続けて紗矢華は二射目に入った。矢が地面に突き刺さり、形が変わる。変わったのは狼の姿をした式神だった。
二体の式神達はぐるる、と唸り声を上げて暁古城に襲いかかろうとしている。
「紗矢華、流石にやり過ぎだと思うけど? 封書渡すだけにこんな事を……」
「別に良いわよ。……あいつがいなきゃ、雪菜がロタリンギアの殲教師と戦う事なんて無かったのに……!」
やり過ぎだと思った俺が紗矢華を嗜めると、彼女は暁古城を忌々しげに睨みつけ、その整った顔立ちを歪ませた。
俺は彼女のそんな表情を見ていられなくなり、黙って目を伏せた。
正直言って、俺は紗矢華のこんな憎しみに満ちた表情を見たくない。彼女には常に笑っていて欲しい。しかし、それが出来るのは残念ながら俺ではなく、雪菜だ。俺では……僕には出来ない。
「先輩! 伏せてください!」
暗い思考に落ちようとしたところで、凛とした声が聴こえた。
俺は目を暁古城の下へと向ける。するとそこには何故かチアリーダーの服装をして、手には光り輝く槍、
少し翔矢君のくらーい所を書いてみたんですが……なんか無理矢理っぽいですかね。
二年間会えなくて距離を感じる、というのは実際私がそう思っているんです。まぁ、私の場合は異性ではなくて同性ですけどね。(そんなんじゃありませんよ!)
さてさて、まえがきでも書きました。挿絵です! どうぞ!
【挿絵表示】
こんな感じです。拙くてごめんなさい、だから石ぶつけないで痛いから。
髪の色は漆黒。瞳の色は黄昏色。背負っている黒いやつは竹刀袋です。
あと、何で黄昏色かっていうと古城君の苗字が「暁」だからです。調べたら「暁」の反対は「黄昏」だということが分かったので。
苗字にするか悩んだのですが、武器の名前に合ったのが良いよね!? って思った次第ですw
それでは失礼しました!