ストライク・ザ・ブラッド〜獅子王機関の舞剣士〜   作:倉崎あるちゅ

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めっちゃお久しぶりです。すみませんでした。
バンドリの方に夢中になってしまいまして。


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 俺──黒崎(くろさき)翔矢(しょうや)は蜘蛛のような形をした兵器に向かって走り、建物の壁を使って跳躍し、霊力を溜めて上空から穿つような一撃を放った。

 それと同時に"黒翔麟"を剣形態に切り替え、地上へと空間を連結させる。"擬似空間転移"を行い、一瞬のうちにナラクヴェーラの真下に移動した俺は小さく祝詞を唱える。

 

「獅子の武士たる高神の舞剣士が崇め奉る──」

 

 即座に弓形態に切り替えた俺は膝を付いて上に向かって矢を番える。さっきは霊力を使ったが、次はその霊力にほんの少しの魔力を加える。

 普通、霊力と魔力は相容れない存在だ。しかし、強い霊媒として機能する母の血と"ソロモン"の異名を持つ悪魔の父の血を持つ俺ならば、霊力と魔力を使い分ける事が出来、尚且つそれを混ぜ合わせる事も可能だ。

 

「災禍の焔、黒雷渦巻く麒麟、善悪の判別つかず──」

 

 淡い空色をした霊力の矢に巻き付くように、黒い魔力が現れた。螺旋を描く魔力は次第に大きくなり、周囲に魔力の残滓が漂い始める。

 矢に巻き付く魔力の溜めが限界に近付き、雷のようにチリチリと音を立て始めた。

 

「──世界よ捻れ狂え」

 

 ドンッ! と、弓では決して鳴らない音が壁や崩壊した建物に反射し、周囲に響き渡る。魔力で強化した強力な一撃はナラクヴェーラの腹に突き刺さり、抉り、一瞬にして貫通した。

 俺はすぐさまナラクヴェーラから距離を置き、バク転を繰り返して紗矢華と暁の下へ戻る。すると、攻撃を受けたナラクヴェーラは不自然な形で脚を停めた。

 

「な、なんだ? 急に止まったぞ?」

 

 少し後ろにいる暁が不思議そうに首を傾げた。

 

「見てたら解るわよ」

 

 俺が、見てなよ、と言いかけた時に紗矢華が俺の言葉を奪ってしまった。なんか悔しい。

 紗矢華の方に向いていた視線をナラクヴェーラに移すと、大穴が空いた箇所から黒色の棘のような剣のようなものが大量に生え、神々の兵器はズタズタに引き裂かれた。

 

「うっわ……えげつないなオイ」

「ふふん、凄いでしょ? これは霊力と魔力を混ぜ合わせる事が出来る、翔矢だけの技なんだから!」

「なんでそこでお前が自慢する……」

 

 辟易とする暁にあはは、と苦笑いをする。

 ナラクヴェーラは一時的に停りはした。だが、これくらいの攻撃は特区警備隊(アイランドガード)もしたはずなので、これで完全に停止するとは思ってはいない。

 もう一、二発撃っておくか。

 矢を番え、魔力を加える。周囲に魔力の残滓が漂う瞬間、引き裂かれたナラクヴェーラが自ら傷を癒して行動を再開した。

 

「なに……!?」

「再生、したの!?」

 

 二人がそれを見て驚く。

 やはり、あの程度では完全に機能を停止させるには不十分のようだ。番えていた矢に霊力も強く加える。魔力の質も少し変えて矢を射った。黒かった魔力は紫色になり、直撃した瞬間、何かに喰われたような跡を残す。

 間髪入れずに三本纏めて射る。ナラクヴェーラの副腕が吹き飛び、脚も一本飛ぶ。

 続けて矢を放ち、ナラクヴェーラに当たる寸前、障壁が矢を阻んだ。

 

「"喰らう"性質の魔力と霊力に対する障壁、か……」

 

 ちっ、と俺は小さく舌打ちを鳴らす。

 今のを見て確信した。この兵器は、受けた攻撃で欠けたものを再生し、学習する。そして、学習した攻撃は障壁で通用しなくなる。

 だから特区警備隊(アイランドガード)の攻撃が尽く通用しなくなったわけだ。

 あまり、迂闊に攻撃を仕掛けるべきではないか……。

 ナラクヴェーラを睨みながら思案する。すると、ナラクヴェーラは頭部と思しき箇所から赤い光を収束させ、こちらに放ってきた。

 

「"煌華麟"!!」

 

 しかし、その火を噴く槍と呼ばれる大口径レーザーは、舞威媛である紗矢華の霊視によって見切られ、"煌華麟"の"擬似空間断裂"による防御で防がれた。

 

「"煌華麟"の能力は二つ。そのうちのひとつは物理攻撃の無効化よ。感謝なさい、暁古城。私がやらなければ今頃消し炭よ」

 

 暁を見て紗矢華はどうだと言わんばかりのドヤ顔を披露した。

 感謝するのは何も暁だけではないのだが、まぁ、そこは置いておこう。

 

「そして、あらゆる攻撃を防ぐ障壁は、即ちこの世でもっとも堅牢な刃となる──!」

 

 レーザーを放ち終えて無防備になった古代兵器の足元へと、剣を構えた紗矢華が疾走する。

 ほっそりとした彼女が持つにしては大き過ぎるその長剣で、ナラクヴェーラの脚を斬っていく。俺の持つ"黒翔麟"もまた大きいが、"煌華麟"は少女が持つには大き過ぎるものだ。それを軽々と扱い、流れるように舞う彼女は、ただただ綺麗なものだ。

 いけない、いけない。見惚れている場合ではない。

 紗矢華の攻撃もいずれは学習される。何か策を練らなければならない。

 

「あんな化け物と渡り合えるなんて、ある意味化け物だよな……」

 

 暁がそうぼやく。確かに戦闘の素人から見たらそうだろう。師匠から見たらまだ甘い、と断じられそうだけど。

 ナラクヴェーラと紗矢華の交戦を見やる。()の古代兵器は紗矢華の死角を突いた攻撃に反撃出来ず、一本の脚がちぎれかけていた。

 彼女がそのまま"煌華麟"を叩きつけようとしたその時──

 

「えっ──!?」

 

 ナラクヴェーラの装甲に触れる寸前で、空間を薙ぐ銀色の刃が阻まれた。

 再び俺は舌打ちを思わずしてしまう。

 

「紗矢華、すぐ反撃が来る! 一旦退いて!」

 

 紗矢華は頷き、即座に距離を置く。

 ナラクヴェーラはこちらを狙いつつレーザーを無差別に放ち、建物を焼き払った。

 俺たちは古代兵器の動きを確認できる距離まで退避し、出方を伺う。

 

「ちっ……! どうする黒崎? このままじゃジリ貧だぞ!」

「そんな事は言わなくてもわかるよ。……ただ、俺の使い魔は威力はあれど制御が出来ない奴が二体いて、とてもじゃないがあいつらを使う訳にはいかない」

 

 それに加え、その二体の使用は制限がかけられており、一体は武器としての使用は可能だがもう一体は一切使用不可だ。

 獅子王機関の三聖、及びそれに連なる者達にバレれば、どうなるか。良くて謹慎、悪くて舞剣士の資格を剥奪されるかだな。

 暁が焦り、俺はどの使い魔を使うか逡巡している間に、ナラクヴェーラはレーザーを撃つのをやめ、背部に備えられたスラスターを点火させた。

 

「まさか……」

「空を飛ぶつもりか、あいつ!?」

「無茶苦茶だわ……!」

 

 しまった。逡巡している場合ではなかった。人の命がかかっているのに自分の事が優先されていた。

 すぐに使い魔を出そうと魔力を込めると、それより先に暁が動く。

 

疾く在れ(きやがれ)! "獅子(レグルス)()黄金(アウルム)"!!」

 

 高濃度の魔力が弾け、その魔力は次第に黄金の雷を帯びる。獅子の姿を形作り、"獅子(レグルス)()黄金(アウルム)"は飛び上がったナラクヴェーラを叩き落とした。

 しかし、ここは増設人工島(サブフロート)。そんな高濃度の魔力の塊が地面に叩きつけられれば、当然、その脆い地面など崩れ去る。

 ナラクヴェーラと距離が近かった俺達にもその魔の手が伸び、俺達は大きな穴が空いた増設人工島(サブフロート)の中へと落ちていった。

 

「「こんの……あほつきこじょおぉぉぉぉ!!!」」

「うわあぁぁぁぁ! ごめんなさぁぁぁい!!??」

 

 紗矢華と一緒に怒鳴りつけ、暁は落下しながら大きな声で謝罪をした。

 絶対許さないぞ、あほつき。

 




短くて申し訳ないです!!! 戦闘描写で力尽きました。ほんの少しFate要素が入ってるような入ってないような感じですねw


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