ストライク・ザ・ブラッド〜獅子王機関の舞剣士〜   作:倉崎あるちゅ

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み、皆さんおはようこんにちはこんばんは……。
一ヶ月更新のタグを付けてしまった馬鹿で阿呆で間抜けな倉崎です。
先月は更新をせずに申し訳ありませんでした。自動車学校で免許をとるため頑張っていたもので……(おかげで卒検を合格し、あとは本検だけです)

そしてなんですが、私、この八月の三十一日から自衛隊の方に入隊するのです。一ヶ月更新のタグを付けたのはこの為でもあります。自衛隊は業務外であれば携帯を使うことが許されているので、なんとか一ヶ月に一度は更新したいと考えています……。

ですが、一ヶ月更新のタグを付けてんのに更新してねぇぞ、ゴラァっ!? みたいなことになってしまう可能性があります。本当に申し訳ないです。

さて! 月一更新なので5000文字以上は行かせるぞ! と決意したのに5000文字ぎりぎりですw
ではどうぞ!



 Ⅶ

 α

 

 

 彩海学園高等部、職員室棟校舎。

 何故か学園長よりも偉そうな場所に、英語教師、南宮那月の執務室があった。

 

「何の用だ、舞剣士」

 

 古城と雪菜から黒死皇派の残党の話をされた那月は愛飲している紅茶を嗜んでいると、銀色の雀が窓際に止まったのを見た。

 霊力の性質からして翔矢である事が解り、那月は不機嫌そうに銀色の雀に訊ねた。

 

『あはは……そんなに不機嫌そうにしなくてもいいじゃないですか南宮さん』

 

 雀から発せられるノイズ混じりの少年の声は、やや苦笑いを含むものだった。

 那月はふん、と鼻を鳴らして口を開く。

 

「大方、黒死皇派の奴らの事だろう? それなら暁古城と転校生から聞いた」

 

『でしょうね。暁達に危険がないか式神経由で様子を見てましたから解ってますよ。ただ、行動だけ見てるので話の内容は聴いてませんが』

 

「転校生から、監視の任務があるから、黒死皇派の残党とクリストフ・ガルドシュは任せた、と言われた。……教師に対してなんなんだ、あいつら」

 

 部屋に入ってきた途端に、教師に対してちゃん付けする生徒と少し邪魔くさい中等部の転校生。

 それを思い出し那月は憤慨する。落ち着かせようと紅茶が入ったカップを傾けようするが、中身がないことに気付く。

 思わず彼女は舌打ちをした。

 

『はは……紅茶無かったんだ』

 

「ふん、無ければ淹れればいいだけだ」

 

 翔矢に言ったと同時に、ちょうど新しい紅茶を淹れ終えた、アスタルテが那月のカップに紅茶を注ぐ。

 

「どうぞ、マスター」

 

「ん、すまないな」

 

 無表情に紅茶を注ぐアスタルテに、那月は頷いて淹れてもらった紅茶を口に含んだ。

 少し機嫌が良くなったように見えた翔矢は那月に話しかける。

 

『それで、俺達が動けない今、貴女は動いてくれますか?』

 

「私だって国家攻魔官だ。市民に危険が出る可能性がある以上、出向かない訳もないだろう」

 

『ありがとうございます』

 

 翔矢がお礼を伝えると、那月はふん、と鼻を鳴らして紅茶を飲んだ。ちらりと窓際を見てみれば雀は空に飛び立っていた。

 那月は紅茶を飲み干し、高級そうな椅子から立ち上がった。

 

 

 β

 

 

「ふぅ、なんとか南宮さんに取り付けられた……」

 

 にしても、まさか雪菜達からも言ってくれたなんて、思いもしなかったな。てっきり何も言わないで独断行動をとるものとばかり思っていた。

 大人になったんだな、と感心して、俺は喫茶店の中に戻った。すると、席で待っていた紗矢華が紅茶が入ったカップを置いて首を傾げて訊いてきた。

 

「随分遅かったわね、何かあったの?」

 

「あれ、そんなに時間かかってた?」

 

「ええ、もう注文したもの来てるわよ」

 

 師匠と南宮さんと話してただけでこんな時間がかかっちゃってたか。紗矢華を待たせるのは出来るだけしたくなかったんだけどなぁ。

 

「ごめんね、南宮さんにも頼んでたからさ。紗矢華は何かあった?」

 

 俺は紗矢華に謝って、彼女の方で何が起こったか訊くと、若干不機嫌そうな雰囲気を醸し出した。

 

「……少しあったわね。外にいた中年の男にチラチラ見られてたわ」

 

「…………殺すかな」

 

 そう聞いた途端、俺は無意識のうちにそう口走っていた。

 

「え、何か言った? 翔矢?」

 

 幸い、紗矢華には聞こえておらず、俺は慌てて首を振ってなんでもないよ、と返した。

 ちょっと危なかったな。あともう少し大きな声だったら紗矢華に聞こえてたかも。

 それにしても、と俺は思う。

 何故俺は無意識のうちにあんな事を言ったのだろう。幼馴染みに危険が及ぶかも知れないからか、それとも別の何かか。

 少し考えていると、紗矢華が心配そうな表情で俺を見ていた。

 

「どうしたの翔矢? やっぱり何かあったの?」

 

「いいや、なんでもないよ。心配しないで紗矢華」

 

 俺が笑って言うと彼女は渋々といった表情で、

 

「そう? 何かあったら絶対言うのよ? 翔矢は昔から一人で背負っちゃうんだから」

 

「あはは、そうかな」

 

「そうよ。ほとんど私がいないとダメじゃない」

 

 胸を張って姉を気取るような紗矢華の言動に苦笑しつつ、俺は彼女に告げる。

 

「紗矢華、その言葉をそのまま君にお返しするよ。家事全般、勉強、体術、剣術etc……これら全部教えたの俺だよね」

 

 ニヤッと口元を緩めながら言うと紗矢華はすぅ、と目線を逸らした。

 

「さ、さぁ、何の事かしら」

 

「この場合、紗矢華は俺がいないとダメなんじゃないかな? お風呂上りに髪乾かしたり、寝癖で跳ねた髪を梳いたりしてるの誰だっけ?」

 

「うっ……」

 

 俺が紗矢華の痛いところを突くと、彼女は呻いた。

 そう、今日の朝だって眠たいところを起こされて、紗矢華の髪を梳いて、綺麗に纏めたのだ。枝毛が出来ないように配慮しつつ丁寧に梳くのは、昔からやっているからこそ大丈夫だが、やってなかったら非常に疲れるだろう。

 小さくなる紗矢華を見ながら、俺はサンドウィッチを口の中に放り込んで咀嚼する。

 うん、美味しい。今度作ってみようかな? 軽食で美味しいものを作るのもいいよね。

 

「んんっ! そ、それで? 師家様はなんて言ってたの?」

 

 咳払いをして強引に話題を切り替える紗矢華に、俺はまた苦笑した。

 

「黒死皇派の件については知ってたって。言わなかったのは久しぶりに会えた俺達に対する配慮だったみたい」

 

「そう……師家様が……」

 

 そう言って紗矢華は少し俯いた。

 師匠の配慮が無ければ、俺は紗矢華と一緒にこの任務を受ける事はなかったと思う。俺は俺で、彼女とは別任務で絃神島の特区警備隊(アイランド・ガード)と協力して黒死皇派の残党を確保しているだろうし、こうして紗矢華と一緒の時間だってないだろう。

 

「師匠も雪菜の言動には呆れてたよ。またか、って」

 

 俺がそう言うと、あはは、と紗矢華は乾いた声を漏らした。

 その後、昔話をしながら食事を進めていき、俺達は涼しい喫茶店から蒸し暑い外へ出た。

 

「うっへぇ、暑い……」

 

 着ている空色のパーカーを腕まくりして、手で顔をパタパタと煽る。額に汗が湧き、手で汗を拭う。その時手が髪に触れ、髪がものすごく熱くなっていたことに気付いた。

 

「そら暑いよね……」

 

 視界に映る漆黒の髪を見て、俺はげんなりした。

 父さん譲りの漆黒の髪は炎天下に出歩けば、火傷するぐらい熱くなる。

 げんなりしている俺に気付いたのか、紗矢華が可哀想なものを見るような目で見てきた。

 

「相変わらず大変そうね、それ」

 

「……紗矢華は良いよね、色素薄くてあまり熱持たないから」

 

 恨めしそうに紗矢華の長い色素の薄い髪を見て言うと、彼女は自分の髪を触って首を振った。

 

「そうでもないわよ。今だって熱いし」

 

 触ってみる? と、紗矢華はポニーテールにした髪を肩に垂らした。

 俺はどうせそれ程熱くないだろうとタカを括り、彼女の綺麗な髪を撫でた。すると、

 

「熱……」

 

 俺程ではないにしろ、結構熱を持っていた。さっきの訂正します、ごめんなさい。

 そう思っていると、紗矢華はでしょう? と、何故か得意気に言った。その表情がやけに輝いて見えるのは気のせいなのだろうか。

 

 

 γ

 

 

 食事を摂り終え、外を紗矢華と並んで歩く翔矢は、冷や汗を垂らしながら内心焦っていた。

 

(どうしよう、暁が朝にいた女の子と凄く密着しているんだけど……!)

 

 式神経由で古城の行動を見ていた翔矢は、藍羽(あいば)浅葱(あさぎ)と一緒に生徒会室に忍び込む古城を見て、その行動を注意していた。

 生徒会室にあるパソコンでなにやら調べているらしい二人は、突然入ってきた教師に驚き、その机の下に二人して隠れたのだ。当然、二人は抱き合うような形なってしまった。

 この状態を、翔矢はどう紗矢華に伝えたら良いか、冷や汗を垂らして考えているのである。

 すると、翔矢の様子がおかしい事に気付いた紗矢華が怪訝そうな表情で彼の顔を覗き込んだ。

 

「どうしたの? 何か変よ?」

 

「そ、そうかな。なんでもないよ?」

 

 出来るだけ一人称を使わないように心掛け、翔矢はなんでもない、と答える。

 しかし、紗矢華は彼の眼の動きを目敏く見つけ、否定する。

 

「私に嘘が通用するなんて思わない事よ、翔矢。今度は何を隠しているの?」

 

 得意顔で言う紗矢華は翔矢の緩く締められているネクタイを引っ張った。

 うぐっ、と翔矢は呻き声を上げるが、口をきつく引き結んで口を開かない。しかし、紗矢華は目を細めてジッと彼を見つめる。

 

「……うぅ」

 

 弱気な声を上げるも、せめての抵抗として目線を逸らして口を割らない。

 

「……」

 

 そんな翔矢に紗矢華は眼に力を込めて、言え、と無言の圧力をかけた。

 炎天下で歩行者が行き交う中、二人はネクタイを至近距離で引っ張り、引っ張られる、という状態で数分間そのままでいた。

 結果、

 

「……そ、その……」

 

 根負けした翔矢が、内心古城に謝りながら、正直に洗い浚い紗矢華に話した。

 すると、全てを聞き終えた彼女は鬼のような形相で全身に殺気を纏った。

 

「殺す! 絶対に殺すわ暁古城! 翔矢っ! 急いであの変態真祖を殺しに行くわよ!!」

 

「え、さ、紗矢華……さん?」

 

「さぁ、翔矢、貴方は黙って彩海学園まで跳びなさい……! あの男は死ぬべきよ、私の雪菜を奪っただけでなく、挙句の果てには他の女まで……! 雪菜を弄ぶなんて……言語道断よ!」

 

(ど、どうしよう。こ、これ、僕が動かなくても紗矢華一人で行っちゃいそう……。とりあえず紗矢華の動きを止めないといけないよね……でも今の状態ちょっと怖いかも)

 

 完全に心が弱気モードな翔矢は一人称が僕に変わってしまっている。

 一方、怒りに燃える紗矢華は今にも単身、彩海学園の屋上の庭園で休んでいる古城の下へ向かうのでは、と思わされる程だ。

 

「行くわよ翔矢! さっさと黒翔麟出す!」

 

 一般人がいるにも関わらず、紗矢華は怒りでそんなことはお構い無しだった。

 翔矢の心情としては、私情で黒翔麟を使うのは避けたい事である。黒翔麟は彼の母が現役の時に使っていた武器なので、少なからず誇りを持っている。そのため、あまり私情では使いたくない。

 それが幼馴染みの私情であっても、だ。

 

「ダメだよ、紗矢華。あまり勝手な事はしないの」

 

「翔矢は良いの!? 雪菜が弄ばれても!」

 

「いや、良くはないけど……」

 

 それとこれは何か違うような、と翔矢は内心そう思った。

 そもそも古城と浅葱が密着するようになってしまったのは不可抗力なのだが、紗矢華はそれを説明しても聞く耳を持たない。

 一向に一緒に行こうとしない翔矢に、紗矢華は段々苛立ちを覚え、痺れを切らした彼女は荒々しく鼻を鳴らして彩海学園の方角へ体を向けた。

 

「もういいわよっ! 翔矢ならついて来てくれるって思ったのに! 知らないっ!」

 

「さ、紗矢華っ!?」

 

 まるで子供のように叫んで走り去る紗矢華を呼び止めたが、彼女は一切振り返らずに彩海学園へ向かっていった。

 

(もう知らないわよ翔矢なんて……! 雪菜は私が護るんだから! あんな男に雪菜を渡さないわ!)

 

 若干涙ぐみながら、紗矢華は必死に彩海学園に向かって足を動かした。

 

 

 Σ

 

 

 やってしまった……。あれ絶対泣いてるよ、どうしよう。

 紗矢華が走り去ってしまった後、僕は頭を抱えてその場でしゃがみ込んだ。

 通行人達は何故か生暖かい視線を向けてくるが、今の僕にそんな事関係ない。

 というか、今回外に出てきたのだって雪菜が心配で出てきたのに、なんで暁を殺す事にすり替わってるのさ。

 

「あぁ……紗矢華を泣かせちゃった……」

 

 でも、暁云々より今は紗矢華だよ。昔から精神的に不安定の時って暴走しやすくて、しかも泣いた後って特に機嫌が悪い。

 このままだと、暁のクラスメイトの藍羽さんにも危険が及ぶ可能性がありそうだ。それに加え、今雪菜は授業を受けている状態で、すぐに駆け付けるには少し時間がかかるはず。

 

「今動けるのは、僕──俺しかいない、か」

 

 弱気だった心に鞭を打ち、俺は立ち上がった。

 俺は人払いの結界を張って、次に大きめな竹刀ケースから黒翔麟を抜く。

 儚く輝く黒い光を放つ刀身に霊力を込め、現在地から暁の魔力を辿って、彩海学園屋上庭園の空間を繋げる。

 旧式テレビのようなノイズ音が聴こえ、切れ目の向こう側には()()()()

 一人は白いパーカー着た少年、もう一人はほっそりした高い身長に綺麗な髪をポニーテールにした少女。

 

「え!? 紗矢華着くの速くない!?」

 

 紗矢華の脚の速さに驚きつつ、急いで切れ目の中に飛び込んだ。

 脚に魔力を込めて思いっきり踏み込む。すると俺の体は弾かれたかのようなスピードで、一瞬にして彩海学園屋上庭園に着いた。

 

 そして、

 

「あの藍羽って子だけじゃない。貴方には妹さんや両親や学校の友人も大勢いるじゃない! それなのに……それなのに私から雪菜を奪う気なのっ!? 私の──」

 

 煌華麟を構えて、

 

「──私の大切な家族を……!」

 

 目尻に涙を浮かべた紗矢華の悲痛な叫び声が俺の鼓膜を叩いた。

 

 

 




今月にもう一回更新出来たらいいな……(遠い目)


あと最近、デジタルのイラストを描いていまして。それで最初に翔矢君のイラストを描きました!
現在も試行錯誤しながら改良しています。こうしたらいいんじゃないか、的なアドバイスが欲しいです(チラッ)


【挿絵表示】



変更

八月十八日、最後の紗矢華の台詞を改変しました。数少ない、じゃなんか原作よりも凄く、凄く劣るので、この作品で重要なワード『家族』を入れました。
まぁ、重要なワードと言っても私が個人的に重要だと思っているだけなんですがねw


では、失礼しました!

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