俺ガイルSS 二次元に燃える男と二次元に魅了された彼女の恋の物語   作:紅のとんかつ

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プロローグ その扉は開き、招き入れる。運命を抱える剣豪を。

 本日はあいにくの雨。

 灰色の雲に陽の光が遮られ薄暗い窓の外の降り注ぐ滴も、蛍光灯の光に照らされた部屋の中にいる分には心地よい雨音を奏でながら窓を叩き、大地に降り注ぐ。

 

 悪天候で外での部活動は軒並み休み、そんな事は関係ない文化部である奉仕部の部室で、俺達奉仕部三人はいつも通りそれぞれの過ごし方をしている。

 

 雪ノ下雪乃は本を読む。ブックカバーがかけられ、何を読んでいるか解らないが当たりでも引いたか気持ちいつもよりも目が輝いていた。

 

 俺、比企谷八幡は書店でオススメされてた文庫本。

 なんだか賞を取ったと宣伝されていた奴を読んでいる。その作品も作者も聞いた事が無かったのに開いてみたらこれが中々面白い。思わず時間を忘れて読んでしまった。

 

 由比ヶ浜結衣は携帯で何やらやってる。

 たまに着信音が静かな部室に鳴り響き、おっと声を上げては楽しそうに足を降る。薄暗い天気でも彼女の顔は依然として明るい。

 

 雨の音と本をめくる音。

 そして由比ヶ浜の携帯の音。

 

 なんでもないその静かな時間が、俺は嫌いではない。最近俺の人間関係が目まぐるしく変わり、日常が大きく変わった。色々働かされたり、心が揺さぶられたりと色々あってなんだかんだ言いたい事はあるがそれに不満がある訳では無い。だがたまにはこうして静かに過ごす時間がほしいと、そう思ってる。

 

 この優しい時間がゆっくりと刻まれていく中で俺は心地よい幸せを感じながら、放課後という学校の一時をいつもの三人と過ごしていた。なんだかこの沈黙すら心地よいと思える平和な時間に俺は小さな幸せを感じる。

 

 

 

 

 

 ドンドンッ!

 

 

 ……しかし、幸せは長くは続かなかった。優しい時間の終わりを扉が叩かれた音で告げられた。

 

 

 幸せは永遠では無く、いずれ必ず終わりがくる。

 

 扉がゆっくり開き、そして太い腕がその扉をゆっくりと開いていく。重量感のあるその巨体、声量のありそうなその声。俺の平和を破壊する1人の男が現れた。

 

 

 

 

「はちま~ん」

 

 

 そして顔を覗かせる。超大型巨人みたく。

 

 デカい体にメガネ、制服にロングコートを合わせ着る指だしグローブのその男、材木座義輝が。

 

 

 

 また、またか……。

 

 この有意義で楽しい読書が終わりを告げ、無機質で苦しい読書が始まるのかと思うと、俺は大きな溜め息をついた。

 

 

 パタンッ。

 

 

 本を閉じ、材木座に向きなおす。

 あきらめのため息と共に、けん制を兼ねた言葉を投げかけた。

 

 

「また自作ラノベか? 設定資料集(未完)とかなら叩き出すからな」

 

 

 最近、材木座が良く部室に来る。来ては今回製作中の自作ラノベの話をたっぷりしていく。

 モチベが高いとか言っては完成すらしてないラノベのキャラ設定やら、必殺技の解説やら、キャラのコマンド表等を持ってくる。正直設定だけ見せられても感情移入なんて出来る訳が無いのに材木座の頭の中では盛り上がっている物だから温度差が半端無い。

 

 例えるなら。

 

 マジで

 ”ヒキタニ君聞いて~、この前隼人くんがさ~”

 と、どうでも良いクラスメイトからどうでも良いクラスメイトの笑い話を延々と聞く感じ。最近あいつ、俺相手には、延々と止まらずに話を続ける。ヘタに返事を待っても沈黙になるだけだという事をアイツは学習した。一方的に話をしては”聞いてくれる人がいるって良い事だって気付いたわ~”と勝手に満足していく。気まずくならないのは良いけどさ。

 

 まあそんな訳で俺は今日、どうでも良い話に付き合う気力は使いきった。だから材木座、お前の設定妄想に付き合う気はないぞと目線を送る。

 

 しかし、材木座は扉の前から動かず外をチラチラと気にしていて俺の視線に目を合わせない。てか、さっさと扉閉めろ。寒いから。

 

「……ふむん、今日は我の話ではないのだ」

 

 

 すると材木座は外に手を伸ばし、誰かを引っ張り入れる。その先には一人の女子が困ったように挙動を乱しながらゆっくりと足を踏み入れてきた。

 

 

 

「し、失礼します……」

 

 

 その女子が頭を下げると材木座がまるで部屋の主かのようにうむ、と頷いた。その様子に、八幡に衝撃が走る!

 

 

 ざ、材木座が誰かを連れて来るだと……?

 それも女の子を。

 

 その信じがたい光景に俺は目を丸くした。

 あの材木座がだと? だって、いまだにそれなりに付き合いの長い雪ノ下とすらまともに会話が出来ていない位女子との会話慣れしていないというのに。

 

 ていうか、相手が雪ノ下じゃ例えが悪いか。だって俺も会話出来てねえもん。常に罵倒か論破しかされてねえもん。

 

 

「あ、あの、初めまして。私は……」

 

 

「まずは座ってはどうかしら。寒いから扉も閉めて欲しいのだけれど」

 

 

 雪ノ下の促す言葉にその女子は慌てて扉を閉めてこちらに歩み寄る。由比ヶ浜が二人の為に椅子を出して二人を座らせた。

 

 こうして、材木座が連れてきた女子”三神美嘉”の奉仕部への到来により、再び俺達は依頼に動き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




続く。

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