再臨せし神の子   作:銀紬

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第七話 真理を描くもの

九月二十一日。

 

目覚ましの音がリンリンと鳴り響き、外からは朝特有の眩しい光が差し込んでくる。

 

 

「ん、ん…………朝か」

 

ゆっくりと身を起こすシンジ。

 

碇シンジの朝は早い。

先日、未知の使徒が現れただけでなく、未知のセカンドチルドレンである真希波マリ・イラストリアスがやってきてかなりごたごたとしていた。

それ故多少の疲労は残っていたものの、それでも毎日のリズムを今日崩してしまう、ということもない。

 

いつもは弁当、朝食を作る為、及び課題を片付ける為に午前の六時頃には既にきっちり目覚めている。

今日はレイの分の弁当もあるので、多少早めの五時半ごろには目覚めて弁当の仕込みを行っている。

 

「ふんふんふふふん、ふんふんふん……♪」

 

今日は気分が良く、つい流行りの歌を口ずさんでしまう。今日のセレクトはご当地ソングだ。

名前は忘れたが、とある魚を使った鍋が美味しいらしいので今度作ってみようと考えている。

 

この気分の良さの理由。それには、予想以上に課題が手早く片付いていたからである。

この日の課題は数学だったのだが、何時もリツコの元で「軽い授業」を受けているので公立中程度の課題等は瞬殺出来てしまったのである。

リツコからすればあまりにも当然なことではあったが、そのような事実がないシンジからすれば素直に喜ばしいことである。

 

ちなみにリツコの方からも課題は出ているがそれはまだ片付いていない。

今回のは「猿の穴問題」と言う名前の確率における有名問題と、円周率が3.06より大きいことを示す問題、

そしてその周辺に関する典型的な例題をいくつか。

例題の方ならば速攻で解けるし例題の方さえ解けていれば一先ずはとやかく言われないので、特に解けないことが生活の足枷にはならない。

 

六時ほどになったところで手際よく一通りの弁当の準備が終了すると、次に朝食の準備に取り掛かる。

 

今日の朝食はハムエッグとパン、そして少々手の込んだチーズオムレツ。

簡素でこそあるが、簡素だからこそシンジは手を込める。一見してサッと卵を閉じているだけだが、その卵を閉じるという動作には実はそこそこテクニックも必要なのである。

赤い世界から戻ってくる前からシンジの料理の腕は一級レベルだっただけに、ここに立ち並ぶ料理達もまた素晴らしい出来となっていた。

 

その香ばしい匂いで、あちら側の部屋のドアが開く音がする。きっとレイが目を覚ましたのだろう。

レイは前日、遅くなった実験もありシンジの家に泊まっていたのだ。

やがてリビングのドアが開く。そこには見慣れた蒼髪と、

 

「おはよう、碇君」

「おはよう、綾波」

「おはよう、わんこ君」

「おはよう、真希波さん」

 

茶髪気味のツインテールが一つ。

 

 

……ん? 

 

ナチュラルに返したが、何かがおかしい。

今シンジの家に居るのは、シンジとレイ。 

後は、脳内のカヲルのみであるはずだ。

 

ところが今、確かに外部からカヲルの物でもないレイの物でもない声が聞こえてきた。

これは一体誰だろう、いや誰だろうも何も、他の誰でもない。

 

「な、なんで真希波さんがここに居るんですか!?」

「いやー、ミサトちゃんのごはんの不味さはあたしもよ~っく知ってるから、つい?」

「ついって……いやまぁ、葛城さんのアレは確かに化学兵器ですけどね」

「後わんこ君、あたしのことはマリで良いって言ってるじゃん~」

「いやでも、マリさんって明らかに年上じゃ……?」

「ん? あたしも14歳だよ? 失礼だなぁ~わんこ君」

「えっそうなんですか?」

「そうよ~? ほらコレネルフカード」

「本当だ……」 

 

確かにそこには2001/9/13という印があった。

ボディライン的に明らかに年上にしか見えないのだが……どうにも納得のいかないシンジである。

 

「あら、もしかしてあたし、お婆ちゃんにでも見えるかニャ?」

「……ばあさんは用済み。ここは「碇君とわたしの」家だから、出ていって」

「レイちゃんひっどい……よよよ」

「……綾波サン?」

 

マリはマリで泣き声をわざわざ口で喋るというおかしなことをしていたものの、

レイはレイで何やらおかしな妄言を吐いていた。

 

「そっれより、朝ごはん。冷めちゃうよ?」

「……良いですよ、食べててください。僕はおにぎりで済ませますから」

「いいの?悪いね~」

 

口では謝罪の言葉を出しつつも、悪びれる様子一つ見せずオムレツを頬張るマリ。

それなりの大きさで作ったつもりだったが、ほぼ一口で平らげてしまった。

 

「う~ん、こいつはゴージャス・デリシャス・ヤックデカルチャー♪ わんこ君、料理が出来る男はモテるぞぉ?」

「それは、どうも……」

「……ご馳走様」

 

マリにシンジが苦笑いで応対している一方でレイの方は、いつの間にやら全ての食事を終えていた。

凄まじい速さだ。これもまたリリスの力…………なのだろうか?

今はというと、既に制服に着替えている。時刻はまだまだ7時にもなっていないし、学校に行くまでかなりの余裕があった。

 

『おはよう、シンジ君』

「(あっ、おはようカヲル君)」

『今日はお握りかい?』

「(うん……ちょっと予定外でね)」

『そうかい……売り物のお握りでは正直物足りないんだけどな』

「(そうはいっても仕方ないよ。予定外だったし)」

 

カヲルは、シンジと味覚など五感も共有している。なので、シンジの飲み食いしたものがそのまま自分の味覚として現れてくるのだ。

また感覚を増減させることは出来るので、シンジが外部から衝撃を受けたり、不幸にもミサト製の「食べ物のような何か」を食べさせられたりした時には感覚を完全シャットアウト出来たりする。実に便利なものだ。

 

ちなみに、一見何事もなかったかのようだがカヲルも一応シンジの中で眠ったりはしているようだ。

一応規則的に寝起きしてはいるのでシンジも何も言わないことにしている。

 

「ごちそーさま、わんこ君。美味しかったにゃ~」

「お粗末様でした。 真希波さんはこれからどうするんですか?」

「ん~、やることないんだよねぇ……そっちの学校行ってもいいんだけど、あたしもう大学出てるし」

「そうなんですか?」

「うん、ドイツのミュンヘン工科大学、ってとこ。知ってる? こっちで言うTIT的な大学なんだけど」

「いえ……初耳ですね、というか後者も初めて聞きましたけど」

「あら意外、ツバメと鳥人間のほかに結構卑猥な略称としても有名だと聞いたんだけどな」

「そんなこと言ってると怒られますよ」

「ヅラァ! 今何キロォオオ! の元ネタだった気がするけど」

「それ多分違うトコですよ、それに確かヅラじゃないです、かつ」

「こまけぇこたーいいのよぉ」

 

マリもまた、アスカと同じように若くして大学を出ていた。

そういえばアスカはどの大学を出ていたのだろうか? ふと疑問に思う。

天才と自他ともに認められる彼女のことだ。きっと相応のところは出ているだろうが。

 

「ま、今となっては名前よりやってることが大事だからね~。一応あたしはパイロット兼技術部ってことでスカウトされたニャ」

「へぇ……じゃあ、これとか分かったりますか? いや、お門違いかもしれませんが」

 

シンジの手にはリツコの課題。途中までで解かれた形跡が残っている。

 

「あ~これリッちゃんの課題だね?」

「分かります? 例題はすぐなんですけどね」

「そりゃ~あたしもリっちゃんから教わってることもあったからねー。

じゃっ、ヒントだけね? あんまり教えちゃうとあたしが教えたってバレちゃうし」

 

そう言うとどこからかメモとペンを取り出すマリ。ブラから出てきたようにも見えるが、きっと気にしてはいけないのだろう。

このようにして、余裕ある朝の時間はアカデミックに流れることとなった。

 

----

 

「おーっす、碇に綾波」

「おはようさん」

「おはよう、二人とも」

「おはよう……」

 

ここ最近、レイがシンジと登校するのは割と日常茶飯事だ。

最初の方こそトウジやケンスケも冷やかしたが、こう毎日続くともう冷やかしにも飽きの色が見えていた。

 

「今日もマリさんは居ないのか?」

「うん、結局家でのんびりしてるんだってさ」

「羨ましいのぉ」

「まあ、ネルフの技術部も兼ねてるみたいだからね。昨日も遅かったし休みたいんじゃないかな」

「大変そうだな」

「本人は楽しそうだから、いいんじゃないかしら」

 

実際のところ、マリに疲労などは無い。単に面倒だから休んでいるだけだった。

既にマリは大学レベルの知識が揃っている上に、シンジのクラスでよく教えている根府川という教師はセカンドインパクトの話ばかりであるのも面倒に感じさせる一因であった。

 

このご時世では中学であっても教員不足が深刻な問題となっており、どの教員も教科を問わず一通り教えることになっている。その為、様々な教科で何かと根府川がセカンドインパクトの話をするのだ。

国語や数学や英語は勿論、理科や社会、果てには保健の授業でもセカンドインパクトに繋げられる話術はある意味天才的とも言えよう。

そんな天才・根府川の授業は残念ながら現在進行形で習っている中学生の人間のうち大半にとっては退屈な類に入ってしまっている。既に大学を出ている彼女の休みたくなる心情も理解できるというモノだ。

その上セカンドインパクトの真相は根府川の話すような巨大質量の落下などではない。真相を知っているシンジとしても実に退屈なものではあった。

 

 

一時間目、国語。

 

「え~、聞一以知十。コレを綾波さん訳してください」

「一を聞いて以って十を知る」

「はい、そうですね。この一節はとても有名な一節です。私もかつて若いころはこれを心がけていましたが、セカンドインパクトが起きて情報が錯そうしてからは……」

 

二時間目、社会。

 

「洞木さん、ワイマール憲法が出来たのは何時でしたっけ?」

「えっと……1919年ですね」

「素晴らしい、それではイクイクワイマール憲法と覚えてくださいね~」

「センセー卑猥ですぅ~」

 

どっ。

 

三時間目、数学。

 

「でもって、Θ=Πを代入しますと、eのi×Π=-1……という式が成り立ちます。

-1を左辺へ持って行くとe^(i×Π)+1=0…………これが有名なオイラーの公式です。

私も、若き頃は根府川の畔でオイラーについて研究していたのですが、あの大災害、セカンドインパクトが起きてからは……」

 

しーん。

 

四時間目、理科。

 

「それでは……はい……ドップラー効果の公式に当てはめまして……」

「Zzz……Zzz」

「ええ、ええ……そういえば波と言えば津波ですが……私たちの経験したセカンドインパクトでは根府川までその津波が押し寄せてですね……」

 

そして、昼休み。

 

「か~っ、終わった終わった~。トウジ、購買行こうぜ」

「あのじ~さん三時間もセカンドインパクトによう拘るのぉ。それより飯じゃ飯~。ほなシンジ、ワイらは購買行ってくらぁ」

「うん、行ってらっしゃい」

 

この日は土曜日、半ドンであった。

かつてはそもそも土曜日も休みだったらしいものの、今年は使徒襲来によって何日か休校になるということもザラにあった。それ故、その振替も兼ねて半ドン化が決定されていたのである。

 

一応もう帰宅できるのだが、何時もの習慣で購買に走るトウジとケンスケ。この二人は昼食を食べた後、何やら携帯ゲームを持ち寄って遊ぶらしい。

シンジは今日は特に予定もなく時間的余裕はあるので、彼らに合わせる形で残っていた。

 

勿論ただ残っていた訳ではなく、その暇な時間の中でカヲルとの対話も欠かさない。

 

「(……それにしても)」

『なんだい?』

「(使徒ガギエル、彼はどこへ行ってしまったんだろう?)」

『分からない……彼の波動は未だに見えない。此間の使徒、ハラリエルも全く新しい波動だった』

「(ハラリエル?)」

『そう、警告の天使さ。因果律に対する僕たちの干渉、その結果による新たなる使徒。過干渉に対する警戒の意味を込めたんだ。悪くないネーミングだろう?』

「(成る程……)」

『まあ名前はともかく……このイレギュラー、早急に手は打っておくべきかもしれない。今更ながら、今日の午後はそちらに注力すべきだろう』

「(そうだね……)」

 

こうして、この日の午後は第6の使徒、便宜的にハラリエルと呼ぶことにした使徒の襲来から3日。

久しぶりのブレインストーミング会議が開かれることになった。

 

----

 

「……と、いう訳なんです」

「それで、私の所に来たのね」

「ええ、『課題』の提出ついでに」

 

所変わってリツコの研究室。相変わらず可愛らしいネコのボードは変わらない。

シンジは二つのレポートを持ってきていた。一つは課題についてのレポート。

もう一つは、今後の使徒に関するレポートである。

 

「まあ、僕の予知夢とやらもアテにならないなあと思ったので」

「あら、そうでもないわよ? 此間の第5使徒の時も、貴方の提言が無ければ今頃人類は滅亡していたでしょうし」

「でも……もう綾波を危ない目に遭わせたくないですから」

「へぇ。もしかして? レイに惚れたのかしら」

「ち、違いますよ。ミサトさんみたいなこと言わないでください」

「あら、これでも私とミサトは同級生で同性なのよ? 不本意ながら似てしまう部分もあるわ」

「そんなもんですかね」

「そんなものよ。

それにしても、これを貴方一人が……よくもまあ思いつくこと。何かの才能、あるんじゃない?

今度の使徒戦ではレイとマリだけ前線に出して貴方に作戦部長やって貰おうかしら」

「そういう訳にも行きませんよ、どのような使徒が現れるかは分かりませんからいつでも全力で行かないと」

「ミサトの仕事もなくなっちゃうわね。じゃ、このメモ拝見するわよ」

「はい」

 

リツコの手元にはシンジの書いたレポートがある。

そこには、これからの使徒についてを「予測」という形で一通りまとめてあったのだ。

第7使徒イスラフェル、そして第10使徒サハクィエルから第16使徒アルミサエルまでの全ての使徒。どれもこれも少なからぬ苦戦や犠牲を伴った使徒たち……に、致命的にならない程度のアレンジを加えておいたものだ

そして8体では少しキリが悪かったので、プラス7体。申し訳程度に適当な使徒もでっち上げておいた。ダミーという奴だ。

スライム状の使徒やいかにもファンタジーな黒い龍型の使徒、アラエルとはまた違う飛行する鳥型の使徒等、いかにも少年が思いつきそうな範疇の姿かたちではあるが、

奇抜なのと素朴なのを半々にしたと言ったら思った以上にスッと理解してもらえた。

 

「どうですかね?」

「そうね……飛行型の使徒、ハッキング使徒、異世界に飲み込む使徒、分裂する使徒。これは想定しうる使徒のパターンとしては充分有りうるし、事前の対策が出来ていないと確かにキツいかもしれないわ。

他の使徒パターンも一考の余地はあるだろうけど……今すぐどうこうできるものではないというのが結論ね」

「そうですか」

「そういうとこ。コレで終わりかしら? それなら『課題』、拝見させてもらうわ」

「はい、どうぞ」

 

シンジがここに来た理由はもう一つある。

それは、先述したようにリツコから幾つかの「課題」を出されていたからだ。ついでに1日30分程度の簡単な講義も受けている。

 

ネルフでは比較的他人に干渉することの少ないリツコとしてはこのように教師代わりのことをやるのは珍しくも見えるがその理由はしっかりしており、

シンジの使徒の予知及び対策能力を買い、より科学的根拠に裏打ちされた綿密な対策を練らせようという魂胆であった。

勿論、それだけではない。毎日接触の機会を設けることで、何らかのアクションをそのうちシンジが引き起こすのではないかという、科学者としての好奇心もある……が、そちらの成果は芳しくなかった。

そんなリツコの思惑を知らぬシンジとしては、より現実的な目線からも使徒を検討することが出来るようになるのであれば特に異存はないし、

何より中学の授業は一度受けたもので退屈なのでこちらが自動的に捗ってしまうのだった。

何時だかのように、プールサイドで理科を勉強する羽目にはならないだろう。

 

 

一通りのことが済むと、シンジは今度はスーパートレーニングルームへと入っていく。

最早日課となっているのだが、最近は少し変わったことがある。

 

それは……

 

「おっかえりー、わんこ君」

「あ、こんにちはマリさん……って、またそんな格好して!」

「ん~?」

 

思わず顔を赤くして背けるシンジ。

マリはここ最近、このトレーニングルームに出入りしていた。

何時ものどこのなのかもよくわからない制服姿ではなく、作業員が来ているようなYシャツと、何やら工具が犇めく黒ズボン。

下はともかく、上は年不相応に出ているので思春期の碇シンジ少年にはかなり刺激が強い。

 

「だからその、ここ冷房効いてるんですしそんな格好してなくたって……」

「え~、ヤダよぉ。作業するとどうしても暑いニャ。今日はここの器具の修理を頼まれてね~」

「そんなぁ」

「ん~……じゃあアタシのことこれからマリ「さん」なんて呼ばないで、同年齢に話すノリでフレンドリーにっ!

でないとこの格好は止めない上に……こうしてくれるぞっ!」

「うわぁ!」

 

不意に抱き付かれ、押し倒されるシンジ。

シンジもここ数ヶ月でそこそこに鍛えてはいたが、まだまだ付け焼刃な状態である。「リリンにしては少し強い」というレベルだ。

そこに来ると、マリは違う。高い水準の教育を受ける傍ら、相当の訓練も受けているのだ。まともにぶつかっても互角にすらならないだろう。それが不意打ちでこう来ているのだから何もしようがなかった。

 

「(どうしようカヲル君……!)」

『うーん……僕は少し出かけてくるから頑張ってくれよ』

「(ええ!? というか出かけるってどうやって?)」

『最近、精神を離脱させてふわふわ浮いていられる技術を会得したのさ。

その行き先で知り合いも出来たんだよ。

僕にとても声が似ているんだけど、その知り合いに頼まれて此間シンジ君の言っていたペットとやらを預かっているんだ。いや、ペットはいいねぇ。リリンの文化の極みだよ』

「(いや、今はペットとかどうでもいいから! 僕がペッティングされちゃいそうだから!)」

『そのペットの名前はエリザベスっていうんだ、今度紹介するよ』

「(僕にペットの紹介じゃなくて僕のエイドに了解して!)」

『大丈夫、君が命の危険になったら真っ先に戻ってくるさ。これは絶対に絶対だよ』

「(そうじゃなくて~!)」

「くんくん……ん~。やっぱキミ、いい匂いするね……」

 

そんなマリのお目当ては、やはりシンジの「匂い」である。

シンジの思惑とは裏腹に、いろんなところを嗅がれている。所謂匂いフェチなのだろうかは定かでないが、この手の性癖に耐性がないシンジとしては只管顔を赤らめるほかはない。

ここ最近……というか日常的にずっと夏で汗ばんでいるのだが、目の前のこの女は男の汗の匂いが好きなのだろうか?

出会ったときに言っていたようにLCLの匂いがするにしてもアレは本来血に近い匂いなので、どちらにせよ余りいい匂いでもないはずだ。

どっちがわんこなんだろうと内心で突っ込むが、だからと言って状況が何か変わる訳でもない。

 

「ちょっ……! 離して下さい……」

「やー。分かっているとは思うケド、今はわんこ君の1時間のはずだから誰も来ない。

つまり君はどの道入室後の五十分間、私と一緒にこの部屋のど真ん中に放置されることになったのだよ?

これが何を意味しているか……分からない君でもなかろう」

「さりげなくデジャヴのある台詞で迫らないで下さいよ!?」

「ふふ……どう? わんこ君のわんこ君、お姉さんが元気にして――――」

「わわ……!」

 

マリがシンジの手を跳ね除ける。シンジの絶対境界線が打ち破られた瞬間である。

それを満足げに確認すると、マリはその触手を下方へ……

 

「あー……お盛んなところ悪いが、ちょっといいかい?」

 

背後から聞きなれた男の声が聞こえてきた。

 

それは、シンジとしてはだいぶ馴染み深い声だった。

そして、葛城ミサトにとっては態度に出さないだけで最も愛しい存在でもある。

後ろに長めの髪を結い、整った顔立ちに相変わらぬ無精髭。そして、精悍な体つき。

 

「……ちぇー、お邪魔が入ったか」

「悪いな、マリ。 俺はちょっとこのサードチルドレン……碇シンジ君とコレからデートの約束をしていてね」

「えー、男同士とか、流石に無いわー。あたしが言えたことじゃないけどー此間もマヤちゃんと第三新かぶき町に」

「なぁに、ちょっと借りるだけさ」

 

何気に物凄い発言をしていたマリを適当にあしらっておく。かなり姦しい会話のように思えたがそれをも飄々と聞き流せるのは、経験の成せる技ということか。

 

「は、はぁ……えっと、どちらさまでしょうか」

「おっと、自己紹介がまだだったな。俺の名は加持リョウジ。まあ、ネルフでは特殊監査部なんてのをやっているよ」

「ああ……貴方が加持さんでしたか」

 

飽くまで知らぬフリは貫いておく。

 

「お、知っているのかい? 光栄なことだな。碇シンジ君」

「いえいえ、ジオフロントを散歩していたらでっかい畑があったものですから」

「あー、アレ加持が作った奴だったんだー」

「今は内密に頼むよ。まだ許可取ってないからさ」

「そういうことでしたら。あー……用事というのは、トレーニングが終わってからではダメですか?」

「いや、構わないよ。折角だから俺も空いてる器材でやらしてもらうけど、いいかな」

「ええ」

「ふーん。 ほんじゃアタシはお邪魔虫みたいだから、ばいなら~」

 

ひらひらと手を振り、どこかへ消えていくマリ。

 

「さて」

「なんですか?」

「どうして俺があの畑を作っていたと分かった?」

「え?」

「そりゃそうさ。俺はあの畑にまだ所有者プレートを立てていないんだぞ?」

 

一見平静を装えていたが、内心としては少し焦った。

完璧に知っていない風を装えていたと思っていただけに尚更である。加持はこの段階ではまだ所有者プレートを埋め込んでいなかったのだ。

さりげなく前回の史実とは少し違っている……らしい。実際に見に言っておくべきであっただろうか。

一先ず、最もらしい言い訳を組み立ててみる。

 

「……ミサトさんから。筒抜けですよ」

「ああ……葛城の奴か。そういうことなら、そうなんだろうな」

 

一応は納得させられただろうか。それでもやや訝しんでいるようにも思える目線が気にはなるが、それ以上の追及は無かったので、何事もなかったようにトレーニングに打ち込むことにする。

加持はその間何かをするわけでもなく、ジオフロント周辺などその辺りをただただ練り歩いていたようだ。

 

----

 

「……ふぅ」

「ご苦労さん、コイツは俺からの差し入れさ」

「……っとと。ありがとうございます」

 

トレーニング終了、シャワーを浴びて戻ってきた先で加持が投げてきたのはスポーツドリンク。

「キタエリアス」と書かれた容器が光を反射して輝いている。

100ml程度を飲み干すと、加持が再び話しかけてきた。

 

「で……シンジ君」

「分かっていますよ。どこに行きましょうか?」

「そうだな……俺の部屋に招待しよう」

「分かりました」

 

道中、とりとめもない話をしたりもした。

再びミサトの寝相の話なども聞いてきたが、ミサトと同居してはいない「ことになっている」ので、

特に何か変わった反応はしないように努めた。

 

そうして加持について行き、到着したのはコンフォート17の部屋の一角だった。

三足草鞋の人間であってもこのマンションの部屋は重宝するようだ。

 

「お邪魔します……」

「ああ、そんなに律儀にしなくてもいい。ところでコーヒー、飲めるかい?」

「ええ。ミルクや砂糖は結構です」

「おっ、意外と硬派なんだな?」

「加持さんが軟派なだけだと思いますよ?」

「ははは……そこまで『お見通し』、という訳か?」

 

苦笑すると、ダイニングに潜り込む加持。

数分もすると、たちまちコーヒーの香ばしい匂いが漂ってくる。悪くない匂いだ。

 

「粗茶ならぬ粗コーヒーですが」

「いえいえ、美味しそうですよ」

「そう言いつつ口を付けないあたり、相当に警戒されてるみたいだな。大丈夫、特に何か仕込んではいないよ」

「いえ、ちょっと猫舌なもので」

「ふむ、そうか。で、本題に入るが……俺は君のことを知りたい」

「僕のことを? ……まさか、マリさんが言ってたように――」

「いやはやシンジ君、愛に性別は関係ないさ……」

「え、ちょ、ちょっと待っ……」

 

余りに意外すぎる反応に、動くことは出来なかった。

おもむろに目と目を合わせる加持とシンジ。

斜陽によって映し出されるその影は距離を縮め、やがて、二つは零距離に……

 

「……なんてな、単純な好奇心だよ。

最初の使徒、次の使徒と単独で完封、その次も少し苦戦はしたみたいだが、それでもきっちり倒したそうじゃないか」

「……え、ええまぁ、そうですけどね」

 

先ほどの妖しげな雰囲気とは一転し、再び何時もの男臭い、それでいて考えていることが何一つ見えてこないポーカーフェイス。

前史においては頼れる兄貴分であるという評価だったが、今では違う。この男、相当に厄介である。

 

「意外と自覚がないんだなぁ。俺たちの業界ではとんでもない功績だよ。君は自分の立場をもう少し知った方がいい」

「そんなもんですかね?」

「ああ」

 

かつての旧友、今となっては自身に埋まっている者と殆ど同じ発言に苦笑いしか浮かばない。

加持としては恐らくそういう意識は微塵もないのだろうが。

 

「さて、そんなわけで単刀直入に聞こう……君は、何者だ?」

「何者?」

「かつてオーナイン・システムと呼ばれたエヴァ初号機をシンクロ率65%で起動。

更に戦闘時にはほぼ100%のシンクロ率が実現している。これが果たして普通のヒトに出来得ることだろうか? ということだ。まぁ、選ばれた適格者ならば何でもアリだ、と言われたらそれまでだが」

「そんなこと言ったら、此間の綾波だってものすごいですよ」

「それもそうなんだが……今は君の話が聞きたい」

「そう言われても、僕には本当に何の意識もないんですよ。たまたまエヴァに乗ったら60%だとか90%だとかいう数値が出てきて、たまたま僕の戦い方で使徒が倒された。ただそれだけのことです」

 

シンジは、今はシラを通すことにしていた。

万が一彼も遡行者であるならばまた別の話だが、そうでもなければ話すのは少なくともサハクィエルを止めた後、遅くてもゼルエルを倒した後すぐになるだろう。

 

「たまたま、か……俄かには信じがたいがな」

「今は目の前の事実を受け止めて、それから考えて下さい。リツコさんも言っていた言葉です」

「なるほど……そいつは手厳しい」

「でも……」

「でも?」

「妙なことが、あります」

「ほう……妙とは?」

 

いきなり真実を話しても全てを受け止めてくれるかは微妙なところだ。

半端な信頼によって死なれて、またミサトが泣く事態になるのも嫌だ。

そこで、今後の自分の話に信憑性の箔を付けるべく若干仄めかしは加えておくことにした。

 

「単刀直入に言うと……予知夢という非常に不確実な手ではありますが、これからやってくる使徒が予測できたんです。『今までは』」

「へぇ……それは興味深いな。しかし、「今までは」ということは、今は出来ないのか?」

「出来ないという事はありません……が、最近になってそこそこ予知が外れているんですよ。

現に、マリさんの倒した使徒は僕が夢で見たやつと比べても海で行動しているくらいしか共通点がありません」

「そうか……次の使徒の予知夢は見たのかい?」

「一応、分裂する生物と、マグマの中で蠢いている生物の夢は見ましたが……正直これが使徒なのかどうかは」

「分裂に、溶岩で活動か……使徒の謎めいた生態パターンを考えればどちらもあり得るな。他には?」

「いえ……特には」

「そうか。もう少し裏があるんじゃないかと思ったんだがな」

「裏ですか?」

「そう。 例えば君が……未来人だとか。それならばいろいろ知っていることや、いきなりの高いシンクロ率、高い戦闘力。そして使徒の未来予知にも全て整合は付く」

「…………へぇ、面白い予想ですね」

「お、なかなかタメたな。案外図星だったりするのかな?」

「まさか。未来に行くだけならばともかく、時間遡行が出来ないというのはリツコさんに聞けば耳にタコができる位講義してくれると思いますよ」

「長い講義も美女のそれなら大歓迎だが、今はちょっと時間がないから勘弁してもらうか。つい最近、飛行機で過去から今年に車型タイムマシンでタイムスリップしてきた映画を観たもんだから、そういえばと思ったんだがな」

「そりゃあSF映画の世界ですよ」

「それもそうだな」

 

肩をすくめ、おどけて見せる加持。

しかしながらシンジはこの時、内心で非常に感心していた。加持の洞察力はシンジが思っていたよりもかなり高いようだったからだ。やはりこの男、侮れない。

あの碇ゲンドウが彼が三重スパイであることを認識しつつ、それでも泳がせていたという話もこの手腕があってこそ成り立つのだろう。

加持のこの発言は大当たり……なのだが、今それを晴らしてしまうのはやはり支障が出る可能性もある。

今はまだしらを通しておく……が、もう一つ示唆を与えておくことにした。

 

「まあ……何か分かったことがあったらその都度お話しますよ。加持さんはなかなか凄い方みたいですから」

「俺がか?」

「ええ。同時に複数のことをやるのはなかなか難しいですからね」

 

その言葉を聞いた瞬間、一瞬表情が強張る加持。だが、一瞬で普段の男臭い笑みを浮かべた表情に戻る。

 

「……はて、何のことかな」

「僕も分かりません。何となく言ってみただけですよ、つい最近そういうアニメを観たもんですから。……用事というのはコレだけですか?」

「あー……そうだな。うん。大した事でもないのに呼び止めて悪かったな」

「いえいえ……あ、そうだ。最後に、もう一つだけ」

「なんだい?」

「葛城さん……ミサトさんを泣かせるような真似だけは、しないでくださいね?」

 

この世界に来て、初めて彼女のことを下の名前で呼んだ瞬間である。

シンジには余り自覚はなかったが、加持としては結構そのことが意外なようだった。少なくともミサトから話を聞く限り、ある程度心を開いてはいるが決して一線を越えさせないということであったからだ。

加持も暫し考える素振りをした末、この場においては参った、という表情で口を開いた。

 

「……肝に銘じておこう」

「ええ。それでは……」

「ああ。今日はありがとう」

 

シンジは扉を閉めると、カヲルとの対話モードに入る。

どうやら魂を出入りできるのは本当らしく、呼び出したときに「それらしい」感覚はあった。

 

『いいのかい? 彼には結構な情報を与えてしまったようだけど』

「(良いんだ。加持さんにはこれからも何かと役に立ってもらわないといけないから)」

『そうかい……ま、君がそう言うなら僕は何も言うことはないよ』

「(分かってくれたならよかった。それより……)」

『ああ。そろそろ使徒の来るころだね。ガギエルが出るか、それともイスラフェルになるか、

はたまた別の使徒になるか……』

「(どの使徒が来るにしても、それなりに面倒な相手だ。慎重にいかないと)」

『そうだね』

 

ガチャン、と扉が閉まる。

 

「さて、と……かなり用心されてるみたいだな」

 

シンジを見送った加持は、残された一杯のコーヒーをちらりと見て呟いた。

その時、一通の電話が飛び込んできた。

 

「……ああ、もしもし。 ええ、ええ……はい。これと言って収穫はありませんよ。はい。俺は確かに接触し、その事実を確認しました。ハイ。」

「……そうですか、それはありがたい。お言葉に甘えさせていただきますよ。それでは」

 

その相手の主は、他でもない。

 

暗がりの部屋の中で、二人の男が佇んでいた。

一人は机上で手を組み座り、もう一人はその傍に立っている。

机の一人が電話を置くと、もう一人はどこか胸を撫で下ろしたような表情で口を出した。

 

「……シンジ君に、変わったことは特に何もないようだな?」

「……ああ」

「委員会に、どう報告したものだろうね」

「異常はなかった、今はそれで良い」

「あれ程の戦果を出しておいてその言い訳はなかなか苦しいと思うがな」

「問題ない」

「お前の根拠のない『問題ない』という発言程問題がある発言は俺は知らんぞ」

「…………いや、アレは本当に問題ない」

「……ほう。お前がそこまで言い切るとは珍しいこともあるものだな?」

 

怪訝な顔をする冬月。

ゲンドウはただ、その傍らでいつもの通りに手を組んで静かに座しているのみであった。

 

----

 

北極。

 

地球上でも非常に過酷な環境の代名詞ですらあったそこは、地軸の変わった今としてはそこまで寒いわけでもなく、かつてほど過酷ということはない。

感覚としては、日本の秋ぐらいの陽気だ。

 

少女は、そこに居た。

何かロボットのようなものに乗った少女は、オペレーターの通信が飛び交うコクピット内で待機していた。

 

少女の顔には緑色のバイザー状の機械が装着されている。そのバイザーには「EVANGELION-05」と刻まれている。

彼女は恐らく、パイロットなのだろう。

 

【Start entry sequence(エントリースタート)】

【Initializing LCL analyzation(LCL電荷を開始)】

【Plug depth stable at default setting(プラグ深度固定、初期設定を維持)】

【Terminate systems all go(自律システム問題なし)】

【Input voltage has cleared the threshould(始動電圧、臨界点をクリア)】

【Launch prerequisites tipped(全て正常位置)】

【Synchronization rate requirements are go(シンクロ率、規定値をクリア)】

【Pilot, Please specify linguistical options for cognitive functions(操縦者、思考言語固定を願います)】

「そうね……一先ず日本語でお願いするわ」

【Roger(了解)】

 

一呼吸おいてオペレーターに返答する少女。

 

「んー……やっぱ久々だと難しいわね……プラグスーツもまるで合わない……色も、着心地も、サイテー」

 

緑色のプラグスーツに不満を漏らす。

数分前からこのように文句を呟いていたが、オペレータは殆ど英語圏の人間である。日本語での呟きに気付く者は居ないだろう。

とはいえ、プラグスーツに対する文句以外には別に不満がある訳でもない。

このロボット……いや、人造人間。エヴァンゲリオン五号機に漸く搭乗することが出来たのだから。

 

「まぁいいわ。エヴァ五号機、起動!」

 

掛け声と共に、五号機が小さな咆哮を上げる。

地上に射出されると、目の前の移動物体を捉えた。

移動物体は巨大で白い体躯をしており、あたかも魚のような印象を受ける。

しかし、頭部には作り物のような顔がくっついており、やはり普通の生物でもないと言った様子だ。

 

「ふーんふーんふーんふふふーんふふ~ふふ~ふ~♪ 

……かつての敵国の歌なんて歌ってたら、粛清されちゃうかしら? ま、前のスクールの校歌だし仕方ないわよね」

 

ノリはあくまでも軽い。これから人類最大の敵の一つである存在と戦う、などという雰囲気は微塵もなかった。

エヴァの手にはナイフ状の武器が一つ。目の前の敵を穿たんと輝いている。

 

「さーて……行くわよ」

 

巨大魚に飛びかかるエヴァ五号機。

それに対して応戦する巨大魚。大口を開けると、五号機を完全に呑みこんでしまった。

 

しかし、全てはパイロットの策である。

 

「待ってました♪ どぅぉおりゃあああああああああああ!!!!!!」

 

『ウォオオオオオオ!!!!!』

 

その時、五号機とパイロットが共鳴した。大口を開け、その無機的な姿からは溢れんばかりの力を放出していた。

 

発せられた余りの力に思わず口を開く巨大魚。そしてそれが命取りとなった。

待ってましたとばかりに大量の魚雷が殺到、そして五号機の持っていたナイフも投擲される。

それらはすべて、口内の赤い球体……巨大魚の心臓部、コアを一撃で打ち抜いたのであった。

 

と、同時にパイロットが何かに気付いた。

先ほどまで自分のように動いていたエヴァが、今となってはピクリとも動かない。

残存電力にはまだ余裕がある……となると?

 

パイロットはこれが何を意味しているのか瞬時に把握した。

 

「まずっ! シンクロカット、脱出コード発動!」

 

宣言と共に暗転するコクピット内部。

それから数秒後、凄まじい衝撃がコクピット……エントリープラグとも呼ばれるそれを襲った。

プラグは爆発の数瞬前に五号機からの脱出を果たし、ブースターを吹かせながら彼方へ飛行を始めていた。直撃は免れたが、凄まじい衝撃がプラグを襲う。

それでも辛うじて原型を保ったプラグはそのまま北極海に着水した。

 

暫くして、プラグのハッチが開かれた。

 

「あいたたた……まさかこんなとこでパイロットの意思抜きに自爆するなんてどんだけ欠陥品だったのよ、アレは」

 

中から聞こえてくるのは少女の声。

頭部から血は流れているが、それ以外は大体無事なようだ。

 

「まあいいわ……生きてるし。さよなら、エヴァ五号機。久しぶりに楽しめたわね」

 

少女は先ほどまでの戦場を一瞥すると、自慢の長髪を翻した。




青「皆さんこんにちは。青葉シゲルです」
伊「伊吹マヤです」

…………

青「アレ? マコトは?」
伊「あれ、そういえばいませんね。何してるんでしょうか?」
青「今日はアイツが音楽鳴らすスイッチ持ってるんだから来ないと困るな」

タタタタタタ……


日「いやーすまんすまん、遅れてしまった。みなさんこんにちは、日向マコトです」

ジャンッ♪タタタタン、タタタタッタタトットトタッタタトットドルルルル♪
ジャンッ♪タタタタン、タタタタッタタトットトタッタタトットドルルルル♪

伊「あっ、今回はピアノなんですねーBGM。確か曲名は……シアトルマリナーズでしたっけ?」
日「違う違う、クアトロメインズだよ」
青「遅いぞ、何やってたんだよ」
日「あー。いや、ちょっと5年位前からやってたオンラインゲームが終わっちまうらしくて、最期を見届けていたらつい」
伊「全く……しょうがない人ですねぇ」
日「まあ、そういうなよお前ら。名前がSEから始まるこわい集団が始めたファンストがあいつ等自身の怠惰で終わっちまったんだから……」
青「おい、何だよその不穏なタイトルと集団名! 今そういうの煩いんだから止めとけって」
日「あーうるさいうるさい、今俺が喋ってんだよ。We Will Stop、OK?」
青「いやお前も止まるのかよ」
日「何を騒いでるのか知らんが、俺が言ってるのはゲーム会社だぞ? Service Gamersっていう会社なんだけど。
アイツらやべーよ、自分たちで定めて、パッケージ裏に深々と刻印したプロダクトコード有効期限もぶっちぎって半年早く終わらせちゃうんだもん、頭おかしいわアレ」
青「有効期限とかどうでもいいけどゲームスじゃなくてゲーマーズなの? それ作る側じゃなくて遊ぶ側じゃないの?」
日「フッ、説明しよう! 
ファンストとはファンタジーストライキポータブル2インフィニティ、まぁ数年前はそこそこ人気だったアクションゲームさ。
あ、実は俺もゲスト出演してるんだぜ? マコトを英訳したらライトにもなるからさ、日向・ライトっていう名前で出させてもらった」
青「もうさぁ、うん…………投げやりってレベルじゃねえな。タイトルとか色々もう隠す気無いよねうん」
伊「へぇ~。そうなんですか。すごいですね」
青「マヤちゃんスッゲー棒読み」
日「まぁ、それはそうと。

某サイトにこれが紹介されていたらしいな」
青「へー、何かスゲーなそれ」
伊「スタイルとしては全網羅するサイト様とのことですが、なかなか有難いものですね。願わくばそこから読んで下さる方も増えるとより嬉しいです」
日「だなー」
青「そういう訳で頼むからマコト、これ以上変な風に評価下げるの止めてくれよ? 此間も一人定期聴者層からいなくなっちゃったんだから」
日「変な風に評価を下げる? 何を言ってるんだ?」
伊「……まぁ……とりあえず、この辺で雑談はおしまいにしましょう。
さて。今回はいよいよ加持さんが登場した訳ですけども」
日「……まぁ順当な流れではあるよな」
青「ん、突然暗くなってどうしたマコト」
日「察してくれよ……」
伊「うーん……日向くん」
日「なんだいマヤちゃん……」
伊「世の中には2つの夢があると思うんです。叶わない夢と叶う夢」
青「止め刺さないでやれよマヤちゃん……」
伊「?」
日「」
青「あー……とりあえず進めようか」
伊「はーい。

さて、ひとつ目の質問……シンジ君が歌ってた『ご当地ソング』とやらに聞き覚えがあるということですが」
青「あーあれかぁ。確か」
日「『ボーイズ&フラワー』略してボーフラの劇中歌だよ」
青「唐突に復活したな、というか劇中歌だよって言われてもふんふん言ってるだけじゃ分かんねえよ!」
日「いや、ボーフラの監督実は俺だし。ふんふん言ってるだけでも余裕で分かるぞ」
伊「大人の事情なんですね分かります」
日「ボーフラはいいぞ、色んなことが見えてくるし分かってくる。楽しいこととかな」
伊「加持さんの真似すれば良いというものでもないと思います」
青「……で、なんなんだよボーフラって。まさかまた……」
日「説明しよう!
ボーイズ&フラワー、略してボーフラとは、
とある山奥の箱庭都市の一角に存在する『小汚男子学園』という所に東住みきおという少年がいてだな、
まぁそいつは花道の家元の生まれだったんだけど、花道やりたくなくて花道部のない高校に転校したんだ。
でも実は諸事情でその年からその高校では花道部を復活させることになっていて」
青「色々逆にすれば良いってもんじゃないだろ」

五分後……

日「というわけで、あのシンジ君が歌ってたご当地ソングは「げんどう音頭」っていう名前でな? 碇司令のポーズと衣装で踊るんだけど」
青「というかなんで碇司令を許可なくアニメに使ってるんだよ……ん? あ、貴方は!」
ゲンドウ「……」
日「実は最後に歌ってた「粛清される」とかいう曲も、実はそのアニメに……ん? どうしたシゲル」
青「……右、右」
日「……あっ」
ゲ「話は聞いたぞ日向二尉……なかなか面白い作り話ではないか」
日「え、いやそのあの」
ゲ「どうした? 続けたまえ日向ニ尉。君の監督作品なのだろう、その『ボーフラ』とやらは。これは命令だ」
日「……パンツァーふぉぉぉぉぉぉ」

更に数分後……

碇「日向二尉、三ヶ月間の減給だ」
日「」
碇「これに懲りたら馬鹿な創作は控えたまえ……」

どすどすどす……

伊「ま、自業自得ですね。あぁそういえば、日向君に触発された訳じゃないんですけど私も創作やってみたんですよ。映画なんですけどね」
青「へぇ? 映画を作るなんてやるなあ。どんなの作ったんだい?」
伊「えっと、タイトルは『ぱくりびと』です」
青「えっ」
伊「粗筋としては主人公のとあるデザイナーが国家の一大イベントを象徴するデザインにあたって別の方の作品を盗作したのがバレてですね」
青「だからなんでそうやって危ないネタで創作!? マヤちゃん確実にマコトに毒されてるよ!」
伊「えっなんですかそれは。よく分からないので次の質問にいきます。
青「うんもうやだこのラジオ。もうゴールしていい? チーズ蒸しパンになりたい」
伊「はいはい……。

えっと……加持さんはコンフォート17住まいじゃなくない? ということですが」
青「それもう因果律の違いでよくね?」
伊「えー、でも前史で加持さんってどこに住んでましたっけ」
青「そういや何処だろうな」
伊「確か三重スパイとかやってましたし、不定かもしれないですねこれ」
青「あー確かに」
伊「それに今回も、シンジ君をたまたまコンフォート17に呼んだだけかも」
青「あり得る」
伊「というわけでまぁ因果律の違いですね」
青「結局それかよ」
伊「やむを得ませんっ。はい。では最後の質問。

『旧劇のタイムスケジュールで更新するのはいいけど、公式でスケジュール決まってなくね?』ということですが」
青「あー。確かに……一応、ファン間では暫定的に「6/22にサキエルが襲来した」ことにはなっていて、
それに沿ったスケジュールがあるものの、綾波レイ補完計画などでは微妙に早いんだよな。5月くらいにサキエルがやってきたりしてたし?
しかも流れが微妙に旧劇と新劇が混ざってるから一概にどういう時系列になるかっていうのも微妙なところではあるけど……
とりあえず更新される日自体が気になる方は『エヴァ 時系列』とでもググってくれればいいんじゃないかな。飽くまでファンサイトだから公式のものじゃないけど、結構そういう時系列として捉えてる人が多いらしい。これもだいたいそれに沿って更新はされるはずだから」
伊「公式設定がない以上は純粋に4月1日から始めても良かった気はするんですが、まあそこは認知度という奴ですぅ」
青「唯一明確に日にちが分かっているのは今日、アスカちゃんが第壱中学校に転入してきたということ位。
後はイスラフェルが10月の頭に襲来するらしいが、どうもカレンダー的な辻褄が合わないらしい」
伊「10月は後サンダルフォンも来るらしいですからね、10月は更新が少し多くなるかもしれないということです」
青「どうせ何かにこじつけて1回で纏めたりしてな」
伊「まぁどうなるかはともかく、10月に少なくとも1回以上。11月に1回の更新。そして某サイト曰く、何とその次の更新は来年の2月になってしまうらしいですね」
青「え、スパン長すぎじゃね? 12月1月と冬休みシーズンなのに視聴者増やさないの? 死ぬの?」
伊「いやまぁ12月、1月とイベント尽くしですからクリスマス番外編とかやるんじゃないですかね? 後は司令サイドの描写が結構薄めなのでそこを補完してみたりとか」
青「まーそこはその時になってみて、だなー。……しかし、サハクィエルが落ちてくる日は酷いな」
伊「そうですか?」
青「だって2/23だよ? その2~3日後には全国のたくさんの高校3年生が葛城さん、赤木博士、碇博士あたりの後輩を目指して戦うんだから。そんな日によりによって「落ちて」くるなんてなあ」
伊「……ま、まぁ! 「落ちる」ものを撃破しました! 
ということでむしろ演技がいいんじゃないですか? きっとそうです、はい」
青「ま、ゲン担ぎも程々にしましょう、ってこったな」
ゲ「青葉二尉?」
青「? ……って、司令まだ居たんですか!? 違いますからね!
ゲン担ぎってそういう意味じゃないですから! ……そ、そういやマコトはどうしたんだ?」
伊「さぁ……」

日「…………もう既に10.5話まで放送完了してるからな……今からでもホームページ公開という形をとれば……いやにこtubeに……ぶつぶつ」

伊「……なんか自分の世界に入ってますぅ」
青「ほらマコト、もう時間だぞ? 葛城さん来るんだから少しはしゃんと……」
日「ぶつぶつ……最終的に白海刃と小汚学園の対決を……!!」
青「……マヤちゃん、ありゃもうダメな奴だわ」
伊「はい、終わらせましょっか。葛城さーん」
葛「はいはーい……あれ? 日向君は?」
青「なんか自分の世界入ってますから放っといてやってください」
葛「あらそう……ま、いいわ。じゃあいっくわよーん?
『加持との対面を終え帰路につく碇シンジ』
『間もなく現れる使徒サンダルフォン、しかしやはりどこか違ってゆく戦い』
『現れぬイスラフェル、変化するサンダルフォン。これが意味するものとは果たして』
『次回、【瞬間、マグマ、泳いで】』それじゃあこの次も~、」
「「「「サービスしちゃうわよん♪」」」」

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