再臨せし神の子   作:銀紬

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第九話 ネオンジェネ・エヴァンゲリカルテット

「……なるほど、少し拙いわね」

 

コンピュータ画面と睨めっこしながら呟くのは赤木リツコ。

使徒の修復能力の解析を行うにあたり、少々拙い事態が起こっていることが分かったようだった。

 

「ん? 何が?」

 

それを見ていた葛城ミサト作戦部長が、何のことなのかとリツコに問う。

彼女は作戦立案も含めた軍人としての能力こそ既に一流レベルではあったが、

生憎ながらリツコが今まさにやっているような小難しい解析のことは畑違いである。

当然の疑問でもあった。

 

「使徒のことよ。ダメージを与えたは良いものの、回復能力がかなり高いことが分かったの。

現時点で此間の襲来時点の一テン五倍の硬度を持っていると推測されるわ。ATフィールドこそ回復中で張れないようだけど、ここまでくれば最早ATフィールドなんて必要ないのかもしれない」

「え……それ、大丈夫なの……?」

「まだ大丈夫よ。二倍を超えたらかなり厳しくなってくるけど……まああの時は羽化したてということもあって、外殻が固まり切っていなかったとか、色々要因は考えられるわね」

「あるいは作戦変更も考えないといけないかしら」

「どうでしょうね」

「……例えば、動かないのをいいことにPSRで一気にカタを付けるのはどう? アレ、まだ改良進めてるんでしょ?」

 

リツコから提示された戦況を元に、頭の中で作戦を色々と組み上げていく。

そのうち最も成功率が高いと考えられるものが、こうして原案として口に出される。

 

今回の作戦においては、やはり今のところ使徒が現段階では全く動かないというのがキモになるだろう。そのおかげでユニゾン作戦の訓練が十日間行えるのだから。

今後の使徒ではどうなるか分からないが、今回の使徒については自己修復にあたりかなりの時間を要しているのだ。

ならば、その修復中にでもヤシマ作戦で扱われた巨大迎撃兵器、ポジトロンスナイパーライフルを用いればそのまま跡形もなく消し飛ばせるのではないかという結論に至った。ATフィールドも検出されていない今がまたとないチャンスでもあるだろうと判断したのだ。

 

即興で考えたにしては、悪くない戦法ではある。

 

ただ勿論、言葉にされた条件が全てではない、ということも往々に起こるのが戦場である。

 

「悪くはない作戦だと思うけど……倒せなかった時が大変よ?

修復能力が現れるほど硬化が進むとすれば、倒せない攻撃をするほどこちらが窮地に立たされることを意味するわ」

「あら、そう……じゃあ、この作戦はちょっち厳しいわね。

となると……今は三人のユニゾンを待つしかない、か」

 

ミサトは至極残念そうな顔をして、再びモニターに目を向けた。

 

結局のところ、ユニゾン訓練の成果を待つしかなさそうである、というのが結論になった。

使徒は確実に硬化し始めているが、かといって自分たちで今何とかできる相手ではない。

 

全てはエヴァンゲリオンパイロットの三人に託されることとなったのであった。

 

----

 

ところで、訓練開始から四日後のこと。

 

葛城ミサトと加持リョウジはシンジたちの様子を伺いにやってきた。

 

初めは加持が普通にデートに誘っていたのだが、のらりくらりと身を躱すミサト。

ならばとチルドレンの様子を見るという名目を出した結果、渋々ながら外に連れ出すことが出来た次第だ。

 

「さぁ~て、シンちゃんたちは上手くやってるかしらね~」

「なぁに、アイツならともかくあの三人だ、そこまで仲も悪くないだろうし心配することは……ん?」

 

かつてのしがらみは一先ずどこかに置いてきたかのように和気あいあいと雑談しつつ進む中、加持が何かを聞いたようだ。

すっ、と耳を立てる。

 

『……あっ……』

『んん……』

 

聞こえるのは、やや異なる二人の少女の控えめな嬌声である。

一人は鈴の鳴るようなか細い声、もう一人はややハスキーを含んだ声。

どちらも声の質は違えど並々ならぬ熱気を孕んでおり、非常に扇情的な雰囲気を醸し出していた。

 

そして何より二人に違和感を与えたのは、その声が妙に聞き覚えのある二人の声であった、ということだ。

 

「……なんか妙な声が聞こえるな」

「……まさかね?」

 

恐る恐る、ドアを開ける。

 

 

「んん……ッ、わんこ君、地味にドSにゃぁ………痛い……でも気持ちイイかも……」

「あっ……もうちょっと…………優しく」

「そんなこと言われたって……僕だって無理だよ、もうこれ以上は……ッ!」

 

声の持ち主は、予測したとおり。年不相応に甘美な声を漏らす二人。

そして、やけに切羽詰まったような少年の声。

聞こえてくる声を額面通りに読み取れば、つまり「そういうこと」をしているに他ならない。

 

嫌な予感が、的中したのだろうか?

 

一瞬顔を見合わせて、頷きあう二人。躊躇という言葉はもうなかった。

 

「昼間から何やってんじゃあオノレらはアアアアア!?」

 

ドガーン。

バサバサバサバサッ。

 

けたたましい音に驚き、青葉を咥えた鳥たちが飛び去っていった。

 

比喩でもなくまさしく自宅のドアを蹴破り、部屋に侵入するミサト。その表情はすっかり憤怒に燃えた鬼の如き形相だ。

まさかまさか、前々からどこか普通ではない少年だと思っていたが、隙を与えてみたらとんだプレイボーイも居たものだ。此間のマリのテクニシャン発言は冗談ではなかったのか?まるで隣の男のようである。

 

しかし、威勢よく突入したミサトの意に反した光景がそこには広がっていた。

 

「あー……わんこ君、そこもうちょっと左……」

「……私はこれでイイ」

「…………トホホ」

 

そこには、寝転がっている二人の背中を器用に、且つ何か諦めたような顔でマッサージしているシンジの姿があったのだ。

一方の二人は確かに恍惚とした表情を浮かべるものの、決して先ほどまでミサトが想像していたようなものではなく、むしろ純粋に心地が良い、ということを表している柔らかな表情でもあった。

 

ミサトは呆気にとられた顔をし、その後ろでは加持が肩をすくめている。

 

「あれ……え、えっと……」

「あれ? ミサトさんじゃないですか。どうしたんですか?」

「いらっしゃいミサトちゃん」

「……こんにちは、葛城一尉」

「あ、二人ともコンニチハ……えーと、加持と様子見に来たんだけど……」

「そうでしたか、今お茶をお出しするので待っててくださいね」

 

とてとて、とダイニングに向かうシンジ。

 

「……あたしったらなんてこと想像してたのかしら」

「うーん……そうだ、もしかして溜まってるんじゃないのか? 俺で良ければ相手するぜ、葛城」

「その必要はないわ」

「やれやれ……つれないなぁ。そうだ、マリ、レイちゃん、どうだい訓練の方は」

「ん~、完成度八十パーセントってところにゃ(よ)」

「おっ、そいつぁほぼ息ピッタリってことじゃないか。こいつは頼もしい」

「そうねぇ、エヴァさえ直っていれば今すぐにでも出撃させたいけど」

「ま、時間があるのはいいことだ」

 

等と話していると、シンジが人数分の茶を配膳してきた。

 

「どうぞ」

「ありがとう」

「すまないな……シンジ君の調子はどうだい?」

「まぁ、真希波さん達が言ってたように大体八割程度の完成度ですよ」

「そうか」

「一回通しで見せてもらえるかしら?」

「分かりました。真希波さん、綾波、やろう」

「分かった(ニャ)」

 

ラジカセのスイッチが押されると、BGMが流れてくる。

躍動感あふれるBGMをバックに、三人の肢体が宙を舞う。

 

一見、八割の出来というのが謙遜に見えるほどの見事なまでのユニゾンであった……あったのだが、

 

「……悪くは、ないな」

「ええ……でも」

 

二人の歯切れはどうも宜しくない。

その気配を察知したシンジは訝しむような顔をしつつも、目の前のユニゾンに集中した。

 

やがて、一通りBGMが終わる。同時に、華麗に舞っていた三対の肢体もピタリと動きを止めた。

 

「……どうでしたか?」

「悪くない出来だったと思うにゃ」

「えぇ、悪くはなかったわ」

「そうだな」

「悪くはない……良いわけでもないということ。

……何か問題でも?」

 

ミサトの言葉に少し反抗心を見せるレイ。いつもの無表情さは変わらないが、どこか怒りもはらんでいるように見えなくはない。

それについて、加持が代わりに返答した。

 

「そうだな……君たちは、あまりに「無難すぎる」」

「どういうことですか?」

「君たち、今の自分の年齢と性別を考えてみろ?

まだ齢は十四かもしれんが、既に子供の歳じゃないのも確かだ。そして君たちは仮にも異性同士のハズだ。

俺も舞踊に詳しいわけではないから分からんが……こう、何か違和感がある。特に、思春期の少年少女、として見ればな」

「つまり…………どういうことです?」

「本来は時間を掛けて君たちが気付くべきことだが、生憎その時間もない。だから端的に言えば……思春期特有の『揺らぎ』が欲しい、という訳だ。

……そうだろ? 葛城」

「まぁ、そういうことよね。

勿論普段は幾らでも安定していていいんだけど、今回は違う。貴方たちもあの使徒の外殻の硬度は分かっているはず。

恐らく単調な同威力の攻撃だけで破れる可能性は低いのよ。勿論、揺らぎに頼って低周波の一撃を与えちゃってもそれはそれで勝てないんだけどね」

 

揺らぎ……なんとも不確定な言葉だろう。そんなものに頼らなければ、あの使徒は普通に倒すことは出来ないというのか。

シンジの中の不安はうなぎ登りであった。

 

「でも、その単調な攻撃がめちゃめちゃ強かったらそれでいいんじゃないかにゃ?」

「それはもう願ったり叶ったりだが、そう上手くも行かないだろう?

リッちゃんがあの使徒の詳細なデータをある程度入手できたらしいが、硬度が体組織の回復と共に日増しで上がっているとのことだ。今のところまだ三体の荷重攻撃で討伐できるレベルではあるようだが、このペースで行くと非常に雲行きは怪しいらしい」

「つまり、かなりギリギリ……ってことですね」

「そういうことだ。だから、万一の場合に備えられる、いわば底力的なものが欲しい……だが」

「……今のあたしたちにはそれがないってこと?」

「まぁ、飽くまでも推測だ。君たちの力を信用していない、と言う訳では決してないがな。

……俺と葛城はそろそろ本部に戻る。この答え、よければ出来る限り探求してみてくれ」

「そうね……仕事が残っているから、このあたりで失礼するわ」

 

言うだけ言って、二人はサッと立ち去ってしまった。

 

「……揺らぎ、って言われてもなぁ」

「困ったにゃあ……」

「どうしましょうかね」

 

もうユニゾン自体は一通り完成しているので、長考する時間はあった。

 

『いざという時は初号機を覚醒とまではいかずとも準覚醒状態、所謂暴走状態にすることも止む無しかもしれないねぇ』

「(最終手段としては、そうなるね……)」

『後は……』

 

しかし、ウン時間頭をひねっても一向に解決策は出てこない。三人居れば文殊の知恵、厳密に言えば四人居るのだが、三人も四人もそこまで変わるわけではない。

 

……そんな状況を打破したのはマリの一言であった。

 

「んー……BGM、変えてみるかにゃ?」

「えっ?」

「このBGM、悪くはないけどね、何かこう、緩急が足りないというかね? 

そう! 確かに揺らぎが足りない! というか、根本的な勢いが足りないッ!

これじゃあちょっとやそっと揺らいでも勝てる訳がないにゃ」

「それはまぁ、勢いが少ないのは何となく分かりますけど……」

「やってみましょう。このままでは埒もあかないわ」

「レイちゃんは話が早いね、わんこ君は?」

「や、特に反対はしませんけど……勝手にBGM変えたらやっぱ怒られるんじゃ?」

「もう! 日本人は何でそんなに保守的かなぁ……だから大阪高層ビルだか大阪徒競走だかなんだかもぜんぜん通らないにゃ!」

「でも……」

「でももへちまもないわ。あたしのとっておきのこの曲でいこっ!」

 

そう言って、マリはどこからか取り出したS-DATから音楽を流し始めた。

 

----

 

そこは、静止した闇の中。

 

巨大なスクリーンに投影された映像が、老獪な男の操るリモコンによってブツリと途絶える。

 

男は、隣に座っている少女に目を向けてみる。

少女は子供特有の興味津々と言った様子で画面に喰らいついていた。

 

「……お気に召したかな。元パイロット君?」

「……面白い」

「そうか、その様子からしてそうなのだろうな」

「誰も今の私には勝てなかった。

でも、それはただ私の周りの人間が弱すぎただけということもはっきり分かったわ。

……アイツなら、きっと楽しませてくれるハズよ」

 

満足げに頷く少女。

 

「……見る限り貴様には有り余る戦闘への執着があるようだな。

しかし、如何せん無差別に闘いの火の粉を浴びせるには僅かに力が足りぬだろう……

貴様をいずれ必要とすることになるやもしれぬ我々にとっても、貴様の力不足は懸念されるのだ」

「へぇ……じゃあ、アンタらがそのアタシに足りない力とやらをくれるっていうワケ?」

 

何故、目の前の老獪な翁が自分の力を欲するのか。そう、妙な印象は持った。

だが、別にそれ程の違和感もなく、それ自体はすんなりと受け入れられる。

 

「そうだ。貴様にとっても悪い話ではなかろう?

幼くして母を亡くし、父はそもそも存在していない、真に貴様を愛する者が現状では一人たりともいない今、力と金が必要ではないかね」

 

確かにそうだった。

少女の記憶の中の母は、幼い頃の自分を遺して消えた。父親の姿はそもそも覚えていない。

 

確かに、独りだった。

 

が、それを表に出すことはしない。飽くまで、笑顔を絶やさない。

この年代の少女特有の、あどけない笑顔。

けれども、その底はどこまで行っても見える気配はない。

 

「まぁ……そうね。

いい加減今の退屈な、縛られた生活にも飽き飽きしていたもん。矮小なガキ共の相手はそろそろ御免被りたいわね。いいわ、話に乗りましょう」

「ならば……契約は成立だ。明朝九時、指定した場所に来たまえ。貴様に最強の力を授けることをここに誓おう」

「その代わりに、明日以降「任務」を遂行していけば良いわけね。私は一向に構わないわ。

……金ももらえて力も貰えて、暇も潰せて。

こんなに私にメリットしかない契約をするだなんて、本気?」

「我々は己の計画の為ならば如何なる計画でもする覚悟でいる、ただそれだけの話だ」

「そう……じゃあ、契約は成立ね」

「……今後の働きに期待しているぞ」

 

老人はほくそ笑みながら姿を消す。

老人は実体ではなかった。飽くまでも、ホログラムとして少女の前に現れていたのだ。

 

 

そこに残された少女もまた、妖しく笑みを浮かべている。

 

「相変わらず、臆病な爺さん達ね。所詮は自分の命が可愛いということか。

 

……さてと。久しぶりに、明日は『踊りましょう』か?」

 

----

 

加持とミサトが様子を見に来てから、更に六日後。

ついに決戦の日が訪れた。

 

パイロットの三人は既にエヴァで待機している。

既に準備は万端、と言った様子の、自信に満ちた面をしていた。

 

その一方、本部の空気は重たいものであった。

ミサトとリツコ、そしてマコトが資料を読み合っているが、どの声もやはり重い。

そう、目の前にはどれも絶望的な数字が並んでいたのだ。

 

「ダメね……このままでは三荷重でもあの外殻を破り切れない可能性があるわ。まさか修復するだけでなく進化するとはね」

「リツコ、そんなにヤバいの?」

「ええ。試算した結果、先週焼却を試みた時の硬度の約三倍」

「……それって、かなりヤバくない?」

「そ。二倍までならどうにか誤差の範囲だったけれども」

「三人ともとても安定してはいるけど、それが故にそれ以上の火力を出せるかは怪しいところね……」

「白旗でも、上げますか?」

「ナイスアイディア! とも行かないのが辛いところね」

 

日向の軽口にミサトが応えていると、

 

『『『やってみなきゃわからないですよ(ないわ)(ないニャ)』』』

「君たち……」

『『『百二秒で、ケリを付けます』』』

 

完全にユニゾンした声色が、幾分か本部の空気から重みを取り除く。

子供たちはあんなに自信満々だというのに、自分たちは何をしているのか。そんな思いが、本部人員を突き動かした。

 

「そうね、今は貴方たちに全てを賭けるわ。ミサト」

「三人とも、やれることの全力を尽くしなさい。私から言えることは、それだけよ。それじゃあ……ロックボルト、解除。エヴァンゲリオン初号機及び弐号機及び零号機、はっし……」

『『『エヴァ、発進!』』』

「え! ちょっと、三人とも!? 無許可での発進は……」

「無理です、もう止められません! シークエンスすべて完了しています!」

「なんてことを……」

 

ミサトの発進命令を待たずに射出口を飛び出す三体のエヴァンゲリオン。

黄、紫、赤が息ピッタリで動いている。ユニゾン自体はあらかた完成していたようだ。

 

「BGMも何者かによって変更されています!」

「えぇ!?」

「これは……一体何の曲なんですかね?」

「わ、分からないわよ……」

 

突然バックから流れ出す、自分の選曲とは百八十度近く異なる奇妙な曲に困惑するミサト。

彼女の選んだ曲は所謂クラシックじみたものであったが、これではまるで……

 

「確認されました。えー、これは……?

…………テレビ第三新東京にて深夜帯に放送されている……アニメ・ソングですね」

「へっ?」

 

日向の報告に、ミサトは場には似合わぬ間抜けな声を出すしかなかった。

 

イレギュラーが起こっていた発令所とは反して、戦局はいたって良好であった。

三体が射出されたのは使徒の丁度真上。

それに気づいた使徒は真っ先に応戦しようとするが、単体対三体には流石に対応しきれないようだ。

すぐさま分裂を試みると、一体は初号機、もう一体は零号機と弐号機についた。

しかし、既に三日前には完璧に揃っていたユニゾン動作によって、結局殆ど常時殆ど平行線に使徒が並ぶことになる。

 

『還るぞ、溶けるぞー! あ・な・た・の?』

 

BGMから流れる声と共に。

 

『『『人形じゃなーい!』』』

 

三本の拳が、それぞれの担当のコアにアッパーとして突き刺さる。

初号機単体に対し零号機及び弐号機の出力単体では及ばないが、初号機と零・弐号機に分担することでほぼ同じ負荷を同時に与えることに成功したのだった。

これにより荷重攻撃程の威力ではなかったが、使徒のコアにヒビを入れることには成功した。

 

「使徒、損傷率四十パーセント!」

「凄い……これなら行けるかもしれないわ」

「い、一体何が起きているのかしら……?」

「ミサト、これは現実よ。目を覚ましなさい」

『使徒のコアに亀裂発生!』

『各機体、現在のところ損傷はありません』

『残存電力、残り五十秒!』

 

リツコがミサトを目覚めさせる間にも飛び交うオペレータたちの声。

 

「いけないいけない……迎撃システム担当、及びUN軍に通達、ミサイルによる援護を!」

 

残存電力まで聞いてから正気に戻ったミサトが告げると、瞬く間にイスラフォンに向かうミサイル。

コアに強烈なダメージを受け動きの鈍くなったところに突き刺さるが、どれもはその硬い外殻、及びATフィールドによって阻まれる。

むしろそのエネルギーをATフィールドの応用で三体への攻撃に転用した。

 

迫りくるビーム。それをもエヴァ三機は各々軽やかに避けてみせる。

攻撃が少し通りにくいだけで、エヴァの戦闘力は圧倒的なものであった。

 

何より目を見張るのは、その闘いぶりのなんと美しきことか。

三体のエヴァが、使徒の周りを華麗に舞う。

一体のエヴァが囮になり、後ろから使徒に追撃を加える。

使徒が二体に迫ると、今度は一体が使徒に一撃を喰らわせる。

 

その動きは、まるで三人が思考が完全に一致した一人の人間かのようで、それを三体が行っているという事実がその場に美しさを生み出していた。

 

そしてついに、人類の待望せしその時は訪れた。

 

前史同様、一直線上に使徒が並ぶ。

それと同時に、使徒が完全に一体化する。

 

「今よ、決めなさいッ!」

 

ミサトの声が飛ぶ。それとほぼ同時に飛び上がる三つの巨体。

 

『必殺! 私たちのッ!』

『福音拳法、AtoZ!』

『このあたし、真希波マリイラストリアス直伝ッ!!』

「え、えっ!?」

 

突然ことさらに妙なことを口走り出した三人に思わず怯むミサト。

一方の三人はいたって真面目であり、その目線は使徒のみに向いていた。

三体は真上に飛び上がると、まさしく一体化する。

 

そして利き足を前に突き出すと、らせん状に回転を始める。凝縮された三体のATフィールドがやがて黄金に光り輝いた。

 

『一つにして全!』シンジ。

『全にして一つ!』マリ。

『死は、君たちに与えよう』レイ。

『『『カム・スウィート・デスッ!!!!』』』

 

殲滅対象へ音速もかくやという速度で吸い込まれてゆく黄金の塊。周囲には強大なソニックブームが生成された。

やがて最高速度に到達するのとほぼ同時に、赤・紫・黄がイスラフォンを一直線に貫いた。

 

寸分のズレもない一撃はイスラフォンを貫いただけでなく、イスラフォンを遥か遠くの山間部まで吹き飛ばしてみせる。

既にヒビの入ったコアにそれほどの一撃を受け切る強度は残されておらず、やがて爆発四散した。

 

ピーッ。

 

それを見届けたところで、三機の内部電源が尽きたことを示す甲高い電子音が鳴り響く。

三体の福音は縺れるようにして倒れた。

 

暫し、しんとする発令所。

 

全員がそのモニターに暫くの間釘づけになる。

 

その静寂を打ち破り、ミサトがシゲルに戦況を問うた。

 

「……青葉君、状況は?」

「…………は、はい。パターン青……消失! 勝ちました!」

 

ミサトに促されてハッとなった青葉が、自分のコンピュータの画面に映る「PatternBlue:Vanishing」という文字を見て、見る間に笑顔になりながら報告する。

 

それとほぼ同時に、発令所も歓喜の声で埋まった。

 

ワァアーッ!!!!

ブラボーッ!!!!

 

「三人とも、よくぞやってくれた……!」

 

冬月から始まり、

 

「おめでとう!」

「よくやったな!」

「おめでとう!」

「おめでとうっ!」

「おめでとう!」

「めでたいなぁ!」

「おめっとさん!」

「クワッ!クワッ!クワァアック!」

「おめでとう!」

「おめでとう!」

 

飛び交うオペレータたちの声。普段はこんなことはないのだが、何分勝率が絶望的数値だったのである。この反応も全く無理がないものであった。

 

その後方では、賛辞の声の代わりにため息をつくミサトの姿もあった。

 

「はぁあ……」

「あら、勝ったというのに貴方らしくないのね?」

「そうだな、いつもだったら今夜はパーッと行きましょう、とか言いそうなもんだが」

「いや、どーもBGM書き換えたりしたのもあの子たちみたいだからね……後で何とか言ってあげなきゃ」

「ま、程々にしておきなさいよ? あの子たちにはこれからも頼らねばならないのだから」

 

このように、一部上層部が苦渋の表情をしていることなどは露知らず。

発令所の歓喜は暫くの間続いた。

 

『『『ありがとう(ございます)(ニャッ!)』』』

 

祝福された三人も、やがてモニター越しに微笑んだ。

 

----

 

「真希波マリ」

「碇シンジ」

「綾波レイ」

「「ただいま戻りましたっ!」」

 

 

二人の少女の声がユニゾンする。

 

 

……………………

 

「わんこ君?」

「は、恥ずかしかった……」

「くぉらあわんこ! 最後まであたしたちに合わせなさいッ!」

「そう……これがKYという奴なのね」

「いひゃいひゃいやめひぇくらひゃいまひひゃひひゃん」

 

エヴァを降り本部近くの広場に戻ると、早くも何時もの雰囲気に戻る三人。

何時だかにミサトがマリにやったように、マリがシンジの頬っぺたをうにゅーっと伸ばす。

その光景を見て、和やかな雰囲気が現場を包んだ。

 

そこには先ほどまで、当然と言うべきかなんというべきか、怒りを露わにするミサトの姿もあった。

あったのだが、この三人の余りの息の合い様に毒気を抜かれたようだった。

 

「お疲れさま」

「はぁ……みんな、お疲れさま」

「どうしたんですかミサトさん? リツコさんと比べてなんかとても疲れてそうですけど」

「いや、あんた達のせいだからね……? どうして勝手な行動をしたのよ、BGMも勝手に変えて」

「それは……えっと、真希波さんが……」

 

~~~~

 

「BGM、変えよっか!」

「す、凄い曲……でもいやですよ、なんで今更なんですかっ!」

「いいじゃ~ん、這いよる異形を倒すにはピッタリな曲だと思うにゃ」

「何でも良いわ、私は黙って敵たちを蹴散らすだけよ」

 

早くもシュッシュッとシャドーするレイ。果たしてその目線の先には何が見えているのか?

 

「ほらワンコくん。レイちゃんなんて早くも歌詞をサラッと会話に取り入れてる!!」

「ええ~……」

「ついでにあたしがオリジナル拳法教えたげる。『福音拳法』っていうんだけどね、これで使徒もイチコロよ!」

「む、無理ですよ……そんなの見たことも聞いたこともない拳法、出来っこないですよっ!」

「だーいじょうぶ、あのオペレータの青葉君がやってたロン毛神拳よりはましだから。

アレやってる青葉君は何だか一位から十位までの人気投票ランキング全部自分にしてそうなナルシストっぷりだったようん」

「嘘ですよね? それ絶対その場ごしらえの嘘ですよね?」

「もー煩いなあ、細かいことばっか言ってちゃあレイちゃんに嫌われるよ?

なぁに、福音拳法の中でも易しめな一つのワザを極めるだけニャ」

「いや、そうはいっても……」

「ワンコくん、逃げちゃダメよ。拳法から、何よりも自分から」

「分かってますよ、でも、短期間じゃ出来る訳ないですよぉ!」

 

ふと気になるのは一連の会話である。物凄く、物凄くデジャヴを感じるのだ。

あの時マリはあの場に居なかったはずであるが、どういうことなのだろうか。本当にただの偶然なのか。

 

「ほーん……じゃあ、イイのかにゃ? あのこと、バラしちゃっても」

「あのコトってなんですか!?」

「あのコトはあのコトにゃ。レディーには秘密の一個や百個はあるものぜよ進時ィ」

「いや、僕知りませんからね?……というか、僕の名前何かおかしくないですかそれ」

「で、曲を変えるか、バラされるか。どっちがいいかにゃ……?」

 

じっ、とシンジの目を見据えるマリ。

その目の輝きは、魔眼という表現が最もよく似合っていた。

拒否権を与えない、肯定のみを許したその視線に勝つほどの度胸は生憎持ち合わせていなかった。

 

皮肉にも、あの時と全く同じセリフで。

 

「……分かりましたよ。やります。僕もやります」

 

肯定するハメに、なったのである。

 

~~~~

 

「っていう訳なんです」

「ミサトちゃんたちが無難すぎるって言ったから、こっちから打って出ただけニャ。でもおかげで、揺らぎなんかに頼らなくても行けたからまぁ、多少はね?」

「……言わなきゃよかったかしらね」

 

頭を抱えるミサトの横に、一人の影が立った。

 

「いや、俺はよくやったと思うぞ? 葛城」

「ゲッ、加持ぃ! なんでアンタここに居るのよぉ」

「何だよ、俺だってネルフの人間なんだからここにいたって不思議じゃないだろ? というかずっと居たんだけどな……」

「確かに居たわね」

「そ、そうだっけ?」

「いや、さっきも話しかけてたんだけど……」

「ゴミン、素で気付かなかったわ」

「……無様ね」

「おいおい、マジかよ……」

 

前史でもそうだが、実は加持がネルフ本部で戦闘を見ていた数少ない使徒戦の一つがイスラフェル戦である。

だが、戦いに夢中でわざわざ意識まではしていなかったのである。

少し悲しそうな目になってしまった。

 

「ま、それより三人とも。よくやったな。

お上はこの通り多少煩いかもしれんが、君たちは自分で考えて動いた。それだけでも賞賛に値するよ」

「「「ありがとうございます(ニャ)」」」

「だ~れが煩いって?」

「さぁてな。さ、三人とも今日は疲れたろう、葛城にリッちゃんもな。今日は奮発して、何か奢るよ。ちょっとした副収入が手に入ったからな」

 

スッと、何やらカードを取り出す加持。

ざっと見ただけで数十万以上の凄まじい額が入っていることが伺えた。

こうなるともう人は遠慮を忘れるものである。

 

「じゃああたし、娘々行きたい! スペシャルメドレーコースがすっごく美味しそうニャ」

「私も娘々でらぁめんが食べたいです。カラメニンニクラーメンヤサイマシマシアブラマシマシチャーシュー抜きで」

「んじゃあたしはどこでもい~から加持君ビール十本奢ってねぇ~」

「じゃあ私は……まぁ、見てから決めましょう。レポートを書かないといけないから少し遅れるわ」

「僕は皆さんに任せます」

「んじゃ、娘々に行こうか。あそこなら何でもあるぞ?

 

……葛城はあくまで八本までな」

「えぇ~」

「本当に太るぞ?」

「煩いわねぇ、別にアンタに関係ないでしょ」

「あるんだなこれが」

「…………しょうがないわね、五本で手打ちにしてやるわ」

 

ちら、と顔を見るとニッ、と何時もの笑みを浮かべたポーカーフェイス。

思わずそっぽを向いて少し顔を赤らめてしまった。

 

「ほらほら二人とも、アツアツになってないで早くいこーよー」

「おっと悪いな、ほら行くぞ? 葛城。リっちゃんも、根を詰めるのも良いが程々で来いよ」

「アンタに手を引かれなくても立つってーの」

 

加持に手を差し伸べられるが、その手を握らずすぐに立ち上がる。

やれやれ、と言いたげな顔をしながら、

子供たちを先導させ自分は最後尾を担い、加持は歩き出した。

 

一方、一人残されたリツコは口では行くと言ったものの、一つ疑念を抱いてもいた。

恐らく食事には向かえないだろうとも思った。

 

「使徒殲滅寸前にエヴァンゲリオン三体に観測された外部からの超高エネルギー反応。アレは一体何だったのかしら……?」

 

そう。

確かに闘いぶりはとても美しく華麗なものであった。

だがそれは見てくれの話であり、実用性はまた別の話だ。あの三体集中荷重攻撃は、実はMAGIの計算では飛び上がった段階ではほぼ殲滅不能という計算が出ていたのだ。

 

ところが現実はどうだろうか?

リツコもその時は気付かなかったが、MAGIのログによるとキックを決める直前にエヴァの出力が急上昇したのだ。

そしてその少し前に、ジオフロント近辺で謎の高エネルギー反応が見られたのだった。

ところが高エネルギー反応が見られた、というだけで、何がどうやってそのエネルギーを放出したのか。そこまでの観測は出来ていなかった。

 

謎の高エネルギー反応。

この単語に、リツコの科学者としての探求心が燃え上がる。

五人を見届けると、すたすたと自分の研究室に潜っていった。

 

 

そして、五人を見送るのはリツコだけではなかった。

一人の少女もまた、それを見送る。

少女はネルフ本部ピラミッドの頂点部分に座っていた。しかし、ネルフのレーダーはどういう訳かそれを探知することはない。

 

「あーあ……っと。

退屈な仕事だったわね、ホント。あの爺さんはこんな仕事をやらせるためにアタシを呼んだの?

仕事だからやったけど、これからは面白くない仕事なんて御免だわ。

初めての能力行使、ってことを考慮してくれたのかもしれないけどさ?

明日からは何をさせられるのかしらね」

 

欠伸をしながら、立ち上がる少女。頂点部分なのでかなり足場は狭いが、少女には関係なかった。

ゆっくりと「降下する」少女は、やがて接地するとジオフロントの広場に立つ。

 

そこにあったのは広大なスイカ畑だった。そのうちの一つを頂戴すると、一突きを加える。

するとどうだろう。スイカはぱっくりと綺麗に割れた。

そのうちの一つに喰らいつくと、少女はジオフロント内に収納された兵装ビル群を見上げた。

 




日「皆さんこんにちは、日向マコトです」
青「青葉シゲルです」
伊「伊吹マヤです」

デデデデデデデドゥルルルルル……ジャージャジャッジャッジャッジャッ♪
ジャージャジャッジャッジャッジャッ♪ ジャッジャッジャッジャンッ♪

日「おお、コレアレじゃん! ええとなんだっけ? 偽りの再生じゃなくて」
青「名前忘れたけどほらアレだよ、アスカちゃんとシンジ君の荷重攻撃の時の」
伊「……偽りの再生、アレ地味にトラウマBGMなんですよねぇ。
なんか序盤とかでアーアー言ってるのが本当は喜びじゃなくて今後のシーンを見越したただの悲鳴を表しているんじゃないかって。というかあのシーンの後に……うっ」
青「ああマヤちゃん、無理しないで。あのシーンはエヴァでもワンツー争うグロシーンだから無理に思い出そうとはしない方がいいよ」
伊「ああ……アスカ……アスカ……」
青「ほらマヤちゃん……落ち着けって」
日「そうそう、俺みたいに何が合ってもビシッと復活! コレは大事だぞ」
青「お前は事情が事情だからビシッと復活して当たり前だろボケが! ほらマヤちゃん、気を確かに」
伊「……ああ、ごめんなさい。何とか大丈夫です、青葉君ありがと」ニカッ
青「おっ、おぅ……どうってことないって」
日「なーにデレデレしてんだよバカヤロー」
青「してねえから!」
伊「? 二人とも何を騒いでいるんですか。時間食っちゃいましたしやりましょう。
え~と、まず初めの質問。

『イスラフォン戦に使われたアニソンってなんですか?』とのことですが」

青「…………」
日「……えっと」
伊「……我々?」
日「うー?」
伊「寄れ寄れ?」
日「にムグッ!?」
青「止めろマコト、それをお前が言うと完全にキモいだけだ」
伊「これが世界の闇ですね、はい。静止した闇もびっくりです」
日「そ、それを知ってるマヤちゃんもマヤちゃん……」
青「バッカかわいいは正義なんだよ察せよ」
日「えええ……」
伊「はいはいそこの二人、喧嘩するのは程々にしておいてくださいね? まぁ、要はやっと最後のタグが補完され始めたということですよ」
青「もうとっくに補完されまくってるように思うのは俺だけじゃないよな」
日「お前の声の時点でパロディ補完されまくってるわアオバーガボーボボ」
青「何そのあだ名! お前一回偉い人にしばかれてこいよ! というか今気づいたんだけど今日アレじゃん、マグマダイバー。お前もマグマダイブする? ジャイアントストロングエントリー決める?」
伊「ま、まぁ……マリちゃんはそういうネタ要員にも使いやすいですからね、いろいろと。はい。今回の選曲もきっとそういうことなんですよ、きっと。それじゃあ次行きましょう!

『これはLRSなんですか? LMSなんですか? それとも……?』ということですが」
青「地味に死語らしいな「ラブラブ〇〇&△△」っていうカップリングの表記法」
日「というかエヴァのFFとかSSでしか見たことないけどね、L○△って」
伊「まあ他にもあるのかもしれませんが、確かに言い回しが古いっちゃあ古いですよねぇ~」
青「まあ言い回しの古さとかはさておき、今のところ一応LRS……っぽいのか?」
日「いや、まだ分からんぞ? シンジ君の前回の回想を見たか? ありゃー片思いLASだよ、ラングレーアスカ惣流だよ」
伊「LMSは……多分なさそうですね。シンジ君は積極的なタイプはそこまで得意でもなさそうですし……
LMSと言えば、一部の腐った方の中にはここに居るメガネスタンドとシンジ君のカップリングとか想像する人が居るんでしょうが」
日「……正直女装姿ならアリかなと思ってる」
青「うわー」
伊「ひくわー」
ペ「クワワー」
日「なんでお前までいるんだよペンペン、というか青葉お前はあの姿を見たことがないのか? 
ヤバいぞアレ、マジでユイさんだよアレ。幾らなんでも可愛すぎるぞ」
青「……あーそういえば、LMSって言えば葛城さんとシンジ君かもしれねーなぁ」
伊「あ~。確かにイニシャルMですもんね。まあかくいう私もMですけど。ラブラブマヤ・シンジ……うーん、確かにシンジ君は結構イイ人になりそうだけど」
青「……マヤちゃんの場合、Mなのはイニシャルだけじゃなさそうだよね」
伊「ラジオで何言ってんですかっ! ……あ、そういえば青葉君もシゲルだからSですね」
青「あー確かに。じゃあLMSって言ったら……」
伊「あっ……」

…………

伊「…………」ジー
青「…………」ジー

…………

日「……おい、ナチュラルに俺を無視して何見つめ合ってんだよ?
微妙に微妙な雰囲気になってんだよお前ら、目が合った瞬間好きだと気付いたってか? 
というか放送中に何垂れ流してんの? 俺への当てつけなの?」
伊「やだー、そんな訳ないじゃないですかぁ。私には一万二千枚のセンパイの写真とっ! ALフィールドがあるんですからぁ!」
青「……敢えてALフィールドの略は聞かないでおくよ」
日「…………シゲル、ざm……んねんだったな、うん」
青「ダダ漏れなんだよデコ助野郎」
伊「はい、それじゃー次行きましょうか。まあ次と言っても今日は最後ですけどねっ。おや、ちょっと長い質問ですね……

『シンジが破で覚醒した時に「世界がどうなったっていい」って言ってますけど、
アレ冷静に考えてみるとおかしくないですか? 
あの発言をしたということは、
シンジは「自分が覚醒することで世界がどうにかなる可能性があることを知っていた」ことになりますよね。だとすればどこでそんなこと知ってたんですか?』とのことですが」
青「……あ、確かに。幾ら切羽詰まってる状況だったとしてもそのことを知ってないとあのセリフが自然に出るのはちょっと厳しい気はする」
日「「僕がどうなってもいい」は「人に戻れなくなる」っていう赤木博士のセリフに呼応したものだからまだ自然……いや、エヴァの中に居るのに何であんな地上の人間の声が聞こえるの? って言ったら終わりだけどさ。
「世界がどうなったっていい」ってのは、ありゃなんなんだろうな? まあ単に自分の決意を強調する例え話なのかもしれないけどさ」
青「案外、よく肯定されたり否定されたりするループ説をそのまま適用してシンジ君があの世界線に逆行したとかそんな感じだったりしてな?
別の世界線で何らかの理由でレイちゃんを失った後にやり直す力を得たシンジ君が、vs第十の使徒戦のエントリープラグ内まで逆行したと。だから「綾波を……返せ!」っていう台詞が出たんだろうな」
日「あの出血量だし一発で死んでもおかしくないからなぁ。死体の中に再び入り込めば一つの体に一つの魂、キャパの問題はクリアだな」
伊「まさかの公式逆行説ですねぇ。某バトルミッションでもやってましたけど。
しかもそうであると仮定すれば、初号機を擬似シン化第一形態まで持っていくほどの力がありますから公式逆行スパシン説も……」
日「だとしたらスッゲーワクワクするよな」
伊「まぁ、結局のところどれも仮説の域を出ませんよ。
ただ少し気になるのが、新劇場版って明らかに分岐点っぽいシーンで暗転したりするんですよね。
もしアレが選択肢の存在を意味するなら、3号機のシーンでの暗転はアスカちゃんの生死」
日「ふむふむ」
伊「初号機覚醒での暗転はシンジ君の生死」
青「なるほど」
伊「そしてよく言われる、サードが起こったかどうかの分岐点として例のCパート、渚君のカシウスをシンジ君に挿したシーンが」
青「……マヤちゃん?」
伊「?」
青「いや、何か凄い今妖しい言い方しなかった?」
伊「へっ? 何の話ですか?」
青「……なんでもないです、ハイ」
日「ま、それはともかく資料集とか出てこないと……それっぽいのを書いたらしいけど、結局のところ全部仮説だよ」
伊「まぁ結論から言って、質問の答えは「分かりません!」 ということですね、はい。
それじゃあ最後の質問も終わりましたから、葛城さーん。


……あれ? 葛城さん?」

加持「ああ、すまない。葛城なら作中にもあった通りビールをしこたま飲んでな、今頃は家で寝てるよ」
伊「あぁ、そうなんですか……それなら仕方ないですね」
青「いや、それより加持さん何処から現れたんですか?」
加「それは企業秘密と言う奴さ。That said, gotta run♪」ダッ
日「あ、行っちゃった……
というかあのセリフってことは近所で仮設五号機が爆発するとかないよね? 大丈夫だよね?」
伊「ま、まぁ大丈夫でしょう、この辺では流石に実験やってませんし……しかし、どうしたもんですかねぇ。私たちだけで次回予告をやるのも余り味気ないですし……」

碇ゲンドウ「……わたしが引き受けよう」

「「「碇司令!?」」」
碇「……どうした」
伊「い、いえ……」
青「い、一体どちらから?」
碇「……企業秘密だ」
日「ええ……」
碇「それよりも……次回予告を行う人物が居ないと聞いた。私が代役を受けもとう」
伊「え、いやでも碇司令のお手を煩わせるわけには……」
碇「フッ……問題ない。
これでも私は毎週ナレーションの仕事などもやっているのだ、次回予告位どうということはない……」
青&日「えっ」
碇「……それではやるぞ。
『第八の使徒を辛くも撃退したレイ、マリ、シンジ』
『しかし早くも、その双肩には新たな敵との運命という使命が重く伸し掛かる』
『降臨する使徒、個人の憎悪で他者を苦しめる者は現れるのか』
『次回、「エンジェル・アタック」』……ユイ、俺は今……真っ直ぐと立ててるか? 
それでは次回も、サービス、サービス」
「「「さ、サービス、サービスゥ!」」」

日「やべぇよ、完全にプロの技だよアレは……」
青「言い回しもさることながら、最後のセリフ何? 何時もの予告よりものすごく様になってない? どっかで聞いた名ゼリフっぽいけど」
伊「……次回からたまに別の人に次回予告やって貰うのも面白そうですね」

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