血界戦線 -不良街道-   作:千地

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―不良掃除―

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!! 忘れてやる!! 忘れてやるあんな青い思い出を!!」

 

「どうしたんだ………リュウの様子がおかしいように見えるんだが」

 

「どーみてもおかしく見えますね。まるで恥ずかしい思い出をすべて家事で忘れようとする主婦のように見える」

 

 

 

あの恥ずかしい思い出からすぐさま肉屋で食材を買占め、ライブラへと出向きヘッドやチェインに多少驚かれたがうんとも言わせず戦闘服に着替えて、ごみというごみ共を全て排除して、奴らの腹の中に潜んでいる暴食の悪魔を鎮めるために肉という肉に一つ一つ丁寧に調理し、たったいまテーブルに置き、またもカスというカスをこのHOUKIで支配して、ダストシュートしている最中。

なんか無我夢中で自分も自分で何を考えて行動しているのかよくわからないでいる。だって、30分前ほどに俺様は思い出せば恥ずかしい言葉を吐いてしまい、絶賛混乱中である。掃除すれば多少落ち着くかと思えばそんなことないし、料理すれば全く欠片も忘れられないでいる。

 

 

「それにしても、あの恰好はすごく似合ってますね。こないだ祖国から送られたジャパンエプロンってやつでしたっけ?」

 

「日本では割烹着というやつらしい。それにリュウの頭にはちゃんと埃を被らないように三角巾までしていて……ときどき思うが、彼はなにを目指しているんだ」

 

「私の部屋で多大な経験値をためたおかげか、掃除も完璧な仕上がりですね。料理も味付けや焼け具合も舌に合いましたし、下手に文句は言えないですし」

 

「今じゃザップやスティーブンも彼がいないと生活できないと思えるが……。というか、突然暴走したかのように家事をしだしたが、なにかあったのかね?」

 

「………………」

 

 

チェインは思い当たる節がないか、頭の中で記憶をたどりながら探ってみた。まず最初に思い当たる節は昨日から銀猿とともにアピールした『肉コール』だ。これは今思い返せば意地汚いと思えるが、フォークとナイフをリズミカルに叩きながらあいつの耳元で訴えた記憶がある。うん、まずこれは記憶の端っこにでも置いておこう。

次に思いつくのは、事あるごとに仕事場まで弁当を持ってこさせたりしている。お腹が減った時に携帯で電話しても出てくれない時が多いけど、留守番電話で『グレるぞ?』といえばすぐさま弁当を持ってきたりしてくれる。うん、これもどこかの隅っこにでも封印しておこう。

次から次へと龍童との思い出がエンドレスのように流れていくが、これはどーみても思い当たる節がありすぎて困ってしまう。目の前で悲鳴をあげながらも一生懸命掃除する姿を見てると、どことなく悲しくなる。

ここはいうべきか? 仲間がこんな姿になったのは、私のせいだと。チェインは悩みながらも、すぐさま頭の中で解明したかのように答えが出た。

 

 

 

 

 

 

「とくに思いつくことはありませんね」

 

 

これほどまでに白々しい答えが出たのは、初めてかもしれない。チェインはいつものような何かを考えているのか、それとも何も考えてないのかという顔つきしながら龍童を見つめている。

 

 

「ヘッド!!! 頼みがある!!」

 

「む、なんだ? 私にできることならなんでもしよう」

 

 

クラウスはそんな龍童の姿があまりにも可哀想と思い自分なりに考えていたが、あちらから頼みがあると言われ内心嬉しんでいながら胸を貸す勢いで答える。龍童は雑巾を一度テーブルの上に置いて、割烹着を綺麗にたたみ三角巾をその上に置いてクラウスに黙々と近づく。

チェインはそんな様子を横目で見ながらも、龍童の思わしくない行動をみて少しは心配している

 

 

「俺様を殴ってくれ!!!!」

 

 

刹那――――龍童は自分でも説明不足かと思いながらも口が勝手に動き、怒涛のように告げる。一瞬クラウスとチェインはショックかのように白目になり、灰色の世界が見えたがすぐさま立て直して龍童を見つめる。

一般ピープルが聞けばとんでもないドM発言だが、クラウスのような仲間思いな紳士は何事かと思いながらも、その言葉に本気を感じて目を光らせながら一息つく。チェインはチェインで『またも龍童がバカなことしてる』と笑いそうになりながらも、クラウスに視線を送る。

そこには仲間のために自分すらも犠牲にするかのように燃える男が龍童に視線をおくりながらも、瞳は悲しそうになっている。さらに視線を下げれば拳が強く握られており、音が鳴っている。

笑える瞬間をまるで否定されたかのように凍えたが、この後クラウスがすることが分かってしまい体が動いてしまった。これはとてつもなくヤバい

 

 

「――――――任せたまえッ!!!」

 

「ちょっ!?」

 

 

まるで人体を殴っているかのような音がこの部屋に響いた。本当に人体を殴っているからそんな音が出るのはわかっていたが、とてつもなく衝撃が龍童の体に駆け巡ったのはわかった。龍童はやはり説明不足かと思ったのか驚愕の表情だったが、クラウスの強烈なメガトンパンチのおかげで顔面は崩壊してしまい、床に思い切り倒れた。

とてつもなくシュールな場面ということはわかり、龍童も龍童で思い残すことはないような面をしながら、静かに沈んでいった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………あれ、空が見える」

 

「気が付いたかね、リュウ」

 

 

おかしい、たしか俺様はライブラでヘッドに無慈悲な拳を浴びて静かな川でひと時を過ごしていたはずなのに、なぜ目の前は空気汚染された空が広がっているのではないか。何回も整理しようとしてもまったく頭が追い付かず、少々記憶が混乱しているのではないだろうか?

 

 

「起きてもらって悪いが、多少君の力を借りないとこの場を静かにできなくてね」

 

「それってどういうことです……か……?」

 

 

――と、質問しようとした時にヘッドに勢いよく突っ込んだ強化骨格紛いのなにかが攻撃を仕掛けていたが、あっけらかんとヘッドに壊されて意識不明の重体となった。よくわからんが、あたりを見まわせばこの紛い物たちい囲まれ、この部屋事態も壊滅状態でもある。

あぁ、せっかく掃除したのに意味なくなっちゃったよ。せっかくあんなに必死に頑張って掃除したのに、こうもあっさり埃まみれになるなんて……だからあれほど自動掃除機型のルンポ買おうと頼んだのに。

手足全体に力が行き渡れなく、だらんと大の字で横になりながらもヘッドは俺様に声をかける。

 

 

「これ以上ここを荒らされては困るんだ、力を貸してくれないか?」

 

「もう引っ越しましょうぜぇ? だって俺様ら秘密結社ですよ(笑)。もうこんなところ長いしないで、メイドさん付きのところにでもいきやしょうよ」

 

「しかし、この場所は他の拠点とも連携が取れやすい。そうそうすぐ空けるわけにはいかない」

 

「えぇ~~~~~」

 

 

しかしすでに戦意喪失であり、これから何を言われても動きにすらならない。だってヘッドなら一人でもこの人数相手にできるだろうし、今だってブレングリード流で無双していますし、大丈夫ですって。ヘッドなら世界を制する拳もってますから。

クラウスは己の力を多少セーブしながらも、この数を圧倒するほどの力をもっているのは歴然である。だから龍童は動かないし、意味がないと考え曲げないでいる。そんな龍童に視線を移しながらなんともない表情のクラウスが、その固い口を動かした。

 

 

「さきほど『神々の義眼』をもつ少女と出会った」

 

 

 

 

『ガン!!!!!』

 

 

クラウスがそんな言葉を言い終わるとともに、龍童は勢いよく立ち上がり迫りくる機動隊のうちの一体の頭を押さえつけて地面と衝突させる。いままで一歩も動かなかった龍童が突然動き出し、機動隊たちもたじろいている。

なぜなら、クラウスよりも早く動いたからである。さきほどまで寝ていた男性がいつの間にか立ち上がり、当たり前のように仲間の一人が簡単に捻りつぶされていた。

龍童はコツコツとクラウスに近づき、満面の笑みで問いただした

 

 

「ま、まままままさか来ていたのか!? あの娘!?」

 

「ザップが間違えて連れてきたが、たしかに『神々の義眼』保有者だった。話によれば、君と知り合いらしいな」

 

「マジですか!? あのヤロー、いままでちん○主義者かと思いきや、とんでもない時に役にたつ奴だったんだな!! んで、今そのレオナルドさんはいずこに!!?」

 

「彼女ならいま―――――」

 

 

興奮状態の龍童を鎮めようとクラウスは丁寧に答えているさなか、そんな二人を捉えようと単独で行動していた機動隊の一人が龍童の背中から近づいていまでも押さえつけようとするのがわかり、一瞬戸惑ってしまった。

このまま拳を振れば間違ってリュウに当たってしまうのではないか? と、コンマの中で考えてしまい拳を出すのを遅くしてしまった。その機動隊が勝機と思ったのか背後からそのまま飛びつき、龍童に触れようとした――――――が。

 

 

『荒神血嘩真剣 重度級の拳(ウォータン・ズ・ガルド)

 

 

突如、龍童の右肩から血が吹き出し流れるように手の形を保ちながら膨らみ、勢いよく機動隊の真上から潰したではないか。醜い音がこの場を支配して、さきほどクラウスが見せたような十字架の血ではなく、悪魔のような形をみて恐れ下がりだした。

彼はさきほどまでの満面の笑みをやめ、仮面を被っていたかのような残忍な表情を向け怒りを露わにする。

 

 

「邪魔だ、消えろッ」

 

 

その言葉と同時に、またも肩から血をふき流しながら機動隊を一人残らず綺麗に減らし続け、ついには壊滅させた――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そ、そそそそそそその! こ、これからよろしくレオナルドさん!」

 

「はいっ! 若輩ながら、頑張らせてもらいます!!」

 

 

小さなファーストフード店でバイトらしき女の子と、その崇拝者らしい怪しい男が握手しながら泣いている姿をスーツの女性が笑いを堪えながら写真をとり、赤い紳士はメニューの豊富さに感情を高ぶらさせ、銀髪のポコち○野郎はゲテモノ料理を堪能している。

ここからレオナルドウォッチの物語は始まりを迎え、荒神龍童は癒しが手に入りだした。




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