血界戦線 -不良街道-   作:千地

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―不良赤裸々―

「ふ~ん、なるほどね」

 

「いやまだ何もいってないんだけど……」

 

 

 

どこにでもあるようなファーストフード店。中の店は異界人がほとんど客として占めており、その種族が好きそうなゲテモノ料理をおいしそうに食べている絵面がよく見られる。一番端っこのテーブル席に男女二人組の人類が陽気に食事をしている……まぁ、俺様とレオナルドさんだけどな

肥満体国アメリカに元属していたこの都市でもやはりバーガー系は人気らしい。とりあえずポテトとバーガーとジュースをお互いそれぞれ頼み、やはりこのレオナルドさんは女の子だからなのか、それとも気にしているのかわからんが全部をSサイズと頼んでいる

店員の女の子が頼んだメニューを持ってきてくれて見比べてみるとやはりかなりの差はある、そしてこのその女の子がめっちゃ可愛かった。これ重要だから

外食というのはあまり好きではないが、やはり自分で作るめんどくささを除けばかなりいけるものだ。昨日も朝にチェインとザップに朝食を用意し、昼には参謀殿とチェインとザップの分を用意し、夜にはチェインとザップの分を早めに作ってレンジで温めるように言い聞かせて寝た…………あれ、ほぼ人狼と糞猿のおもりしかしてない……だと……。

ポテトを食べ終わり喉を潤おそうとカップを口に含もうとしたが、肩が震えてうまく飲めないでいる。自分でもわかるが、かなりのショックを味わって噛みしめている。若干走馬灯をみたような………

 

 

 

「あんた人の話聞くきあるんスか」

 

 

 

そんな俺様の様子を見飽きたのか、レオナルドさんは少々キレ気味ながら声を出した。目線を目の前に移せば、そこはさきほど運命的な出会いをしたであろう少女がムスッとした顔で睨んでいるではないか。

この少女の名前はレオナルド・ウォッチ。首にネックレスをかけているかと思いきや、可愛らしい小型のカメラをかけている新米記者らしい。いわゆるフリージャーナリストというまさに俺がもっとも好きそうな職業だ。だってフリーって、日本語で自由って意味だぜ? 自由………参謀殿ほどではないが、俺にもあまり自由な時間がない。いや正確には休日やらはあるが、なんかそういう次元を平気で飛び越えるモンスター共のせいであまりそんな時間帯はない。

ちなみに今日は久しぶりの休日。しかし、朝からチェインの部屋の掃除やら朝食の準備……次にライブラに顔出ししてザップと参謀殿の飯作り、そこで偶然に遭遇したK,Kこと姉御にプリンの作り方を教えてと頼まれたりと、なにもかも神の悪戯としか思えないイベントばっかだ

そんでいざ休もうと思ったらこの娘、レオナルドさんに出会ったってわけよ。もう、ご飯奢ってくれなかったらやる気なくなるところだったzo★。と、内心壊れ気味ながらジュースを飲み干す

 

 

 

「んで、お前さんなんでこんな平穏とはほど遠い街に来たんだ? 観光かなんかか? それとも異界人を見たいからか?」

 

「いや……お、……僕、一応新聞記者だしこの街もといHLにいればでかい情報がうじゃうじゃ出てくるかなって………」

 

「おいおい、こんな街で記事だしても別にめずらしくもなんともないだろ? ましてや外に情報ながしても、大半を壮大過ぎて脳が追い付かないだろうし」

 

 

 

この異界と混じりあった街『ヘルサレムズ・ロット』はいわゆる封鎖状態である。それは世界が決めた安全政策であろうし、隔離するためであろうな……。まぁ半封鎖状態だから、抜け出す奴は抜け出しているだろうしよ……。

しかし不思議さがかなり増す。このレオナルドさんの話ではもう何か月もこの街にいるらしいが、普通に何もなく生きている。このヘルサレムズ・ロットという街はつねに死人がでるほど生に薄い土地であるはずなのに、ここまで外傷もなくここまで異界慣れしているのは正直驚いている。

かといって武の経験を一切感じられないし、隠しているとも思えない。ザップのようなDQNでもやはり素人とは思えないオーラを感じるし、ましてはチェインだって異質の気を感じる。しかしこの少女にはどこもなにも感じない。

だが、感じるではないが………こう、何かを出すような……そんなことを思える。彼女自身からは感じない、こう表現が難しいがなにかが出来ると結果的にそんなことを思ってしまう

 

 

 

「なぁお前さん、なんかすげぇもん()()()()だろ?」

 

「えっ、なんですか急に。もうバーガー持ってませんよ」

 

「そこじゃねぇよ!」

 

 

 

たしかにここのバーガーは味はおいしかったが断じてそんなことではない。レオナルドさんは多少引き気味ながらも、どこかしか曇っている表情をした。変な質問をしてしまったのは悪いと思ったが、ここまで来る質問ていうとやはり彼女には秘密、もとい吹っ切れないことがあるのであろう。

さきほどまでパチモンレベルの笑顔がいっきになくなっていくのは、こちらも心に来るもんだ。会話らしくジュースを両手で持ち、小さな唇をストローから含むその姿はまるで小動物

 

 

 

「なんか……ごめん。そこまで不機嫌になるとは思わなかったからさ。ほ、ほら! 俺様の飲みかけのジュースやるから機嫌なおせって!」

 

「いらないですよ。―――――ただ」

 

 

 

ただ、とそう思わせぶりな言葉を発して彼女の周りの空気がガラリと変わった。これは俺様も何度も感じたことがある重い空気……いわゆる、苦手な空気だ。まるでお通夜の気分だ。

レオナルドさんはジュースを優しく置き、その特徴らしい糸目を初めて開眼し始めた

 

 

 

「こんなの、すぐ捨てたいですよ」

 

 

 

 

 

彼女の眼はまるでこの世のものとは思えない、碧一色でありながらも神々しい光を放つ綺麗な瞳をしていた。この店は少々暗いがために、彼女が眼を見開かせたおかげで碧い光が俺様を照らしている。

聞いたことがある。以前、まだ師匠と武者修行していたとき不思議な話をしてくれた。夜に眠れない俺様を寝かしつけようとしたのか、それとも怖がらせようとしていたかはわからんが、こんな話をしていた。

『碧き瞳を所有する義眼の使い手は、世界に奇跡を魅せる神々の眼となり、真実の答えを出す黙示録の亡霊』。ぶっちゃけ信じてはいなかったが、この異界という存在が証明したおかげでそんなチートの眼があるというならあるのだろう。その碧い瞳に見つめられ全てを見せたような気分がする、しかも師匠から聞けばこの眼はどうやら視界という視界を支配するといわれる。

 

 

 

名を―――――『神々の義眼』。俺の流派と同じように希少度を誇る、もしくはそれ以上の存在。

俺が驚いているのを彼女は思わしくなく、すぐさまその瞳を閉じた。そして何もなかったようにまたジュースを口に含む。いや、正直驚いて体が疼いちまったぜ………なんせ師匠のほら話が真実だとわかっちまった、とかではなくて驚いたのはもっとこう人類の感性を刺激するなにか。

いままでいろんな美しいものをこの汚い瞳で見てはいたが、初めて口から出すのかもしれない。あまりに口から出すのが恥ずかしく閉じていたが言葉が、ふと口から出てしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――綺麗だ」

 

「………えっ?」

 

 

 

片手にもっていたバーガーを一口で食べきり、すぐさま詰まらないようにジュースを一気飲みし一息つく。そんでさきほど言った言葉を何回も頭のなかでリピートをし続ける…………。

何をいった? え? 綺麗? ウソだろ? 誰がいったの? いや、俺様か。いやいやいやいや、なに俺様真正面から気持ち悪いこといってるの? なに、死ぬの? フラグ立てるの早くね? つか、え……ちょ、マジ俺様、あのあれ………うぉぉおおおおおおおおおおおおお!!!?。

あたまではすでにスーパーコンピューター並の演算するかの如く文字列を並べる。やべぇ、顔が向けられねぇ……ぶっちゃけまた顔を合わしたら、意味わかんないことほざくかもしれない。

俺様の周りにも魅力的な女性はいる。チェインのようにスタイルがいい女性や、姉御のように明るくて優しい女性、参謀殿のように色気が溢れる女性も。しかし、俺様は心の中では綺麗とか思っても、口には出せないでいたはず。なのに、今日初めてあった自分より年下の女の子の本当の顔をみた瞬間、はじけるように口から言ってしまった。

ザップが聞いたら笑うだろう、ギル爺が聞いたらニコニコするだろう、ヘッドが聞いたら多分あの人も恥ずかしがるだろう

よ、よよよよよよし! まずは会話を盛り上げてから、さっきの言葉がなかったことに消去という方向でいいかな? いいよね? 俺様なコミュ力なめんなよ、これでも一応知らない女の子相手なら10分以内で笑わせる自信はある!! 八割は引きつった笑みではあるがいける!

いけ!! 

 

 

 

いけ!!!!!!

 

 

 

 

「あ、あのご趣味はなんでしょうか!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

顔を上げた瞬間、金髪の女性がニコニコ僕を見ていた

 

 

 

 

 

「レオなら音速猿追いかけていったから、支払よろしく♪」

 

「あっ、はい…………」

 

 

 

 

どうやら、僕の何かが終わったそうです。おかしい………神はどんな気持ちでこんな悪戯を思いついたんだろうか。

なけなしの飯代を払い、足は負傷してもいないのにフラフラしながら我が道を進んだ




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