血界戦線 -不良街道-   作:千地

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―不良初面―

さて、みなさん初めまして。荒神 龍童です

俺様は現在ライブラという胡散臭い秘密結社(笑)に身を置いて長い月日が経ちました。最初はヘッドことブレングリード流血闘術の使い手のクラウスさんと出会い、エスメラルダ式血凍道を扱う参謀殿ことスティーブンさんにライブラのなんたるかを教えてもらいました

そこで昔の顔なじみの人狼であるチェインと出会い、珍しい血法の使い手の褐色下半身猿ことザップとも出会い、スーパーママこと裏で有名な血弾格闘技のK.Kともであった

そこで思った……………

 

 

 

―――――やべぇ

 

 

 

このめんどくさい人たちと関わってわかったのは、とてつもなく手を煩わせる大人たちだと確信した。まずは最初に危なっかしいと思ったのが、昔からの知り合いのチェイン・皇である

スーツがよく似合い、スタイルもよく、仕事をキチンとこなすという理想の女性だと他のメンバーに空想を抱かせているがそれは違うぞ

こいつは昔っから変わってなかった。自分の身の周りはしっかりしてないっていうのが大きな欠点だぜ。毎回あることだが、時々深夜に知らない異界人さんから着信がきて、そこからなぜか『迎えにきてほしい』という苦情が入ったりしている

わかるだろうか? 俺は最初はわからずいたずら電話と思って聞き流してたら、なぜか他にも声が聞こえ耳を澄ませば……

 

 

 

『うぇー』

 

 

 

初めてだよ、人をここまで不快にする吐き気っぷりは。場所を聞きすぐさま目的地まで全力で走りついたのは寂れた酒場である。物静かそうであいつが好きそうなところだが、バカげたせいで当分は出禁でも食らうだろうざまぁみろ

すぐさま中に入って酔いつぶれている人狼を担ぎ家までおくる俺様の優しさは菩薩に値するであろう。部屋に入れば汚さと酒の匂いが充満するネズミも嫌がるであろう光景が広がっていた…………

このことが週に二度か三度ある。あのアバズレはこれをパートかなんかかと勘違いしているであろうか

次にこまったのが下半身に脳がいきわたっていると思われるザップ・レンフロ。こいつに至ってはお手上げである………毎回毎回毎回毎回というか毎日であるが、女の珍事件№1で必ずこいつが絡んでいる。迎えにいけばこいつの愛人が呪術でち○こをもぎ取ろうとするし、飯を一緒に食いにいこうとすれば愛人から死のデリバリーサービスが待っている。もう嫌だ

そしてここからは小さなことだが……たとえば凄腕のママサンダーライガーことK.Kはよく後輩たちに子供の自慢話などをしている。それはもう大阪の布団たたきが似合う奥さんに近い存在だろう。そのくせ酒癖は悪いし、子煩悩のおかげで仕事に支障がくることもある。ははっ、参っちゃうね★! 

そんで次は徹夜大好き参謀殿だ。チェインよりも色気があり、K.Kよりも男受けしそうな彼女とはこれも少々古い付き合いでもあるが、困ったのは彼女の徹夜趣味である。2徹、3徹は当たり前だ。めんどくさいのは、これがダラダラ続くと脳に思考が追い付いてこなくて古代人顔負けの意味不明言葉をいうからである。こないだは5徹してのらり俺様の目の前になぜか仁王立ちしていたが、顔が少々赤くなっており目が潤んでまるで男でも誘っているのではないのかと思うその思わしき表情はどことなく寂しそうながら見つめる。多少こちらも緊張はしていたが、次に彼女が人差し指で撫でたいと思わせる唇をあけ、こんなことをいいだした

 

 

 

『徹夜王に俺はな―――――』

 

 

いろいろ不味かったので、思わず口を塞いでその場を収めた。たぶん、先日俺様が貸した漫画が原因であろうな……いい気分転換になると思っていたがとんだ事件を引き起こすところであった。もうそこから無理やり寝かして事務仕事はほとんど有能な俺様一人でやりましたよ……使える人材が俺様しかいなかったそうなんで

最後に困ったのが我らがヘッドこと、クラウスさんだ。この人は基本的手を焼かせない人であるが、一度暴走に入るともう尋常じゃないほど押さえつけられない野獣だ。俺様とギル爺とザップが嵌っているアクションゲームの『ファーストファンタジー オンライン』を遊んでいた時に、ヘッドのゲーム好きが発症したのかチラチラとこちらを見ていたのでヘッドがよく使うPCから登録のやり方と設定を教えて初心者というわけでまだ上級者の俺たちと一緒に出来ないと伝えてからヘッドの暴走は始まった。それから二日でヘッドからクエストの誘いがあり会いにいったら………

 

 

 

『またせたな』

 

 

 

チャットではそう書かれていたが、可笑しい………上級者になるには最高でも1週間かかるとまで言われている。しかし、なぜヘッドは俺様たちよりか上位武器と魔法を習得しているんだろうか?

あれってたしか一日前の神フェス中に発注されるクエストをクリアしたらもらえる武器ですよね? 俺様達ですらあと一歩なのに、彼はなぜかソロでクリアしていたらしい。おわかりだろうか

ヘッドは生粋のゲーマーであることが。それから俺様達が新しいゲームに嵌ればヘッドも嵌り、次に出会えば歴戦の勇者のごとく僕たちを支えてくれるライブラのボス。本来なら叱るところだが、そのおかげでゲームがサクサク進むため、下手に叱れない俺様たちである

 

 

 

 

 

 

――――――――限界だ

 

 

 

もう一度いおう! 限界だ! なにもかも限界だ!! 上にも下にも問題児を抱える俺の身にも誰かなってくれないかな? つか、まともなのはギル爺しかいねぇじゃねぇか!? ギル爺は毎回忙しいのに、わざわざ俺様のために紅茶を出してくれたり世間話をしてくれたりしてくれるし、あいつらよりか遥かに素晴らしいよ! 最近じゃ目がおかしいのかギル爺の背後から後光がさしているよ

誰かあのモンスター○インクなみのブラック企業から助けてくれる人はいないであろうか。いや、助けなくていいから俺様の苦労をわかってくれるやつらはいないであろうか

薄汚い路地裏を曲がりながらも、頭をフル回転しながらそんなことを考える今日このごろである

 

 

 

「やべぇ、今日はザップとチェインのわがままで料理しなきゃなんねぇんだったわ……牛肉と豚肉と馬肉とか買わないと」

 

 

 

あいつらこないだから行儀悪くお肉コールしやがるから、腹いっぱいにしないとやめないしよ。もう、ほんとうに参っちゃうよ。なにこれ、育児ノイローゼ? 

肉を買うために来た道を戻ろうとした瞬間――――

 

 

 

「うわっ!?」

 

「おっと!」

 

突然つっ込んできた何かとぶつかってしまい、勢いよく転んでしまった。いや、あれだよ?転んだっていってもギリギリ片手ついて尻餅は付かなかったから正式には転んだとは言いがたいよ。ただそのおかげで手首が変な音色を奏でてたね………うん、久しぶりにきたよ『グギッ』って笑

目線を手首にむけようとしたが変な感触と音色がしたために見たくないために、次にぶつかってきたものに目を向けるとそこには小さな人類(ヒューマン)が可愛らしく転んでいた

糸目ながらも可愛らしい顔つきで、髪は腰まで伸びており、服はダボダボな服装でどことなくいい匂いがする………やべぇ、いい匂いがするって思ったの初めてだよ。最近酒の匂いやら香水の匂いやらしか嗅いでないから麻痺してやがる

ぶつかってきた人類(ヒューマン)はお尻をさすりながらもゆっくりと立ち上がり、その糸目の先を俺様に向けている

 

 

 

「えと……大丈夫ですか?」

 

「お、おう大丈夫だ。嬢ちゃんは大丈夫か?」

 

「僕は慣れてますから。それより、その手首大丈夫ですか?! すごい音しましたけど」

 

「うん大丈夫。素晴らしい音色を奏でてくれて、俺様一瞬トリップしそうだったから」

 

「すさまじいほどやせ我慢じゃないですか!?」

 

 

 

女の子は左手首を柔らかい両手でさすりながらも申し訳なさそうに謝りだす。こんなに人に心配されたのは久しぶりかもしれない………いや、久しぶりではないな。たしかこないだにもこんなことがあったし

二日前に俺様とザップが前衛、ヘッドとギル爺は後衛でサポートという見事なチームワークで敵を薙ぎ払っていたがそんなとき厄介な二体の大猿が現れた。今回の依頼はこの大猿を駆除することが目的であったが何分四人だけでもギリギリの戦いでもあった。二匹のうちの一匹が逃げ出してしまいもう一匹が俺たちの攻撃で理性を失っておりこのままでは危険と判断して、二手に分かれるという案がでたが……

 

 

 

『おいザップ。お前さんはギル爺とヘッドと共に逃げたほうを追ってくれ。ヘッドの火力とギル爺のサポートがあればなんとか三人でも仕留められるだろうし』

 

『ふざけんな! てめぇだけ置いてったらどーなるのかわかってて言っているのかよ!!』

 

『よせザップ、残り少ない時間で早く仕留めるのならこの方法しかない……致し方ないが、覚悟するしかない』

 

『ギル爺! ギル爺のやつを使えばすぐさまあの糞猿に追いつく! 早く二人を連れて行け!』

 

『………わかりました。リュウドウ様、どうか生きて下さい!!』

 

 

 

ギル爺を二人を連れてそのまま颯爽と去って行った。俺様はとりあえず大猿とにらみ合いながらも緊張感を保ちながら距離を詰める。おもしれぇ……どっち先にあいつらに追いつくかやってやろうじゃねぇか!!

背中に大きく歪な鈍器を勢いよく両手で持ち、切り込み体長らしく死を覚悟し突進するすがたはまさに英雄そのもの。猿もそれに答えるように強烈な咆哮をし、無我夢中で俺様に突っ込んでくる

そし同時に――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『【リュウドウさんが力尽きました】』

 

 

 

陽気な音とともに、画面上部にそんな文字がでてきた

 

 

 

『おめぇが落ちたら金減るじゃねぇーか!!』

 

 

 

そんな身もふたもない言葉が、俺様の純真無垢な心を抉ったのも今も覚えている。と…………そんなことを思い出しながらも女の子はオドオドしている様子も見ていられなくなり、仕方なく立ち上がる

 

 

 

「まぁあれだ。これも何かの縁だ………そこの近くにあるファーストフード店でなにか奢ってくれるのなら許してやってもいいぜ」

 

「なっ!? なんスか、あたり屋ですか!? 立ち悪いですよあんた!」

 

「あたり屋とはなんだ! 俺様の名前は荒神 龍童だ! 今でも月曜にでるジャソプを買うほど少年の心をもつ男だ」

 

「なにチャッカリ自己紹介してんですか。………レオナルド・ウォッチです、あたり屋さん」

 

 

 

あたり屋じゃねぇって

 

これが俺とレオとの出会いである

 

 




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