真剣で世界に恋しなさい!   作:teymy

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気付いたらお気に入り登録が100を超えてました…。
ヤバいぞ、下手な物投稿できないぞ…
呼んで下さる皆様に感謝!

区切りが良いのでここまでを第一章とします。


第六話 連理と世界を繋ぐもの

「うぃーす」

 

「なんだよ井上。まだ連理に未練があるのか?」

 

「いやいや、さっきの俺はどうかしていた。

 若とユキに怒られちまった。すまなかった」

 

「あー榊原さん連理と仲良かったもんねぇ」

 

「もう無理に近づいたりしねぇよ。だから挨拶くらいは許してください!」

 

「土下座!?」

 

「どうするのだキャップ?大和はいないから判断してくれ」

 

「連理を怖がらせたりしないならいいんじゃねぇか?」

 

「すまねぇ風間…!

 ところで連理さんはどうしたんだ?」

 

「今大和と制服を取りに行ってるぞ」

 

「あーじゃあもちっと待たせてもらうかな。

 …大丈夫だって、挨拶したら今日はもう帰るよ」

 

「まぁ、約束破ったら委員長に嫌われるだけだしな」

 

「ぐうぅっ!!」

 

「まだダメージ残ってるみたいだね」

 

「帰ったぞー…」

 

「ただいまー」

 

「あ、大和」

 

「お帰り。連理も……え?」

 

「ん?……は?」

 

「え?」

 

『……………え?』

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

Side 連理

 

大和と一緒に教室へ戻って来た。

なんでかわからないけどモモちゃんとまゆっちもついてきた。

 

でももっとわからないのが…

 

なんで皆ボクを見て固まってるんだろう?

服が違うから驚いたのかな?

 

不思議に思って皆をジッと見てたけど、後ろにいたモモちゃんがボクの横に並んだ。

 

「おーおー。予想通りの反応だな」

 

『鳩が豆鉄砲っつか対戦車ライフルで粉微塵にされたような顔してるね』

 

「松風、それでは顔は見れませんよ」

 

『実際は自分で地雷踏んだだけなんだよね』

 

モモちゃんは楽しそうに笑ってる。

まゆっちと松風はよくわからないことを言ってた。

三人ともさっきまですごく慌ててたのに。

 

「モモ先輩…?連理のその恰好は…?」

 

ミャー子がモモちゃんに聞いた。

ボクの服装が気になるみたい。そんなに驚くことかな?

 

シャツの裾を引っ張って自分の格好を見てみたけど、おかしなところはないよね?

 

「……だめ?」

 

「え、駄目じゃないけど…なんで男子の制服なの?」

 

「……制服でしょ?」

 

ミャー子は変なこと言う。ボクが女の子の制服を着るほうがおかしいと思う。

 

 

だってボクはどこから見ても(O ☆ TO ☆ KO)じゃないか。

 

 

「いや、そういう事じゃ…」

 

なにが変なのかな。なにか間違えちゃったのかな。

 

大和の服を引っ張って自分と見比べてみる。

 

「大丈夫。連理は間違ってないよ」

 

大和はなんだか気まずそうに笑って言ってくれた。

 

「……俺たちが勝手に勘違いしちゃっただけだから」

 

「そうなの?…じゃあいっか」

 

なんだ。ボクが間違えちゃった訳じゃないのか。良かった。

 

「えー…と、大和?」

 

クリスが大和に話しかけた。なんだか怖いものを見たような顔をしてる。大丈夫かな。

 

「あー、うん。連理の格好は何一つ間違ってないぞ」

 

『は?』

 

「……つまり、連理?」

 

ワン子がボクの顔を見た。クリスとおんなじ顔してる。

 

ホントに皆どうしちゃったのかな。

 

「連理は……男の子だったの?」

 

「……?」

 

なんでそんなこと聞くんだろ?今更だよね。

 

不思議に思いながら頷いた。

 

ちょっとの間、皆さっきみたいに固まったけど、今度はすぐに動き出した。

 

『ええええええええええええええ!!!?』

 

怖い!声大きい!怖い!

なんで皆怒ってるの!?

ビックリしたのと怖かったので、隣にいた大和の後ろに隠れた。

モモちゃんが笑って頭を撫でてくれた。喧嘩しちゃったけど、モモちゃんは優しい。

やっぱり『お姉ちゃん』って呼んだほうが良いのかな。

でもモモちゃんは友達になってくれるって言ったから、やっぱりお姉ちゃんは違うかな。

 

「連理、皆ビックリしただけだから、怒った訳じゃないよ」

 

大和が振り返ってそういいながら、ボクの背中を押した。

大和はボクが思ってることをわかってくれる。なんでわかるんだろう?すごい。

 

前に出るのはちょっと怖かったけど、クラスの皆を見たらもう怒ってなかった。

大和の言う通り、ボクが怒られたわけじゃないみたい。

 

ドサッと何か落ちる音がした。あれ、今倒れた人朝に教室に来たお坊さんだよね。

 

「えー!?まっじで!?信じらんない!」

 

「お姉さんもこれにはビックリなのです」

 

「もう美少年系ってレベル系じゃない系~!っつかマジでか!!?」

 

チカちゃんとイインチョとクロちゃんが騒いでた。

この三人は朝に仲良くなった。

 

チカちゃんはお菓子屋さんで金平糖を売ってる。色々なお菓子を教えてくれた。

イインチョには何度も『ちゃんはやめて』って言ったけど、『お姉さんですから』と言って聞いてくれなかった。よくわからないけどお姉さんならしょうがないのかな。

クロちゃんは最初見た目が真っ黒で怖かっけど、ボクの髪を褒めてくれたのでいい人だと思った。でも何を言ってるのかはわからないことが多い。羽黒黒子だからクロちゃん。

 

いやそんなことより、なんで皆騒いでるんだろう?

 

そんなにビックリすることがあったのかな?ちょっと気になる。

 

「大和?」

 

こういう時には大和に聞くのが一番だよね。

 

「あー…んー…」

 

でも大和は困ったような声を出すだけで、なかなか答えてくれない。

 

「モモちゃん?」

 

「そうだな~。連理が可愛すぎるのがいけないんだ」

 

ずっと笑ってたモモちゃんにも聞いたけど、ボクを褒めるだけだった。

嬉しいけど恥ずかしい。でも今そんなこと聞いてない。

 

まゆっちのほうを見ると、気まずそうな顔して黙っちゃった。

でも、松風が代わりに答えてくれた。

 

『皆連坊が男だったことに驚いてんのさぁ』

 

…どういう事?松風が何言ってるのかわかんないよ。

 

「男だよ?」

 

『連坊が女だと思われてたってことさなぁ…』

 

………は?ますますわけがわからないぞ。困ったぞ。

 

「……なんで?」

 

「連理が可愛すぎるのがいけないんDA!」

 

それはさっき聞いたよモモちゃん。

 

「はぁ、こりゃ収集つかないな…」

 

大和が手を顔に当てていた。すごく疲れた声をしてた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

Side 大和

 

結局あの後、騒ぎを聞きつけた小島先生が登場し事態を収拾してくれた。

先生は連理の性別を知っていた。まぁ当然だな。

 

俺たちを一喝して混乱を収め、葵冬馬にショック死していた井上を回収させた。

井上はそのままSクラスの隅っこで転がって一日を過ごしたらしい。阿呆か。

 

小島先生はやっぱり連理には優しかった。教師として贔屓するような人ではないけど、連理に『大丈夫か?』と声を掛けたり連理の事をよく気にかけている。

事情を知ってるといっても同情的な雰囲気ではなく、弟を見守る姉のような顔をしていた。

連理を連れてきたメイドの李さんも同じ顔をしていたな。

小島先生は年下がタイプというのもある。連理は正にどストライクなんだ。ヒゲ無念。

 

もしかしなくても連理は年上キラーだな。

外見も相まっているが、雰囲気が保護欲を掻き立てるのだ。

俺が時折使う『秘技・年下光線』(年下好きの女性に効果的な光線。自分のお願いを潤んだ目で訴える要するに上目使い。多用するのは危険)を全身で放っている。

それが男子にも影響するから恐ろしい。

 

一見落ち着きを取り戻したように見えた教室内だったが、授業が始まる頃にはあちこちから絶望したような溜息が聞こえてきた。主に男子のものだ。

少しでもロリコンの気があればまぁそれはそれは残念なことだろう。

中には開き直ったように『それはそれだな!』とか聞こえてきたので連理の守りを固くする必要がありそうだ。流石に危険極まりない。

 

女子のほうは特に落胆することはなかったが、嬉々として『スカート』がどうのと話しているのは注意せねばなるまい。

ウチのクラスの女性陣にはモロのもう一つの姿『卓代ちゃん』という輝かしい前科があるのだ。

モロが内心で新しい扉を開いたので止めるつもりはないが、連理は恐らくあからさまな女装は嫌がる。

 

精神年齢的に思春期前の連理は他人の性別には無頓着だが、自分の性別は理解している。

先程の混乱も連理が『自分は男であるし、当然周りも男として見ている』という微妙な勘違いをしたことも原因の一端だと思っている。

実際松風の『周囲から女だと思われていた』発言に驚いていたし、わかりづらいがイラッとしたようにも見えた。

 

よく考えれば、"ちゃん"付けを嫌がったのも、手を繋ぎたがらないのも当然だったな。

 

そんな考察を重ねるうちに、放課後を迎えた。

 

教科書を片付けていると扉が開き、Sクラスのメイド・忍足あずみが入って来た。

 

「邪魔するぜぇ」

 

ホントに主人のいないところだと口の悪いメイドだな。

 

「連理いるか?」

 

そうか、従者で世話してたならこの人と知り合いでもおかしくはない。

 

「あずみ姉!」

 

「あ、"あずみ姉"!?」

 

連理が姉と呼ぶほど慕っているのには驚いたが。李さんでも呼び捨てだったのに。

連理は忍足あずみの前まで飛んできた。

 

「おーう連理。初めての学校はどうだ、問題はなかったか?」

 

忍足あずみは普段からは考えられないほど連理に優しくしていた。

表情は『優しい姉』というよりも『頼りになる姉御』といった感じだが。

 

「楽しいよ」

 

「そうか。困ったことがあったらちゃんと言えよ?」

 

「うん」

 

「よし。ちょっと直江に話があるからまた後でな」

 

うん?俺に話?

忍足あずみは俺に近づくと人の輪から離れた場所で話し

始めた。

 

「おう、連理が世話んなってるみてぇだな」

 

ホントに姉御肌だなこの人。

 

「まぁ、友達になったしね」

 

「李から聞いてる。連理についてどこまで知ってるかもな。

 それで連理なんだが、島津寮に住むことんなった」

 

「また突然だね」

 

九鬼に住むんじゃないのか。

 

「これもお前等と連理が仲良くなったからできるんだけどな。

 九鬼に住む予定だったが、それだとどうしてもアタイらが世話しちまう。それじゃいつまで経っても連理は子供のままだ。

 そこそこ信頼できる場所に放り込んだほうがアイツのためになるってーことだ」

 

「なるほど。それで俺が呼ばれたってことは、目を掛けておけばいいのかな?」

 

寮に入るだけなら軽く挨拶すればいい話だ。

恐らく川神学園側からも提案されたのだろう。学長なら俺の人となりも知ってるからな。

 

「話が早いぜ。だが甘やかすのは無しだ。あくまで自立を目指す方針だからな」

 

「それは俺も思ってた。俺たちがすべきことは"世話"じゃなくて"手伝い"だね。

 忍足さん、何か注意すべきことは?」

 

「注意っつっても地雷踏まないようにするくらいだ。お前等一回踏み抜いてるからわかるだろ」

 

「面目ないね」

 

「連理が許してるなら何も言わねぇよ。話聞いた限りじゃ地雷ン中でも小せぇ奴だ。本気で取り乱した訳じゃない」

 

あれで軽いほうなのか…?連理の闇が深くて俺には想像できない。

 

「NGワードとか教えてもらえると助かりますね」

 

「普段はストッパーかかってるからそこまで気にすることはねぇ。最近は大分落ち着いてきたからな。

 一昨日の件だって川神百代レベルの力だったから起きたことだしな」

 

あー連理強いらしいからな。姉さんくらいの力がないと傷つけられないのか。

 

「じゃあ姉さんが不用意に暴力振るわなければ"スイッチ"は切り替わんないのかね?」

 

「スイッチか、言い得てるな。まぁそう思ってれば問題ねぇな。間違っても過去を詮索したりすんなよ。

 両親の事とかは軽いことなら大丈夫だが、できれば避けたほうが良い」

 

この前も泣きながら『会いたい』って言ってたしな。

 

「わかった。仲間にもそう伝えるよ。…そういえば連理ってハーフ?」

 

見た目完璧に外人なんだよな。連理に質問が行く前に俺が知っておけば対処はできる。

 

「母親がロシア人だ。父親は日本人。名前は両親がバカップルだったからそうつけたって聞いてるぜ」

 

忍足さんは俺が考えてることが分かったのか聞かれそうなことを教えてくれた。

比翼連理か。まあバカップル云々は置いといて、仲のいい家族だったんだな。うちと同じだ。

 

「両親と一緒にヨーロッパを転々としてたみたいだな。日常会話は日本語で話してたみたいだが、日本に来たのは九鬼に保護されてからだ」

 

「もしかして語学強い?」

 

「英語、ロシア語なら軽く話せたはずだ」

 

なんだよ。見た目良くて実は強くてバイリンガルって。チートだよね。

 

「まあこんなところか。荷物はもう島津寮に届いてるはずだ。金の管理は自分でさせてるが、一応見といてやってくれ」

 

「了解」

 

「あと…」

 

忍足さんはポケットから小さなポシェットを取り出して、俺に渡した。

 

「これは?」

 

「もし連理がひどく取り乱したとき…スイッチが入った時のための保険だ」

 

中を開けると錠剤の入った小瓶と、用法、用量の書かれた紙。あとは電話番号の書かれた紙が入っていた。

 

「鎮静剤だ。睡眠薬のようなモンだと思え。間違っても他の奴に飲ませるなよ。それとアタイの連絡先だ。なんかあったらそこに掛けろ」

 

俺は早速連絡先を携帯に登録して、番号の書かれた紙を忍足さんに返した。

 

「外出先とかの制限は?」

 

「無い。と言いてえが、県外に出る場合は教えてくれ。場所と日数を教えてくれれば特にこっちから言う事はねえよ」

 

「わかった」

 

「面倒掛けちまうな。今度九鬼からなんか送るからよ」

 

「俺たちも好きでやってるんだ。気にしなくても良いよ」

 

「こっちも大人としての面子があんだよ。大人しく受け取っとけ。

 ……連理をよろしく頼む」

 

俺の目を見てそういう忍足さんは…

 

「李さんと同じ顔だね」

 

「アイツは特別連理を気に掛けてるんだよ。連理がもう少し大人になって告白でもすりゃ一瞬で落ちるぜ」

 

おおう。李さんの好みがサラッと暴露されたぞ。

『あのメイドのお姉さんとお近づきになりたい』と言っていたガクト…残念だったな。

 

「フハハハハッ!我、降臨である!」

 

「きゃるーん♪英雄様ー!こちらにおいでになったのですか!?」

 

忍足さんの主、九鬼英雄がけたたましく登場した。そして忍足さんの変わりようが凄い。

 

「ウム!我も連理が気になったのでな!」

 

「その優しき心!素敵です英雄様!」

 

「ひでおー!」

 

「おー連理!どうだ?学校は楽しいか?」

 

忍足さんと同じように九鬼英雄に近づいた連理。ちょっと意外だが仲が良いらしい。

 

「友達できた」

 

「そうかそうか!ならばあとはしっかり勉学に励むが良い!」

 

九鬼の連理に対する態度は友達というよりも兄弟に近いな。

 

「九鬼君は連理と仲が良いのねぇ」

 

「おおおぉおぉぉ一子殿!挨拶が遅れて申し訳ない!

 我は連理が九鬼に来てから良く一緒に遊んだ仲なのです!我の姉妹も連理とは特別に仲が良いのですぞ!」

 

「そ、そう」

 

相変わらずワン子は九鬼のテンションが苦手らしいな。

 

「一子殿!申し訳ないが我はもう行かねばならん。連理をよろしく頼みます」

 

その一瞬だけ九鬼は真剣に、落ち着いた言葉で言った。それだけ連理を大事に想っているということだ。

 

「えぇ、連理は友達だもの!」

 

ワン子もそれがわかったのだろう。胸を張って答えていた。

 

「かたじけない!あずみ!我は一度教室へ戻る!お前も挨拶を済ませよ!」

 

「了解いたしました英雄様―!」

 

忍足さんは連理に目を向ける。

 

「連理さん、しっかりと勉強して下さいね?危ないことや周りに迷惑になるようなことはしてはいけませんよー?」

 

忍足さんはそんな母親のような言葉を連理に言っていた。

 

「むー……ババア!」

 

!?

なんで突然怒ってるんだ連理は!?連理がそんなこと言うとこ初めて見たぞ!?

 

「誰がババアですかー?そんなこと言う口は私が縫ってしまいましょうかー!?」

 

「フハハハハッ!相変わらずあずみには反抗期なのだな連理よ!」

 

ビックリした…そういう事か。忍足さんは連理にとって母親代わりと言ったところなんだな。

さっきの連理への言葉も母親っぽかったし、忍足さんも連理の事は大事に想ってるみたいだ。

 

「それでは我は行くぞ!さらば連理と一子殿と庶民よ!フハハハハッ!」

 

来た時と同じようにけたたましく教室を去る九鬼とメイド。普通に退場できんのかアイツは。

 

「ったく喧しい主従だぜ」

 

「それよりもガクト、僕は連理が突然暴言を吐いたことにビックリしたよ」

 

やっぱりモロも驚いたんだな。皆も頷いている。

 

「連理は忍足さんのこと嫌いなのかしら?最初は凄く嬉しそうにしてたのに」

 

「あずみ姉は好きだけど、いつも子ども扱いするのはイヤ…」

 

「九鬼英雄も反抗期って言ってたもんね。母親みたいなものかな」

 

ムッとした表情のまま言った連理に、京が俺と同じ考察を述べた。

 

「それよりもよー!これから遊びに行こうぜ!」

 

キャップが我慢の限界といった声で提案する。

 

「いや、キャップ。連理はこれから引っ越し先の片付けをしないといけないんだ」

 

「そうなのか?どうして大和がそんなこと知ってるんだ?」

 

「さっき忍足あずみと色々話しててね。島津寮に入ることになったからって」

 

「マジか!また楽しくなりそうだな!」

 

「これからよろしくな、連理」

 

寮生であるキャップやクリスは嬉しそうだ。

京もわかりづらいが喜んでるみたいだ。少し心配だったが、連理とは気が合うと言ってたし良かった。

 

「そうとなりゃ歓迎会だ!」

 

「おいまてキャップ。いきなりすぎる。後日でいいんじゃないか?」

 

「こういうのは早いに限るぜ!麗子さんに頼んでくる!」

 

キャップは風のように走り去っていった。しょうがない男だな。

 

「仕方ない。ワン子、ガクト、モロ、連理の片付けを手伝って早く済ませるぞ」

 

「メンドクセ―がしょうがねえ。歓迎会の飯は食いてぇからな」

 

「勿論手伝うわ!お姉さまも呼ぶわね!」

 

「頼んだ」

 

まゆっちにも連絡しないとな。後は麗子さんに食材とかの相談して、必要なら買い出し班と引っ越し班で別れるか。

 

「そういうわけだ連理。一緒に帰ろう」

 

「うん」

 

俺たちは連理を連れて帰路についた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

島津寮前。

 

麗子さんに連絡したところ、連理の荷物と一緒に九鬼の従者(恐らく李さん)が食材やら菓子折りやらを届けに来たらしい。さすが九鬼は抜け目ない。

上機嫌で歓迎会をOKした麗子さんだった。

 

「ただいまー」

 

「おう、お前等か。…あ?編入生も一緒か」

 

玄関の戸を開けると、ゲンさんが出かけようとしていた。

 

「うん。今日から島津寮に住むことになったんだよ」

 

「出雲連理です。よろしくお願いしますっ」

 

「また急だな。源忠勝だ。よろしくな」

 

ゲンさんが……デレた……!?

 

「直江お前気色悪いこと考えてんじゃねーぞ」

 

「い、いや…だってゲンさんだったら『あんま騒がしくすんじゃねーぞ』とか言いそうだったから…」

 

「コイツ相手に凄んだらイジメに見えんだろうが」

 

どうやらゲンさんの中で連理は子供に分類されるらしい。良かった…ゲンさんがショ○コンじゃなくて…。

 

「おい…」

 

「ま、まあゲンさんがそう言うならそうなんだろうね!

 ところでこれからバイト?俺たち連理の歓迎会やるんだけど」

 

「悪いが俺は不参加だ。バイト行ってくる」

 

ゲンさんはそのまま出て行ってしまった。

 

「お、大和ー!麗子さんが歓迎会しても良いってよ!」

 

キャップの声がリビングから聞こえたので、そっちへ向かう。

 

「あら…?その子はどうしたんだい?」

 

居間に入ると、連理を見た麗子さんが首を傾げている。

 

「麗子さん、この子が新しく入寮する出雲連理ですよ」

 

「はぁ?……はぁー随分と可愛らしい子が来たもんだねぇ」

 

やっぱり一目じゃ男だってわからないよな。

 

「出雲連理です。よろしくお願いします」

 

「あら、礼儀正しい子じゃないかい。私が寮母の島津麗子だよ。よろしくね。飴ちゃん食べるかい?」

 

麗子さんが大阪のおばちゃんみたいになってる…

 

「麗子さん、食材とかの買い出しは必要ですか?」

 

「そうだねぇ、食材は九鬼からもらったけど飲み物が少ないね。買ってきてもらえるかい?」

 

俺たちは買い出し班と引っ越し班に分かれて作業を始めた。

 

「あれ、クッキー?」

 

「連理、久しぶりだね!ここに住むんだって?これからよろしくね!」

 

連理は九鬼でメンテナンスを受けていたクッキーと知り合いらしい。特に驚く様子もなくキャップがつまらなそうにしていた。

 

途中でまゆっちが帰ってきて、麗子さんの料理を手伝ってもらった。

買い出し班が帰ってくるころには引っ越しも大方終わっており、俺たちは料理の完成を待っていた。

 

「肉もってきたぞ~」

 

姉さんが川神院から肉を貰って来たので、急遽焼肉も追加することになる。

やっとのことで歓迎会が始まった。

 

『乾杯!』

 

「ほら連理!お前の歓迎会なんだからもっと食え!」

 

「ありがとう」

 

焼肉奉行となったキャップがどんどん連理の皿を肉で満たしたりと、騒がしく飲み食いしていったが…

 

「ここで風間ファミリー臨時集会を開催する!」

 

さっきまで肉を焼いていたキャップが突然そんなことを言い出した。

まぁ、議題については想像がつく。

連理を風間ファミリーに入れたいのだろう。今更な感じはするが。

 

「それで議題は「別にいいんじゃない?」…っておい!俺が話して…今の京か?」

 

「そうだけど?」

 

これには俺も驚いた。クリスやまゆっちの時には反対してたのに。

 

「珍しいな。京がここまで心を開いてるのは」

 

「そうね、でもアタシも賛成!」

 

「自分もだ」

 

「私ももっと仲良くなれたらいいと思います!」

 

「僕も反対はしないよ」

 

「別にいいんじゃねぇか?まだ女に興味ないみたいだしな!」

 

「それ大事なことか?まあ私も賛成だ。可愛い子が増えるのは良いことだ」

 

「元々特別会員なんだしな。俺も賛成だ」

 

満場一致で可決してしまった。まだ議題も発表されてないのにな。

 

「……?」

 

案の定連理は首を傾げて固まっていた。

 

「連理!俺たち風間ファミリーの正式メンバーにならないか?」

 

「なにをすればいいの?」

 

「別になんてことはないよ。皆で集まって遊んだり、金曜の夜には秘密基地に行って、休みの日の予定を立てたりするんだ」

 

「秘密基地?」

 

「おう!メンバーになれば連れてってやるぜ!」

 

連理は秘密基地がどんなものなのか考えているようだ。しばらく考えた後、笑って答えた。

 

「面白そう…ボクも皆と遊びたい」

 

「決まりだな!これからよろしく頼むぜ!」

 

 

 

こうして風間ファミリーに新たなメンバーが加入した。

 

出雲連理。

少女のような外見に、武力チート(制限有)の金髪少年。

 

 

世界に絶望し、『死にたい』と渇望し、生きる意志を無くした子供。

 

 

暗い過去と、歪んだ希望を抱えて生きる連理に、俺たちができることは大したことじゃない。

 

 

こうやって、皆で思い出を作ってやるくらいが関の山だ。

 

 

でも、それだって大切なことだろう?

 

 

俺たちだけじゃない。連理の周りには沢山の人がいる。

皆連理の事を想って、沢山の思い出をくれる。

 

 

その思い出は、連理を世界に繋ぎとめてくれる"鎖"となるだろう。

 

 

『死にたい』という連理を、引き留めてくれるだろう。

 

 

「よろしくな、連理」

 

 

そうやって思い出を沢山抱えたなら、『もっと一緒にいたい』と思ってくれたなら

 

 

「よろしくおねがいします!」

 

 

 

それが"生きる意志"というものだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 第一章 完




やっと連理が仲間入りしてくれました。次は体育祭かな?
主人公なのに6話にて初めて連理視点を入れました。
質問以外あまり喋らない連理ですが、内心では色々考えてます。
あと、時系列的におかしいですが、この小説では連理と出会う前に『卓代ちゃん』が誕生しています。

恋姫無双の二次創作を書こうか迷ってます…。
この小説だって駆け出しなのに…血迷ってます。

京「私も結構活躍するよね」
李「頑張りましょうね」
弁慶「私も」小雪「ボクも―!」一子「アタシもだわ!」
総理「俺ぁ恥ずかしんだがよ」

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